こちらには
『SHOTGUN KIXXING MARRIAGE』
のネタバレがあります。
本編見る!
KP
扉を開けると、落ち着いた音楽があなた達を迎えた。
喉を微かに刺激する煙草の煙と、ウィスキーの匂い。

カウンターの向こうにいた少女が、僅かに顔を上げる。

少女は口にくわえていた煙草をじゅ、と消すと、こちらの格好に頓着することもなく、「客か。自由にしな」と声をかけてきた。

カウンターの向こうの棚には様々な酒のボトルがいくつも並べられており、室内の黄色がかった灯りに光を反射させていた。
薄暗い店の奥には、大きな絵画が飾られているのが見える。

店内に、他に客や店員の姿はないようだ。
佐倉 光
ひとまず胸を撫で下ろす。
そのまま真っすぐに入りかけて、牧志の方に振り向いて手を貸す。
牧志 浩太
(とりあえず、入った瞬間に捕まるとかいうことにはならずに済みそうだな)
あなたの手を取りながら、小声で囁く。
佐倉 光
「カウンターでいいか?」
こうなったら堂々と情報収集だ。
カウンターに座って適当に一杯注文しよう。
バーテンが変な動き、酒に何か混入させたりしないかは見る。
牧志 浩太
「ああ。お邪魔します」
牧志は嵩張る布を両手で寄せ、カウンターの下に収めながら横の席に座る。
KP
少女は無表情のままシェイカーと酒瓶をいくつか手に取ると、黄金色のカクテルをふたつのグラスに注いであなた達の前に差し出す。
蜂蜜の甘い香りと、つんとした煙のような匂いが混ざり合って、神秘的な気配を醸し出した。
KP
彼女の手を目で追っていると、多くの酒や割り物が並ぶ棚のひとつに変わった物があるのに気づく。
細長くてシンプルな、一抱えほどもある真鍮製の箱だ。
ラベルやレリーフはなく、酒の箱とは見えない。
佐倉 光
明らかに悪魔だ……
佐倉 光
あ、やべ。金……
お金っぽい物は着衣に入っているだろうか。
佐倉 光
素で金のこと忘れてた。
KP
普段あんまり所持金処理されませんしね。
KP
「ああ、金か。じゃあそれ一つ寄越せ」
少女は長い指で、牧志のドレスの胸元に縫いつけられている宝石と、あなたの胸を飾る花を指した。
佐倉 光
「え、こんなのでいいのか? 取れるかな」
靴が脱げなかったことを思い出して、それでも一応花を抜き取ってみる。
KP
花は引っ張っても取れそうになかったが、少女がこちらへ指を差し出すとするりと取れた。
牧志 浩太
「えっと、これ……、だよな?
ついでに俺達の魂取っていったりしないよな?」
KP
「取るか、そんな不味い物」
牧志 浩太
「魂、不味いのか……」
KP
「ゲロマズ。自覚ねえのな」
佐倉 光
「不本意だけど納得」
俺も牧志もどう考えたって美味そうじゃない。
牧志 浩太
牧志は恐る恐る、心臓の位置にある宝石をひとつ取って少女に渡す。
佐倉 光
「本人には取れないのにあんたには取れるのか。何なんだ? これ」
本人に『は』って可能性もあるか。
牧志の宝石を引っ張ってみる。
KP
引っ張っても取れない。
取れないし、ドレスの胸元が乱れることもない。
KP
「まあ一つくらいはな」
少女はそう言うと、カウンターの向こうで何かを取り出した。
まな板と、それから鋭く光るナイフだ。つまみでも作るのだろうか。
佐倉 光
しょうきどかしらぁー
佐倉 光
酒に口を付けながら手元を見守る。
流石に刃物が出てくると少し警戒するが。
牧志 浩太
「あ……、美味しい」
KP
グラスを傾けると、口の中にやさしくまろやかな蜂蜜の風味とアルコールの刺激が広がった。
煙の香りが鼻に抜け、嗅覚を楽しませてくれる。
美味しい。ようやく腰を落ち着けられた気分とともに、気力が満ちていくようだ。
佐倉 光
グラスを傾けて唇をつける。舌の上で転がして味わう。
佐倉 光
「おおぉ、これはなかなか。
はちみつ酒かな?」
KP
酒を口にした二人は SAN +1d2。
牧志 浩太
ナイフの光に気がついて、牧志も少し警戒を漂わせながら少女の手元を見る。
KP
手元を見守っていると、少女はまな板へ自身の指を置いた。
躊躇いなくその上に、鋭い刃を滑らせる。
牧志 浩太
「えっ!?」
KP
彼女は躊躇いひとつない手つきで、自身の指をスライスし始める。
彼女の白く美しい指は、たちまち数ミリ程度の見事な輪切りとなる。
脂肪がふつふつと混じった、カルパスのような断面がよく見えるだろう。
佐倉 光
「いてぇ!?」
爪かと、思っていたのに。思わず声を上げてしまった。
佐倉 光
1d2 Sasa 1d2→1
SAN 57 → 58
牧志 浩太
1d2→1
SAN 28 → 29
KP
タイミングの関係でSAN回復と《SANチェック》(この後で入る)が同時に飛んでくることになっちゃった。
佐倉 光
ひょえ
キリが悪いけど一時なので続きは明日に!
ありがとうございました!
KP
ありがとうございました! 大変なところで一時!

