こちらには『1100』のネタバレおよび大改変のほか、
『AND HAND』『瓶の中の君』『対の棲みか』『100万回目のハッピーバースデー』『機械仕掛けの街』『欠落コディペンデント』
ネタバレがあります。
※他のシナリオにも言及していますが、明言されていないものなどは除外しています。


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『1100』後編


KP
あなたが牧志の記憶を取り戻し、日常に戻ってから数日後の夜。
突然、牧志があなたの自室を訪れた。
牧志 浩太
あなたの顔を見て、あなたの部屋を見るなり、その眼にじわりと涙が滲む。
一歩、室内に踏み込んで。
そのまま、彼は縋るようにあなたの腕を掴んだ。
「佐倉さん、。
俺は、誰なんだろう、佐倉さんは俺のこと、知ってる?」
KP
彼は、離すまいとあなたの腕を握りしめる。その手を離せば谷底に落ちてしまうというかのように。

そして、一瞬意味が掴めないかもしれないことを言い出した。
佐倉 光
ぽかん、と口を開けて、「どちら様」なんてジョークを言うことを一瞬考えたが。
彼の目を見てそんなことを言っていられる状況ではないことを知る。
「何だよ、当たり前だろう、牧志?」

ふと、思い出すことがある。
自分たち二人が以前に経験した、事件。
あれ、とは違うな、感情がちゃんとある。
あっち……は普通に食われそうだったからな。
するとまた別の何かか?

「まさか、とは思うが、また奪われてるのか?」
とりあえず部屋に入れて、いつもの場所に座らせて、茶でも出してやろう。
牧志が来た時用の麦茶のペットボトルを開ける。
そして、ふと数日前の事件を思い出した。
あれの影響、か?
牧志 浩太
「ああ……、よかった、本当に俺のこと、知ってくれてた」
KP
牧志はふらつく足で室内に入り、いつもの場所に座る。渡された麦茶を飲んで、大きく息をつく。
数日前の事件。
牧志が、あなたの記憶と今の彼に至る記憶を失ってしまった、あの事件。

まさか、逆になってしまったというのか。
牧志 浩太
「牧志っていうんだな、俺」
佐倉 光
「ああ、牧志浩太、20歳。○○大学の学生。
お前、俺のことは覚えてるのに、自分のことだけ忘れたのか?」
二杯目を注いで、自分のスマートフォンにある写真を見せる。
最近似たようなことをしたよな、と思いながら。
「自分のことは忘れたのに、俺のことを覚えているって、どんな覚え方してるんだ……」
KP
あなたから自分の名前を聞いて、彼は染み込ませようとするかのように胸を撫でた。
その首筋には薄赤い痣が、いつものように這っている。

写真を見せられて顔を上げる。
スマートフォンに表示されたあなたと自分の画像を、食い入るように見つめる。
牧志 浩太
「うん……。佐倉さんと、あと辛うじて、波照間先輩のことは覚えているんだ。あの日目覚めた時のことと、変な事件に巻き込まれて佐倉さんと走っていた時のことは覚えている」

彼は数少ない記憶を、ゆっくりと辿る。
「それだけなんだ。気づいたら街中に立ってて、俺が何て名前なのかも、自分の家も、今まで何をしてきたのかも、直前まで何をしてたのかも覚えてなくて、」

肩が少し震えた。麦茶の水面がぱちゃりと音を立てる。
「変な事件の記憶ばかりがあって、変になりそうだった」
佐倉 光
「変な事件? 例えば?」
何となく予想がつく気はした……
なるべく落ち着いて話を聞くよう心がける。
牧志 浩太
「目が覚めたら、佐倉さんと手が繋がってて、その中に変なものがいたり」

彼は少しずつ記憶を辿る。
「佐倉さんが瓶詰めになって蛇人間に追いかけられたり。
佐倉さんが猫に……、あれ、意外と佐倉さんが困ってることも多いな。
佐倉さんが霧の街に迷い込んだり、感情をとられて、偽物の俺を追いかけたり。
俺が、佐倉さんになって、佐倉さんと変なもの埋めてたり、。
機械仕掛けの街に迷い込んで、佐倉さんの心臓を……、」

そこまで話して、瞼が苦しそうに震える。うっ、うっ、と数度嗚咽する。
佐倉 光
「どうした、大丈夫か!?
もういい、分かった、やめろ。
大丈夫、俺は生きてる、生きてるから」

どうしていいか分からなくなって背をさする。

「悪かった。つまり、俺とお前が一緒に変な事件に巻き込まれたときの事だけ覚えていて、それ以外の日常が思い出せないんだな?」
佐倉 光
※飲み会は割と平和な記憶かも。
牧志 浩太
※かも。最後あれだったけど。
牧志 浩太
「ああ、うん、ごめん、ちょっと佐倉さんの心臓、抉った時のこと思い出して。佐倉さんも俺も生きてて、本当によかった……」

あなたに背をさすられて、彼は数度息を吸って、吐く。自分の手を握って、開いて、気持ちを落ち着けようとする。
「そう、そうなんだ。変な事件のことだけを覚えてる、そういうのだけが頭の中に詰まってるんだ。
佐倉さんに名前を呼ばれたはずで、俺の話もしたはずなのに、思い出せなかった。佐倉さんのことはちゃんと覚えてて、それを手掛かりにここに来た……」
佐倉 光
「ただの記憶喪失じゃないな、意図的なものを感じる」
少し前に、記憶の中をさ迷ったことを思い出す。
あれも今じゃいい思い出だが、それは帰る場所あっての事。それがなければ……
何もない異界で拷問見せられ続けるのとたいして変わらないじゃないか。

「とりあえず、腹減ってないか? 飯……カップ麺くらいしかないけどさ。
落ち着いたらお前んち送ってってもいいし、ここ泊まってもいいし。
大学の事は波照間さんに訊こう。

大丈夫、お前には知り合いも多いし、色々話が聞ける相手はいる。
すぐ思い出せるさ」
半分願望を口にする。さあ、湯を沸かして、食事しながら最低限俺が覚えていることでも話そう。
牧志 浩太
「うん……、分かった」
彼はほっと、微かに唇を綻ばせた。
佐倉 光
安いから、以外に選択の理由がない蕎麦とラーメンに割り箸を乗せ、卵の日付を確認したら残念ながらアウトだった。生は駄目でも茹でれば食えるっていうけど。
「俺の家、まともに食えるもん基本ないからさ……」
言外に「悪いな」と謝りつつ好きな方を取るようにと促す。

