こちらには
『嗚呼、素晴らしき偶像!』 のネタバレがあります。
佐倉 光
サマナーで悪魔退治屋。ハッカーでもある。
基本、知性・理性・効率、そういったものを重視する冷静な青年。とある事件より、体中の痛みに悩まされている。
基本悪魔を召喚して戦うが、悪魔との契約のカードを使ってその力を一時的に借りることもできる。
巻き込まれ体質らしい。
最近牧志への奇妙な執着に囚われており、心音を聴かずにはおられない。
牧志とは友人。
牧志 浩太
お人好しで温厚、だが意思は強い好青年だったが……。
とある事情で二年より前の記憶の大半を失い、代わりに悪魔使い波照間紅の記憶を持っている。
首から胸へと続く奇妙な【契約】の痣がある。たまに痛むという。
生贄体質らしく、事件に巻き込まれることが多い。
最近自分の瞳に恐怖を抱いており、映るものを見たがらない。あまり見える状態が続くとそれへの破壊衝動が芽生える。
佐倉とは友人。
シロー
とある事件以来、特殊な事情のため二人が面倒を見ることになった少年。
超美形で類い希な理解力と知性を有する。
年齢は7歳程度。生育環境が特殊だったため、一般的な教育を受けていないので、言語が年齢の割に幼い。最近になって急に一般的な生活を送り始めたので、外界への興味が強い。
開始前
つまり、展開によっては牧志がたいへんなことになる。
おかしい割と色々〈説得〉してきた気がする。
割と色々〈説得〉してる気がする、佐倉さん。
……今すごく「なんだろう?」ってなってます。牧志が佐倉さんに対してオープン過ぎる。
何だと面白いと思います?(基本茶番シナリオ)
え、隠して食べてるおやつ
とかもなさそうだしなぁ。
何か拾ってきました は絶対オープンするだろうし
何か拾ってきたは何かあったら困るからオープンしそうだし。
導入はアレンジしていいらしいので、どうしても浮かばなかったら他のものにしますが、あるとしたらなんだろうなーって思って。
やらなさそう。
性癖。うーん。
明らかにいけない本隠すところから唐揚げレシピブック出てくるの??
笑いのツボか唐揚げ(??)で悩んでおきます。出ないかもしれないし。
ありがとうございます。
『嗚呼、素晴らしき偶像!』
まつげ屋 / ほふ 様
よろしくお願いします。
あなたは互いの生命を確かめるため、牧志の心音を聴かずにはいられなくなり。
牧志は自分の眼を見ることができなくなり。
互いに傷を負いながらも、負った傷を少しずつ癒しながら日常を過ごしていた。
しかし。
この一週間、あなたはすっかり駄目になっていた。
なぜ駄目になっていたのか。
いつものように出かけた牧志が、またいなくなってしまったからである。
あなたは一日連絡がなかった時点で探したかもしれない。
あらゆる手段を取っただろう。あらゆる伝手を取っただろう。
しかし、しかしながら、一週間探し続けても、彼は見つからなかったのである。
心音が聞こえない。聴けない。もうだめだ。
なんで見つからないんだ。
また、一番最後に取った手は何だろうか。
フツーに心配。
大体このパターンは牧志が色々大変なことになってる。
同時に、牧志の心臓の音が聞けないのが辛い。辛すぎる。
泣きたくなってくる。
こうなってみて初めて、俺は牧志の心臓の音に想像以上に執着を持っているのに気付いた。
俺は全く正気に戻ってなんかいなかった。
一応正気を装える状態だったってだけだ。
牧志が心配なのか、音が聞けないのが辛いだけなのか。
いや、音が聴きたいからって牧志が心配じゃないわけじゃない。両方だ。
問題ない。
それはさておき心音聴きたい。聴きたい。いますぐ。
今更記憶が戻って俺のことを忘れた?
それなら東浪見に連絡くらいするだろう?
事故や事件?
ニュースは毎日チェックしてる。
生贄にとられた?
