TRPGリプレイ【置】CoC『アレキの心音』 牧志&佐倉 2

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こちらには『アレキの心音』
のネタバレがあります。

本編見る!
牧志 浩太
スマホのメッセージ画面を見る。
先輩から返事は来てないか。
KP
波照間からの返事はない。
佐倉 光
「波照間さんたちも捕まったりしてなきゃいいけど……
そういや、ほかの被害者がいるって?」
牧志 浩太
「ああ、そうなんだ。
あの工事現場で、心臓を抜かれた遺体が見つかったらしい。しかも……四件目だ。

佐倉さんはこの人、見たことある?」
朝に見たニュースを表示する。
牧志 浩太
「もしかしたら、目的は心臓なのかもしれないな……」
KP
あなたが開いたニュースには以下のような事が書かれている。
港区で起きている連続殺人事件について。
同一犯の犯行とみられ、ことごとく心臓が切除されている。
牧志 浩太
「佐倉さんは……、縫い閉じられてるな。
そういえば俺が佐倉さんを見つけた時、佐倉さん、ふらふらと路地裏へ歩いていこうとしてたんだ。
真っ青な、死んだような顔で。

もしかしたら、その人達も、歩いていったのかもしれない……」
佐倉 光
「歩いて行って、死んだ? 自分の意思で?
普通警察に駆け込んだりしねぇかな……」
牧志 浩太
「分からない。もしかしたら自分の意思じゃ、なかったのかもしれない。
単純に……、単純に、船に捕まって、心臓を抜かれて、こっそり捨てられたのかもしれない」
KP
【アイデア】
牧志 浩太
1d100 90 【アイデア】 Sasa 1d100→ 82→成功
KP
日本で心臓の摘出を行える技術者はそう多くはないのでは、と思いつく。
心臓移植について調べたら何か分からないだろうか。
牧志 浩太
「……あ」
胸の傷跡、そして病院という言葉が不意に結びついた。
そうだ、理解しがたいもののことばかり考えすぎていた。

どうやって心臓を取り出したのかなんて、考えもしなかった。
牧志 浩太
「あー、くそ、馴染み過ぎた。
科学の視点が足りてない、ここ。圧倒的に足りてない」
髪に指を突っ込み、乱暴に掻き回す。
牧志 浩太
「佐倉さん。
俺さ、当然のように、よく分からない方法で心臓を取り出したようにイメージしてたけど。

病院、って言ってたよな。
そんなことに頼らなくても、取り出せるじゃないか、心臓。

移植となると相当難しいらしいけど、その白衣の男がそういう技術を買われてそこにいるのなら、心臓移植のことを調べれば追えるかもしれない。

そうだよ、心臓なんか欲しい一番の理由って、それじゃないか……」
牧志 浩太
※過去の経験が大いに災いした牧志である。
KP
心臓や移植について検索していると、以下のような記事が引っかかった。
心停止と呼吸停止について・心臓移植ができる病院についての調査結果。
KP
東京には3施設ある。
新宿区の東京女子医科大学病院、文京区の東京大学医学部附属病院、世田谷区の国立成育医療研究センターだ。
だがいずれも佐倉が目にした病院名ではなさそうだったし、心臓移植に関わる医師を調べても佐倉が見た男はいない。
佐倉 光
「少なくとも、関わっているのはまともな病院でも医者でもないってことは確定したな。
まあ、当然っちゃ当然だけどさ」
KP
ちなみに東京の三つの病院は実在のもので、シナリオには関係ありません。
牧志 浩太
ですよね。そこ大事。
そして本編の牧志も、やっぱり一般常識から発想が決定的にズレてしまっているのが明らかになるのでした。
牧志 浩太
「そういうことだな。
科学の視点、役に立つかと思ったけど、だめか……。
そうだ。この倉庫街、周囲で何か目撃されたりしてないか?」
牧志 浩太
浜渦港について何に使われているのか、最近何か起きたり目撃されたりしていないか調べる。
合わせて、七ヶ扇船についても詳しく調べてみる。
KP
残念ながら、これ以上の事はネットの情報では得られないようだ。
佐倉 光
「牧志。心臓もそうなんだけど、俺の背中から生えてるこれ」
佐倉は床に落ちた石を拾い上げた。
彼が座っている椅子の下はもうきらきらと輝く石が多数落ちており、シローが目を輝かせて拾って覗き込んでいる。
佐倉 光
「考えてみりゃこれ宝石か何かかな。
どういう理屈かは知らねーけど、延々宝石が出てくる、とすると、
単純にこれを生やす畑にされてるって可能性もあるだろ?」
牧志 浩太
「そうか……、苗床」
牧志 浩太
「ごめん、佐倉さん。俺、心臓に気を取られて随分視野が狭くなってるみたいだ。
さっきのことといい、それのことといい」
冷静でいよう、いようとしているのに、随分焦っているし、視野が狭くなっているし、嫌な思い出に振り回されてる。
それを自覚出来てなかったのが、質が悪い。

胸に手を当て、大きく息を吸い、吐く。
それから麦茶を一口飲む。
牧志 浩太
「ありがとう、自覚した」
牧志 浩太
「そういえば、それ何なんだろうな。そっちも当たってみるか」
牧志 浩太
それの色で検索+写真で画像検索してみます。
KP
見る角度で色が変わる石は「アレキサンドライト」、「タンザナイト」など色々ある。
さすがに目視でこの石が何なのかまでは良く分からない。
佐倉 光
「プロの目に頼った方がいいかも知れないな」
KP
現在時刻は13時30分。まだ陽は高い。
佐倉 光
「オンラインの調査は限界か。外に出てみるしかなさそうだな」
牧志 浩太
「そういうことだな。……」
佐倉さんの頬を、正確には顔色をちらりと見る。