「で、そうだな、お前自身のことか……
前に夢の世界に行った時の話してた時に随分過去が見えたって言ってたけど、そういうのも覚えてないのか?」
言いながらミニPCのキーボードを叩く。
覚えている限りのことを書き出す……って、これも最近やった記憶があるぞ。
「俺が知っている牧志は、ここ一年ちょいの牧志だ。その前のことは東浪見に訊くといい。あ、東浪見はお前の友だち。あいつも絶対助けてくれる。あとはミントさんかな。俺が知らない友だちも絶対いるから、東浪見に詳しく訊いてみてくれ。で、最近だと……」

最近、とくに大きな事件もなく会って遊んだだけのことや、くだらない会話や、パズル合戦のことなんかを交えつつ話そう。
「波照間さんの影響かな、よく麺類食った話してたな。俺とは大体ファストフードが多いけど、最近は割とそれ以外も……ほら、この写真の店とか」
「最近運転の練習してるな。随分成績はいいみたいだ」
「お前ってほんと、底抜けのお人好しだから……」
「猫好きだろ? 撫で方が上手くて……いや違う、我を忘れたりしてない!」
「弟がいる、って話してたよ。優しい家族がいるんだろうなと思ったな。家は北国で、冬は雪に埋まるって言ってたなぁ」

※お話が進むようならこの辺の会話なくて大丈夫です。
牧志 浩太
「いいよ、ありがとう。いきなり来ちゃったの、俺の方だし」
蕎麦を手に取り、丁寧な手つきで箸を割って蕎麦を啜る。
「あ……、腹減ってたのか、俺」
あなたの声を聞きながら、彼はそっと声を漏らした。

彼は蕎麦を食べながら、あなたが語るやさしい日常に、穏やかに耳を澄ませる。
一つ一つ、自分に日常があることを確かめるように、世界の広がりを確かめるように、あなたとの日々に日常があることを確かめるように。
「ははっ……、そうだ、佐倉さん猫になった時、随分気持ちよさそうにしてたっけ」

そして、駆け込んできてからずっと強張っていた目元を和らげ、微かに笑みをこぼした。
佐倉 光
その表情が緩んだことにほっとする。
「前に何度か言ったけど、誕生日にもらったモニタ、すげー音がいいんだよ。やっぱお前耳いいよなー。感動しすぎて、持ってる音楽データ夜通し聴いてて、気がついたら朝になってた」
牧志 浩太
「そっか……、そっか、あの時の」
彼は数少ない記憶の中の、僅かな穏やかな時間に縋るようにして、頼りなく笑う。
佐倉 光
※佐倉〈聞き耳〉元々初期値だったから、そんなに音に拘りなくて、音関係良い機材揃えてなかった。
KP
※なるほど そこも牧志がきっかけになってるのかぁ……
佐倉 光
「大丈夫だよ。
お前の人生変な事件ばかりじゃない。
変な事件はそりゃ大きいし、深いこと話すのはそういう時が多いけど、それ以外の日の方がずっと長いんだ」

それに。
こんな意図的な欠け方してるんだ。また『事件』だろう?
牧志 浩太
「こんな時だけどさ、残ったのが佐倉さんの記憶でよかった。あ、もちろん他の記憶でもなんとかなったかもしれないけど、一番…、頼りになる気がする」
佐倉 光
「まあ……修羅場は潜ってるけど。なんだかんだ、色々経験はあるしな。
そういえば、イルカを見かけなかったか? あ、虫退治の時のじゃなくて、空中飛び回る感じ悪いイルカ」
牧志 浩太
「えっ、イルカ? いや、見てない、けど……、いや……、」
彼は一度、何もない空中に視線をやるようにして考える。
佐倉 光
「イルカじゃないものが見えるのか?
気になることがあれば教えてくれ。お前にとって正常に思えても、それがおかしな事って可能性もあるし」
牧志 浩太
「何だろう、長い紙切れ? 違うな、何か数字を書いた一覧表みたいなのが見えるんだ。それが長く続いて……、何か俺に関係のあるものだった気がする。俺は……、そうだ、ずっと見られてた気がした。あの時と同じように。それで、佐倉さんに連絡取ろうとして、うまくいかなくて」

彼はこめかみを押さえて、目を閉じ、記憶をたぐろうとする。
「その端を、何か、掴んでるやつがいて。
それを切れば逃げられるって、俺は」

彼が取り乱す。もがくように、空中に手を伸ばす。
佐倉 光
「あ、ちょっと待て!」
思わず声をかける。
「待ってくれ、なるほど、ちょっと待って、考える。何となく分かる気が、してきた」

前回あの野郎が言っていたことが本当なら、牧志が見ていたのは『あいつ自身のデータ』で、それに牧志が影響を与えたことで、あいつ自身を構成するデータが壊れて……
おいおい、悪魔じゃねぇんだぞ!

しかし、そんなこともあるかも知れない、と思った。デヴァ・ユガで、データで作られた状態になっているのに自覚していなかった俺たち。それが、もっと高次元で起きていたと、したら。
佐倉 光
何が起きたかは何となく分かったけど、じゃあどうしたらいいかはよくわからん!
KP
大丈夫! 話が動きます!
牧志 浩太
「ごめん佐倉さん、俺、しくじった。俺を、」
待ってくれと叫ぶあなたを置き去りに。
「俺を探して、」

世界の端から真っ白なノイズが溢れ。
彼の姿もろとも、あなたを、飲み込んだ。
佐倉 光
牧志の姿に手を伸ばす。
KP
伸ばした手は、届かなかった。

KP
気づけば、あなたは真っ白な空間にひとり立っている。
あのイルカと遭った時の空間に似ているが、イルカの姿はない。

そこにあるのは、ぼんやりと光る、窓のようなモニターのような四角い何かだけだ。
そこには、こんな数字が表示されている。

-444-

あなたはその数字をどこかで見たような気がした。
佐倉 光
ここは……周囲を見回す。
そして、この世界において唯一意味を持つ物に近寄る。

(この数字……あの時の。確か、444……2だったな。他は読めなかったけど)
KP
モニターに触れる?
佐倉 光
そうだな、特に何も起きないようなら触れるしかないだろう。
指先で数字をなぞるように。
KP
あなたの指がそれに触れると、ブン、という微かな音を立てて、
周囲の景色に色がついていく。

