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こちらには『あのこが巨大化するシナリオ』
のネタバレがあります。

牧志 浩太

お人好しで温厚、だが意思は強い好青年だったが……。
とある事情で二年より前の記憶の大半を失い、代わりに悪魔使い波照間紅の記憶を持っている。
首から胸へと続く奇妙な【契約】の痣がある。たまに痛むという。
生贄体質らしく、事件に巻き込まれることが多い。

少し前に狂気に冒され、自分が不定形の化け物であり、自分の心や意思も化け物の模倣ではないのかと恐れるようになった。

佐倉とは友人。


佐倉 光

サマナーで悪魔退治屋。ハッカーでもある。
基本、知性・理性・効率、そういったものを重視する冷静な青年。とある事件より、体中の痛みに悩まされている。
基本悪魔を召喚して戦うが、悪魔との契約のカードを使ってその力を一時的に借りることもできる。
最近、牧志そっくりの異星人……の記憶を保持する物体X六人との契約を行った。

巻き込まれ体質らしい。
最近いきなり起きる不随意運動に悩まされている。牧志の心音を聴くと精神が安定するためか治まる。
また、一日前に大変な目に遭った結果新たな狂気に冒され、自分が佐倉光のコピーであり、本物は様子がおかしくなってしまったと思い込んでいる。

牧志とは友人。


とある事件以来、特殊な事情のため二人が面倒を見ることになった少年。
超美形で類い希な理解力と知性を有する。
年齢は7歳程度。生育環境が特殊だったため、一般的な教育を受けていないので、言語が年齢の割に幼い。最近になって急に一般的な生活を送り始めたので、外界への興味が強い。


少し前に現れた6人の異星人。佐倉と契約して彼の仲魔として存在している。
その正体は、何にでも変身して喰らい殖える不定形生物だったが、事故により『人間』としての意識を持ち、増殖を抑えてこの星での人間との共存を試みている。
古島はそのひとり。




『デカァァァァァいッ‼ 説明不要🗼』
  ―― Call of Cthulhu 6th『あのこが巨大化するシナリオ』

 待鳥ちあま 様


KP
よろしくお願いします。
佐倉 光
よろしくお願いします!
牧志 浩太
シナリオ本編に入る前に、少し前話『青に染色』の後日談をやろうと思います。

本編とは雰囲気が異なるでしょうし、あちらのネタバレがバリバリに入るので、リプレイではそこだけ閉じるなどしてやってください。
お手数をおかけします。
佐倉 光
はーい!
楽しみ!

前日譚(『青に染色』ネタバレ)
KP
化け物のあなたは、牧志に担がれて自宅へ戻ってきた。

疲れ果てて血液を失った肉体を泥のように横たえ、眠りについた翌朝。

判然としない眠りの中で、青に溶けた夢を見た。拘束されたまま隙間からはみ出して無限に広がる。
牧志を呑み込んで研究所を呑み込んで星を呑み込んで……、 あなたはこの星そのものになっていた。

目が覚めるとあなたは自室のベッドの上にいて、拘束されてはいなかった。
あなたは人の形をしていて、巨大ではなかった。
佐倉 光
「ひっでぇ夢」
多分あの夢は俺に食われて死んだな。
汗をぬぐってカーテンを開けて指先を確かめる。
あんなことになるなら拘束を受けていた方がまし?
いや、どっちもごめんだな。
つーか不定形生物に拘束衣だのベルトだのって意味ねーだろ。俺が変異した後どうする気だったんだあいつら。
佐倉 光
人であるために枕元の薬を取って口に含み、飲み下す。
佐倉 光
俺は真の意味では佐倉光ではないかもしれないが、人間なのだ。
俺は人間でなくてはならない。
そして佐倉光は死んでいない。ここに間違いなく生きている。

俺は一生、その存在が地続きではないという真実を口にしなければいいだけだ。
悪魔をだまくらかすのと大して変わらないだろう?
佐倉 光
いつも通りにシローに声をかけて部屋を出て、コーヒーメーカーのスイッチをいれて手洗いにゆく。
牧志 浩太
洗面所の前に、恐れた眼で水道の栓をじっと見つめる牧志がいた。
佐倉 光
何やってんだろう? と後ろに立ち止まってじっと見てしまう。
牧志 浩太
ままよ、と息を止め、強く目を瞑って顔を水流にさらす。
佐倉 光
顔が水から上がったら
佐倉 光
「なんか落としたのか?」
と訊いてみよう。
牧志 浩太
ぴくりと肩が動いて、当然のように牧志は背後に立つあなたの存在に気づく。

乾いたタオルで顔を濡らす水をしっかり拭いてから、止めていた息を吐いて振り返った。
牧志 浩太
「ああ、なんでもない。
あの時にやられたせいで、ちょっと顔に水かけるの怖くてさ。
人間って、顔に濡れた布乗っけただけで溺れるんだな」

ネットで様々な知識を漁るあなたは思い当たるかもしれない。彼が何をされたのか。
佐倉 光
「……ああ」
佐倉 光
人に力ずくで言うことを聞かせるために行われる、あまりにも簡単で非道な行為だ。
やる方の心理的負担もそう高くはない分最悪のやつ。
牧志は昨日『ウォーターボーディング』という拷問を受けている。
佐倉 光
「しばらくギャッ○ビーなんかで顔拭いて済ませたらどうだ?
面積が少なければマシかもしれないしさ」
牧志 浩太
「大丈夫、今更引きずるのも癪だし。
シローのシャンプーハットあんまり借りてるのも何だしさ」

借りたらしい。そういえば髪を洗った跡があり、シャンプーハットが風呂の前に干してあった。
シロー当人は使わなくてもいいのに、水の音が好きらしくちょくちょく使うやつだ。
佐倉 光
「あいつは死んだんだ、もう大丈夫」
気休めではあるがそう声をかける。あいつが死んでいようと怖いものは仕方ないよなぁ。
牧志は俺を助けるためにそんな目に遭ったんだ。
いや、その時点じゃ俺じゃなかったのか?