佐倉さんは動ける状態だろうか、連れていくべきだろうか。
また、あの時みたいにみすみす奪い取られることにならないだろうか?
牧志 浩太
そこまで考えた思考を投げる。
そんなの、佐倉さんがどう考えるか次第だろ。
牧志 浩太
「佐倉さん、動けそう? 前みたいに変装する?
その石落としていったらヘンゼルとグレーテルになっちゃうよな、服で受けられそう?」
佐倉 光
「悪いな。サンキュ」
KP
佐倉は呟いた。
佐倉 光
「変装か。
と、言ってもあまり余裕はなさそうだし」
佐倉 光
「そうだな。なんか布でも巻いて、生えてくるヤツ受け止めといた方がいいか」
佐倉 光
「牧志、包帯で包んで、下に逃がして回収していくようにできないかな」
KP
というわけで、包帯とマフラーである程度の時間覆い隠すことができるか判定してください。
〈医学〉または【DEX】×6
〈応急手当〉〈隠す〉、でもいいや。
牧志 浩太
1d100 61 〈医学〉 Sasa 1d100→ 55→成功
牧志 浩太
「それが一番目立つもんな。ちょっと待って」
いつもの救急箱と、使えそうな物を持ってくる。

包帯を留め、流れを作っていく。
包帯の使い方を何度も練習したのが結構効いている。
意外な所で役に立つもんだな。
KP
何度か色々な方法を試して、三度目あたりで目立たず割れた石を排出できる巻き方になった。
佐倉 光
「ありがとう。これなら苦しくないし動きにも支障が出ない」
KP
幸いそうこうしているうちに佐倉の顔色は良くなり、回復してきているように見えた。
それでもスマートフォンの画面を見続けたり、長い時間歩くのはおそらく無理だ、と本人は言っていたが。
佐倉 光
「Barにも連絡入れたけど、あっちでも状況掴めていないらしい。
ただ、波照間さん達まで捕まってるってことはなさそうだ。
単に俺が欠けた分、作戦の立て直しになって時間がかかってるんだろうな」
牧志 浩太
「そうか、よかった。
……よし、それじゃ行こう」

牧志 浩太
「ごめん、シロー。行ってくるよ。留守番、頼む」

宣言して、家をよく施錠して外に出る。
車に乗って、いつもと違うルートで家を離れる。
牧志 浩太
「よし、まずは……」
牧志 浩太
パワーストーンショップ、質屋、博物館など、鉱物を見てもらえそうな場所は近くにあるだろうか?
KP
そういった石に詳しい店なら、佐倉が仕事で関わる店など何軒かある。
あまり人目につかず移動することもできるし、ある程度無償で相談にのって貰えるはずだ。
牧志 浩太
なるほど。
仕事で関わる店なら相談にも乗ってもらえるし、普通の店じゃ分からないことを教えてもらえるかもしれない。
牧志 浩太
佐倉さんの体調も悪いし、近くまで車で行こう。

ハンドルに手を伸ばした時、少しだけ手が震えた。
構わずにハンドルを握る。
佐倉 光
「悪いな。頼む」
牧志 浩太
一番近い店に連絡を入れて向かう。
KP
佐倉は店に連絡を入れると、
倒し気味にした座席に丸めたタオルを敷いて、飛び出た石があまり干渉しないようにしてうたた寝を始めた。
呼吸が乱れる事もなく、今朝死にかけていたのがまるで嘘のようだ。
牧志 浩太
そうやって眠る姿を見ていると、やっぱり体調はよくないのだろうと思われた。

安心は……、できなかった。
死にかけていた理由も、今こうやって回復してきている理由すら分からないのだ。

KP
裏通りの店に入ると、宝石店とは名ばかりの雑貨屋だった。
謎の石、札が貼られた箱、謎の壺、香立てなど。
だがよくよく見ればそれらひとつひとつに宝石が填まっているのだった。

佐倉は店の奥へと入っていく。そして【STAFF ONLY】と書かれた扉をノックして開ける。
牧志 浩太
佐倉さんと一緒に頭を下げて扉をくぐる。
KP
うずたかくへこんだ箱や缶が積み上げられた部屋の一角に、メガネをかけた壮年の男が座っていた。
彼は入ってきたあなたを見ると眉根を寄せた。
「ようサクラ。なんかくたばりそうなツラしてんな。パンピーなんか連れ込んでどした。新顔?」
佐倉 光
「そういう訳じゃない。
こいつは問題ないから」
牧志 浩太
「お邪魔します。
理由があって裏事情は知ってるんで、遠慮はいりません」
KP
「へぇ?」
男はジロジロとあなたを見、床に倒れた二脚の丸いすを指した。
「まあ座んなよ」
牧志 浩太
床に倒れた椅子を引き起こして並べ、片方に座る。
牧志 浩太
「この石について知りたいんです」
欠片を差し出す。
KP
「アレキサンドライト……の原石?
でかいな。魔界産?」
言ってルーペを取りだし、じっくりと眺める。
KP
「どうしたのこれ。アレキサンドライト?  いや、なんだこれ?」
顔をしかめた。
「またミョーなもん持ってきたね。どしたのこれ」
佐倉 光
「あー、なんつーか。悪魔の体から生えてた?  アナライズはできなかったんで、正体は分かんないんだけどさ」
KP
「……へぇ」
店主は身を乗り出して熱心に石をいじくり回し始めた。
KP
店主は調べながらとうとうと語る。
アレキサンドライトについての解説
KP
「と、神のイタズラと言われるくらいレアなやつなんだね、こっちでは。
さあ、とするとこんな大きな塊、どれだけの値打ちになると思う?」
店主はニヤリと笑った。
牧志 浩太
「……」
十分、ありえるわけか。
心臓のためじゃなくて、この石を作り出すために、佐倉さんをこうした可能性が。