視界に広がった光景は、思ったよりも長閑なものだったかもしれない。
あなたは、小さな公園の片隅に立っていた。

滑り台や砂場、アスレチックなど一通りの遊具が揃った公園に、少し冷たい柔らかい日差しが降り注いでいる。
しかしそこに人気はなく、どこかから聞こえてくる鳥のさえずりも、鳥そのものの姿をとらえることはできない。
公園は高い柵で囲われていた。
佐倉 光
そこは見覚えのない風景ですか?
ぐるりと見回して、何か変わったものがないか観察しよう。
遊具の柱を、物陰を。あるいは取り残された玩具などがないか。
あいつが消える時に言っていたこと、あの数字……
もしかするとこれは、牧志の記憶に関係する物なんじゃないのか?
KP
変わったものがないか、と周囲を見回す。

見た所、公園に変わった所はない。ただ、大人でも乗り越えられないだろう異様に高い柵が周囲をぐるりと取り囲んでいるのだけが気になる。

ふと、低い位置から声が聞こえた。
少年牧志
「あっ、大人の佐倉さんだ」
KP
視線を下げると、そこには以前にも一度見たことがあるだろう、
牧志の面影のある、小学生くらいの子供があなたを見上げて手を振っていた。
佐倉 光
「あれ、浩太君。久しぶり? ってのも変だな」
声をかけつつ近寄る。
「こんな所で何してるんだ? っていうかここ、どこなんだ?」
大体、『大人の』『佐倉さん』って呼び名。どういうことだよ。
大人じゃない俺も認識したことがあるって事か?
少年牧志
「えっと、隠れてんだ。悪い奴がいてさ、見つかっちゃまずいんだ」
彼は背を丸めるような仕草をとる。
KP
〈心理学〉で判定。オープンでOKです。成功すると何かあるかも。
佐倉 光
1d100 55 〈心理学〉
Sasa BOT 1d100→49→成功
よしよし
「悪い奴? どんな?」
声を潜める。
少年牧志
「分かんないんだ。他の俺が言ってた、隠れてなきゃいけないんだって」
KP
彼と話していて、あなたはふと違和感を覚えた。
あの時の子供は、にこにこと柔らかく笑っていた。
あなたと事件の記憶を全て失った彼は、周囲を和ませるような雰囲気をもっていた。

状況のせいだろうか?
そんな彼らに比べると、少し慎重そうな雰囲気がある。
佐倉 光
これは、俺が知っている牧志……というか、牧志の一部、か?
あいつが消える時に言っていた、『俺を探して』というのは、この子供のことだろうか。

「浩太君……牧志、ここにいれば安全なのか?」
語りかける口調を子供向けから普通にいつもの喋りに戻しつつも、しゃがんで目線を合わせる。
『悪い奴』といえば、あのイルカか、前回幻で見た『予期せぬ抵抗を受けている』とか書いてた奴だろうな……
少年牧志
「たぶん。でも……、みんな慌ててるみたい。他の俺なら、もっといっぱい知ってるかもしれないけど。
俺、ここでずっと、かくれんぼしてるんだ」
彼は背中を丸め、遊具の陰に隠れるような仕草をみせる。
佐倉 光
「そうか、ありがとう。俺は他のお前を探す。
どこにいるとか、心当たり、あるか?」
持ち物あるかなぁ。具体的にはいつものエネルギーバーあるかなぁ。
少年牧志
「うん。あのな、ごめんな、大人の佐倉さん」

懐を探すと、いつものエネルギーバーが出てくる。
腕にはCOMPもあるが、アクセスエラーを表示している。
佐倉 光
「? 何で謝るんだよ。謝らなきゃいけないのはむしろ、俺の方だ」
言いながらエネルギーバー渡そう。

中身は普通に牧志なんだろうけど、やっぱりこんな場所に子供一人置いてゆくのは気がひける。
何かしたいと思った結果が、これだ。まあ、気休めにはなるだろう。
せめて悪魔喚んでガードマンに付ける、くらいのことでもできれば良かったんだが。
少年牧志
「分かんない、でも、俺のせいだって思ったの」
子供はエネルギーバーを受け取ると、その包みを大事そうにポケットにしまった。
佐倉 光
壁を調べよう。継ぎ目とか扉とかないか。
少年牧志
「佐倉さん、これ」
壁を調べているあなたに、何か小さなものを渡してくる。
「鍵」
受け取る?
佐倉 光
貰うよ。
けれどこの壁、開けてしまうとまずいんじゃないのか?
しかし……こんな壁乗り越える力は俺には、ないなぁ。

鍵はどんなもの?
KP
手の中に渡されたものを見ると、小さく薄い銀色のプレートのようだ。
そこに「-444-」と刻まれているのを見た瞬間、小さな牧志も公園も周囲から消えて、
白い空間の中には前と同じモニターがぼんやりと浮かんでいる。
佐倉 光
プレートを持ったままモニターに近づいて、その表示が変わっていないか見てみる。
KP
プレートを持ってモニターに近づくと、その表示が変化する。
-232-」「-149-」「-036-」という、三つのパネルが表示された。
佐倉 光
この数字は知らないな……これは牧志に関係あるのか?
プレートをポケットの奥にねじ込むと、-232-のパネルに触れる。

KP
パネルに触れると、先程のように視界に色がついてゆく。
そこは、コンピューターの青い動作ランプに覆われた、薄暗い空間だった。
どうやらそこはビルの高層階らしく、壁一面の大きなガラス窓からは、色鮮やかに輝く夜景が見渡せるようになっている。

城塞のように立てられたコンピューターの群れの中、椅子がひとつきり。
薄暗い明かりに照らされた椅子の上に、白いシャツの人物が座って、こちらに背を向けていた。
佐倉 光
「……あれ?」
目をしばたく。
ここは牧志の心か精神か記憶か、まあそんな奴の中で、そうすると。
「波照間さん?」
戸惑いながら声をかけた。
牧志 浩太
「君が、佐倉さんか」