考えたくもないことだが、牧志ならありうる話だ。
この場合はニュースにもなるまい。
波照間さんにも協力して貰って、裏の方の情報も漁った。
ついに意を決して浩司に連絡した。
久しぶりー、最近どう? みたいなさりげなーい感じで。
さりげなく振る舞えたかどうかは、分からない。
彼らの友達や先輩にも連絡を取って探してくれているらしいが、ふっつりと姿を消してしまったきり見つからないという。
勿論人の多い渋谷・東京の中では今日も何か起きているのだが。
しかし随分身を隠すのが上手いのだろう、その正体はまだ掴めておらず、波照間が必死になって探っている最中だ。
場所が離れてるからまだ連絡が行ってないけど、もうちょっとしたら親元にも話が行きそう。
ギャグシでも巻き込まれる佐倉さんにとってはギャグどころではないのであった(向こうから降ってくるイベントスタンバイしつつ)
「知らないところで死なれたら怖い」とか言ってたヤツがやらかしてんじゃねぇよ!!
知らない所で死なれたら怖いって言った直後のこれである。
再会したら全力で言ってやってほしい。
確かに。
いやちょっと、最近元気かなー、と思ってさー。ああ、久しぶりに写真見てたから。そう写真。
何か変わったこと起きてない?」
ちょっとは不自然だったかも知れないな? 動揺してるか俺。
そうだ、この間、一週間とちょっと前くらいかな、兄貴が電話してきてさ。
母さんが顔見たがってたからカメラONにしたんだけど……、兄貴、珍しくサングラスしてたんだ。
それだけならいいんだけど、妙に目が泳いでたんだよ。俺の事まっすぐ見られない感じっていうか。
なあ、何かあったんだろ? ……あったんだよな?」
自分の顔が何かに映っても眼に怯えないように、少し前からかけていたのだ。
ちょっといろいろあってねいろいろ。
大丈夫だよ。ちょっとした心境の変化ってやつだし、そのうち元通りになると思うから。
そうかー、ご家族に対してもそんな感じか。ありがとう」
このまま誤魔化して切るべきだろうか。
いや、ちょっとさすがに長すぎる。
そもそも牧志は無断でいなくなるヤツじゃないんだ、はっきり異常だ。
あいつ、前触れもなくいなくなったんだ。
色々調べてみたんだけど普通の事件や事故の可能性が低そうでね。
もしかしたら、前に協力して貰ったときみたいなことに巻き込まれているかも知れない。
俺もこっちの知り合いも全力で探しているけど、万一そっちに現れたら教えてくれ」
一瞬沈黙が落ちて、それから微かに唾を呑む音。
言葉が戻ったのは、更にもう少し後だった。
教えてくれて、ありがと。
母さん達にはまだ言わない。でも気に掛けとく。
その時話してた内容なんだけど、母さんの誕生日が近いからとか、そんな内容で……、
そうだ。佐倉さんの誕生日に何か渡そうと思ってるとか、そんな話もした気がする」
牧志が最後に目撃された場所を探した時、あなたが以前彼に渡したボールペンが落ちていたのだ。
その周辺を何度探しても、何の足取りも見つからなかったのだが……。
そのペンは今も、あなたの手元にある。
それが何か意味を持つのかどうかは分からないが。
ボールペンを見下ろしため息をついた。
浩司が最後の頼みの綱だったのだが……
ほか何も無ければ2、3会話して切ろう。
シローが以前に牧志に買ってもらったおもちゃを握って、心配そうにあなたを見上げていた。
帰ってくるさ」
根拠のない励ましをする。
ときにこういったことは必要なんだ。俺自身のためにも。
シローに言い渡し、いつもの荷物にボールペンを加えて外に出よう。
精神安定剤代わりに聴き続けている。
本物には全く及ばないが、ないよりはマシだ。
家のインターフォンが鳴った。
モニターには……、怪しげな黒いローブを纏った、男のような体格の人間が映っている。
子供のフリしてインターホンに出る。
声を低く潜めて、こう、告げた。
……牧志さんについて、話をしに来たんです」
モニターを切って、シローに声をかける。
もし俺が出かけるかなんかでいなくなったら東浪見に助けて貰え」
手に持ったおもちゃを、ぎゅっと握りしめていた。
《催眠》持ちの悪魔カードを持って、いつでも《カード・スキル》を発動できるようにしておく。
扉は開けるがチェーン越しに応対だ。
開くと、
そこには目に大粒の涙を溜めた男がいた。
彼はそのまま扉に縋りつき、顔が溶けそうな程にだくだくと涙を流しながら、扉の隙間に白い指を挟み込み、
……? 逆では?