……厄介なことになってきたな。
そんな宝石を生み続けるなんてことがバレたら、その連中以外にも捕まるかもしれない。

例え一日で死んだとしても、それまでにどれほどの富を生むことか。
牧志 浩太
「ありがとうございます。
この石結構脆いみたいなんですが、そんなに脆い石なんですか?
何か、こちらで見つかる石と違う所はありますか? 
例えば、結晶構造とか」
何かうまく合わせようかと思ったが、結局ぼろを出す気がして、その笑みには何も応えずにいた。
KP
「そう、そこなんだよね。まさに」
店主はあっさりと首を振った。
「アレキサンドライトの硬度は?  8.5だ。最高の硬度がダイヤモンドの10。これは魔界産でも同じ。
でもこれは?」
店主は自分の膝を指した。粉々に砕けた石の欠片が散らばっている。
「雲母かなんかみたいだね。せいぜい硬度2か3。
つまり?
見た感じはアレキサンドライトだけど、全然別物。
ぶっちゃけ宝石としての価値はないね。
で、これはなんなのさってことになるわけだよ」
牧志 浩太
……言い方が心臓に悪すぎる。
安堵の息をつきそうになって、咄嗟に繕う。

けど、それならどうして、こんなことになっているんだ。
宝石を生み出す実験の途中なのか?
ただの副産物なのか?
佐倉 光
「それを訊きに来たんだ」
KP
「そうなんだろうね。悪いけど知らない。見たこともない」
男は肩をすくめた。
「置いてってくれれば調べるけど」
牧志 浩太
「見た目だけ、ってことか。
お手数をおかけしますが、お願いできますか」
佐倉 光
「じゃ、頼むよ」
KP
「ふぅん……ま、いいけどね。
面白いの持ってきてくれたし、鑑定料はサービスしとくわ。せいぜい死ぬなよ」
店主はもう行けとばかりに手を振った。

KP
店を出ると、佐倉は小さなため息をついた。
牧志 浩太
「結局、よく分からなかったな」佐倉さんに言う。
佐倉 光
「金持ちになれるかと思ったのに、残念だったな」
KP
佐倉は本気なのか冗談なのかよく分からない言い方をした。
佐倉 光
「得体の知れない石生産機か? いよいよ何だか分からなくなってきたな」
牧志 浩太
「ああ、余計に何だか分からなくなってきた。
無関係などこかの誰かに攫われる、ってことはなさそうで、ちょっと安心したけどさ」
牧志 浩太
「石の方も移植がらみも、これといったことは分からなかった。
そうなるとやっぱり……、現地に行ってみるしか、ないかもしれない」
牧志 浩太
もう一度意思を問うように、顔を上げて佐倉さんの眼を見つめる。
佐倉 光
「そうだな。事情も分からないまま死にかけるんじゃ、手の打ちようもない。
現地も見てみよう」
KP
目を見つめ返してうなずく。
牧志 浩太
ネットで場所を確認し、現地へ向かう。
牧志 浩太
まずは車に乗ったまま、近づける範囲で近くをゆっくり通過して様子を見る。
あれだけ大きな船なら停泊していれば距離があっても見えるはずだし、明らかに何か起きていれば分かるはずだ。
牧志 浩太
佐倉さんにはパーカーのフードを被っておいてもらう。

KP
では現地で様子をうかがう車内。
突如佐倉が呼吸を乱した。
佐倉 光
「っう……」
KP
手で口を覆い、まるで自分の顔の形を確かめるようにもう片手の指先を動かす。
顔色はフードに隠れていて良く分からないが、おそらく青ざめているのだろう。手も白くなっていた。
牧志 浩太
「佐倉さん!」
路肩に車を停め、佐倉さんの座る座席を倒して寝られるようにする。
佐倉さんの手首を掴み、脈と呼吸を確かめる。
牧志 浩太
くそ、何が起きてるんだ!
予兆もない、理由もない、何が起こっているのか分からないということが、怒りと恐怖を増した。

どこか知らない所で、佐倉さんの心臓が血を流している姿が思い浮かんでしまった。
KP
席を倒して見れば、佐倉の右こめかみから頬にかけての皮膚が黒く変色し始めている。
佐倉が目を瞠った刹那、パキパキと僅かな音を立ててそこを氷の薄い膜、あるいは結晶のようなものが覆い始めた。
肌はぞっとするほど冷たくなっており、また死を目前にした喘ぎのような、呼吸にもならない震えを発している。
▼《SANチェック成功時減少 1失敗時減少 1d2
牧志 浩太
1d100 56 《SANチェック》 Sasa 1d100→ 15→成功
SAN 56 → 55
牧志 浩太
佐倉さん、佐倉さん、佐倉さん。
必死に名を呼びながら、佐倉さんに心肺蘇生を施そうとする。

目の前にいるのに。
佐倉さんが目の前にいて、俺は動けるのに、何も、何もできない!
胸をどれだけ押し込んでも、手のひらの先に触れる命はない。

泣き出したいほど怒りだしたいほどに無力だった。
目の前で佐倉さんが死んでいく。得体の知れないものに喰われていく。

くそ。くそ、くそ!
KP
何度押そうと心臓は動かない。肋の中にはただの沈黙した肉塊が鎮座するのみだった。
佐倉 光
「牧志……だい、じょうぶ、落ち着いて、きた……から」
KP
譫言のように呟いた佐倉の顔の異変は、半分が蝕まれたところで止まったようだった。
佐倉 光
「あまり、時間がない、みたいだ……」
KP
呼吸を抑えるようにして身を起こし、フードを深く被る。
牧志 浩太
「くそ……、くそ、くそっ……、そうだ、時間がない……。
ごめん、急ごう、ごめん……」
握りしめた拳が白くなっていた。
あまりの無力さに、謝罪のような言葉になって感情が漏れ出る。
KP
日は既に傾いてきており、空は夕焼けに染まりつつあった。
牧志 浩太
悠長に様子を見ている暇はなさそうだ。
車ですぐ近くまで向かい、途中で車を降りて近づく。

例の船はまだ停泊しているか?
周囲に人の姿はあるか?
KP
辿り着いた浜渦港の埠頭にはいくつかの船舶が停まっている。
〈目星〉どうぞ
牧志 浩太
1d100 98〈目星〉 Sasa 1d100→ 77→成功
KP
そのひとつひとつの船尾を確認してみるが、『 七ヶ扇船 』と記された船は見当たらない。
最後の船を確認したところで、地面に光るものを見つける。
それは佐倉の背中に生えているのと同じ青緑色の石だ。
佐倉が逃亡時にここを通ったためだろうか。

船がない以上、人に話を聞ければよかったのだろうが、夕暮れ時ということもあって埠頭にあなたたち以外の人影はない。
佐倉 光
「くそっ……手詰まりかよ」
牧志 浩太
「くそ、遅かったのか……!?」
船がない。もう発ってしまったっていうのか。そんな……!

