こちらには『青に染色』および
『俺の恋人が庭からボコボコ生えてくるんだが!?』のネタバレがあります。
また、細かい改変多めなので実際に回す際の参考にはしないでください。
牧志 浩太
お人好しで温厚、だが意思は強い好青年だったが……。
とある事情で二年より前の記憶の大半を失い、代わりに悪魔使い波照間紅の記憶を持っている。
首から胸へと続く奇妙な【契約】の痣がある。たまに痛むという。
生贄体質らしく、事件に巻き込まれることが多い。
佐倉とは友人。
佐倉 光
サマナーで悪魔退治屋。ハッカーでもある。
基本、知性・理性・効率、そういったものを重視する冷静な青年。とある事件より、体中の痛みに悩まされている。
基本悪魔を召喚して戦うが、悪魔との契約のカードを使ってその力を一時的に借りることもできる。
最近、牧志そっくりの異星人……の記憶を保持する物体X六人との契約を行った。
巻き込まれ体質らしい。
最近いきなり起きる不随意運動に悩まされている。牧志の心音を聴くと精神が安定するためか治まる。
牧志とは友人。
シロー
とある事件以来、特殊な事情のため二人が面倒を見ることになった少年。
超美形で類い希な理解力と知性を有する。
年齢は7歳程度。生育環境が特殊だったため、一般的な教育を受けていないので、言語が年齢の割に幼い。最近になって急に一般的な生活を送り始めたので、外界への興味が強い。
牧志たち
少し前に現れた6人の異星人。佐倉と契約して彼の仲魔として存在している。
その正体は、何にでも変身して喰らい殖える不定形生物だったが、事故により『人間』としての意識を持ち、増殖を抑えてこの星での人間との共存を試みている。
そのうちひとりが『もうひとりの牧志』ともいうべき『牧志浩子』、女性だった牧志である。
狙われるのが似合うのは牧志だけども。
今まで通りの流れだとHO1が牧志なんだけど、逆も楽しそうなんですよねぇ、これ。
牧志君って何か不定残ってましたっけ。
しかしじわりじわりとよくわからないことがやってくる感を味わうには置きか……
不定は2~3ヶ月空くなら牧志は全部治ってますね。前回の話であと1ヶ月だったので。
前日譚1 仲魔
なにしろ一体でも見逃せばこの星が滅亡しかねない危険生物だ。
あなたが日常に戻っている間にも、佐倉はじめ波照間、そして事件の当事者である『牧志』たちも、随分とどこかへ出かけていた。
とはいえ、『牧志』たちについては早々に決着がついたらしい。
完全に契約がなされて使い魔に納まっている悪魔であれば、それほど問題視されない。
ただの『危険な悪魔』であればこの世界にはいくらでも存在するからだ。
あの『隕石』の落下地点からは微量の謎の物体が発見されたなんて話もあるが、
例の教授が残らずかき集めてつつがなく灼き尽くした、らしい。
お陰で世界は変わらず平和である。
あなたの恐怖症もゆっくりと収まっていった。
佐倉は未だに奇妙な症状に囚われて心臓の音を聞かせて欲しいと言ってくるが、それが何か問題を引き起こすようなこともない……
※精神治療判定を、牧志は1ヶ月、佐倉は2ヶ月分行ってよい。
1d3 回復 Sasa 1d3→3
SAN値56 → 59
1d100 精神治療 Sasa 1d100→5→決定的成功(クリティカル)!