考えないことにしよう。俺は俺。俺は佐倉光。
牧志 浩太
「ああ。大丈夫」
牧志は自分に言い聞かせるように、少し歪に笑った。

そうして、偽物のあなたの一日が始まる。

KP
偽物のあなたは、人間のように食事を摂る。
あなたがあなたであると信じ切って、牧志は、シローはあなたに笑いかける。

あなたがそうしようと手を伸ばせば、何もかもあの青に埋めてしまえるに違いないのに。

知ったら、彼はどう思うのだろうか?
あなたを願い、あなたのために怒り、あなたのためにあれだけの苦痛を厭わなかった彼は?
その怒りをあなたに向けるのだろうか。
あなたの腑を裂き、本物の彼を取り戻そうとするのだろうか。
自ら『佐倉さん』を殺してしまった自身を呪い続けるのだろうか。

それとも、あなたを望んでくれるのだろうか。
佐倉 光
自分は人工生命体Xを切除して貰い、薬を飲んでいるのだから人間だ。
食事をしたからってあの青が再び手から湧いて出るわけではない。

COMPは俺を佐倉光、人間と認識して悪魔召喚の業を繰る助けとなってくれる。
時折エラーが出るのは人工生命体Xの侵食により破片が体内に残っているためだ。
それは決して俺が今、人間どころか自分を偽ろうとしている悪魔だからではない。


なんとなく食欲が出なかった。

俺が俺であれば何の問題もなかったはずなのに、
どうして俺はこんなに自分が偽物かどうかなんてくだらないことを気にしているんだろうな?
牧志 浩太
「……? もう食べないのか?」
牧志は心配そうにあなたの顔色を見る。
佐倉 光
「昨日あんなことがあったから少し体調が悪いだけだと思う。
悪いな、後で食べるよ」
食事の残りにラップをかけて冷蔵庫に入れる。
佐倉 光
「今日は警察の手伝いがあるし、夜は自分で何とかするから気にしないでくれ」

思っていた以上にきついな、この矛盾は。
牧志 浩太
「そうか、分かった。
じゃあシローの分だけ用意して、俺も友達と呑んでくるかな」

牧志はあなたにそう告げて、家を出ていった。

シローも今日は出かけていて、ふと寒さが降りたような空間に、あなたひとりしか息をするものはなかった。
佐倉 光
PCに向かっていると余計なことを忘れてゆく。
一人であれば問題はない。
ここには俺である俺しかいない。

キーボードとモニターを通して憂さ晴らしをする。
今後のためにも徹底的に。
猟犬みたいに例の掲示板の管理者を割り出して、情報を警察に投げる。
あとはあいつがやってくれるだろう。

気付いたら部屋が暗くなっていた。
牧志 浩太
その日牧志は一度シローのために戻ってきて、それからまた出かけ、深夜になる前に帰ってきた。

最近の彼はそういう時でも、完全に人通りが途絶える前に帰ってくる。
……大学で色々な噂が立っているとかなんとか。
KP
徹底的に憂さ晴らしをしていると、気づけば一日が終わっていた。
佐倉 光
残してあった食事を食べる。

仕事が終わって気持ちが落ち着くと、何となく朝の様子を思い出した。
佐倉 光
そういえば牧志、なんかおかしくなかったか?
水への恐怖心のせいだと思ったけど、それだけでは説明がつかないような気がする。

牧志は今どうしているんだろう?
牧志 浩太
「ただいま……」
気づくとすっかり夜も遅くなっていた。
どうしているだろうか、と考えたタイミングで牧志が帰ってくる。

少し酒の匂いがしたが、酔っ払っているという程ではない。
眠たそうなのは、単純に体力が戻りきっていないのだろう。
佐倉 光
「おかえり。こっちは終わった。
体調おかしくないか?」
探るように声をかける。
牧志 浩太
「ありがとう、お疲れ様」
牧志 浩太
「体調……、悪くないけど眠いな。思ったより体力戻ってないみたいだ、ふわぁ……」
牧志は大きく欠伸をする。
腕の何もない所で、何かを掬い上げるような仕草をしたのが見えた。
牧志 浩太
「ごめん、眠い……。おやすみ……」
牧志 浩太
眠そうに言うと、辛うじて歯磨きだけを終わらせ、自室へ続く扉の前で崩れ落ちてしまった。
扉に縋り、ずるずると脚で這って室内に入っていく……。
佐倉 光
「ん? え、おい牧志? 酔ってんのか?」
ここまで泥酔しているようには見えなかったのだが。
肩を貸してやろうと手を差し出して引き起こす。
牧志 浩太
「ああ、ごめん、ちょっと×△○……」
よっぽど眠いのか、何を言っているかよくわからない。
あなたに肩を貸してもらい、だらりと無防備に体重を預ける。
そんなに酔っている、と思う程強い匂いはしなかった。牧志を泥酔させるなら相当量の酒が必要なはずだ。
佐倉 光
ベッドに転がっている牧志を見下ろして首を傾げる。

珍しいこともあるものだな。
よほど美味い酒でも飲んだんだろうか?
牧志 浩太
牧志は両手をだらりと垂らし、広がるようにして寝息を立てている……。
佐倉 光
俺も眠くなってきたし、早めに寝よう。
KP
その様子を見送って、あなたも眠りについた。
随分カオスな夢を見た気がする。

その夢の中であなたは小さくなって瓶の中に入れられ、さらに小さくなって牧志の肩によじ登り、もっと小さくなって耳の穴に入って、出ようと迷っていたらうっかり脳味噌の中に入ってしまったのだ。

脳の中は生暖かく、柔らかくて、絶えず光が瞬いていた。
折角だから牧志の脳の中に散らばった恐怖や痛みをひとつひとつ拾い集めて歩いていたら、気がつくと朝になっていた。
佐倉 光
奇妙な夢を見た。
両腕一杯にトゲトゲした痛そうなものを拾い集めて、なんとなく囓っていた。
さすがにこんなの全部食べられないな、と思った瞬間に目が覚めた。
そういえば牧志が、夢の中で物を食うと目が覚めるとか言ってたな……
食べようとしたら、だっけ?