あまりにも予想外の言葉に、色々吹っ飛んだ。
気弱そうな雰囲気の男はローブの懐からティッシュを出して鼻水をすすると、裾で涙を拭いながら話しだした。
声の高さが、子供っぽさ演出の1オクターブと不機嫌1オクターブで総合2オクターブ下がった。
またかよぶち殺すぞ。
男は慌てて土下座しながら両腕を上げた。
謎のオブジェのような姿勢だ。
よーしよし、落ち着こう。殺すのは情報もらってからでいい。落ち着こう俺。
きっかり5回分聴いてから口を開く。
しかし教団内のその……いわゆる過激派の方々がですね……、最高の贄を見つけた! 超頑張ってゲットした! とテンションアゲアゲのアゲになってしまい……。
私の話も全然聞き入れてくれなくて……」
A: 過激派の皆さんが超頑張って包囲したり教団内のAFかき集めてPOW捻出したり異次元経由で逃げたり痕跡を消したりした
牧志「そろそろ1操作でメッセージが飛ばせるタイプの防犯GPSが必要かもしれない、それか佐倉さんに常時監視してもらうべきかもしれない」
いけない。威圧して相手を萎縮させても得られる情報が減るだけだ。
こいつの言葉通りならこいつはそこまでたちが悪くない部類、のように聞こえる。
信じられるかどうかなんて分かったもんじゃないけどな。
不機嫌に促す。
贄として捧げられそうになった牧志さんが……、その、儀式の最中にですね、気が狂ってしまわれたのか、突然奇妙な歌を歌い始めて」
男は怖れるように目を伏せ、もそもそと続ける。
それで……、その……、あの」
イライラをぶつける。
そのまま演説を始めたんです。周りの皆さんはどうしてか、皆うっとりとしてその声に聞き入り……!」
あいつが生贄なのはいつもの流れとして。
え? 教祖?? 前回の俺……とはちょっと違うよな。自分で宣言しちゃってるし?
何? 乗っ取り? 乗っ取られ? え???
ある意味本当の大事件じゃないかそれは。
本編見る!
あなたの疑問そっちのけで、男はあなたの手に縋ったまま両眼からぼとぼとと涙を流す。いいかげん枯れそうだ。
いや自分で教祖になってる奴を助ける?
いやいや、自分の意志の訳ないだろう? きっと洗脳でもされたんだ。
よくわかんねーけど。
あ、一応この男に〈心理学〉を……
🎲 Secret Dice 🎲
この男が恐怖に怯え、ようやく見つけた希望であるあなたに縋ろうとしているのは、少なくとも演技ではないと思えた。
なんじゃこりゃって所から始まる話です。
ったく連絡くらいしろよ。無事なら。
してこないってことはやっぱり正気じゃないのか?