おっと。では2度目の治療は+1で。
2d3 Sasa 2d3→2,3→合計5
6回復。
佐倉、SAN値 55で開始。
俺だって自分の姿をしていて、一日一緒に遊んで、あんな寂しそうな目をする俺達を、焼きたくなんかなかった。
でも俺にそれを実現する力はなくて、決断してくれたのも、痛みを被ってくれたのも、彼女達を助けてくれたのだって、佐倉さんだ。
貸し借りみたいなのは今更だって、あの時言ったばかりだ。
ようやく外せたサングラスは、部屋に置いている。何となく思い出みたいな気持ちだ。
気を張ることはやめられず、明るい道ばかりを歩き、仕方なく遅くなる時はなるべく人のいる所を辿る、それでも世界は穏やかだ。
きっとまた何かあるんだろうな、なんてのはもう諦めから確信に変わっていて、それでも今を楽しみ、未来を見る。
大学でそんなことがつい口に出て、「大病でもした?」なんて言われたっけ。
友人達はあれこれと心配してくれただろう。
一部の講師には不真面目であると不評だったかも知れない。
だがそれでも人は慣れるものだ。
中でもいつも通りに接する東浪見や波照間の態度が、
周囲の人間の視線を、他の心配事や興味へと速やかに散らしてゆく助けになっただろう。
『牧志』たちは夜間は基本捕食と増殖の本能を抑えるためデータ化しているが、
佐倉の仕事がない昼間は交代で外に出て、気ままに過ごすときもあれば、
自分たちが実体化するマグネタイトを稼ぐために佐倉たちに協力することもある。
その80%はあなたではない他の『牧志』の話題だ。
……少し落ち着かない。
俺が全部忘れて戻ってきた時も、様子がおかしくなった時も、突然サングラスをかけだした時も。
東浪見がいてくれることが、本当に助かるし、ありがたい。
一度そう言ったら、じゃあ飯でも奢ってくれよなんて笑ってたっけ。
それで奢ったら、次に会った時に奢り返してきたんだ。東浪見だなぁ。
あの事件で、家には六人の同居人が増えた。
同時に出てくることはないけど、代わる代わる姿を見せる。
家が随分と賑やかになったような気がして、ちょっと楽しい。
『女の俺』って思ってた時はそうでもなかったんだけど、違う名前で呼び始めると、こう、うん。不思議な感じがする。
やっぱり自分の名前は名前だから、呼ばれるとつい反応してしまう。
大事な時に無視してしまったら嫌だという気持ち。
ただ単純に、名前を呼んで呼ばれたいという感覚。
そういえば紛らわしいことが頻発するのは、彼らも俺と同じように、そういうたちだからなんだなということに気づいた。
お帰りと声をかけてくれるのはあなたの顔をした『悪魔』たちだ。
最近彼らはあなたと意識的に見た目をずらすことにしているのか、髪を長くしたり切ったり、やたらアクセサリーをつけていたり色々だ。
まあ…単なる趣味かもしれないが。
そのなかで、『浩子』は、女性的でありながらあなたとほぼ変わらない格好のままだ。
彼女の記憶はほとんどがあなたそっくりの異星人、『牧志浩子』のものだからだろう。
もー勝手にてきとーに決めちまうぞー」
耳飾りがたくさんついてる『牧志』、落ち着くのかダボダボした服を着てる『牧志』、逆にずっとタンクトップ姿の『牧志』、髪を伸ばし始めた『牧志』、それから服の下に…… 見なかったことにしとこう。
見た目をずらしてくれているのか趣味か分からないけど、それを見ていると、別の人間なんだなっていう認識が少しずつ染み込んでくる。
マゾヒスティックな牧志いる。
その耳に耳飾りがないのが、唯一の違う所。
ああ、本当に近い道を歩いてきたんだなって思う。
悪いなー今取り込み中でさー」
取り込み中って?」
その辺に荷物を置き、冷蔵庫から麦茶を出して飲みながら聞く。
で、30分だけ全員にマグネタイト渡して自力で出てきてもらったんだけど、こう揃って出るの久しぶりだろ?
全然話が纏まらねーんだよ」
名前
もしくはキングダムハーツ方式で、必ず名前にXが入っているとか。
あとは牧志 が路線にあるとこの周囲の駅名もらうとか?