KP
目を覚ますと生暖かい温もりは牧志の脳ではなく、使い慣れた自室の寝床のものだった。
随分よく寝たらしく、身体も思考も澄み渡っている。

いい朝だ!
あ、昼だ。思った以上に寝てしまったようだ。
KP
※佐倉さんの一時的発狂(長期) の影響が解除されます。
佐倉 光
驚くほどに頭がすっきりしていた。
自分の頭の中に積み上がっていた物まで拾い上げて食い尽くしたように。
佐倉 光
何だろう。どうして俺は昨日まであんなに悩んでいたんだろう。
何をどう考えたら俺が偽物って話になるんだよ。バカみたいだ。
くすくす笑ってしまう。
捕まったのは俺、血を採られたのは俺、COMPだって俺だって判定している。
そもそも俺が偽物になる隙も、あのガキが本物になれる流れもなかっただろうが!
一回でも真面目に考えたことがあったのか?
バカだな。バカすぎるだろ?
マジで何か住み着いてたんじゃないのか!?

笑いながらリビングに出る。
KP
「おはよう! あれ? さくら! さくらげんきなった?」
シローが嬉しそうにあなたに駆け寄る。
牧志 浩太
「おはよ……、うわ、ものすごく上機嫌。え? どうしたんだ、何かいい情報キャッチしたとか?」
牧志は片手で菜箸を手にして、卵焼きを焼いていた。
佐倉 光
「ハハハ、いやぁ、ほんっっと、信じられないんだけどさ!」
笑いすぎて泣いている。
佐倉 光
「俺、昨日まで、もしかしたら自分がコピーの佐倉なんじゃないかって悩んでたんだよ!」
牧志 浩太
「えっ? ……もしかして、あの時言いかけたのそれ!?
ごめん、全然気づいてなかった……、えっ、でもどうしてそうなっちゃったんだ。俺ならまだしも」
佐倉 光
「どうしてかなんて俺が聞きてぇよ! 何考えてたんだ昨日の俺!」
佐倉 光
「コピーの俺の方が本物だと思ってたから、
本物がおかしくなって化け物になって死んだのかと思って、めっっちゃくちゃ悩んだんだよ。
縛られたのが俺で、血を抜かれたのが俺で、マザーにされていたのも俺なのに、
それでどうして偽物だなんて思い込んだんだろうな!?」
笑いすぎて呼吸困難になっている。
牧志 浩太
「そうだよ。佐倉さんは佐倉さんだ。
あれは佐倉さんじゃなかったよ、全然。全く。
それどころか、心すら持ってなかった。それっぽく鳴くだけの奴だった」

牧志はあなたに近づき、背を抱くようにして笑い過ぎてむせているあなたの背をさする。
佐倉 光
「縛られたストレスでおかしくなっていたとしか思えないな!」
ゲラゲラ笑って、涙を拭いて、息を整えて、しみじみと呟く。
佐倉 光
「俺、自分が偽物だろうと悪魔だろうと構わねぇって思ってたんだ。
そんなの今生きている俺が俺のために生きていればそれでいいってな」
佐倉 光
「けど、なんでだろうな、あんなふうになっていても
やっぱり牧志は『本物』のほうが良かったんじゃないかって、思ってさ」
牧志 浩太
「ああ── そういうこと」
あなたの背を抱いて、牧志が微かに笑った気配がした。
牧志 浩太
「言っただろ? 俺が一緒に居たい佐倉さんは、この佐倉さんだって。
あれ? あー、口に出してなかったかもな。

でも正直、あいつと一緒に帰りたいとは思わなかったからさ。
あいつの中には本当に……、何もなかったから。
もし、佐倉さんだったものだとしても、本当に、何も。

で、もし佐倉さんがコピーだったら、先輩になんとかしてもらおうと思ってた」
ぶん投げた結論をあっさりと口にして、牧志は微笑んだ。

ん?
自分の好きな方連れ帰る、とでも言っているに等しいのではないか。どうやらこの相棒は危ない。
佐倉 光
「そーゆーヤツだよお前は!」
しってた。
大体人間自分に見えるものを判断材料にするしかない。
どこまで行ったって結局は「自分が選んだもの」を信じるしかないんだ。
佐倉 光
「それも知っていたはずなのに、俺は何を悩んでいたんだろうな……」
牧志 浩太
「疲れてたんだよ、きっと」
牧志はそっと手を離し、卵焼きをフライパンから上げて皿に盛る。
佐倉 光
「そうだな、そりゃああんな目にあったらおかしくもなる」
牧志 浩太
「だろ。よし、それじゃ朝飯にしよう。
今日の卵焼きは古島さんリクエストのスパイスましまし卵焼き」
佐倉 光
「おっ、うまそーだなぁ! ってそうか、古島喚びっぱなしだった」
佐倉 光
「出る度に普通に食う分には問題ないし、それで多分半年くらいで元のサイズまで戻るだろう、ってさ」
牧志 浩太
「よかった。
シローと一緒に遊んでるのも楽しそうだったけど、やっぱり不自由はあるだろうしさ」
古島
「おっ、美味そう! ありがとう、いただきます」
背格好に似合う服を着た古島が、あなたの横に並んだ。嬉しそうに手を合わせる。
佐倉 光
「サンキュ、いただきます!」
卵に箸をつける。
牧志 浩太
卵焼きは……、美味しいが、辛い。じんわり辛い。結構辛い。
古島
古島はぽろぽろ涙をこぼしながら、嬉しそうにそれを食べている……。
佐倉 光
「辛」
佐倉 光
「辛いけどうめぇ!」
遠慮も悩みもなしに食べる食事は、最高に美味だった。
牧志 浩太
「熱い熱い痛い痛いけど美味い、古島辛いの好きだったんだ?」
古島
「流石にこの姿であれやるの我ながら罪悪感出ちゃって。美味しい」
牧志 浩太
「あ、ああ。そういうこと、代わりの刺激。うーん……」
牧志はなんだか複雑な顔をした……。
佐倉 光
「あれって何」
牧志の表情からただならぬ物を感じた。
古島
「ああ。服の下に」
牧志 浩太
「あーあー、ストップ。ここにはシローもいます! 教育に悪い!」
KP
「わるい?」
シローが不思議そうな顔をした。
なお、シローの分だけは辛くないのにしてある。
佐倉 光
「? へー?」
後で訊こう。仲魔の状態は把握しておくべきだ。

……訊いた方がいい、よな? プライバシーの侵害だったりするのか?
今回は本人が言おうとしていたからいいとしても、言いたくないようなことなんかも当然あるだろうし……
佐倉 光
なんとなく難しい顔になってしまった。
牧志 浩太
何となく難しい顔をする二人。
仲魔のプライバシー問題とは……。
佐倉 光
個性エピかーと思ったらなんか闇深かった。
KP
ということでした。
まあ、エンジェルさんと同じようなものといえばものかもしれない。(エンジェルさんに怒られそう)