KP
彼女は輪切りになったそれを一枚ひょいとつまむと、口に入れる。
もぐもぐと咀嚼した所で、あなた達の愕然とした視線に気づく。
KP
「食うか」
指のひとつ減った手で、それをこちらへ差し出してきた。
佐倉 光
「え。い、いただきます」
思わずそう答えた。
KP
SANチェック成功時減少 0失敗時減少 1》。
佐倉 光
1d100 58 Sasa 1d100→ 54→成功
牧志 浩太
1d100 29 《SANチェック》 Sasa 1d100→ 80→失敗
SAN 29 → 28
KP
「そらよ」
彼女はそれを皿に乗せ、あなたと牧志の前に差し出した。

薄い無地の小皿の上に、薄く切られたそれが断面をさらして、白い皮のついたままの姿で乗っている。
牧志 浩太
「え、えええ」
牧志は戸惑った声を出し、それを怖々とつつく。
佐倉 光
「ありがとうございます。じゃ、遠慮なく……」
なかなかに衝撃的なそれをつまんで口に入れる。
酒が美味かったならきっと食の味覚は似ているんじゃないだろうか。
牧志 浩太
ごくりと息を呑み、牧志がそれを口に入れたのは、あなたと同時だった。

出された物だし、結局気になるのだ。
KP
なんと、それはとても美味しかった。おいしかった。おいかしった? おいし? おいしかった。おいし。おいしおいし。

おいしー!
牧志 浩太
「おいしー!」
牧志が顔を赤らめて少女の指を見る。
少女はナイフを走らせると、指が一本すっかりなくなるまで輪切りにし、あなた達の前の皿に乗せた。

なんて美味しそうに食べるのだろう。
ちょっと妬けちゃう、かもしれない。いや、そうか?
KP
あなた達は変な狂気ゆめを見ている!
狂気に呑まれて SAN -1。
牧志 浩太
SAN 28 → 27
佐倉 光
「おいしー!」
なんだこれ美味しい。
もっと食べたい。

牧志が物欲しそうに少女の指を見るのを、少し嫌だなと思い、
そしてこんなに美味いのだから仕方ないと思う。
どうして嫌だったんだろう?
牧志は俺のだから?
佐倉 光
いやいや何考えてんだ俺!
佐倉 光
誤魔化すように追加してもらった指を口に含む。
佐倉 光
おいしー!
骨がなくて食べやすい!
骨がないのかー、悪魔だもんなー!

SAN 58 → 57
佐倉 光
「おねーさん、指切っちゃって大丈夫なの?」
KP
「あ?」
彼女はこともなげに手首を振る。
指の断面から、びゅるりと新しい指が生えた。
無限湧きである。
佐倉 光
「おおおおすげぇー!」
純粋に驚くと同時に感動してしまった。
牧志 浩太
「すごいなー。何度でも生えて痛くなくておいしいのかー。いいなー」
牧志はにこにこと嬉しそうにそれを口にする。
佐倉 光
「ごちそうさまですー!」
佐倉 光
「すみません、ところで、ここ、どこです?
うっかり迷い込んじゃったらしくて」
KP
「あ? ここ? 分かんのか?
――――だよ。エスの根城だ」