纏めればこういうことらしい。
しかし最近「神に会いたい、会うためなら強硬手段も辞さない!」という強引な一派が増えてきて困っていた。
彼らがある日、牧志を生贄として攫ってきた。
自分は彼らを諭し咎めたが聞き入れてもらえず、牧志は生贄に捧げられる所だった。
しかし生贄の儀式の最中に牧志が突然奇妙な歌を歌いだし、突如立ち上がると、『神は俺を見た。俺が次の教祖だ』と周囲に宣言して演説を始めた。
彼らはなぜか牧志の言葉に心酔してしまい、牧志を次の教祖として担ぎ上げ、自分は教団を追われてしまった。
もし牧志に見つかったらまずい。ピンチ。牧志の代わりに贄にされてしまう。助けて。私と私の唯一の癒しの場を救って。
起きていることの何もかもが胡散臭い。
そしてわけがわからない。
そこに連れていけ」
シナリオ的に使えるかどうかはともかく、フル装備で行こう。
COMPの調子も元気だ。
住宅街の合間に防火かなにかのために置かれている空き地という風合いで、とても教団などが入りそうには思えない。
周囲には人の行き来があるが、行くと気づくことがある。
タイミングを狙うと、ふっと人目が消える瞬間があるのだ。
悪魔がよく出る場所でもないし、おかしな事件が起きたりも……していなかった気がする?
祈りを捧げるだけだ、という羽河辺の話は本当なのだろうか?
悪魔使いの間でもノーマークの場所、というより、「場所」としてさえ認識されていなかった。通り過ぎるばかりの背景だ。
おかしな事件もなく、監視カメラにも気になるものは映っていなかった。
いや、羽河辺の話が本当なら、牧志が連れ去られてしまったはずなのだが。
男に問いかける。
男、改め羽河辺は頷く。
空き地の入り口(入るところではないが)に立っている木に手をつくと、握り込んだ小さな石のようなものを木肌に押しつけ、聞き取りがたい言葉で何かを呟く。
一瞬、視界が歪む。
目の前に、二階建てのように見える建物が一つある。
洋風で、それなりの人が生活できそうな大きさだ。
田舎町の教会のようで、景観だけ見れば穏やかなものだった。
たまに魔のものの力を借りて異界を使う人間は存在する。
そういった場所は、周囲に被害や影響がなければ探知しにくい。
スマホだして一応現在地確認。
と言うか周囲の状況からガラッと変わってるのかな?
それともその建物しかない場所なんだろうか。
辺りを見回せば、異常に気づくだろう。
雑木林はどこまでも続いており、空の色は曖昧に温い。
この建物以外、無限に続く雑木林しか存在しない。
相手のフィールドだ。何が起きるかも分からない。
脱出するには大体特殊な条件が必要だ。往々にして術者の撃破、異界を発生させている場の破壊などが必要になる。
助けも呼べないし場合によっては悪魔も来られない。
しかし逆に好き勝手暴れやすいとも言える。
COMPの様子を見る。使えそう?
結果がどうでもまずは窓から覗こう。
一緒にいるなら羽河辺には気を許さないので視界に入れるようにしつつだけど。
窓から覗こうと近づくと、手作り感のある鳥のオブジェがあちらこちらに飾られていることに気づくだろう。
1d100→ 29→成功
素朴な見た目のオブジェはどれも、脚が一本しかない。
まあ……鳥って大体片足で立っているものだし、それを記号化したのかも知れないが。
ちらと気にしつつ。鳥が一体どんな種類に見えるかは分かるかな。
嘴の間から小さな牙がはみでている。
造形が曖昧なせいで、どんな種類なのかはよくわからない。
鳥を見ているあなたに、羽河辺が聞いてくる。
しかし神にかかわりのあるものをむやみに捨てるのもと思い、飾りにしてみました」
そういや牧志が歌ったとかいう歌はこの鳥や神に関係ある、あんたも知ってるものか?」
不思議な響きの歌だったので……。
どうして牧志さんがご存知だったのかは分からないんですが……。
資料室にはちゃんと鍵、かけてたはずですし……。
最近古い書物に凝ってまして、色々訳してみたりしていたんです。
ただ、その、色々やっていたので、全部は覚えていなくて……。
資料室には本があるはずなんですが……」
でも、信者の皆さんと話をしているかもしれませんし、神のことを語って回っているかもしれないので、決まってどこにいる、というのはないと思います」
窓にカーテンがかかっているので、見えるのはその隙間から覗ける狭い範囲だけだが、階段のある広間のようだ。
元教祖は色々知っていそうだ、とことん協力して貰おう。
羽河辺は自分が着ていたローブを脱いであなたに渡す。
普通の服の上から羽織るタイプのフードつきローブのようだ。
中に入ったら、食堂の……前から3番目の机の下をこっそり調べてみてください」
その辺のヤツと見た目違ったりはしないかな、ローブ。
ふわふわとした手触りのよい生地で、触れていると羽毛のようで気持ちいい。
……あんた教祖だったんだろ?