KP
そんな風にして、日常を取り戻したあなた達の日々は過ぎてゆく。
毎日一錠ずつ飲む薬とともに。

古島の服の下については、改めて聞いてもよいし、聞かないことにしてもよい。
佐倉 光
一応訊いて、訊かなきゃ良かったかなとちょっぴり後悔したりした。
そんなあれこれの衝撃で、牧志の様子が少し変だったことは忘れてしまっていた。
KP
そうして、二週間ほどが過ぎた。
ようやく牧志が水を怖がることもなくなり、一日一度の薬も習慣になってきた、そんな夜。

KP
あなたは風邪を引いていた。

咳が出る。いつもの痛みとは違い、節々が痛む。体は熱っぽくだるい。
動けないほどではないが、いつもの痛みと合わさると大層わずらわしい。
牧志 浩太
「災難だったな。何が食べたい?」
牧志はそんなあなたを、横で看病してくれていた。
佐倉 光
基本うつしたり体力使ったりしないように閉じこもって寝て直す、というアクションになるけど問題ないでしょうか?
KP
それで問題ありません。
佐倉 光
「食欲ねーんだよな。
インゼリーと水買ってきてくれる?」
頭が働かない。こういう時は寝てしまうに限る……
佐倉 光
「あーあと、サトミタダシに『ディスシック』あったら確保しといて……」
牧志 浩太
「分かった。探しとく」
KP
あなたは、大人しく寝ることにした。
こういうのはさっさと寝て直してしまうに限る。

不快な熱に弛んでいく意識の中、牧志が傍らを離れる気配を感じた……

佐倉は不思議な蜘蛛の夢を見て目覚めた。
佐倉 光
……変な夢だな。
何かどっかで覚えのあるような光景だ。なんだっけ?
時間を確認して、枕元にあった水を飲む。体調はどうだろう?
KP
瞼の裏側に、爽やかな朝の光が射し込んだ。
その刺激であなたは目を覚ます。

十分眠ったからだろうか、体調はすっかりよくなっていた。
昨日の熱っぽさも怠さも、頭にかかった霧も晴れて、最高に普段通りのあなただ。
枕元に置かれた水を飲めば、水分が心地よく喉を滑り落ちてゆく。

頭上に見える青空も晴れやかで、今日はきっと、いい天気になるのだろう。
佐倉 光
伸びをしてすっかり凝り固まった体を動かしながらリビングに出る。
そういえばX牧志連中昨日出してやれなかったな。

牧志やシローはいるだろうか?
KP
「さくらおはよー」
シローが元気よく手を振る。
リビングは朝の光に照らされ、優しい雰囲気を湛えている。

おや、牧志はいないようだ。
KP
そういえば昨日はあなたの看病をしていたし、疲れてまだ寝ているのだろうか?
KP
「さくらげんき? げんきなった?」
シローが心配そうにあなたの顔を覗き込む。
佐倉 光
「ああ、すっかり良くなったよ。
シローはうつったりしてないか?
腹減ったなー。何かあるかな……」
佐倉 光
食料棚ゴソゴソしてすぐ食べられるような物を探す。
KP
「よかった! たべる?」

食料棚には自分達向けのカップそばや缶詰、レトルトのほか、シローのための品々もある。味噌と一緒にお湯注いで食べると美味しい分厚い鰹節も健在。
この家には何かと備蓄されているのだ。

今のあなたはすっかり体調を取り戻し、何を食べることもできるだろう。
KP
シローが一人きりで家に残されてもしばらく食いつなげるだけの食料と水、絶対用意してるよなーって。
あと自分達が籠城する羽目になったとき用。
佐倉 光
それはそう。
佐倉 光
「牧志は? まだ寝てる?」
KP
「まきし? まきしおきてる」
シローは頭上に広がる青空を、その小さな指で指した。
佐倉 光
「ん?」
上? 釣られて窓の外を見る。
KP
半分開いたカーテンの向こうには、爽やかな朝の空と街並みが広がっている。
KP
〈目星〉で判定。
佐倉 光
1d100 98〈目星〉 Sasa 1d100→ 40→成功
KP
風が吹いてきて、カーテンを内側から巻き上げた。
……一瞬見えた風景が何だか変だ。
何かに半分覆い隠されているような。
佐倉 光
外壁工事でもやってんのかな、そんな通知は来ていなかったはずだけど。
缶詰を手に持ったまま窓に近づき、見上げる。
KP
見上げると、そこには何かが存在していた。
何か……、何だろうこれは。呼吸するようにか脈動するようにか、時折微かに動く、布のような質感の何か……。
KP
その布のような何かが、窓の外を塞いでいる……。
佐倉 光
「……ん? なんだこれ?」
ブルーシートの類いじゃないな。
窓を開けて上をよくよく見てみる。
KP
からからと音を立てて窓が開く。
ベランダに出ると、あなたの視界に巨大な布のようなものが覆い被さった。
何だか生暖かいような熱を、その向こうから感じる。
佐倉 光
なんだこれ生き物? そんな馬鹿な。
佐倉 光
「牧志はこの上にいるのか?」
振り向いてシローに問いかける。
だとしたら結構な大事件じゃないか。
COMPに触れてスキャンだ!
みんなしってる
佐倉 光
ダークウェブに写真は流れるわ 7人同じ顔でゾロゾロするわさらには巨大化か。
有名人だな牧志!
KP
すっかり街の有名人ですね! 狙われ度合いが上がっちゃう!
佐倉 光
はっ。この状態の牧志からなら血がいっぱいとれる!
KP
はっ! そういえば!
針通らなさそう。
佐倉 光
バカデカ赤血球がとれる。
KP
赤血球の上でジャンプできる!
さすがに赤血球は50倍になってもまだ0.0005ミリメートルくらいにすぎないので目には見えなさそう。

KP
「? うん。まきし」
シローはあなたが慌てているような様子を不思議そうに、小さな首を傾げた。
KP
COMPに触れてスキャンをかけると、 [ HUMAN ] [ 邪神 ] という反応が返った。
この上にいるだろう牧志に反応しているのだろうか?
佐倉 光
その巨大な物をよくよく観察して、動きがないようなら声をかけてみよう。
佐倉 光
「牧志!?」
KP
その布は見たことのあるような色をしていた。妙に見覚えのある色であなたの視界を占めている。