きい、と微かに椅子が鳴った。
白いシャツの人物は椅子を回し、椅子から立ち上がってこちらを向く。

その人物は牧志の顔をしていたが、波照間のような声の響きで喋ったように聞こえた。
佐倉 光
この牧志は……俺を知らない?
近づいていく。相手に敵意などはあるように見えるだろうか。
KP
相手に敵意はなさそうに見える。
平行世界
佐倉 光
おお? この人もしかして。
KP
もしかしてなんだろう(拾えたら拾いたい)
佐倉 光
紅さんかと思った。
KP
かなり近かった 折角だから寄せます
「波照間の記憶を選んだ牧志」という案しかなかったんですが、「それだ!! それってつまりそういうこと!」となって折角だから拾いました ありがとうございます
佐倉 光
なかなか興味深い設定ですね!
KP
牧志が牧志になったのには佐倉さんが深く絡んでるから……
佐倉 光
そうなるのか……
佐倉は自分がトリガーだとは思ってませんね!
KP
佐倉さんいないからって、言って牧志はちゃんと強いし、鱗の眼での会話を見ていると必ずしもそうはならない(あの時点でちゃんと牧志として歩もうとしていたし)と思うんですが、分岐のひとつとして出てきても面白いかなってくらいですね。
でも佐倉さんが牧志・波照間双方に及ぼした影響は強いと思います。
(この世界、波照間の相棒としての佐倉さんもいないかもしれない)
佐倉 光
おっと、悪魔使いにならずに病院で悶々としているか、そもそももっと前にいなくなっちゃってるか、元気にちょっと賢い学生やってるか。
KP
もしかしたら佐倉さんの方が元気にちょっと賢い学生として日常を送ってるのかもしれない。
佐倉 光
多分あの眼鏡姿が基本グラで。
KP
ああー、ぽい。

佐倉 光
どう喋ろうか、迷う。
「はい、僕は……佐倉です」
『紅』
「そうか。合っていてよかった」
その人物は敵意がないと示すように、穏やかに手を広げる。
あなたが知る牧志や波照間より、雰囲気が大人びているように感じた。
佐倉 光
「あなたは? 牧志……の何ですか?」
『紅』
「俺は紅。君の知る彼から聞いたことはあるか?
俺も、牧志浩太でもあった。でも、俺はこちらであることを選んだ俺、と言えばいいかな。
ここは、君と俺が会うことのなかった世界なんだ。
ああ、他にも違いはあるが」

彼はゆっくりと考え、言葉を選んで口にする。
佐倉 光
「……理解が難しい、ですけど……
つまりあなたは牧志浩太であってそうではなく、波照間さんの記憶はあるけど波照間さんでもない。
牧志が、牧志浩太の人格に戻らないで、『紅』さんという人格のままで生きた世界線……
牧志が事件で分岐した可能性の一つ、という解釈で合っていますか」
こちらも慎重に考え考え喋る。
どうして自分がそんな存在と対峙しているのかはさっぱり分からないが。
『紅』
「ああ、それで合っている。
本当なら交わることも、互いに存在を知ることもなかった世界だ」
彼はゆったりと頷く。
佐倉 光
よく知っている人物なのに、全く知らないような、いや、動作もしゃべり方も波照間さんに似てるんだけどやはり少し違って……
「どうしてこんな事が起きてるんだ? 出逢えないはずの人間が出逢えるここは……」
いつもの癖で思索に入り込みかけ……指先に触れたさっきもらった『鍵』の手触りで正気に戻る。

はっと息を呑んで一度首を振り。
「すみません、僕、いや俺、俺の世界の牧志を助けたくて、手がかりを探しています。
俺の世界の牧志や、牧志に興味を持って弄くっている奴のこと、何かご存知ですか?」
『紅』
「ああ。順番に話そう」
KP
彼は傍らのキーボードに手を伸ばし、操作する。
COMPの起動音に似た音が聞こえて、傍らの壁に網目、あるいは分岐図のような図が映し出された。
『紅』
「君が言った通り、ここは誰かの選択や存在によって無数に分岐した世界の一つだ。本来なら出会うことはなかったが、ある時、君の世界にいる俺が……、牧志が、生贄として何者かに狙われたらしい」

彼は無意識にか首を撫でた。その首に赤い痣はない。
「そいつは彼が、並行世界との繋がりを持つことに気づいた。そういう出来事に覚えはないか? 今とは違う時間からアクセスされたとか、そういう」
佐倉 光
「ああ……」
そういえば。俺が見た、あれは。
「未来の牧志と名乗る奴から何度か接触されたことがあります。
結局それが真実かどうかは分からずじまいですけど、心当たりは、ある」
『紅』
「そうか。もしかしたら、それが発端だったのかもしれないな。
ともかく、彼は並行世界との繋がりを持っている。何者かがそれに目をつけた。

彼が並行世界との繋がりを持つきっかけとなった出来事……。
彼と奇妙な事件との繋がりを記した、記録、と言えばいいのかな。
俺にもよく分かってはいないが。

それを足掛かりに、俺を含む並行世界上の彼らをまとめて生贄にしてしまおうと考えた。
それに、君の世界の彼が気づいたんだ」
佐倉 光
そんなもんに気付いちゃったから21になっちゃったんじゃないか。
KP
そんなもんに気づいちゃったから21になっちゃったんです。
佐倉 光
「……分かる、ような。分からないような。
そもそもそんなことが……可能と仮定するしかないのか。
実際もう変なことは起きてるし、会うはずのない人と会ってる」
胸元のヒランヤに軽く触れ。
「だからあいつ、その繋がりを断とうとして自分の記録を壊した、のかな?
いや、壊れたのはあくまで結果か」
理解しがたい現象を、概念を、ゆっくりとしみ込ませるように呟く。
『紅』
「そうだ。彼はその繋がりを断とうとして、自分の記録を破壊した。
きっと、その結果どうなるかまでは見えていなかっただろうと思う。
俺も、その“記録”とやらが何で、何のためのものなのか、分かってはいないからな。

だが、その結果として、彼の記録── 記憶、そのものを破壊してしまった。
その後どうなったかは分からない。今俺がここにいるということは、それは戻ったんだな?」
佐倉 光
「多分……それは俺が修復して……というか、
修復したがっている奴がいて、俺がそいつに手を、貸して」
言葉が氷刃か何かのように舌に突き刺さるように思えた。
俺のエゴで、胡散臭いイルカの手を借りて、引き戻した。