赤嶺駅……
こんなところに。
あー、久しぶりに六人一緒に会ったからとにかく話がまとまらないと」
周辺の駅名で。
だからって市立病院前とかはナシな」
『那覇・赤嶺・小禄・奥武山・壺川・旭橋・美栄・安里・おもろまち・古島・儀保・首里・石嶺・経塚・裏添・てだこ浦西……』
もう一人の目つきの悪い牧志が続ける。
体格のいい気弱な牧志が、慌てて続く。
体格のいい方の女牧志が最後に決めて、何とかまとまった? らしかった。
ああ、なんだか平和だな。
旭橋のボディタッチの激しさは、気がつくとぴと……っとくっついてきてるでかい小動物タイプかなー、と思っています。
……覚えられっかなー」
それは以前にあなたが渡した手のひらサイズの小さな手帳だ。
予定表がゴッチャにならなくて済む」
Mag節約して帰ってもいいし、ギリギリまで外にいても良いけど、あんま騒ぐなよ」
改めておかえり、牧志」
違うかもしれないと思わず、素直に返事ができる。
そんなことが、久しぶりに嬉しかった。
ややこしいったらないよ」
その様子に笑みがこぼれる。この状況、あいつはどう思ってるかな。
まきしとさくら、ほかになまえある?」
子供は色々なものがブームになるのだ。
スマホで画像を見せてやる。
しまえなが!」
シローは目をキラキラと輝かせた。
五人が去ると、急に辺りが静まり返って感じた。
まだ一人多いはずなのに、友達が帰った後のように室内の間隙が目立つ。
『人間らしい尊厳と自由……』足りてねぇよなぁ」
やっぱり、全員で喋れるのが楽しいんだろうな。カードに戻ってる時どうなってるのか、よく分からないけどさ」
彼女達が『俺』と同じなら、きっと彼女達も好きだったはずだ。
世界が。
その世界を喰らい、侵し、埋め尽くさずにはいられない……。
いや、そうしたかったわけではないのだろう。
佐倉の手が小刻みに震えている。
彼の意思を無視して筋肉が振動しているのだ。
いつものように、佐倉さんを胸元に引き寄せようと手を伸ばす。
あなたに倒れ込むように佐倉は身を委ねてくる。壊れた人形のようにがくがくと震えながら、あなたの胸に耳を当て目を閉じた。
心臓の音に合わせ、ゆっくりと呼吸をする。
名前の話はモチモチとした生き物の前に吹き飛んだようだった。
前日譚2 古島
古島が「いいことを思いついた、試してみたい」と嬉々としてあなたに言ってきたのは。
体の変形を使って? 他の人の体に貼り付くことによって強化できるのではないかという……
それ契約的に大丈夫なのか? というかそれ人の体に貼り付きたいだけでは? という
何とも微妙な提案をされた。
※あなたはその実験に付き合ってやってもいいし蹴ってもいい。
表情から言って佐倉には……内緒らしい。
牧志たち個人名がつくと一気に個人っぽさが上がってきますね。特に本編であまり描写の暇がなかった後の三人。
古島のキャラが実はこっそり派手だったのもあるけど。
人間でいようとしていたように見える彼女たちが、積極的にそういう提案をしてくるのは珍しい。
彼女たちは彼女たちなりに、自分自身と折り合いをつけようとしているんだろうか。そんな気もした。
いや、単純に新境地探してるだけかもしれないけど。
正直ちょっと怖い。あれ無意識みたいだし。ライオンくしゃみしないよな?