あなたが声をかけたその時、微かに動いていただけだったそれが、びくりと大きく震えた。
その内側にある肉の弾力があなたの頬に押しつけられ、いよいよそれが、布のような何かに包まれた巨大な生き物の肉だと分かる。
牧志 浩太
「佐倉……、さん」
遥か頭上から牧志の声が降り注いだ。上から叫んだのだろうか、涙声の割に大きな声だ。
デカァァァアイ!
KP
これ身長50mくらいあるらしいんですよ。デカァイ。
佐倉 光
ウルトラマンよりでかい!?
ウルトラマンは40mである。
KP
そう。ここまでデカァァァアイと人体のあらゆるものが巨大になって佐倉さんに迫ってきそうだなって。
はっ、牧志の心音もデカァァァアイ!?
佐倉 光
なるほど!!!
それは一度聴かなければ。
KP
ぜひぜひ。
佐倉 光
胸ポケットとかあればそこで暫く埋まってたいなw
KP
あっそれ面白い。では今回はある服着てたことにしましょう。
佐倉は狂気の発作が起きた場合、牧志の心音を聴くとおさまる。
KP
超どんぶり勘定ですが、指の長さが約7cmとして、30倍(50m/1.7m)なら210cm。指だけで2m。(掌含まず)
佐倉 光
手のひらで大の字になれるなぁー
KP
大の字になれるし手のひらの上に座れる。

佐倉 光
「まき……」
佐倉 光
「し……?」
否応もなく理解させられる。これは異常事態だ。
佐倉 光
「どうした? どうなっているんだ!?」
佐倉 光
「牧志ー!? そこにいるのか!?」
牧志 浩太
「佐倉さん……、俺、俺、俺ぇ、食べちゃった、食べちゃったんだ」

壺川の声を思い出すような情けない涙声が降ってくると共に、ぼとりと頭上から大きな水滴が襲ってきた。

……少ししょっぱい。
KP
ようやく、薄々分かるだろう。
牧志がそれの上にいるのでは、ない。

見慣れた色は牧志のズボン。
生暖かい肉は牧志の肌。

あなたが触れているのは──
途方もなくデッカくなってしまった、牧志なのだ。
本編見る!
KP
何だこれ。
SANチェック》。
佐倉 光
1d100 50 Sasa 1d100→ 85→失敗
1d3 Sasa 1d3→3
SAN値 50 → 47
KP
その衝撃でついでにいつもの痛みチェックどうぞ。
佐倉 光
1d100 30 痛みCON Sasa 1d100→ 63→失敗
HP 10 → 9
佐倉 光
「うう……」
体の関節全てが痛み、ばらばらになりそうになる。
全身が引きつって呼吸がまともにできないほどの衝撃がはしる。
ベランダに座り込んでうめき声を上げる。
佐倉 光
「げん じつ か? これ はっ」
牧志から事情を聞きたいのに体が痛みひきつり、まともな思考をも妨げる。
牧志 浩太
「さ、佐倉さん……!」
牧志はあなたに手を伸ばそうとしたのか、目の前の巨大な肉体がゆらりと動いた。

巨大な指が目前に迫り、触れようとして躊躇う。
あまりにもあまりの、大きさの差。
KP
あなたを拳で握りつぶしてしまえるほどの大きさに、本能的な恐怖を覚えてしまうだろう。

SANチェック》。
佐倉 光
1d100 47 《SANチェック》 Sasa 1d100→ 94→失敗
SANチェック》 47 → 46
佐倉 光
悪魔は見慣れている。
それにしてもここまで巨大なものとなると初めてだ。
というか牧志? だよなこれ?
さすがに本能的に来るものがある。
体の震えが止まらない。頭ががんがんする。
相手が牧志である、という認識とは全く無関係に奥歯がかちかちと鳴る。
牧志 浩太
座り込んでいてもなお巨大なそれは、巨大すぎてここからは頭部がよく見えない。

先程見えた穏やかな窓辺は、ベランダの窓をいっぱいに占める生き物の、座り込んだ脚の間から辛うじて覗いていたものなのだと、あなたは気づいてしまうだろう。
佐倉 光
「な なに があ」
駄目だ、喋れない。
佐倉 光
「し しし しんん」
必死で振動を止めようとするように自らの胸を押さえ込む。

話を聞いて助けてやらなきゃいけない時に、なんてザマだ。
佐倉 光
自分で何とかする必要があるようだったら3分ほどほっといてくれれば治る。
KP
大丈夫です。牧志が頑張って摘まみ上げる。
牧志は座り込んだまま無理な姿勢でなんとか顔を近づけようとして痛い痛いしています。背筋、いたい!
牧志 浩太
「さ、佐倉さん」
牧志の肩がびくりと震えたように、遥か頭上遠くで見えた。

ぎしりと巨大な骨が鳴る。何かがあなたの視界に近づいてくる。
それは巨大な顔だった。その中に浮かぶ、これまた50cm近くある巨大な眼が、目を眇めて必死にあなたを見ようとしていた。
牧志 浩太
「い、いた、痛……、」

頭上から響く牧志の呻く声。ぬう、と迫る指先が、不随意運動の中に埋もれていくまま抵抗できないあなたの身体に近づく。
佐倉 光
何をしようとしているのか何となく想像がついた気がする。
手を握り、体を丸め、腕や足を縮めるように努力する。
震えるのは不随意運動だけではなく、恐怖も確実にあると認めざるを得なかった。
佐倉 光
丸太のような指だぁ。
佐倉のサイズは小指くらいかな。
KP
小指の長さが大体6cm、30倍だと180cmだから、まさにそれくらいですね。
KP
あなたの背に指先が触れた。
何度か慎重に感触を確かめ、頭部に触れないようにあなたの胴体を摘まむ。
牧志 浩太
「ごめん、佐倉さん」
佐倉 光
大きな力に身を委ねる。
いや、恐怖で動けないだけなのかも知れない。
慎重につまもうとする感覚に、「やっぱり牧志だ」と思ったり、「そうは言っても簡単に潰れそうだ」「それを恐れるあまり、つまみ上げたところで力を抜きすぎたら」という恐怖が混じり合って変な笑いが盛れた。笑いは不随意運動で歪んでわけが分からない引きつったような声になった。
KP
突然の浮遊感。
ふわりと身体が浮き上がった。
ベランダの地面が遠ざかっていく。