ここは神に祈って何を願ってたんだ?」
神にお会いできたらそれは嬉しいですが、人様に迷惑をかけてまで会いたいとは思わなかったのですが……」
羽河辺はしょんもりと肩を落とす。
大体こういうのって教祖がやべーやつなのに、ヤベー信者の暴走かぁ。
神についてもっと詳しく知りたい気もするが、
とりあえず牧志に会って話すのが先だろう。
羽河辺はあなたの視線を避けるように、しょもも……、と背を丸めた。
ローブを脱いだのもあり、そんな羽河辺はまったく「教祖」というようには見えない……。
波照間さんみたいに二体の悪魔を維持できる力があれば、ここに一体置いてくんだけどな……
まあ心配だったし。うん。
黒いローブ姿の人間が数人、楽しそうに何かの噂話に花を咲かせている。
壁に飾られた造花がさりげない彩りと和みを添えていて、過ごしやすい空間だと感じさせた。
……ここが仮称敵地? でなければだが。
すぐ目につくのは、奥にあるホテルのエントランスホールのような大きな階段だ。
壁には木製の額に収められた絵画と、何かこまごまと貼られた掲示板がある。
穏健派が追い出された、という印象だったのだが、そういうわけでもないのか?
いやそもそも牧志がトップだってのがおかしいが。
そもそもここの神は何なんだ?
絵を見上げる。
ソッと頭を下げる。あまり強い印象を与えないようにしたい。
教団員はどんな印象の人だろうか?
彼は気安げに手を振る。
金色の髪が目を引くが浮かぶ笑顔は穏やかで、面倒見のよさそうな、取っつきのいい人物だ。
必要な物について、橋立さんに訊くようにと誰かに言われました。
色々教えていただけますか?
僕は……サクっていいます」
少し迷ったが本名バレバレ偽名を使うことにした。
神託の間に大体用意してあるから、案内するよ。
そうだ、そこにここの見取り図があるから、覚えておくといいよ。
あと、外の林にはあんまり入らないようにね。ここの近くなら大丈夫だけど、離れると戻れなくなるから」
彼はそう言って、掲示板の傍らを指さす。
そこには室内の見取り図が貼られていた。
牧志をさっさと見つけたいけど、まずは偵察だな。
彼が言いかけた、その時だった。
「えっ、教祖様?」
「あっ、ほんとだ!」
喋っていた教団員たちが声を上げ、二階へ続く階段の方を振り返る。
黒いローブに身を包み、少し伏せた眼差しでこちらを見やっていた。
明るい色の眼を、濃い色のサングラスの奥に隠していた。
彼は緩やかに微笑むと、声を上げて手を振る教団員たちに手を振り返す。
間違いない、その髪の色も顔立ちも体格も、手の形も足音の響きさえ。
いや。一体何をやっているのだ。
悪い冗談だと思っていた。
彼は正気を失っている可能性がある。目立つわけには行かない。何者かが裏で糸を引いているかもしれない。
彼の心臓は、動いているか?