でも、気になる。どんな感じなのか、正直気になる。
包んだことはあるけど、包まれたことないし。
それに彼女たちを信じたい気もする。
なんでも安全性のためにちょっと強めの呪いをかけられてるから、サマナー不在時にこの星の生き物に害を成そうとしても無理、なんだとか。
そういえば佐倉がずいぶんと不満そうにそんなことを言っていた気がする。
逃げろ隠れろで済まない場合だってあるだろ。
あいつらだって牧志なんだぞ」
古島さん、体格いいのもあってノリのいいえっちなお姉さんって感じになってきてイイ。
でも、それなら……よかった」
それは間違いなく、俺達とこの星にとっては「安心」だ。きっと彼女たち自身にとっても。
でも、彼女たちだってきっと、俺と同じ因縁を持ってる。
何かに巻き込まれることだって、あるかもしれない。
いや、きっとあるだろう。
世話になっているのだから役立つ方法を模索したい、色々な可能性を探りたい、できることは全て試したい、ギリギリのラインを攻めたい、その結果上手く行かなくなってお仕置きされたらそれはそれで……もとい問題ないのでやらせて欲しい。
……あっけらかんと積み上げる言葉が何故か、なんとなく如何わしく聞こえるのは気のせいだろうか?
うっかり心臓が跳ねた。
何も変なことは言ってないはずなのに、なんだか口調の端々が怪しげに感じる。
生唾を呑んでしまったのは許してほしい。何にか分からないけど。あっちの佐倉さんにかな。
そして首筋にそっと手を沿わせて深呼吸すると、顔を寄せてきた。一瞬、ぬるりとした感覚。
服の下、体の表面を覆うように何かが滑り込んでくる。
変な声出た。距離が近い、近い!
一瞬鼻をくすぐった嗅ぎ慣れない体臭と心臓を侵されるような危機感、それから彼女との距離の近さで心臓がわけもわからず高鳴る。
服の下を這う感触に、あの時佐倉さんにとても悪いことをしてしまったんじゃないかという思いがよぎった。
ぬるぬるされる方になってちょっとあの時(不定形マニアック事件)は悪かったな……と思う牧志でした。
襲われたことに気付いたときにはもう逃れる術はないのだろうと思い知ることになるだろう。
ほんの少し経つと背後の気配は消え去り、あなたの体には少しぬるついた動物の皮を直接纏っているかのような
ちょっとした違和感だけが感じられた。その感覚も、彼女が色々と試しているのかぞわぞわと体表を撫でる感覚が訪れる度に薄くなってゆく。
それ以外、感覚も動きも外から侵されたようには感じない。
その感覚が暫くのうちに全部過ぎ去ってしまったことが、逆に、ああ、これは勝てないなと思わせた。
指先でつまむと皮膚から剥がれて持ち上がった。
そして突然慌てたようにぱちくりし、目が閉じた。
背後になにか気配がある。
佐倉さん帰ってきたな。
慌てて手を振る。
牧志も! んなこと了解するな!
大丈夫かよ体!」
佐倉の叫び声に、腕輪がペカペカと光る。
ぺたぺたと身体を叩く。そう言われるとまずいことを了承したような気にもなってきた。
佐倉の腕輪に文字が表示される。
そういう問題じゃねーだろが!
ばれるとまずいから今すぐ戻れ!
牧志の体もそうだし、
全員の問題になりかねないんだぞ!」
彼女たちに敵意がなくても、もし敵意を疑われたら、その時点で佐倉さんごと焼き尽くされかねない!
個人名がついたことで本格的に独自性が出てきたんだろうなー、と思います。
あとこれ了承するあたり何気に牧志も好奇心強いし。
慌てて体表から彼女を引き剥がそうとする。
引っ張る力にたいしては頑健に、つるりと指先から逃げてゆく。
つまり。
脱げない。
あなたが焦ってそれを掴み直そうとすると、涙目がポツリと浮かんだ。
新たにモニタに表示された文字を見て佐倉が声をあげる。
も、戻れなくなったって!?
呪いがかかってるって言ってたけど、このまま夜になったら……どうなるんだ!?
エラー起こしてる。やべぇな。呪いと変な干渉したのか?
あーもー、せっかくうまいこといってたのに……」
頭をかきむしってあれこれとデータをいじっていた佐倉は、眉根を寄せた。
魔晶ってんだけどさ。
なんかそれみたいな反応になってる。つまり、今古島は悪魔じゃなくて魔器物になってる。
このままなら安定しているから体に害はない。ただ、こうなると戻れない。普通は」
効果は少しの身体能力強化と追加装甲と少しの気まずさと心強さだ!