くそ。くそくそ、寄り道なんかしていないで行くべきだったのか!

諦めきれずに、地面を確認する。何か落ちていないか。光るものの痕跡を辿れそうなら辿ってみる。
KP
〈聞き耳〉
牧志 浩太
1d100 97〈聞き耳〉 Sasa 1d100→ 26→成功
KP
足音に振り返ると、黒いコートを身に纏った細身のすらりとした人物が立っていた。
そのひとは佐倉を見て言った。

「──これはこれは。
「折角逃がしたのに戻ってきてしまったのですか?」
女性とも男性ともつかない凛とした声だった。

風貌からも性別は判断できないが、年齢は20代ほどだろうか。
長く一纏めにされた金髪が海風に緩く揺られる。
白い肌は陶器のように滑らかで、口元に微笑みを浮かべてはいるが、眼鏡のレンズ越しに見える黄色い瞳は笑っていない。
どこか浮世離れした、人間味のないその人物は佐倉の顔を見ていたが、ふとあなたに視線を移す。
「あなたは…知らない顔ですね。彼のご友人でしょうか」
牧志 浩太
「ああ……。そうだ。この人の友人だ。
あなたが逃がしてくれたのか?
彼は死にかけている。対処できる情報を求めて戻ってきた」
その人の眼をじっと見据える。
佐倉 光
「知ら……ない……」
KP
佐倉の困惑したような呟きに、そのひとは頷く。
「覚えておられない。まあ無理もないでしょう。あの時は随分と意識の混濁が酷いようでしたから」

そしてあなたに向き直る。
「……ああ、失礼。わたくし黄玉と申します。サクラさんを船から逃がした者です。
敵意、害意はございません。
と言いますか、この身体は荒事には向いておりませんので」
牧志 浩太
「そうか。……ありがとう、感謝している。
あなたが逃がしてくれなければ、こうしてもう一度会うこともできなかった」

堅い口調のまま、感謝を告げた。
相手が何者で何の思惑があろうが、それだけは真実だった。
そうしてくれなければ、もう一度会うことさえできなかった。
牧志 浩太
「船はどこへ行ってしまったんだ。
佐倉さんはどうなっていて、どうすれば助けられる。
頼む、教えてくれないか」
KP
「どうやらお困りのようですね。サクラさんの願いは叶えたつもりだったのですが。
その辺りも含めて是非お話しをしたいですね。
近くにわたくしのラボがございます。一先ず移動いたしましょうか。
そうそう、お名前をお伺いしても?」
黄玉はあなたに問いかける。
牧志 浩太
「牧志です。あなたは、何とお呼びすればいいですか」
牧志 浩太
少し躊躇いかけた。
俺達が助かるかどうかはこの人次第なのだ、と思い出して、そのまま告げる。
牧志 浩太
※今回牧志は別に何の被害も受けてないんだけど、実質イコールなのでイコールにしちゃう牧志
KP
「どうぞそのままコウギョクとお呼びください。
マキシさん、どうぞよろしくお願いいたします」
黄玉は馬鹿丁寧にお辞儀をした。
KP
このひともコウさんかー、なんて要らん事を思いついた。
牧志 浩太
ああー、確かに。
佐倉 光
「手がかりがない以上……話を聞いた方が良さそうだ」
佐倉 光
「けど、ここでは駄目なのか?」
KP
「ええ、やめたほうがよろしいでしょう。
少々長話になりますし、なによりあなたの体の状態があまり良くないようですから。
ご心配には及びませんよ。ラボは今、すぐ近くにございます」
牧志 浩太
「ええ、よろしくお願いします」
頷いて、一礼を返す。
牧志 浩太
「今、すぐ近くにってことは、そこも船なのか」
KP
「いえいえ。こちらの駐車場ですよ」
黄玉が示したのは、あなた方の車も駐まっている駐車場だった。

KP
一台の白いバンの前で立ち止まり、バックドアを開く。

「入口が狭くて申し訳ございません。どうぞ」

一言言うと、黄玉は荷台の中へと降りていった。……そう、文字通り荷台の中へと。
佐倉 光
「なに?」
KP
思わず車の下を覗き込む。
牧志 浩太
「へっ?」
バンの荷台がラボとは随分狭そうだけど、普段一人ならそれでもいいのかな…… と思っていたら、先を行く人の姿が降りていった。
牧志 浩太
「えっと……。
どこでもドア?」
困惑している暇はないので、とりあえず後ろについて降りていく。
KP
荷台に荷物は積まれておらず、代わりに床下収納のような、人ひとりが入れそうな小さなドアが荷台の床に開いている。
どうやらそこから下に向かって梯子が伸びている…のだが、
どう考えてもどう見ても車の下は地面で、タイヤと地面の間に物などないし、下水道の入り口のような穴もない。
佐倉 光
「ゲートでも開いてんのかよ……」
佐倉 光
「便利だな」
牧志 浩太
「移動できる異界の入口、しかも部屋に使えるって便利そうだな。
そういえば、異界をシェアハウスにしてた連中もいたっけ」
KP
いたっけ。
牧志 浩太
某シナリオの宗教団体の連中。ノリが同好会だったので。
KP
ああー、いたわ。
牧志 浩太
一応アレは牧志も教祖してたときの記憶がなくなったわけではないので、ちゃんと覚えてる。
佐倉 光
「いいなぁ。俺もこういう隠れ家欲しい」
牧志 浩太
「俺もすごーーーく同感。
異界に隠れ家作って籠もりたいし避難したい。
と、そんなこと言ってる場合じゃないな」
とにかくドアを開けて梯子を降りよう。