進み出て叫んだ。
あなたが叫ぼうとした瞬間、橋立があなたの襟を強く引いた。勢い首が締まり、あなたは声を出し損ねる。
あなたの姿を見たはずだ。
間違いなくその眼に、進み出たあなたが映ったはずだ。
それなのに彼はそこにいるのが特定の誰かだとも気づかなかったような様子で、何人かの教団員を連れて二階へと上がっていく。
あなたの名をすら呼ばなかった。彼は。
一瞬の驚きすら映らなかった。彼の眼には。
🎲 Secret Dice 🎲
彼は気づいて、いないのだ。
そこに「あなた」がいると。
引きずられながら、嫌な可能性を思い知ってしまった。
これは一筋縄では行かないヤツだ。牧志は忘れるか操られるかしている……
橋立が強引にあなたの襟を引き、引きずっていこうとする。
ひとまず橋立の後を追おう。
室内は薄暗いが、暖色の光によって柔らかく照らされていて、過ごしやすく感じさせる。
室内には机が一つあり、何かオブジェのようなものが置かれている。
でも抜け駆けはまずいよ、みんな教祖様にメロメロだからさ」
橋立はあなたを宥めるように、ぽん、とあなたの肩に手を置く。
その一瞬、
と、威圧するような少し低い声で囁いた。
で、それが自分の意志によるものならよし、そうじゃなきゃ何かしらの手を打とうと思ってね。
ここの『元教祖』に頼まれた、ってのもあります」
思い切ってぶっちゃけてみることにした。
あなたが言い終わった直後、広間にいた教団員達が口々に「教祖様すごかったね~」「すごかったよな、パワーを感じるっていうかさ」などと話しながら室内に入ってきた。
橋立は彼らをちらりと見て、口元に指を当てる仕草をする。
話をしてもらえそうだ。
「あれ、新人さん?」
来たばかりで何もわからないんです。
色々教えてください」
橋立もそんなことを言っていたな。像が大事なのか。変わった宗教だな?
ほらほら、と教団員は机を指さす。
橋立は机の上に置かれたものを取り、あなたの前に出した。
それは……、奇妙な鳥の像だ。
全身は滴るような黒に濡れ、羽は羽毛というよりも硬い鱗の質感で身を覆う。
鋭い嘴の奥には、ざらついた牙がびっしりと生えている。
《SANチェック:成功時減少 1D4 / 失敗時減少 1D10》。
1d10
Sasa 1d10→8
いきなりの不定の狂気!
SAN 40→32
1d10 Sasa 1d10→6
1d6 Sasa 1d6→5
前までの狂気どうなるの問題もあるし、KPの回答待ちで描写は保留。
狂気の相談
ここでは直後に橋立が〈精神分析〉でフォローしてくれる(シナリオ中は症状が出ない)ので、これによって進行不能になることはないのです、が。
が、確かに不定の更新が速すぎてちょっと勿体ないので、アレンジして「制御不能のチックが出るが、牧志の心音を聴いていると軽減する」としようと思うのですが、どうでしょう?
元々か!
常時ではなくたまに出るけど、そうなったら心音聴いておさめるって感じてすかね。
中毒じゃん!!
ピンチに声が出そうになったらまずいですしねぇ。
それくらいだといいあんばいになりそう。
衝動は残ってて辛いけど、心音聴いてれば抑え込める感じで。
「制御不能の」ってついてるから、我慢することもできないのかも。
我慢できないまたは相当強い意志力でないと押さえ込めない、みたいな感じだろうか。
制御不能の、だし、それこそ衝動が強すぎて相当強い意志力がないと抑え込めないか、抑え込もうとする端から実行してしまっているのかもしれません。
不定の更新が速すぎて少し勿体ないので、KP判断でアレンジして、以下の内容とします。
・制御不能のチック、震えが発生する。
(常時ではなく、突発的に発生する)
但し、牧志の心音を聴いていると軽減する。
俺がここにいてはならない存在だとバレている。
左腕の縫い目をこする。
隠さなくてはならない。
自分は死んでいることを隠さなくてはならない。
酷い頭痛がする。頭を砕かれた痕跡をさする。
とうに境界を越えているのにここに留まっている存在だということを、知られてはならない!