たまに悪戯されそう
うっかり装備になる? こともあるんだな……」
ごめん、俺も軽はずみだった」
ぐるぐると物理的に回っている目を、上からそっと撫でる。
俺にはどうしようもない。
COMP通して会話はできるし、マグネタイトが少しずつ減ってるから、今回の実体化に使ったマグが切れれば還れるんじゃねぇかな」
だからどうなるかわかんねーしやるなって言ったろ!」
もう出てこられないかもしれないと思うと大変なことだけど、元はと言えば彼女が始めたことでもあるし。ううん。
どう思っていいか分からない。謝るのも変だし悲しむのも変だし、まだそうなると分かったわけじゃないから、とりあえず。
棚に上げよう。
握手するように両手を組んで、声をかけた。
報告はしとかないと……」
頷いて苦笑し……。
ちょっと不味いことに気がついた。
佐倉は、イライラと呟いた。
手の甲で、同じ色の眼がこちらを見ている。
トイレ、行くのか? 彼女と一緒に? ……この手で?
腹の中で葛藤と尿意が渦巻いた。
気まずい思いを抱えながらトイレに飛び込んだ……。
Call of Cthulhu 「青に染色」
――完成したい。
あなたと、ひとつになって。
ここまでくるだけで必死だった。死ぬかと思ったのだ。
自分の体も痛いが、こちらの手当ては終わっている。
それに攻撃を受けたことを考えるなら、この程度で済んだのが不思議なほどだ。
まだ迂闊に動くわけには行かない。
まだあいつらが、突然目の前で人を殺し、こちらにも襲いかかってきたやつらが近くにいるかもしれない。
耐えられなくなって、ひとことだけ名を呼んだ。
あの数時間前が、随分前みたいだ。
死ぬかと、思った。生きている。
それだけを、心に染み込ませる。
俺達はまだ生きている。
佐倉さんは、まだ生きてくれている。
……見つかるわけにはいかない。
音を立てないように、小さく息を吸い、吐く。
怖いと感じてしまう前に、目の前のこと以外を頭から追いやる。
おそらく今あなたの手首で心配そうにあなたと佐倉を見ている小さな目、古島が、いわれなき暴力から守ってくれたおかげだろう。
どう考えても佐倉同様昏倒していたに違いないほどの衝撃のなか、あなたは意識を保ち、逃げ出せたのだ。
自らの手に唇をつけて音が漏れぬようにしながら、小声でささやく。
確かに二人とも随分やらかしたけど、彼女がここにいてくれなかったら、俺達はきっと生きてなかった。
そうだ、いま守るものは佐倉さんだけじゃない。
一緒にいてくれているのは、佐倉さんだけじゃない。
夜間に万一のことがあっては困るので、アッタの店で診てもらった。
彼女の見解も佐倉と同じ。このままなら害はない。マグネタイトが切れれば消えるだろう。再召喚時に悪魔に戻れる可能性は五分五分であろうとも。
「この状態であんまり傷ついたりして、まあ死にゃあしないだろうけど、ショック受けまくって自分の元の姿忘れたら、世にも珍しい喋る魔晶になるんじゃねーの?」
自業自得だ、とアッタはあきれたように鼻をならしていた。
「あんたも分厚い縁負ってるくせに怖いもの知らないね。
無知は罪だな」
あなたにもその目は向けられていたようだった。
そんな投げやりなお言葉をもらい、あなたと佐倉は帰宅することにした。
それでも都会のあちこちに狭間は存在する。
今になって思えば、あれは半分異界だったに違いない。
あまりにも静かすぎ、あまりにも唐突だった。
必死の形相で走る、ヨレヨレのスーツを着た眼鏡の男。彼は小さな医療用トランクのような物を持っていた。
視認すると同時、佐倉はその男と正面衝突をして諸共にひっくり返った。
大音響、そして一瞬遅れて硝煙のにおい。耳が機能を失って頭の中で金属音が響き渡る。
起き上がろうとした佐倉に、眼鏡男がのしかかった、ように見えた。
だがすぐにそれは、彼が撃たれたためだと気付く。