あなたは巨大な指に支えられて宙に浮かぶ。

巨大な指以外にあなたを支えるものはなく、少しでも力が強くかかればあなたの内臓は無惨に潰れ、少しでも手が滑れば……。

幸いそのどちらも起きることはなく、あなたはまず巨大な掌の上に乗せられる。
あなたを潰す心配がなくなったことにか、牧志は小さく息をついた。
佐倉 光
掌に乗ったとき、思わず自分が息を詰めていたことに気付く。
佐倉 光
「お おおお オオ」
鼻息でも吹き飛びそうで怖くて、手の皺に指先を引っかけた。
牧志 浩太
「……」
風があなたの髪を揺らした。
あなたを掌の上に乗せたまま、牧志が数度深く呼吸をする。
KP
不意に生暖かい地面が動いた。
再び襲う浮遊感。
掌ごと、あなたの身体が上に移動させられてゆく。

見る余裕があれば、巨大なシャツの壁の向こうに胸ポケットが見えるだろう。
牧志はもう片方の手でポケットを探り、穴がないことを確認している。
KP
指先が再びあなたを摘まむ。
眼下にお椀状に曲げた手が添えられてこそいるが、緊張に耐え切れなくなってか、指先が微かに震えていた。
その振動が直接あなたの身体を揺さぶる。
佐倉 光
胸ポケット?
震える視界で辛うじてとらえ、再び緊張のあまり息を詰める。
何を考えているんだ? どこかへ移動するのか?
あまりにも高い視点に頭の芯がぐらぐらする。
牧志 浩太
牧志は慎重に息を整えながら、あなたを胸ポケットへ近づけているようだった。
あなたの目前でポケットが広げられ、そして──

指が離された。
KP
落下の感覚はなかった。
あなたは布で包まれた狭く、微かな湿り気のある、生暖かい空間に着地する。

どくん。
目の前の生温かい壁から、聞き慣れたリズムの音が聞こえた。いや、あなたの全身に響いた。

どくん。
緊張の残滓で少し速いそれは、牧志の心音だ。
あなたは心音に包み込まれていた。

外の様子が服の縫い目を通して、ぼんやりと透けて見える。
微かな圧迫感と、体温と、心音があなたを包み込んでいた。
佐倉 光
ああ、そうか。
俺が発作を起こしていたから、気にかけてくれたんだな。
でかくなってもやっぱり牧志は牧志だ。

心地よい振動が満たす空間に身を委ねる。
胎内とはこんな感じなのだろうか、とぼんやり考えながら少しの間目を閉じた。
佐倉 光
KP、提案ですが、これを〈応急手当〉または〈医学〉扱いで回復できませんか?
全身温めるマシンに入ったみたいなヤツ。
KP
お、いいですね。OKです。
牧志が〈応急手当〉を試みた扱いとします。
KP
1d100 59 〈応急手当〉 Sasa 1d100→ 92→失敗
1d100 61 〈医学〉 Sasa 1d100→ 48→成功
1d3 Sasa 1d3→3
佐倉 光
HP 9 → 10
佐倉 光
振動がマッサージになったんだきっと。
牧志 浩太
牧志が鼓動を落ち着けるように、緩やかに呼吸をした。
全身を包み込む体温と緩やかな振動が、あなたの不随意に跳ねる筋肉に染み込み、痛む身体を緩めていく。
佐倉 光
一瞬眠っていた。
暖かさに包まれていると、体の痛みが抜けてゆくようだった。
いつまでもこうしていたい気もしたが、牧志がこうなった理由を聞かなければ。
そして何とかなるものなら何とかしてやらないと。
佐倉 光
そうしないと、最近やたらと露出している牧志が有名人になってしまう。変な方向で。
佐倉 光
「牧志! ありがとう! お陰で治った! 外に出してくれ!
ポケットの中に指を入れてくれれば自力で登ってみる!」
遠いもんなぁ、叫ばないと聞こえないよな……
牧志 浩太
「え、自力で登る!? わ、分かった」
にゅっ、と目の前に文字通り丸太のような指先が差し出された。登りやすいようにと考えてか、小指だ。
牧志 浩太
「あ、大丈夫。そこからなら叫ばなくても聞こえる」
こんな状況でも、『蝙蝠のようだ』などと評された耳は健在らしい。
佐倉 光
がんばって布を掴みよじ登る。
指に抱きつくようにしてなんとか体を落ち着けた。
KP
幸いシャツの布は掴みやすく、指の節はよい足がかりになる。
あなたは意図せぬアスレチックを一歩、一歩とこなしていく。
牧志 浩太
「ひゃ」
巻きつかれた瞬間に牧志が変な声を上げたが、些事だ。
牧志からすると、小指に小さなものが巻き付いて…… 確かにレアな感触かもしれない。
KP
どうにか難事をこなし終える頃には、あなたはそれなりに汗をかいているだろう。
外の風が汗を冷やして心地よい。
前を向けば、山のような牧志の脚の向こう、見慣れた街の風景が眼下に広がっていた。
そして傍らには、自宅のリビングでシローが手を振っているのが小さく見えた。
佐倉 光
「なにこれ」
佐倉 光
「絶景だなぁー! ハハ」
思わず笑ってしまう。
シローに手を振り返し、さてどうしたものかと考える。
牧志に話を聞かないと。
しかし自衛隊とか来ねーかな? そんなすぐには来ねーか。
波照間さんにだけ連絡入れとこっと。
牧志 浩太
「何だかごめん。
……でも、おかげでちょっと気持ちが落ち着いた。ありがとう」