おそらく、彼女は『ここ』の名を教えてくれたのだろう。
だが、耳の孔を捩じるような響きの一連の音は到底「言葉」として弁別できるものではない。

あなた達の発声器官では、発声することもできそうにない。
……『塔』でも使えば、もしかしたら可能かもしれないが。

分かってはいただろうが、彼女は人間ではない。
発声器官の造りすら、本質的には異なる。
佐倉 光
「……知らない場所らしい、ってことは分かりました」
KP
「迷い込んだっていうか生贄だろ、お前ら」
牧志 浩太
「……知ってたんですか」
KP
「そりゃあな。お前ら目立つし」
佐倉 光
「えーなんだ、知ってたんですねー
ここだけの話、僕たち誰に捧げられるはずだったかとか、
捧げようとしてるひとたちどんなヒトたちかってご存知ですか?」

彼女がこちらを生け贄として捕まえる気なら、酒やツマミ(?)に何か混ぜたりできただろう。
今更じたばたしたって仕方がない。
KP
「おれにとっては客だからな。
捧げようとしてる奴? ああ、エスのことか。

どんな、か、…………そうだな、努力家ではあるな。
誰に? さあな」
少女はナイフを置き、カウンターの中に片付けながら答えた。
牧志 浩太
「努力家の結果があれなのかな……」
佐倉 光
「努力の方向。
いや、そいつにとっては正しい方向なのか?」
佐倉 光
「しっかし、どうしたもんかな」
店の中を見回す。その目が絵画にとまった。
何が描いてあるんだろう?
絵には恐ろしい存在が描かれていた。
佐倉 光
1d100 57 《SANチェック》 Sasa 1d100→ 83→失敗
1d3+1
佐倉 光 - 今日 0:45
1d3+1 (1D3+1) > 3[3]+1 > 4
SAN 57 → 53 Sasa 1d3+1→ 2+1→合計3
佐倉 光
「牧志、こっちは見なくていい」
喉の奥をぎゅぅっと押さえられるような圧の下から声を出した。
佐倉 光
全身に冷や汗が浮く。
到達したわけではなくとも分かる。
今までに幾度もその知識に触れたことがある。
時には正気を奪われたこともある。

時に俺たちを招くものの背後に奴はいる。
佐倉 光
その手のが描かれているんだろうなぁとは思ったけど。
KP
思いっきりその手のでした。
牧志 浩太
振り向きかけた牧志は、あなたの声色に只ならぬものを感じ、ぎしりと首を止めた。
佐倉 光
「ただの、絵だ」
牧志に伝えるためというより、自分に言い聞かせるために呟いた。
牧志 浩太
「そうか、……ただの、絵か」
その言葉で逆に、余程のことが描かれていたのだ、と分かったらしい。
牧志はそれから意識を逸らさせるように話題を変える。
牧志 浩太
「佐倉さん。あの箱、なんだろうな」
牧志が指さしたのは、酒瓶が並ぶ棚。
酒瓶の間に唐突に置かれている真鍮の箱だ。
佐倉 光
「ん……ああ。酒じゃないのかな?」
牧志 浩太
「なのかなと思ったけど、何も書かれてないし、いくらなんでも大きいと思ってさ。それだけ大きな瓶が入ってるのかもしれないけど」
牧志は話題を逸らせた手応えに、小さく頷いて続ける。
佐倉 光
お店の人に訊いてみるか……
KP
「ああ、あれか」
グラスを拭いていた少女が顔を上げる。
「前に常連が置いていったんだ。何百年も取りに来ねえし、あいつ忘れてるんじゃねえか。
何が入ってるか知らねえが、全く」
佐倉 光
「ふーん」
箱の様子をよく見てみる。何百年も前の忘れ物か。
……つーかこのバーテンもさらっと年上だな。知ってた。
KP
ラベルもレリーフもない、長い箱だ。
1メートル近い長さがあり、酒瓶にしては随分と細長い。
鍵がかけられているようで、鍵穴が見える。
佐倉 光
「中に何が入っているかも知らないでそんなに預かってんの?
結構場所取りなのに。おねーさん律儀だね」
KP
「気になんなら持っていくか? おれには関係ねえしな。
というか持っていけ。お前のせいで邪魔なの思い出した」
少女はこちらに箱を押しつける構えだ。
佐倉 光
「えぇ、マジか。荷物に……」
佐倉 光
まあ、鈍器くらいにはなるかも知れないか。
中身気になるし。要らなかったら捨てればいいし。
佐倉 光
「さっきのツマミの礼に引き取らせて貰うか」
KP
少女はいびつな形の手をひらひらと振る。
随分スペースを取っていた箱が消えたことで、心なしかさっぱりとしたような顔をしている……。
佐倉 光
「そういえばここが夢の世界なら、場合によっては眠れば帰れると思うんだけど、どう思う?」
牧志に問いかける。
牧志 浩太
あなたの発案に、牧志は確かに、と小さく唸った。
牧志 浩太
「眠れば帰れるか……、そうか、それは考えてなかったな。
すっかり引き込まれてた」
佐倉 光
「ちょっと寝てみるかな。さっきの酒のせいか少し眠いし……
俺が消えたらお前も来いよ」
とはいえ、大分前に神様に送って貰った時は、寝ても帰れなかったし、その時によるんだろうけど。
牧志 浩太
「ああ、見ておくよ。
これで帰れたら一件落着だな」
牧志は横であなたを見守る。
店内には落ち着いた音楽が流れており、お誂え向きに眠りやすそうだ。
佐倉 光
腕をカウンターに組んで伏せ、目を閉じる。
この服、肌触りはいいがかたくていまいち寝るのには向いてないな。
体の力を抜いて眠りに身を委ねる。
牧志 浩太
お休み、と牧志の声があなたの意識を眠りへと送り出した。