更に二発、三発と銃声。銃弾はあなたをも狙っている。
眼鏡男は驚くべきことに銃を取り出し、攻撃者の方に向け、撃った。
それからはもう目茶苦茶だった。
あなたも退路を求めて周囲を必死で観察した。
さしもの悪魔も数に押されて消滅寸前だ。
佐倉は悲鳴を上げ、男が持っていたケースを盾代わりに、身を守ろうとした。
ケースが壊れ、中から何か液体が飛び散り、佐倉に降りかかった。
そんな状態だというのに、あなたはいまだ動くだけの力を残していた。
あなたは眼鏡男が持っていた銃を拾って応戦しながら、
佐倉の悪魔が消滅する寸前にその場から逃げ出した。
目の前で飛び交う銃弾。銃声。
その一発でも当たれば死ぬかもしれない。
とにかく無我夢中だった。
佐倉さんが撃たれたことに叫ぶ間もなく、みるみるうちに事態が悪化した。
目の前で人が死んだことを考える余裕なんて、あるはずもなかった。
必死に佐倉さんを守ろうとした。生きようとした。
佐倉さんの悪魔がぎりぎり消滅していなかったことだけで、佐倉さんが生きていると信じた。
……死にかけたことを深く考えるのはやめよう。恐怖がまた来かねない。
手当てをしながら、佐倉さんの様子を確認する。
真っ白になった顔は冷たい。
さっき全身に被った液体は既に乾いている。
その瞼がぴくりと震えた。
叫びそうになるのを堪え、小声で呼びかける。
液体は乾いているようだが、何か痕跡は残っているだろうか。
1d100 61 〈医学〉 Sasa 1d100→ 39→成功
1d100 61 〈医学〉 Sasa 1d100→ 7→成功
1d100 61 〈医学〉 Sasa 1d100→ 68→失敗
数時間経ってるかな。
経過時間がちょっと縮みます。
では、〈応急手当〉だったことにさせてください。
あのトランクに入っていたのは何だったのだろう?
今はもう痕跡がほとんどないが、青っぽい液体だったように思う。
そういえば……逃げ出すときに背後で、追っ手が佐倉の外見情報を叫んでいたように思う。
1d100 98〈目星〉 Sasa 1d100→ 30→成功
小声で呼びかける。
どこだ、ここは……」
周囲に何があるか把握しているだろうか?
無我夢中で逃げ出してここに来た?
外の様子を見るのは容易である。
まだ夜明けは遠く、外は暗い。
外に何があるかは良く分からない。
あの後……」
今までの経緯を手短に話す。
追われてるかもしれない、いや、たぶん追われてる。
何かの液体をかぶったこと、覚えてる?」
佐倉は呟いて、自分の手を見つめた。
佐倉視点(ネタバレ)
ピリピリと電気のように指先に痺れが走った。
それと同時に、気づけばあなたは牧志の首に腕を伸ばしていた。
説明できない、衝動のままに。
他ならぬ、佐倉に。
1d100 75 【POW】判定 Sasa 1d100→ 76→失敗
あなたはその奥に、燻る欲望を見た。
何が起きたのか分からないまま、咄嗟に押し返そうとする。
その眼を覗き込みながら押し返す。
一瞬凍った佐倉はあなたの顔を見て混乱を来したようだった。
息を呑んで手を放す。
今回はややこしすぎる新しい仲魔たちの名付けから始まります。
色々な都合で前回の話『俺の恋人が庭からボコボコ生えてくるんだが!?』の完全続編になっちゃってしまった話。
今回は本筋は変わらないとはいえそこそこアレンジ多めだったりするので、実際に回す際の参考にはしないでくださいね!
【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
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PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」