苦笑する牧志の声が、頭の上から降ってくる。
まるで自分が小さくなったようにも思える状況だったが、眼下に広がる街並みを見遣れば、確かに牧志が大きいので間違いないようだった。
KP
波照間にメッセージを送る。例によって忙しいのか、すぐに返事はない。
佐倉 光
体の痛みも震えも収まって、ようやく物事考えられるようになってきた。
牧志の手の上であぐらをかいて、話を聞く姿勢になる。
佐倉 光
「で、どうしてそんな愉快なことになってるんだよ?
重量とかそういうの全部無視で巨大化してるっぽいけど。
俺がぶっ倒れている間に何があったんだ?」
牧志 浩太
少し落ち着きを取り戻したらしい牧志は、涙に濡れたままの顔で記憶を辿る。
牧志 浩太
「うーん、俺にも分からないんだ。朝起きたらこうなってて……、だから、知らないうちに俺が色々食べて大きくなっちゃったのかと思ったんだよ。

でも、そういえば昨日、変な夢を見たんだ。
近くの小学校、あるだろ? 大きな公園と一緒になってるやつ。

夢の中で俺はあそこに立ってて、星空を眺めてたんだ。
そうしたら流れ星が降ってきて、俺の額に、ゴツン! ってぶつかって。
目を回して、そこで目が覚めた……。

で、目を覚ましたら、こうなってた」
KP
シナリオではここで小学校の裏山が出てくるのですが、「東京に裏山…… 無いな……!?」ってなって公園になりました。
佐倉 光
ないな!?
広い公園はそれなりにあるからオケオケ。
そして意味不明のことを言い出している牧志。
KP
そう意味不明なことを言い出している牧志。
佐倉 光
「流れ星の夢か……
手がかりもないし、ひとまずそこへ行ってみるか?  行けそう?」
佐倉 光
「本当にこのサイズ分の重量があるなら道路陥没で大変なことになりそうだけど」
佐倉 光
牧志をじっくり観察。いつもの姿と変わらないかな?
牧志 浩太
牧志はいつも通りの牧志だ。あなたの視界いっぱいに広がっていることを除けば。

所在なさそうに座り込んでおり、周囲の物を潰さないように、少しぷるぷるしながら尻を引っ込めている。
……彼の尻の下にあったものはどうなってしまったのだろうか?
牧志 浩太
「……無理かも……」
彼の眼にまた涙が滲む。
佐倉 光
「まいったな」
さっきの反応だと悪魔扱いじゃないから、COMPでどうこうって訳にはいかない。
KP
そうやって彼を観察していると、何だか眼下が騒がしい。
佐倉 光
ああ、そりゃなるよ、騒ぎに。
牧志の尻の下に何があったかは考えないようにして見下ろす。
佐倉 光
牧志の変な言動について訊こうとしてたら人が来ちゃった。あーあ。
KP
この後も落ち着いて(?)話せるタイミングはあるので大丈夫です。
KP
座り込んだ牧志の足下に、小さいパトカーがわらわらと赤色灯を回しながら集まってきていた。
あなた達を見上げて小さいスマホを掲げる小さい野次馬、なんだなんだと窓を開けて目を円くする小さい近隣住民、あ、前にスマホ見つけてやった兄ちゃんだ。

パトカーから小さい警察官が出てきて、拡声器を手に喋りだす。
KP
「そのデカい人間、止まりなさーい!」

あ、違う。
彼らが小さいのではなく、牧志がでかいんだった。
そして掌の上にいるあなたも高い位置にいるだけだ。
牧志 浩太
「止まってる……。むしろ動けない……」
牧志は情けない声を上げた。
KP
どうしようこれ。【アイデア】で判定。
佐倉 光
「あーあーもう騒ぎになってら」
頭に手を当てため息をつく。
どうしようこれ。
1d100 85 【アイデア】 Sasa 1d100→ 88→失敗
KP
あーあー、どうしようこれ。
1d100 90 【アイデア】 Sasa 1d100→ 98→致命的失敗ファンブル
佐倉 光
なぬぅ
ほんとうにどうしようこれだ。
牧志 浩太
眼下から投げかけられる拡声器の声。
次から次へと集まってくるパトカー。
口々に喋り合う野次馬の声。
スマートフォンのシャッター音、は流石に聞こえないが、なんということかヘリコプターの音まで聞こえ始めている。
牧志 浩太
「あ、ああ、ああ」
まずい。
あなたを乗せた掌が震えている。
牧志がちょっとキャパオーバーになりかけている。

それでもあなたを取り落とすまいと必死に掌を固定しているが、牧志にどうにか冷静になってもらわねば、何かとまずいことが起きそうだ!
KP
〈何らかの交渉技能〉+20%で判定。
佐倉 光
1d100 72〈言いくるめ〉 Sasa 1d100→ 91→失敗
佐倉 光
「落ち着こう、これは夢だ、なっ、夢だから。
ゆれ、ゆれ、揺らさないでくれぇ」
牧志の袖にしがみついた。
牧志 浩太
「あ、あああ、佐倉さんごめん、」
牧志は慌てて、袖にしがみつくあなたを拾い上げる。
おろおろと慌てる身体が傾ぎ、よろめいた。
牧志 浩太
「あ、だめ、だめだ、溶ける、みんな逃げて……!」
野次馬が、パトカーが、蜘蛛の子を散らすように逃げていく。

すんでのところで誰かを押しつぶすことはなく、牧志の片手が地面に着地した。
誰かの家はつぶれた。電柱もつぶれた。もうもうと土煙が巻き上がった。
あなたは反対側の手の中でその惨事を目にしていた。
佐倉 光
「あー」
引っ越しかなーこれは。
せめて中に誰もいなきゃいいんだが。
これ全部夢ってことになんねーかなー

遠い目になってしまった。
佐倉 光
つーか溶けるってなに。
佐倉 光
「と、とりあえず落ち着こう、落ち着こう、なっ。おまえは悪くないから。
とはいえ夢だろうが現実だろうが破壊は面倒……いけない。
つーか溶けてないから。溶けるって何。そんな暑くねーし」
牧志 浩太
「ご、ごめん、そうだよな……、」
KP
辺りはすっかりめちゃくちゃだ。
パトカーは何やら応援を呼んでいるし、野次馬は騒然としているし人は逃げ惑っている。

このままここにいるのはまずい。まずいが……。
警察の誘導で周辺一帯から人が避難しようとしているのを見て、あなたは思う。

あの公園、指定緑地だか何だかで、なかなか大きかったはずだ。
警察に事情(?)を話して周囲の人を避難させてもらい、牧志と一緒にあそこに移動することができれば、調べることもできるし、牧志がよろめいても周囲を破壊せずに済むのではないか?
幸い、ここからは近所だ。