KP
……夢の中で夢を見る、とはどういうことなのだろうか。
奇妙な夢を見たような印象が、眠りから覚めるあなたの意識にくっついた。

朧げに夢の内容を思い出していく。
確か、陽の射し込む礼拝堂であなたは、ドレスを纏った牧志と向き合っていた。
彼の腕があなたを抱きしめ、彼の顔が次第に近づいてきて……

……危ないところで目を覚ましたのだった。

佐倉 光
「っっっっだぁ!」
叫んで目を覚ました。
佐倉 光
「なんだよ、何なんだよ!?」
周囲を見回す。自室に戻れていないか!?
牧志 浩太
「うわっ!?」
目の前には牧志がいた。残念ながらドレス姿のままだ。
先程の夢が頭を過るかもしれない。
KP
「うっせえ」
少女が小さく言った。
変わらず、あなたは店のカウンターに突っ伏していた。
佐倉 光
慌てて口元を押さえて咄嗟に離れようとして椅子から転げ落ちた。

なんなんだよマジで。
俺は牧志をどうしたいんだよ。
夢は俺の願望だったりしないだろうな!?
牧志 浩太
「ど、どうしたんだ、酷い夢でも見たのか」
危ない! 慌てて牧志は転げ落ちるあなたを抱き留めようとする。
その拍子に白いドレスがふわりと揺れた。
佐倉 光
一瞬ドレスに目を奪われた。
うわぁ綺麗だなぁ。
佐倉 光
これ抱き留められた方が面白いかな。
KP
抱き留められちゃった方が面白そう。
転げ落ちたら危ないですしね!
佐倉 光
次の瞬間、牧志の力強い腕に収まっていた。
顔が近い近い。まるで夢の中の風景だ。
牧志 浩太
あなたを無事に抱き留めて、牧志はほっと安堵の息をつく。
店の明かりにドレスの銀糸がきらめいた。
彼の赤茶色の髪が、すぐ近くにある。彼の呼吸で髪の先が揺れる。
佐倉 光
「ちょっ、待て! 俺はお前のことを好きではあるけどそういうんじゃねぇから!」
慌てて腕の中から逃げ出す。
牧志 浩太
「へっ!?」
あなたの叫びに、はっと牧志は現状に気づいたらしい。
牧志 浩太
「い、いや俺もそういうのじゃない!」
彼は慌ててあなたを放す。
佐倉 光
「はい無理! 無理でした! こっちには逃げ場がねぇ!」
早口に叫んでから、深呼吸をひとつ挟み。
佐倉 光
「寝ても脱出は無理だった。別の方法を探そう!」
佐倉 光
「なんか、ごめん」
牧志 浩太
「いや、うん、大丈夫。
あいつが悪い。こんなこと考えるあいつが悪い」
うんうん、と頷いて、牧志は店内を見回す。
KP
あなた達が繰り広げたドタバタにも、相変わらず少女は無関心だ。
今はその関心のなさに助けられているのかもしれないが。
佐倉 光
なんとか気を取り直す。
佐倉 光
牧志は何か気にしている?
牧志 浩太
絵画の方を見ないようにしながら棚などを見ているが、他に気にかかる物はないらしく、微かに首を振って外への扉を見た。
牧志 浩太
「他、行ってみるか……あの、紐か何かないですか?」
KP
少女はカウンターの中を探ると、使い古した適当な紐やベルトの類をいくつかくれる。
邪魔な箱、なんとか背負っていくことはできそうだ。どこかに隠しておいてもいいが。
佐倉 光
重いかな。背負えるだろうか。
【STR】【CON】的には牧志に任せたいところだけど、ドレスに箱はちょっと合わないなー。
真鍮の箱って結構重そう。
KP
結構重さがあるが、見た目より金属が薄いのか、背負えないことはない。
佐倉 光
では気合い入れて背負う。
佐倉 光
「牧志、俺がへばったら交代してくれ」
牧志 浩太
「分かった、結構でかいもんなこれ。
ここぞっていう時に走れなくなりたくないしさ、へばりそうなら本格的にへばる前に交代しよう」
佐倉 光
頑張って背負って店を出よう。
なんだかんだで落ち着いて休憩できたし、酒もつまみも美味しかった。
佐倉 光
「ありがとう、美味かったよ」
バーテンに声をかけて出る。
KP
「そうか」
少女は変わらず無関心な様子だったが、あなた達が店を出る間際に、一言。
KP
「幸運を」
そう落として、見送った。
牧志 浩太
「ありがとうございます。助かりました」
牧志もそう言って、店を出る。