あれは正しかったのか?
けど、あれが壊れたままだと、平行世界の牧志も全て存在しなくなる。
『紅』の言葉はそんなふうに聞こえた。
佐倉 光
正確には、「探索者としての牧志が」だけども。
『紅』
「そうか」
彼はそれが正しかったとも、正しくなかったとも言わなかった。
その眼は穏やかな、少し超越的な色をしていた。
「続けよう。
君の手でその記録は元に戻ったが、つまりそれは、何者かから狙われている現状を元に戻してしまうことでもある。
彼は……、どこまで見えていたかは分からないが、並行世界の俺達の存在に気づいた。
無意識か、意識的にかは分からないが、
自らその記録をたぐって、俺達に助けを求めた」
佐倉 光
「途方もないな……」
言うなれば皆当事者、被害者。助けてもらえないわけもない。
(牧志の奴、最近変なことよく知ってると思ってたけど、そんなことまでできるようになっちゃったのか。
人間の域を超えつつある、というのか)
少し背筋が寒くなると同時に、羨むような気持ちも、少し。
『紅』
「俺もそう思う」彼は僅かに苦笑した。
「俺達は協力して彼を守ることにした。並行世界の彼の中でも、俺達は比較的色々やれる方だからな」
そう言って、彼はその手に填められたグローブを示した。あなたには分かる、それはCOMPだ。
クラスは何だろう
佐倉 光
〈神話〉知識20越えてるから、神話生物見た時に判別できちゃう可能性がそれなりにあるんだよなぁ。
KP
なんですよねぇ。少しずつ踏み越えつつある。
佐倉 光
紅さんナックルコンプ使いのサマナーかサクセサーか、いずれにしろ格好いいな!
デビルシフターも捨てがたい
KP
デビルシフターもいいな!!
弓も考えたんですけど紅さんは紅さんだし、波照間とは違う得物がいいなと思ってこうなりました
佐倉 光
パンチがすごい紅さん
KP
紅さん前衛のイメージがあります。
ナックルコンプ……ソウルハッカーズでフィネガンが使ってた。精密機器で殴らないで欲しい。
サマナー……悪魔と契約し、それを召喚して戦う者。
サクセサー……悪魔の力を宿した魔晶武器を扱える者。
デビルシフター……悪魔に変身する力を持つ者。

『紅』
「とはいえ、奴の標的は俺達全員だ。
俺達のうち誰かが辿られて捕まれば、一網打尽になってしまう可能性もある。その意味では分が悪い」
彼が分岐図に手を伸ばすと、その図を五つに区切るような線が現れた。
「俺達は、それぞれの記録、記憶を少しずつ封じたり書き換えたりして、それぞれの居場所の中に籠もった。そういうことをできる俺がいる。

全貌を辿られないように、あまり情報共有はしていない。奴が何処にいるのか……、俺にも分かっていないんだ。現状は、時間稼ぎに過ぎない。

……佐倉さん。頼みたいことがある」
彼はあなたに向き直る。
佐倉 光
「現状手繰られずに済む俺にならできること、ですね」
頷く。断る理由がない。断るくらいならこんな所まで来ていない。
『紅』
「ああ、そうだ。
他の俺達が、揃って頼りになる、なったと言うだけはあるな」

彼はふっと微笑み、あなたの手元のプレートを指さした。
「それは俺が作った鍵だ。それがあれば、他の俺達が籠もっている場所に入れる。

奴はもう、俺達に手を出そうと動き出しているだろう。俺達の領域の中に侵入しているだろう、奴を……、見つけてほしい」
彼は悔しそうに一度、拳を握る。
「調整している最中ではあるが……。それを使って、君に俺達が少しではあるが、力を貸すこともできるはずだ。

準備ができたら、その鍵の刻印を光らせて知らせる。

すまない、任せた」
佐倉 光
「ありがとう、俺達今まで二人で色々乗り越えてきたんだ、今回も同じ、いつも通りってことですよ」

サマナーの牧志、か。一緒に戦えるってのも楽しそうだ。
ああでも、この牧志、紅の世界には俺はいないって言ったっけ。

しかし、他の牧志が俺の噂してたって?

少しくすぐったくなる。
するとさっきの子供牧志は、子供の俺と会っていたのか。
みんなにいろいろと話を聞きたいが……特に悪魔使いっぽい紅さんに色々学びたいところではあるが……
それどころじゃ、ないよな。

軽くため息をついてヒランヤを握る。
牧志を助けるためだ、雑念抱いてる場合じゃない。
大体、牧志をまとめて生け贄に出そうとしている、というなら、何かが喚ばれる、ということだ。事は牧志だけの問題じゃない。
「ありがとう、行ってきます」
『紅』
「ああ、……頼む」

そう言って彼はあなたに小さなプレートを渡す。そのプレートには、「-232-」と刻まれていた。

あなたがプレートを受け取ると、周囲の風景が白いノイズに包まれていく。

こちらに背を向けた彼が、
「紅、俺だ。心強い協力者が得られた」

誰かとそんな通話をしているのが聞こえた。
佐倉 光
俺じゃなくて牧志と組んでる波照間さんか……
あっちの波照間さんも頼りになるんだろうな。

そんなことを思いながら二枚のプレートを握りしめる。

ここから先には、敵がいる可能性があるのか。
敵。どんな奴だろうか。
KP
最後の通話は完全なるただの演出!!(入れたかった)
(佐倉さんが、相手がどういう相手か分かったタイミングで一人称を変えてるのが印象深い)

KP
白い空間の中に浮かぶモニターには、「-149-」「-036-」と表示されている。
佐倉 光
今度は迷わず-149-に触れる。このナンバーはもしかすると、それぞれの牧志を示す番号なのかも知れない……
KP
パネルに触れると、視界に色がついていく。

周囲に広がっていく風景のあまりの巨大さに、あなたは圧倒されるかもしれない。
そこは円柱状の塔の中、壁一面に書棚が敷き詰められた巨大な書庫だった。
壁に沿って敷かれた階段の途中に、あなたは立っていた。

言語も時代もバラバラな大量の本を、細かい模様が施されたランプの光が柔らかく照らしていた。

手すりに手をかけ下を覗けば、円形の床が見える。
コンパスのような星図のような不可思議な文様が描かれており、ぼんやり光を放っている。
その中心に、人がいた。

様々な色合いの宝石を散りばめた鎖を引きずって、見知らぬ文字を編み込んだローブを着た、そう、あなたが知る概念ならば魔術師のような格好をしたその人の、茶色い髪の頭が見えた。
佐倉 光
「牧志……?」
戸惑いと呼びかけが同時に口から飛び出した。
さっき言っていた、力を持つ奴っぽくもある。

それにしてもこんなファンタジーな所にあいつがいるのも変な気分だ。
周囲の本への興味をぐっと抑えて階段を降りて行ってみよう。
KP
彼は、床に広げられた時計のような八卦図のような盤面に手をかざしながら、何かをしていた。