KP
梯子を降りた先には、狭くはないが広いとも言い難い、白い部屋が広がっていた。

研究室を思わせる清潔な室内には、実験器具や小型の機械、パソコンにモニター、簡易的なベッドなどが並んでいる。

「普段人間を招かないものでして、椅子がひとつしかありません。
そちらのベッドに座っていただいて結構です」

黄玉はきこきこ音を立てながら、キャスタータイプの椅子をモニター前からベッド近くへと持ってくる。
そうして自分はその椅子に腰を下ろした。
牧志 浩太
さらりと『人間』って言ったな。
そこは現状に関係ない。スルーしよう。
牧志 浩太
「お邪魔します」
ベッドの端に腰かけ、ベッドの上を佐倉さんに譲る。
牧志 浩太
自然と拳に力が入った。
分かるかもしれないのだ。佐倉さんが何をされ、今どうなっているのか。
KP
佐倉はベッドの上に座ると、ほっとしたように息をついた。
「辛いようでしたら寝てしまっても構いませんよ」
黄玉が言ったが、佐倉はひとまず壁に背を預けて座るに留める事にしたようだ。
KP
「……さて」
牧志 浩太
「……はい」
KP
「では改めまして自己紹介を。
わたくし地球では黄玉と名乗っております。
元々はユゴスという星……冥王星と言った方が分かりやすいでしょうか。
そこで群れの一員として活動しておりました」
佐倉 光
「異星人……か」
牧志 浩太
「ユゴス……」
冥王星。今は小惑星帯の小惑星のひとつに格下げされて久しい星だ。
そこに生命体があるなんて聞いたことがない。

けど、今更だ。
俺達が知っていると思っていたものは、実際に知っているものより、遥かに少なかった。

僕は/俺はそれを二度知った。
KP
「種族の名称はミ=ゴといいます。
わたくしはその中でも“思考する者”という風に呼ばれる個体でございます。

経緯は省略いたしますが、現在は単身で地球に赴き、地球の研究および地球上の鉱石等の回収を行っております」

言い淀みなくはきはきと黄玉はそう語り、あなたたちに笑いかける。

KP
ミ=ゴって、一回某シナリオでちら見しただけで名前はしらんのよね。
佐倉は寝てたし。
牧志 浩太
しりませんね。
KP
このファーストインプレッションで、ミ=ゴって話が分かる異星人なんだなって理解になってしまう……
牧志 浩太
なっちゃいますねぇ……。
しかも人型の異星人(じゃないけど)にその前にも出会って(牧志s)いるし。

本来の姿のミ=ゴのことを知ったら驚きそう。

牧志 浩太
「俺はこの地球の人間で、学生です。それで」
自己紹介に対する返礼としてそう言い、本題を、と話を差し向ける。
KP
「はい。質疑応答に参りましょう」
黄玉は頷いた。
「ラボ内には様々な資料がございますので、そちらを閲覧されても結構です」
※質問ターイム! 色々答えて貰えます。
牧志 浩太
「まずは、佐倉さんが何をされて、今どうなっているのか知りたい」
KP
佐倉も頷いた。
KP
「もっともの問いですね。
ただ、わたくしも全てを把握しているわけではございませんので、ご了承いただけますか」
牧志 浩太
「構いません。知ってることだけでいい。
俺達は本当に何も知らないんだ」
KP
「サクラさんは、マホロバPSI研究所の七ヶ扇支部の研究員に連れ去られ、被験体にされていたようですね。
わたくし、マホロバPSI研究所の行う研究に興味がございまして、独自に調査を行っておりまして。
その最中七ヶ扇支部を構えていることを知り、赴いたのです」
牧志 浩太
「佐倉さんは何か注射をされたって聞いている。

それは何だったんだ?
その研究は何のためのものだった?

佐倉さんの胸の傷は何をされたものだ?
佐倉さんは身体に何をされて、今、どういう状態になっている?

佐倉さんが弱っているのは、血も流していないのに血を失って死にかけているのは、なぜなんだ?」

落ち着いて聞くつもりだった。
相手から言葉が出た途端、焦りが来た。
拳を握ったまま前のめりになり、つい畳みかけるように問うてしまう。
KP
「船内へ踏み入ろうとしたときにサクラさんが逃げ出してくる場面に遭遇いたしました。
服装から被験体であろうことは理解できましたので船内に返そうかと考えたのですが、サクラさんはどうにも奇妙な鉱石を持っておりました」
佐倉 光
「……」
KP
佐倉は背から溢れていた鉱石を手に取る。
黄玉はゆっくりと頷いた。
KP
「わたくしが鉱石に気を取られたことに気付いたらしいサクラさんがわたくしにいくつかその鉱石をくれましてね。
「死にたくない」と仰いましたので、では等価交換にと車で安全な場所まで運送いたしました」
牧志 浩太
「そうだったのか……。
ありがとう。あなたがそうしてくれなければ、佐倉さんは助からなかった」

背筋がひやり、と冷えた。
佐倉さんは危うい所にいたらしい。

敵対勢力とか、そういうのじゃなかった。
この人の認識次第では、佐倉さんはそのまま船内に追い返されていたんだ。
KP
「ですので結局マホロバPSI研究所と接触がまだ出来ていないのですよ。
よって詳細は存じません。
とはいえ推測はできますが……後ほど診察をさせていただきますね。
わたくしの意見はその後に申し述べるといたしましょう」
牧志 浩太
「頼む。あの研究所にどこかの病院が絡んでるらしくて、病院には頼れなかったんだ。
診察してもらえるなら、助かる」
牧志 浩太
「佐倉さんは気づいたら扉が開いてた、って言ってた。
その研究所では、何か彼らの意図しないことが起きていそうだった?」
KP
「先ほども申し上げましたが、研究所で何が起きていたかまでは
わたくしには分からないのですよ」
黄玉は言う。
佐倉 光
「どうして協力してくれるんだ。さっきの石が目当てなのか?」
KP
「はい。わたくしはサクラさんの背中に生えている鉱石に興味があります。
特にあなたがたには必要のないもののようですから、協力の対価としていくつかまたいただきたい。それだけでございます」
牧志 浩太
「分かりました。
佐倉さんの命の方が、ずっと大事だ。
協力してくれるなら、渡して構わない」