KP
外へ出れば、周囲の様子に変化はなかった。
太鼓と笛の音が変わらず何処からともなく響き、遠くの風景は悶えるようにねじれている。
佐倉 光
「太鼓と笛……嫌な音だな」
こんな状況じゃなきゃのんびり観光でもしたいところだが、そうは行かなさそうだ。
牧志 浩太
「ああ……。やっぱり、音楽の一件の時に聞いた音に似てるよ。そんな気がする」
佐倉 光
「やっぱ、そんな感じだよな」
佐倉 光
「もう一つの方、行ってみるか」
牧志 浩太
「ああ」
KP
先程の車が飾られたガラスケースの前を通り過ぎて反対側へ行けば、円形博物館へ辿り着ける。
その名の通り、円形をしたドーム状の建物だ。

周囲に人影やその他影はなく、辺りは閑散としている。
佐倉 光
「正直に、言うとさ。こんな状況なのに嬉しいんだ」
佐倉 光
「おかしいだろ?」
言って真鍮の箱を揺すり上げる。
佐倉 光
「いやお前と結婚したいってわけじゃなくな!?」
牧志 浩太
「嬉しい?」
牧志はふっと、表情から緊張を落として微笑んだ。
牧志 浩太
「俺はずっと嬉しいよ。

絶体絶命だけどさ、前みたいに佐倉さんと一緒に歩いて、動いて、信じてる。
同じものを見て、話してる。
一人じゃないことに、すごく安心してるって気持ちを、久々に味わってる。
そういうのじゃなくて?」
佐倉 光
「なんだ」
佐倉 光
「なんだ、同じかよ」
心底嬉しそうに笑った。
佐倉 光
「変な服着せられて、変な夢見せられて、それでも、
独りで、牧志は無事か、帰れなかったらどうなるって考えずに済む。
話す相手がいる。相談する相手がいる。いざとなりゃ背中を見て貰えるって、
泣けるほど嬉しいことなんだ」
佐倉 光
「独りは、怖いな」
牧志 浩太
「そう……、そうだよ、そうなんだ。
話す相手がいる。考えを共有できる。
最悪でも、佐倉さんが一緒にいれば、なんとかなるって思える」
牧志の眼が滲んだ。
微笑みが歪み、白いドレスの上にぽろぽろと涙が伝った。
牧志 浩太
「ごめん、ありがとう」
感情爆発
佐倉 光
ここで爆発させて大泣きするか、もうちょっと後にとっとくか迷うわぁ
後にするかなー!
KP
おお、それは迷うわぁ
最初に出た通り、ラストシーンは怪物轢き潰してショットガンでブライダルロードを爆走です。
今は中盤まで来てます。
佐倉 光
抑えが効かなくなる、というイメージだからな、最後に爆発するのはある意味当然だし、ここでもいい気はする。が、さっきの変な雰囲気イベントの直後である!
ちょっと続きすぎかな!
KP
ラストは疾走感強いし、落ち着いてぶちまけられるここで色々ぶちまけちゃうのアリな気はしますね。
たださっきのイベントの直後で続きすぎなのは悩ましい!