その手の動きに応じて床の模様から発せられている光も揺らめいているようだ。

階段を降りていくと、その人物の背格好、雰囲気、顔立ちが確かに牧志のものだと分かる。
あなたが知る彼よりも、少し年上に見えた。その頬に、その首全体に巻きつくように赤い痣が這っていた。
ローブの牧志
「ああ、別の世界の佐倉さん…… だよな?」

彼は振り返らないまま、あなたを知る声で応えた。
佐倉 光
「そういうこと、みたいです」
これはまた随分、魔術に精通していそうだ。
詳しく話を聞いてみたいし、ここの本を読んでみたいものだけど、それどころじゃない……

それどころじゃない、だらけなのに、よく俺耐えられてるな。
何となくそんなことを思った。

あの痣。こっちの牧志にもあるのか。
痣のことくらいは訊けるだろうか。

階段をそのまま降りて、近づく。
あ、床に広げられた八卦図のような盤面には踏み入らないよ。
ローブの牧志
「気になるって顔してるな。別の世界でもそうなんだ」

ローブを纏った彼はその布の長さで地面に縫い止められているようにすら見えながら、振り向くことなく笑った。
「ごめん、作業中で悪い。ちょっと手が放せなくて」
佐倉 光
「ああ、それじゃ、待たせて貰います」
待っている間その辺観察しよっと。
なんだ、この世界にも俺いるのか。
いいなぁ、この世界の俺。
なんか魔法覚えて帰れないかな。
それとも話くらいできるのかな?
ローブの牧志
「ああ、ごめん。大丈夫、話くらいはできる。

何か調べたいものがあれば本を見ていってもいいけど、黒い書棚の本は見ない方がいいかな」

彼は一瞬、壁を埋め尽くす書棚に視線を送り、またすぐに目の前の盤面に視線を戻した。
佐倉 光
見るな、だって?
えっ、フリですか?
「今回、俺の世界の牧志に手を出した奴について、何かご存知ですか。あと……今あなたが何をしているのか、とか」
ローブの牧志
「完全にじゃないな。あれはたぶん邪神の信者だ。
とにかく正体が掴めないし、尻尾も掴めない。

俺も、俺達の居場所を守って、分割する結界の維持で精一杯なんだ」

彼は少し悔しそうに言い、瞬きごとに様子を変える盤面に手を伸ばす。
佐倉 光
「それと、首の痣について、何か分かることがあれば訊きたいです」
訊きたいことだらけだ。絞りきれない。
問いかけつつ本棚に近寄って背表紙を流し見よう。
ローブの牧志
「ああ、これか。聞いてくるってことは、これが俺に刻まれたより後の佐倉さんなのかな」

本棚に近寄って流し見るなら、階段の上の方に、言われたとおりの黒い書棚があるのが見える。

見る?
佐倉 光
SANチェック》の気配だけど、そりゃこんな所で「見るな」って言われたらね……どんな本があるのかなーくらいは見たいよね。
「どうにもその痣が禍を呼んでいる気がして。俺の責任だし、何とかしてやれないかと」
言いながら書庫に近づく。
この世界の俺もうっかり迂闊な契約したのか?
KP
書庫に近づく。
黒い背表紙の何も書かれていない本にひどくひどく惹かれ離れがたいとすら感じてあなたは手を伸ばす。操られるように。

次の瞬間。
ローブの牧志
「あー、あーあー、佐倉さんならそうするよな、ごめん、フリじゃなくてガチ」

そんな声が降ってきたかと思うと、あなたは一瞬何をしていたか分からなくなる。
気がつくと階段の一番下にいて、目の前の書棚を見ていた。

【幸運】で判定。

佐倉 光
1d100 75 【幸運】
Sasa BOT 1d100→71→成功
邪魔してごめん、魔キシ
KP
【POW】×5で判定。
魔きし笑った
佐倉 光
1d100 15×5 【POW】
Sasa BOT 1d100→70→失敗
アカン
あれ
75だから成功してるよな。
KP
ですね。判定値が変だ。
佐倉 光
かけ算駄目なんですねー
描写二度手間失礼しました。

佐倉 光
「……あれ?」
思わず間抜けな声を上げた。
KP
あなたはその一瞬、記憶に干渉された、と気づく。ぞわりとした怖気が背筋を撫でる。

しかし、その怖気と気づきだけを残して、黒い書棚があったということも、そこにあった一冊の本のことも、あなたの記憶から消えていた。

目の前の書棚をぼんやりと眺めていると、そこから1冊の本がぱさりと落ちた。手に取ってみればギリシャ神話のあるエピソードについて書かれているようだ。

▼『トロイアの木馬
読んでみる?

※痣については順番が前後したので、この後で返答します。

佐倉 光
えっ魔キシくんすげぇ。〈クトゥルフ神話〉知識どんくらいあるんだ。
この世界の佐倉やべーのに手を出しちゃあ魔キシに助けられたり怒られたりしてそう……
KP
やってそう……>やべーのに手を出しては

佐倉 光
ぱさりという音でふと我に返る。
(ん……俺……ああ、そうだ、手がかりが欲しくて本を見てたんだ)
本を拾い上げて開いてみる。
KP
あなたはそのエピソードを、少なくとも名前と概略くらいは知っているだろう。

それを語源とするコンピューターウィルスの一形式、無害なソフトウェアを偽って侵入しユーザー自ら実行させるというそれは極めて有名で、古典的だ。
▼『トロイアの木馬
トロイア戦争において、攻め手に欠いていたギリシャ軍がトロイア(イーリオス)陥落のために作った装置。トロイの木馬とも呼ばれる。

ギリシャ勢に下されていた神託によればトロイア陥落のために必要な要素のひとつに「イーリオス城正門の破壊」があった。
そこでギリシャ軍は城門を超える大きさの木馬を作り、中にネオプトレモスらが隠れ、他の兵士たちは近くの島に移動し撤退したように見せた。

翌日、木馬と共に残ったシノーンはトロイア人に問いただされる。シノーンは「ギリシャ人は逃げ去った。木馬はアテーナーの怒りを鎮めるために作ったものである。なぜこれほど巨大なのかといえば、この木馬がイーリオス城内に入るとギリシャ人が負けると予言されていたためだ」と嘯いた。

欺かれたトロイア人は城門を壊してまでイーリオス市内に木馬をひきこみアテーナー神殿に奉納すると、市を上げて勝利の宴を開きみな酔いつぶれていた。

人々が寝静まり守りも手薄になった頃、木馬の中に潜んでいた兵士たちが出てきて、撤退したと見せかけていた軍勢も引き入れる。こうして不意を突かれたトロイア人たちは反撃がかなわず滅亡した、という物語。
佐倉 光
「トロイの木馬……か」
割となじみ深い。そして今はあまり聞きたくない話ではある。
助けに来た牧志の中に、敵が混ざっている可能性がある。
いや、もしかしたら、俺自身が木馬という可能性はないか?