頷く。
本当に石が目的なら、分かりやすい。

それに、害意がないというのも真実だ。
石が欲しければ、佐倉さんを奪ってここに閉じ込めるなり、保護するとでも言ってここに囲っておけばいいんだ。

そうしない時点で、この人には俺達と対話する気がある。
少なくとも、今は。
佐倉 光
「……」
KP
佐倉は頷いて、背に溜まっていた鉱石を取り出す。
佐倉 光
「どうせタダだしな」
KP
「お二人ともご理解が早くて助かりますよ」
黄玉はまた微笑んだ。
「では、サクラさんのお体の状態について詳しく伺いましょうか」
KP
※カクシカでもいいよ。
牧志 浩太
一度目を閉じて、息を深く吸う。
頷いて、佐倉さんを見つけた時の状態から順に話し出す。

自然と、拳を胸の前で握りしめていた。
牧志 浩太
かくかくしかじかと話します。
特に伏せはせず、全部話す。
KP
黄玉は質問を交えてあなたの言葉を聞き、幾度も頷いて見せた。
「心音がしないこと、顔の変化、背中の鉱石。
なるほど。おそらくわたくしの予測は正しいのではないかと。

では現在の身体の確認及び診察をいたしましょう。
サクラさん。衣類を脱いでベッドに横になっていただけますか?」
佐倉 光
「わかった」
KP
佐倉はおとなしく服を脱いで横たわった。
KP
異変は顔だけでなく、肩から胸、腰のあたりまで半身を侵蝕していた。
佐倉の皮膚はしなやかさを失い、黒い物質に変貌している。
黄玉は聴診器で心音を確認し、黒くなってしまった皮膚や、現在は変化のない指の爪などを観察する。
そして、見た事もないような小型の機器を佐倉の体にあてがった。

「痛みは伴いません。より詳細な情報を得るための機器ですから」
最後に佐倉をベッドに座らせ、背中の石を確認・観察すると、「なるほど。」と納得したように呟き、
席を立って資料棚から一冊ファイルを持ってきた。
KP
「診察結果をお話しいたしましょう。
サクラさんから現在心音はいたしませんが、心臓自体は身体の中にございます。
ただ問題は、その心臓が本来の心臓ではないという点でしょう。
サクラさんの身体に起きている異変は、全てすり替わった心臓が及ぼしているものと考えられます」
牧志 浩太
「何てことだ……。
取られただけじゃなくて、入れ替えられてる、っていうのか」
ぎり、と歯が音を立てたことで、歯を噛み締めていたことに気づいた。

そいつらが佐倉さんの心臓を奪ったんだ。
佐倉さんの心臓は、きっと今もどこかで、引き離されたまま鼓動しているんだ。

佐倉さんは……、その代わりに、何を詰め込まれたっていうんだ。
牧志 浩太
「くそ……。
それじゃ、どうすればいいのかも分からないけど……、
佐倉さんを助けるには……、佐倉さんの心臓を取り戻して、元に戻すしかないんですか。
そうできれば、佐倉さんは助かるんですか」
牧志 浩太
「その心臓が一体何物で、佐倉さんに何をしているのかは、分かりますか」
KP
「なんの心臓を入れられてしまったのか。」

黄玉はファイルを開いてあなたたちにとある生物のページを見せてくる。

「黒い皮膚に氷の膜、もとい霜。そして背中に翼のように生えようとする一対の鉱石。
神々の始祖と言われる白痴の魔王、彼に奉仕する下級種族……
シャンタク鳥の特徴と異変の特徴が一致いたします」

そこに描かれていたのは、不快で胸の悪くなるような、一対の翼を持った悍ましい生き物だった。
佐倉 光
「シャンタク……鳥?」
牧志 浩太
「何だって……、」
そのねじ曲がった悍ましい生き物の心臓が、血の通った心臓とすり替えられて胸の中にある。

何度見ても、その生き物の心臓をどうしても心臓として思い浮かべられず、佐倉さんの胸の中を、尖った鉱石がいっぱいに侵している図を想像してしまった。
牧志 浩太
「どうしてそんなものを佐倉さんの中に、いや、知らないんだったな、すみません。

それじゃ、このままだと佐倉さんは……、そいつになってしまうのか?

佐倉さんがどうして何度も血を失って死にかけているのか、分かりますか。心臓が合わないのか? 本来の心臓に何かされているのか?」
KP
「生物における核は脳か心臓。種族によってどちらかは変わって参りますが、シャンタク鳥の場合は心臓、人間の場合は脳でございます。
施された人体実験の結果、辛うじて心臓が適合しているものの、サクラさんの中には核が現在二つある状態ということでございます」
KP
「では核が身体の中に二つあるとどうなるのか?
そう、おっしゃる通りですよ、マキシさん」

「より生命としての力が強い核が身体を支配しようとする。
つまりサクラさん、あなたは現在体が人間からシャンタク鳥へと作り替わっている最中なのです」
牧志 浩太
「くそ、そういうことか。
何だかようやく筋の通った実験らしくなってきて、怖気がするな……」
呟きが漏れる。
牧志 浩太
ずっと何も分からなかったんだ。
佐倉さんが何のために何をされ、どうして死に瀕しているのか、ずっとずっと分からなくて怖かった。

それを埋めるように、いままでの経験をひっくり返して、悪い想像を繰り返していた。

その裏返しで俺はずっと怒っていたんだ。
牧志 浩太
「ありがとう、ようやく意味が通じてきた。
まだ何も解決してないけど、少し冷静に物事を考えられそうだ」
佐倉 光
「……」
KP
「おや、あまり驚いていらっしゃらない?」
佐倉 光
「悪魔に変異するってのは初めてじゃねぇんだ。想像くらいはできるさ。
ただな。変わるのは体だけか?」
牧志 浩太
佐倉さんの言葉に息を呑む。
そう。そこだ。問題はそこだ。
牧志 浩太
「支配って、どこまで及ぶんだ。
魂……。心や記憶や思考も、その鳥に喰われてしまうのか」