佐倉 光
「ああ」
さあ行こう、と声をかけようとした瞬間、牧志の涙を目にした。
佐倉 光
牧志の涙を見た途端、朧な記憶の向こうにあった声を思い出した。
少し前にたったひとりで死にかけたことを思い出した。
永遠に置いてゆかれて、牧志は独りで人を失って死にかけていたことを思い出した。
佐倉 光
「……っ」
泣いている場合じゃない。ぐっと抑えようとした。
佐倉 光
1d10+4 Sasa 1d10+4→ 2+4→合計6
佐倉 光
言っても仕方のないことだ。
この気持ちは塔では口にしないと決めた。

塔じゃないぞここ。
佐倉 光
「うわあぁぁぁ!」
牧志に全力で抱きついて喚き散らす。
佐倉 光
「もう嫌だ、嫌だ、夢でもいい、そうだなそうすれば良かったんだそうしろってことだな!」
佐倉 光
「結婚しよう!」
爆発した
佐倉 光
色々な感情が暴走した結果、ビジュアルに影響されて訳わかんないこと言い出した。
KP
言い出した!
この気持ちは塔では口にしないと決めた。→塔じゃないぞここ。
の流れ、なるほどな?? ってなった
佐倉 光
塔で口にしないイコール牧志には言わないのはずだったんだけどなぁー
佐倉 光
成果が出ない探索へのストレス
牧志を独りにしたくない
二人で探索したい
そういうストレスから逃げ出したい

そのへんがごちゃごちゃのまま大暴走して狂気化

結婚すればいつでも一緒にいられるな!(!?)

あたりが〈心理学〉でわかる。
KP
よし振ろう。

牧志 浩太
「あ……、」
あなたの肩に伸ばされる牧志の手が、小さく震えた。
牧志 浩太
1d100 77〈心理学〉 Sasa 1d100→ 30→成功
佐倉 光
ボロボロと涙がこぼれ落ちる目は激しくさまよい混乱が満ち溢れている。

あなたへの親愛の情と心配と憐憫と、
自らへの無力さへの怒りと悲しみと、
ともにいることと自由への歓喜と渇望、
そういったものがめちゃくちゃに絡み合って醜悪にはみ出ていた。
それがぐねぐねととらえどころもなくのたうちながら、白い輝く衣をまとっている。

佐倉 光
これが一分ちょいで正気に戻るってそれこそ混乱するわ。
KP
それはそう。
「言うつもりがなかったのに、思わず言ってしまったことに気づくまで」が1分ちょいかもしれない。

牧志 浩太
「ご、めん、そうだよな。
俺の、我儘で。
我儘で、こんな、こんなことに、佐倉さんに、ずっと、こんなことを強いて」

牧志の手があなたの背を強く抱く。
大粒の涙があなたの肩を濡らした。
かたかたと震えていながらも、どうしても手放すことができないでいる。

それは溺れかけたものが破滅を目前にして縋る手であり、同時に、どうしようもなくあなたとともにいたがっていた。
それがあなたの渇望する自由を、あなたの本質である自由を損なう行為だと分かっていながら。
それが、自身の我儘に端を発すると分かっていながら。
牧志 浩太
「結婚……、ああ、結婚しよう佐倉さん、それでもうずっと一緒にいよう」
牧志の眼に浮かんでいた光が、心への負荷に堪えきれずに弾ける。
彼はぼろぼろと涙を流しながら、あなたの背をぎゅっと抱きしめた。

KP
※牧志も発狂した
佐倉 光
狂気に巻き込んじゃった
KP
牧志も不定の狂気の最中だし、内容があれなので……。

佐倉 光
「ああ、そうだずっと前からそうすべきだったんだ。
この夢は俺たちにそれを気付かせるためのものだったんだ!」
牧志の綺麗に整えられた髪を撫で、感極まって叫ぶ。
佐倉 光
「夢でいい、これからはずっと一緒にいられる。
俺が死にかけることも牧志が狂うこともない、一緒に戦えるし自由になれる!
波照間さんのことは別の方法を探せばいいさ!
塔になんか帰る必要ないんだ!
結婚しよう、ここからどこか遠くへ」
佐倉 光
唐突な特大の違和感にぶちのめされた。
佐倉 光
「……あれ。別に結婚する必要はなくないか?」
佐倉 光
「つーか、違う。俺が言いたかったのはそんなことじゃなくて」
佐倉 光
「そもそも、言うつもりもなくて」
牧志 浩太
「……あ……、」
吐き出されたその言葉に、牧志の腕がひくりと跳ねた。
牧志 浩太
「そう、だよな。その方が、いいんだよな。
ごめん、そうだよな。分かってる……、いや、分かってなかった」
するりとその腕が下ろされた。
あなたの肩を涙で濡らしたまま、牧志は俯いた。

どこへも行けない叫びが、足元の地面へ落ちる。
牧志 浩太
「いやだ、……いや、いやだ」
牧志 浩太
「諦めたくない、だって先輩だ、紅だ、俺を信じてくれたんだ、一番最初の相棒だったんだ!