この身の中にある心臓の震えなど、ただの擬態であることを知られてはならない!
俺は生きている。
生きているのに!
腕と顔に残る蚯蚓腫れをこすり、引っ掻き、震える声を漏らす。
辛うじて像を投げ捨てることはなかった。
※いろいろ複合しすぎて訳わかんなくなった。
何か落ち着く物はないか? 縫いぐるみあるけど抱くか?」
橋立があなたの震える背をさすり、棚から大きなウミウシの縫いぐるみを取ってあなたに抱かせようとする。
「俺も俺も」
周囲の仲間達も、あなたに穏やかな声をかけてくれる。
みな慣れた様子で、珍しいことではないようだ。
あなたはシナリオ中、不定の狂気の症状を抑えることができる。
ウミウシをぎゅっと抱きしめて無意識にそれに耳を埋めようとする。
音は……聞こえない。
辛うじて戻ってきた思考でまず、この『鳥』は危険だと断じる。
これが信仰の対象? まずいだろうこれは。
これは人の心を蝕む物だ。
こんな物を見て心に平穏を得るって……どうなっているんだ!?
ウミウシの中から呻くように呟いた。
大丈夫。これから毎晩夢でお会いするんだから、慣れる慣れる」
橋立は像を机に置き直す。
あまりのことに頭をかきむしる。
何やってんだ? 本当に何やってんだ牧志!
震える声で問いかける。
「教祖様ならご存知なんじゃないか?」
「教祖様だもんねー」
教団員達はわいわいと言い合う。
ペンライトでも出てきそうな雰囲気だ。
自分で調べてみれば、神への理解も深まるんじゃないか? 書斎に本があるから」
橋立だけが、教祖に言及する時、何か考え込んでいるような様子だった。
他の奴らと反応が違うな。
何を願ってるんです?」
「俺も俺も。色々あってもう死ぬしかないって迷ってたら、前教祖様が誘ってくれたんだよな」
「前教祖様、とってもお優しい方だったよなぁ」
「私はあの人、嫌いじゃなかったな~」
「ちょっと抜けてるところはあったけどな!
でも、まさか裏切り者だったなんてなぁ」
「そうは見えないよね。何やったんだろ?」
「教祖様がそう言うんだし、裏で色々やってたんじゃないか? 橋立には悪いけどさ……」
穏やかじゃないな。
お姿を見ただけで痺れちゃうような、後ろから光が射してるような……、
それなのに、すごく優しい目で私達のことを見て下さるの。
新教祖様も心優しい方なんだわ」
「分かる分かる! 前教祖様の下でお祈りして過ごすのも楽しかったけど、やっぱりこれだけお祈りしてるんだから、何ていうの、手応え? 結果? が欲しいよなー」
「新教祖様、絶対に神をお呼びする! って強く誓って下さって、私達は絶対に報われるって言って下さったんだよね。惚れ惚れしちゃったなぁ」
彼らの眼には、強い陶酔が浮かんでいる。そろそろ団扇が出てきそうだ。
パワーある。確かに。
いやでも、人の上に立ったり神を喚んだりは違うだろ。
てか俺に気づかなかったし。
あいつは本当に牧志か?
それでいいのか宗教団体。
「だっけ?」
「実は理由よく知らなくてさ、でも教祖様が言うんだから間違いないって」
私の場合は神様の鱗を間近に見られて、燃え盛る炎の眼が私を見て下さって、ああ、従わなきゃ、って思うような、そんな夢なの」
正直怖いなぁ」
「えっ俺最初の頃はなんにも見なかったよ」
「それはあんたが鈍いだけじゃない」
「夢の内容は一緒だよな」
「でもちょっと近づいてきてくれてるような気もするのよね、神がいらっしゃるのが楽しみだからかな? あぁ、早く拝見してみたいなぁ、神のお姿」
夢の時点で相当まずい感じじゃないか……
そんな会話をよそに、橋立が扉に手をかける。
あ、聖堂に入る時は像を忘れないでね。それ以外の時は、ここの机に置いておいていいから」
橋立はそう言い残し、止めなければその場を去る。
橋立の背に訊いてみよう。
礼拝では、それぞれの像に祈りを捧げるしね」
橋立は不思議そうに答えた。
随分変わった宗教だな。
こういう場所にはもっと大きくて立派な偶像があるものじゃないのか?