『佐倉さん』が、そいつに喰われてしまうのか。
眼の奥で光が瞬いた。ようやく、ちゃんとした怒りが沸き上がろうとしていた。
KP
「心臓が動き出せば最後。あなたの核は心臓になる。
人間としての意識思考理性本能……すべて失うことになるでしょう」

淡々と語られた内容は、やはり紛れもなく真実なのだと、あなたは理解するだろう。
二人はショックを受ける。
牧志 浩太
「……っ、」
心臓が動き出せば、最後。

意図したわけじゃないだろうけど、そのフレーズは酷い衝撃を伴っていた。

怒りと恐怖が脳まで駆け上がってこないように、自分の心臓を強く押さえて、浅く息を整える。
KP
その心臓、がんばって動かそうとしてましたからね……
牧志 浩太
そうそれ……。
自分の手で佐倉さんにとどめを刺してしまう行為だったかもしれない。
牧志 浩太
「どう……、すればいい」
浅い呼吸の間から低い声を漏らした。
牧志 浩太
「すげ替えられた心臓のせいだから、その心臓が佐倉さんの中からなくなればいいんだよな。

でも、心臓がなければ普通は死んでしまう。
その心臓は、まだ動いてないんだよな。
佐倉さんの血液はいま、どっちの心臓から供給されているんだ?

単純に、その心臓を取り除けばいいのか?
佐倉さんの心臓を取り戻して、元に戻せばいいのか?
佐倉さんの脳をどこかへ移せばいいのか?
佐倉さんに誰かの心臓を移せばいいのか?
佐倉さんの身体に、別の身体の心臓を繋げばいいのか?
どんな対抗手段が考えられる? 教えてほしい……」
KP
「解決法はひとつだけです。
シャンタク鳥の心臓が動き出してしまう前に、取り除いて元の心臓を戻すこと」
KP
「他の心臓は、体との相性というものがありますし、時間のない今はあまりお勧めはできませんね。
人工心肺といった手段についても同様です。残念ながらここにはそういったものはなく、確保にはそれなりの時間が必要でしょう。
その点、あるべきものをあるべきところに返すのであれば容易、とはいきませんが、可能ですから」
KP
「移植の心得はわたくしございますから、お役に立てます。
ただ、わたくしのラボでは設備に少々懸念点がございます。
そこに関しましては異変の進行度に依存いたしますので」
KP
「兎にも角にも、時は然程残されておりません。
サクラさんの本来の心臓を取り戻さなければなりませんね」
佐倉 光
「心臓が保管されている確信がありそうだな?」
KP
「ええ、摘出した心臓にも研究を行うことが予想されます。
先日から発見された遺体の状態と数から鑑みて、サクラさんは最初の成功例でしょうから」
KP
言う間にも、佐倉の体では、黒い異変と氷のような結晶がほんのわずかずつ支配を広げているようだった。
たのしい
牧志 浩太
今回相手の思惑がなかなか分からないので、久しぶりに「された行為の酷さ」じゃなくて、「分からないということ」が牧志を打ちのめしていて面白い。
そしてここでイス人さんとかじゃなくてミ=ゴなの、そういうことか~。
KP
他の作品だと、「なんかすごくひどいことをする比較的ザコモンスター」程度の扱いのミゴサンが、ちゃんとしたNPCとしてこんながっつり理性的に話しかけてくるのおもろい。
牧志 浩太
分かる。普段ミ=ゴさんがこっちに対話してくることあまりないけど、こうやって理性的に協力関係になってくるの面白い。
そういうことかーーーっていう実験の着眼点も、途中まで相手の意図がなかなか推測できないのも含めて構成もお話も面白い楽しい。
あと実験場が船っていうのもなるほどなーーーだし。
KP
船の秘密研究所と車の移動研究所ってのも面白い。
浪漫過ぎる。ほしい。
牧志 浩太
そうそう。俺達もそういう隠れ家欲しい! いいなー! 
楽しすぎて、やってたらひどい展開のシナリオが思い浮かんだので、またシナリオの形にできたら回そうかなーと思います。今回生き残れたら。
KP
おおっ! 是非っ!

KP
「血液の供給につきましては、わたくしはまだ存じ上げません。
理論上はこう、といった推測で話しているに過ぎないためです。
サクラさんのような症例を、もっと詳細に調査する必要がありますね」
佐倉 光
「……実験台にする気かよ」
KP
「実験はいたしませんね。
サクラさんは貴重な症例なので、観察させていただく。
その結果をあなた方に共有し、お役に立てる。
どちらにとっても利益がある、良い協力関係とは言えないでしょうか?」
牧志 浩太
「そういうことか。
よし……、ようやく希望が見えてきた。

その話なら、心臓はきっと七ヶ扇支部……、あの船の中だな?

船は今どこにいるのか分かるか?
分からないならネットで調べてみる。ここ、ネットは通じる?
船を追いかける手段は、何かある?

何度も頼んでごめん。だけど、協力をお願いしたいんだ。
佐倉さんには悪いけど、佐倉さんに酷いことしないなら、俺はそれでいい」
KP
「ええ、恐らくそうでしょう。
ただ、わたくし最初に述べましたように荒事は向いておりませんし、
サクラさんはもう歩けませんでしょう」
佐倉 光
「……ああ」
KP
佐倉は悔しそうに自分の足に触れた。足はもはや黒く変色して本格的な変質を始めているようだった。
佐倉 光
「もう足が動かねぇんだ」
KP
壁掛け時計の針はいつの間にか18時半をさしていた。

「七ヶ扇船の次の帰港時間は19時40分。出港時間は20時丁度の予定でございます」

黄玉はあなたを見つめた。
「動けるのはマキシさんしかおりません。どうされますか?
鉱石をいただけるのであれば、わたくしは移植手術まで協力いたしますが」
牧志 浩太
「分かった。勿論だ、それならいくらでも渡す。
協力と、佐倉さんのことを頼む」