前回の事を思えば、そんな事も考えられる。
ローブの牧志
「それで、この痣のことだったっけ」

あなたの思考に答えはない。
彼の首筋を照らす光のせいなのか、赤く這う痣が生きているように蠢いて見えた。
佐倉 光
「あ、ああ、そう、何か少しでも分かれば」
この牧志は背を向けてるんだよね。
KP
背を向けていますね。盤面にずっと顔を向けていて、書棚に一瞬視線を投げた以外、振り向くことはないし、あなたの顔を見てもいない。
佐倉 光
〈心理学〉、しづらいのが気になるね~。
まあとにかく話聞こ。
さっきの部屋でもやっときゃ良かった。
ローブの牧志
「これは、千の貌との契約の証。俺があれに目をつけられてるって印」

彼は少し遠い目をして歌うように言った。

「色々あって俺達はここまで来たし、俺は本当に色んなことを知ったけど、これを消す方法は分からない…… というか、ないんじゃないかな」

彼の手が光を引いて盤面の上を踊った。
「あれは俺達の声を聞くようなものじゃないし、俺達の手が届くものでもない。あれが俺に飽きることがない限り、どうにもできない。今はそう思ってる」
佐倉 光
「千の貌?
痣をつけたのはチクタクマンだ……」

しかし、気になっていることはある。
前に科学技術館で会ったチクタクマンと機械の街で会ったチクタクマンは、全く同じものだったような気がしないのだ。
「千の貌……いや、聞いたことあるぞ。確か、阿久津さんの変身ベルト紛いの道具について話を聞きに行ったときに、そんな名前が……波照間さんが詳しかったな」
あの時名前が出すぎて、あまり詳しいことは覚えていないが。
どうして録音しておかなかったんだろうと悔やむ。
「飽きる? そういえば、あのイルカ野郎もそんなようなことを」
気になることはまだある。
この牧志が言っていることと、あのイルカが言っていたことを言葉通りにとらえるなら、あのイルカは今回牧志を生贄にした奴らとは違うのか?

ずっと朧気な印象からの違和感だったものがはっきりとした違和感を持つ。

『面白いから失いたくない、だから修復を手伝え』というようなことをあのイルカは言った。
『生贄にする』ということは失うことだろう。
あのイルカは今回の元凶ではないのか?

痣のことは今はどうしようもない、と考えるべきで、とりあえずイルカのことも置いておいて良いかも知れない。

あれは今回の事件の影響で壊れた玩具を直したがった。
結果的に俺は牧志を取り戻すことができ……牧志は再度危機にさらされているわけだ。
「そうですか……ありがとう。参考になりました」

彼が維持している陣を踏まないようにして、なるべく近づく。
彼は、『紅』が言っていた強い力を持つ者だろう。情報を書き換えたりすることができると言っていた。
実のところ俺も何かされたような気はするが……何故か悪意は感じなかったし、まあ、置いておこう。


「あなたは、ほかの牧志の居場所を守っているんですね。
他の牧志がどんな人、等は知りませんか?」
質問と同時に〈心理学〉したい。前まで行けなくても横顔くらいは見えるかな。

佐倉 光
さっきの事を考えれば、都合の悪い印象を抱いても書き換えられちゃいそうな気がするけどね。
今考えてもしょーがないことをネチネチ考えてしまうことができるのも置き卓の利点かな……
KP
確かに!
考えてることや思いを深く描写できる・見られるのものも利点ですね。
今回みたいな振り返り型のシナリオだと本当に合う
佐倉さんが巡らせる考えをめちゃめちゃ深く見られてこれは置きでやってよかった

ローブの牧志
「そうか、参考になったならよかった」
すぐ前にいるのに、ずっと遠い所から話しかけてくるような声は、
それでもやはり牧志の面影を感じさせる気安さで笑った。
KP
千の貌。彼はきっとその本質を、名をも知っているのだろう。
それでもその名を言う気はないようだった。

ローブに縫い留められた大量の宝石が、彼の手の動きに合わせてきらめいた。
宝石って石だ。これ結構重いんじゃないか? と思うかもしれない。
ローブの牧志
「ああ、知ってるよ。
深く知っているって程じゃないし、詳しい事情を俺が言うのも何だから、ざっとになるけど。
あんまり言及すると、奴に詳しく知られちゃうかもしれないしな。

まず、小さな子供の俺。
子供ではあるけど、何も起きなかった俺じゃない……、俺達は全員、俺がいちど死んだ、あの時点から分岐した俺なんだ。
その後から子供になったらしくて、少し矛盾を抱えた存在になってる。

次に、『紅』って呼ばれてる俺。
あいつは俺じゃない方の記憶を選んだ俺。波照間先輩のたったひとりの相棒で、兄貴。
肉弾戦もハッキング方面にも強くて、何かと頼りになる人だよ。

次に、この俺。
千の貌と深く関わりすぎて、日常どころじゃなくなっちゃった俺。
でも、佐倉さんとは楽しくやってるし、いつも助けられたり助けたりしてるよ。

次に、世界が一度滅びちゃった俺。
その時に佐倉さんを失った、って言ってたな……。

次に、俺と少し似てるけど方向性の違う俺。
佐倉さんと組んで……、ああ、佐倉さんとこに干渉したのはこの俺なのかな」

結界の維持とあれば緊迫した状況かもしれないのに、彼は緩やかに、穏やかに語る。
KP
なるほど。そろそろクローズドでこちらが振ります。>〈心理学〉
横顔しか見えないので-10%。
Sasa BOT Secret Dice
シークレットダイスの結果個別メッセージで来るんだ シナリオ終わったら結果どうだったかお知らせしますね