橋立には詳しく話が聞きたいな……後ででも。
ふと、その扉の上にある時計が目に入る。
現在時刻は14時。
1部屋の探索に1時間かかる。
探索以外の移動時間は考慮しなくてよい。
この部屋を引き続き探索する場合、時間は経過しない。
橋立以外の信者達は変わらず、新教祖や他の信者の噂話をしている。
折角だからここを調べよう。
噂話に何か気になることはあるだろうか。
〈目星〉で何か見つかるだろうか?
ここには机と、縫いぐるみが置いてあった棚(他にもいくつか縫いぐるみが置いてある)がある。どの辺りを見てみる?
しかし、同じに見えるにもかかわらず、あなたは「自分の」像が分かる。
その像を見たときだけ、何かが自分を見ているような感覚に陥るのだ。
それ以外には特に何もない。
そもそも俺はここの信者ではないのに、どうして『俺の』像があるんだ……?
どこか不気味なものを感じつつ、縫いぐるみの棚に目をやる。
なるほど共通点は割と抱きやすい形だ。
他には何もない。
〈目星〉か〈心理学〉の範囲で
また、〈心理学〉で判定するなら、こちらでクローズドで振ります。
まとまりがない、てんでばらばら…… という印象だ。
共通点があるとすれば、どこか行き所のないような、地に足のつかない印象だろうか。
訳のありそうな感じ、とも言える。
教団に来る前から、何かしら訳のあった人々なのかもしれない。
それにしても、揃って浮かべる陶酔はなんだかちょっと異様なような気もする。
牧志って、そんなにカリスマに溢れた人物だっけ?
問いかけてみよう。
像について聞かれると、ちょっと言いにくそうに渋る。
聞き出すなら、〈説得〉または〈言いくるめ〉で判定。
1d100 52〈言いくるめ〉 Sasa 1d100→ 84→失敗
教団員は勿体ぶって言葉を濁してしまう。
神とやらを幻視できないから失敗なのか。
ずいぶんと可愛らしかったものな、あれは。
あれには足りていない、なにか特別なことが必要なのか。
しかし、どうして俺の像があるんだ?
誰が集めたんです?」
「うーん……、いつからあるのかよく知らないのよね。
あなたみたいに、怖がっちゃった新人さんのためのものなんだけど」
が、飼育室について聞くと、途端に頭の上に疑問符が出た。
「飼育室? なんだっけ?」
「えっ知らん」
「普段入らないもんね」
こちらも首を傾げた。後で調べてみるか……
そろそろ別の部屋に行こうかな。
そういえばさっき見損ねた広間の絵でも見よう。
先輩方に礼を言って、広間に移動する。
像はひとまず置いていくかな。
後で通るときに回収できるだろうし。
「またなー」
教団員達は手を振ってあなたを見送る。
またも行方不明の牧志。募る不安と禁断症状。それが最高潮になった時彼は現れた。
説明を聞いても何が何だかさっぱり分からない!
生贄体質の牧志、前々からシャーマン適性高い高いと言われ続けた牧志、ついに教祖様に!
えっなんで?
茶番シナリオらしいのでコミカルな反応はしがちであるものの、全く茶番にならなかった一本です。
【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」
TRPGリプレイ【置】CoC『えっ? 手のひらから唐揚げ出せるんですか?』 佐倉&牧志(塔) 1
「クイ……テー……カラ……アゲ……
喰いてぇ……唐揚げェっ!
ニクやマガツヒと違って唐揚げは来ねぇんだよ……どうして唐揚げは来ないッ!」