間を置かず頷く。
単身奪回なんて無謀が過ぎるけど、やるしかない。
他に手段はないんだ。
佐倉 光
「……ありがとう、頼む」
佐倉 光
「選べるときは、自分の命を優先してくれよ……
俺だってお前を踏み台にして生きるのは、嫌なんだ」
牧志 浩太
「ありがとう。……そうだよな。
分かった。その時は、ちゃんとそうするよ」
少し困ったような、曖昧な笑みを浮かべた。
牧志 浩太
ちらりとスマートフォンを見る。
先輩からのメッセージは来ていないか。
牧志 浩太
「荒事には向いてないって言ったけど、荒事が得意じゃないのは俺もなんだ。

何か武器になるものや、身を隠せるようなものはないか?」
KP
「武器ならばこちらをお持ちください。
人間が使えるように手を加えたもので、実験中のものではございますが、命中補正機能も備えております」
あなたに手渡されたのは小型の銃と想像できる形状のものだ。
KP
「人間に撃っても生命活動を止めるほどではございませんが、一時的に行動不能にするなら充分でしょう。
発射時にも音はほぼいたしませんので、隠密行動向きと言えます。
銃を扱った事はございますか?」
牧志 浩太
「銃は……、ごめん、扱ったことはあるけど結構前だし、正直自信はない。

弾数や連射速度に制限はある? リロード操作とか、セーフティーみたいなものは?」
KP
「一発ごとにチャージが必要となりますので、連取は効きません。
チャージは自動で行われますのでリロードは不要でございます。
セーフティスイッチはグリップ横にございます」
牧志 浩太
「分かった。ありがとう、これなら心強い」
【麻酔銃について】
牧志 浩太
「あ、ごめん、紐か何かある?
落としたら台無しだから、腕にでも結んでおきたいんだ、これ」
KP
「紐でございますか。ガンベルトもございますが」
何種類かのガンベルトと、謎の丈夫な紐を貸してくれる。
牧志 浩太
「ありがとう。よし」
ガンベルトを装着して銃を収め、謎の紐で銃と手首を連結する。
セーフティーの位置を何度か確認して、抜く練習をする。
牧志 浩太
「っと……、まだ来るまで時間があるのか」
時計を見上げる。
牧志 浩太
「船に入ったところだったって話だけど、入り口には何があった?
入り口はどこだった?

あの場所では何のために、どんな研究が行われている?」
KP
「そういったことでしたら、以前にわたくしが調査した資料がございますので、そちらをご覧いただけますか?
説明は可能ですが、時間はできる限り有効に使うべきかと存じますので」
KP
黄玉は船の見取り図を広げた。
佐倉 光
「こんなものまで用意してあるのか!」
KP
「ええ、不本意ながらわたくしが乗り込む予定でございましたから」
KP
「ほぼわたくしは実際の船内の様子を知りません。
また、使える武器もあなたのものとは性能差がございますので、違うルートを組み立てたほうがよろしいでしょう。
あなたが侵入するのでしたら、ここがお勧めです」
佐倉 光
「俺の心臓……あるとしたら、この保管庫か?」
KP
佐倉の言葉に黄玉はしばらく考えて頷く。
「そうですね、こちらの研究室に移動している可能性もあるかと」
佐倉 光
「候補は二カ所か」
KP
「しかし何しろ、船が着いて出港するまで20分しかございません。
スピード勝負となります。正確な動きが必要です」
KP
船内は非常に広く入り組んだ作りになっているようだ。簡単に覚える事はできそうにない。
KP
「そうと決まればわたくしは移植手術の準備に入らねばなりません。
故に、船内での誘導などは、サクラさん。あなたが行ってください」
黄玉はインカムのセットをあなたと佐倉に渡す。
牧志 浩太
おおっ、誘導脱出ゲームだ!
KP
ここの要素は割と雰囲気だよ!!
タイムカウント要素だけはあるかんじ。
牧志 浩太
なるほどなるほど。楽しいこわいなー。
牧志 浩太
「分かった。佐倉さん、頼む。
どうやら俺の命も、佐倉さんに掛かってるみたいだ」
佐倉 光
「ああ。全力を尽くす。二人分守らないといけないからな」
牧志 浩太
「あーあー、佐倉さん、聞こえる?」
インカムを装着して確認する。
佐倉 光
「オーケー、よく聞こえるよ」
インカムと目の前から佐倉の声が聞こえた。
牧志 浩太
「よかった。よし、これで二人でかかれるな」
こちらの声も、どこか弾んでいるのを自覚する。

ひとりでも大丈夫だと覚悟を決めていた。
それでも二人で動けるのは、やっぱり心強くて、嬉しい。
牧志 浩太
ここから聞こえてくるのが最期の心音にならないよう、やりおおせるんだ。
──突入から脱出まで20分。時間はない。
突入までに、できることはやっておこう。

コメント By.KP
謎の現象を調べに佐倉の付き合いがある場所へ。

こういううっさんくさいお店大好きです。

TRPGリプレイ【置】CoC『あのこが巨大化するシナリオ』 佐倉&牧志 1

「牧志ー!? そこにいるのか!?」
「佐倉さん……、俺、俺、俺ぇ、食べちゃった、食べちゃったんだ」

TRPGリプレイ CoC『地獄はやさしい』 佐倉 2(参加者限定公開中)

「俺は運が良い。お前もそうだろ、多分な」

CoCキャットゥルフ『それは月の明かりの下で』 ユキ 3

「涙が出るほど美味しいと思うんだけど味がわかんない……」
「奇遇だね。あたしも美味いのに砂喰ってるような気分さ」

【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト  」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

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PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」


TRPGリプレイ CoC『侵色』月影

ナニカはナニカ囁いてくるかい?

真・女神転生 TRPG 魔都東京20XX 第二部 東京侵食 第二話 1

イケニエ

TRPGリプレイ CoC『インモラル・イミテーション』佐倉(子)&牧志 1

「不安ではあるけど……なんか、こう……」
「こう?」
「ワクワクしない?」