あなたは彼の横顔を覗き見る。
ゆらゆらと蠢く赤い痣が、見間違いではない、先程は頬までだったものが目元に達して眼球に喰い込んでいた。

どこか人の世界を思考を越えてしまったかのような、
それでもやっぱり牧志は牧志のような穏やかな横顔に、真意というものがあるのか、あなたには推し量れなかった。
メガテンとCoC
佐倉 光
実はトラペゾヘドロンの話をした時に、「無謀の仮面」だの「ニャルラトホテプ」だの具体名めっちゃ出てる。
覚えてるとCoC的には不都合かと思ったので忘れときました。
KP
なんですよね。世界の違い。
CoC的には具体名出ない方が雰囲気よさそう。
佐倉 光
その時「俺たちSAN0だしぃー」みたいな話もしてる。
KP
あの世界ニャル様しばいたり従えたりできちゃうからなぁ。って話もしましたね。
佐倉 光
まさか佐倉でCoCやるなんて思ってなかったの……
KP
でも楽しいの……
〈クトゥルフ神話〉技能が上がりすぎて日常から完全に外れてしまった牧志のイメージです。>魔きしくん
たぶん何かと色々代償も背負ってる。
佐倉 光
そんな状態で集中してるトコに、移動と記憶の書き換えなんかさせてスマンカッタ。いやほんとに。
KP
佐倉さんだなあ、ってふふっとなってると思うのでいいんですよ
佐倉 光
多分「ダオロスのこと思い出せ」って言われれば、今の佐倉なら止まるw
いや止まろうかなって気にはなる。止まるかはその時次第。
KP
それでもその時次第なのが最高に良い 佐倉さんだなぁ
ある意味深淵を覗かずにはいられないあたりがとても探索者
佐倉 光
魔きしくんの「フリじゃない、ガチ」って言い方がものすごく好き。
知り尽くされてるというか「しょうがないなこいつは」感が。
KP
たぶん何度も何度もそういうことがあったんだろうなぁっていう。

佐倉 光
彼が語る様々な『牧志』たちの話に思わず声が漏れる。
確かに、前者二人に関しては抱いた印象とずれていない。


一人目、-444-は子供に戻ってしまった牧志なのか。子供扱いして悪かったな。
喋りも子供みたいだったけど、一体何があったんだ。あんな所に一人で大丈夫かな。

ってか-232-の『紅』ってサマナーでハッキングもできて肉体派ってなんだよ完璧超人かよ。
あいつは強そうだし、色々知っていそうだった。もっと話してみたかった。

……俺が死んだ世界もあるって? 世界ごと死んだのか。余程運が悪かったんだろうな、その世界も、俺も。
あんなに人と関わるのが好きな奴が独りに……想像できないな。というか、耐えられないだろうと思ったんだった、あの時。機械の街の時に。

ハロウィンの時に干渉してきた奴もいるのか。
もう二度と会えないだろうと思ったのに、まさか会えるかも知れないなんてな。
詳しく訊きてぇなぁ、あの時何があったのか。前回はさっさと逃げられたし。


そして、この-149-の牧志。
体中の宝石は只の装飾ではなさそうだ。夢で使った宝石みたいなものだろうか。
随分と知識も経験もぶ厚そうだが、その結果が契約の痣に……多分チクタクマンに限らない『千の貌』の影響、というか、皇津様流に言えば『縁の強さ』が出ているんだろうか。
過ぎた知識は、人を日常から、更には人そのものから遠ざける。それを俺は痛いほどに知っている。
この牧志は多分、知った上で知ることを選び、かつ人で居続けている……おそらく、とんでもなく危ういバランスの上で。

表情は良く読めないし、具体的に何をしているのかは分からないけど、かなり無理をしてくれているんだろう。

もしかすると誰かは、俺が知っている牧志の未来の姿かも知れない。
誰一人だって疑いたくはないんだ、本当は。


言葉になったのはただ一言だった。
「ありがとう」
ローブの牧志
「こちらこそ」
ふと、一瞬だけ彼がこちらを向いた。
ずっと穏やかで静かだった表情が少しだけ動いて、引き締められる。

「俺達を、頼む」

彼のローブに結ばれていた宝石の下から、カチャリと音がした。
小さな銀色のプレートがそこから外れ、ふわりと浮かんであなたの手元にやってくる。

そこには、「-149-」と刻まれている。
佐倉 光
頷いて、彼の鍵を受け取る。見た目よりとても重く感じた。
緊張しているな、と自覚する。

奴を見つける、って、どうしたらいい。
こうして鍵を集めて話を聞いて、なんとなく事情は飲み込めてきたし、興味深いことも色々分かってきたが……
その全てが本当なのか、俺には分からない。

そもそも、俺の世界の牧志は今どういう状態にあるんだ?
具体的にどうやってこの状況を打破するつもりなんだ?

ただひとつ分かるのは、全てを託されている俺がしくじったら、
全てが敵の手に渡り、全部台無しになる、ってことくらいだ。

牧志の存在がかかってなければ、なかなかにスリリングで面白い状況なんだけどな、と、プレートの輝きを確かめるように目の前にかざす。
「信じてくれていいよ」
軽く言って手を振る。
KP
彼が手を振ったのが見えたような気がした、その姿も白いノイズに飲み込まれていく。

気がつくと辺りは何もない白い空間に戻っていた。
ぽつんと浮かぶモニターには、「-036-」と表示されている。
佐倉 光
この番号、何だろうな。
牧志がこれだけの人数いるってことかな?
マルチバース理論、ねー。
まさか自分がそんなもの見ることになるとは。

残る並行世界の牧志は二人か。
情報見逃さないようにしないとな。

右手に託された三枚のプレート、左手にヒランヤを握り、その手に食い込む感覚を味わうように深呼吸。
「よし、Goだ」

モニタに指を滑らせる。
佐倉 光
魔きしくんの情報に大変ワクワクが止まらない中の人です。
KP
やったぜ
佐倉くんいまいち方針が見えない状態で託してごめんな。

ひとこと
佐倉 光
またピンチに陥ってる牧志を佐倉は助けられるのか。

こ……これは……
シナリオの記載がどうなっているかは解らないけど……
色々話せて楽しい。さすが重継続者向け。
たまらんネタですね、個人的に。

牧志に幸あれ。


CoCキャットゥルフ『それは月明かりの下で』 ユキ 2

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【置】CoC『スペクト・ラム』 佐倉&牧志 5

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【置】CoC『blood red decadence』Side:B 牧志&佐倉 3

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【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト  」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
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PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」


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ダブルクロス 番外編

ダブルクロス
番外編 1
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女二人でひたすら呑んでました。
みたいな。