道中の建造物は…… どうしようもないが。
佐倉 光
あんまやりたかねーけど、しょうがないな。
牧志に向かって声をかける。
佐倉 光
「牧志、手を少し下ろしてくれ。話してみる。
一番下まで下げなくていいぞ。捕まって説明求められても時間の無駄だからな」
牧志 浩太
「あ、ああ。分かった」
牧志が頷いて手を下ろせば、辺りに残った警察官たちがざわめき、身構える。

あなたの視線が地上に近づき、乗り移れない程度に浮いた所で止まる。
佐倉 光
「すみませーん、話聞いてもらえます~?
僕たちにも何が何だか分かってないんですけど~、
気がついたらでっかくなっててー!」
悲しいかなこれは事実だ。誠心誠意説明するだけだな。
KP
「はぁ? 気づいたらでっかくなってた? 馬鹿を言うんじゃない」
KP
「先輩、でもデッカい人間がいるなんて話も普通に馬鹿ですよ」
KP
「先輩に馬鹿などと言うんじゃない。うーむむ、しかしそれはそうだ」
うーん。と警察官たちは考え込む。
KP
「話は聞かせてもらおう。署で」
先輩と呼ばれた方がそう口を開いた時、後輩らしい方がすかさずツッコミを入れる。
KP
「署に入ると思います?」
KP
「……入らんな。
とりあえず何だ、さっきのは洒落にならんので。
経路一帯に避難指示を出すから、この公園まで任意同行願ってもいいか?」

そう言って警察官が示したのは、あなたが先程ちょうど考えたあの公園だ。
佐倉 光
「あ、はい、そうしてもらえるなら助かります。
僕たちも町を壊したい訳じゃないんですよ」
佐倉 光
「本当に訳が分からなくて困ってるんです、助けてくださいっ!」
佐倉 光
警察になにかができるとは思わないけど、とりあえず全面的に被害者アピールだ!
KP
あなたのアピールに、彼らも「うーん」と唸りつつ同情を示してくれる。
KP
「突然デッカくなっちゃうなんてことあるんですね」
KP
「うーむ、世の中不思議なものだな」

KP
しばらく待てば、公園までの道には人気がなくなるだろう。
わらわらと工事用の先導車だのがあなた達の足元に集まってくる。
KP
「それじゃ移動しまーす」
牧志 浩太
移動を始める段になって、すっかり緊張していた牧志がようやく息を吐いた。
牧志 浩太
「ごめん、ありがとう……。
警察の皆さんにも、お手数おかけします」
KP
「突然デッカくなっちゃったのなら仕方ない、君も災難? だったな?? ……やっぱりデカいな……」
佐倉 光
「何なんでしょうねー。本当に。早いところ戻れるといいんですけど」
このサイズになっているときの原子ってどーなってるんだろうなぁ、やっぱ概念的なアレかな、
たしかサイズだけがでかくなると重力で押しつぶされるはずだし、骨の耐久度が……
佐倉 光
移動するなら上から牧志が見づらい足元や後ろへの注意喚起しよう。
佐倉 光
とりあえず上手く運びそうなのでスマホで写真撮りまくってる。
KP
「早く戻れるといいですねー、それじゃメシ代すごく掛かりそうですし」
KP
「問題はそこじゃないだろうが」
牧志 浩太
「あー、ごめん、落としそうで怖いからポケットに入っててもらってもいい?」

あなたは再び胸ポケットに入れられる。
そこから顔を出すのは自由だ。
KP
牧志が立ち上がると、目眩を覚える程の勢いで視界が高くなった。
SHIBUYA109の「109」マークが遠くに見える、見た感じほぼ同じ高さではないだろうか?
佐倉 光
胸ポケット……背が立たない。しがみつく体力はないので、ポケットの布ごしに外を眺める。
牧志 浩太
牧志が歩くと、ずしんずしんと辺りが揺れる。
牧志の足下で鳥が一斉に飛び立ち、野良猫が慌てて逃げ出す。

あなたの身体にも揺れが伝わり、スマホの画面が揺れる。
ティラノサウルスの体高は約6メートル。あの時あなたが見た光景には想像が混じっているのか、もう少し、高かったか。

それよりも遥かに、巨大デカい
もはや高層建造物と言える高さのそれが、平均台を踏むようにして足元の道路を踏みながら、のしり、のしりと移動する。
佐倉 光
全身しっかり包まれているにもかかわらず、あまりの景色に目が眩む。
牧志の心臓の音がよく聞こえる特等席だからなんとか耐えられるものの、
おそらく擦るような一歩ごとの上下動がえげつなさ過ぎる。
たしかに飯、どうしたらいいんだろうなぁ。
生理現象も……考えないでおきたい。
どこで寝るんだ。寝返りなんてうとうものなら大事件じゃないか。
このサイズじゃ異界にっていったってそんな都合良く入れるところなんてないだろう。
佐倉 光
どうしたらいいんだろうなぁ。
後で牧志に夢についてもっと詳しく聞いておくか……
佐倉 光
現地まで牧志の胸ポケットで、集中の邪魔をしないように、
たまに生存報告するように声を上げつつ景色を楽しんで(?)おこう。
佐倉 光
酔いそう。
牧志 浩太
シャツの大きな縫い目を通して外の風景が見える。
展望台の網目のようでもあった。
1d100 45 Sasa 1d100→ 69→失敗
牧志 浩太
「あっ」
あっ。うっかり電柱に足をひっかけた。
あっ。電波塔が、あっ……。

もうもうと上がる土煙。
控え目に言って惨事である。
KP
佐倉さん、【CON】×5をどうぞ。
佐倉 光
1d100 30 Sasa 1d100→ 90→失敗
佐倉 光
参事だ。
KP
うっぷ。気持ち悪い……。外を見ていたら酔ってしまったようだ。
佐倉 光
だめだ。俺にできることもないようだし、しばらく目を閉じて音浴びてよう。
時おり聞こえる牧志の悲鳴やら謝る声にはすまないなと思いつつも、現地につくまでおとなしくしていよう。

何か壊したとしても俺たちのせいじゃない。牧志を巨大化させたバカが悪い。

コメント By.KP
ある日突然牧志が巨大化!? 一体どうして? さしあたって飯どうしよう?

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本作は、「 株式会社アークライト  」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

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