でも、でも一人じゃ手が届かなかった、そのせいでずっと佐倉さんに無理させて、あの時だって佐倉さんに呼び戻してもらってようやくここにいる、佐倉さんにそんなに無理させて、そんな我儘言いたくないのに、」

震える口から声が溢れ出した。眼の内側で瞬く光が、自分の感情に振り回されている。
牧志 浩太
「そう……、だな。もう無理なのかもしれない。
でも、諦められないんだ、少しでも望みがあると思ったら、諦められない」
牧志 浩太
「それに、もう俺、もとに戻れない」

叫ぶ牧志は自分自身の望みに振り回されて、あなたを思う心との間で引き裂かれていた。

あなたは突然、その存在がとても危ういものと感じた。
呪われている。妄執に憑かれている。狂っている。

あるいはあなたが止めを刺して、彼を諦めさせてやるべきなのかもしれない。

あの時のように。
KP
あなたがそう望むなら、いつでも可能だ。
あの塔には大量の呪具があり、あなたは大量の知識を蓄えた。

彼の意識だけを本にでも水晶球にでも封じ込めて、あなたの持ち物にでもしてしまえばいい。
それが可能な程度には、目の前の意識は摩耗している。

佐倉 光
まーたギャグシで激重イベントやってるよこいつら
そんなことが多い気がするなぁ。反動かな?
KP
かも。
あと否応なしにいつもと違った状況にぶち込まれるから、それがきっかけに色々火がついてしまいやすいのかも。
「命の危険」とは別の、独特な変な状況にぶち込まれがちですしね、ギャグシだと。

佐倉 光
まずい。全く益のないことをしてしまった。
こうなる想像はついたから言わないことにしていたのに……!
佐倉 光
しかし牧志の言うとおりなのかも知れない。
諦められない。戻れない。
本当に、そうか?

俺には、この呪われた存在を断ち切ってやれる力があるんじゃないのか?
そうしてやるべきじゃないのか?
壊れた肉体から意識だけ切り離して、別のものに封じて、そうしたら……

牧志は俺のだ。
佐倉 光
「っだぁぁぁぁぁぁちがう! 違うっての!
そういうのは違うからここまで来てるんだろうが! 馬鹿! ばーーーか!」
叫びながら自分の頭を掻きむしった。
佐倉 光
「ごめん、牧志。俺の頭、腐ってる。
だけどこれだきゃはっきりしてんだよ。
俺は、いたいからお前んとこにいるし、帰りたいから帰ってんだ。
俺が勝手にやってんだ、お前が気に病むアレじゃねぇ!」
佐倉 光
「ごめん。馬鹿なこと言った。
夢の中でもいいとか、別の方法考えるとか、できたらとっくにやってんだよ。
俺はずっと前に、お前に付き合うって決めてんだ」
牧志 浩太
「佐倉さん……」
牧志はぼろぼろと涙を流す。流れ落ちる涙で、眼が痣ごと溶けてしまいそうに見えた。
牧志 浩太
「ごめん、……違う、ありがとう」
牧志 浩太
「ありがとう……」
彼はあなたの背を強く抱きしめ、ぐずぐずと泣いた。
佐倉 光
「いいんだよ。俺も普通の人間に見られない物は見られてる。
こんなことにでもならなきゃ知らなかったことも色々知れてさ。結構楽しいぜ。
波照間さんと東雲さん見つけてさ、お前の体も元に戻して、帰るのはそれからだよ」
もう一度、牧志の背に手を回した。
今度は妙な恐れも欲望もなく、素直に泣いている牧志の感情を受け止めようとした。
おかしいなー
佐倉 光
そういえばこの『狂気』、
〈精神分析〉失敗したから起きたんですっけ。
KP
感情の暴走は本を探す時に〈図書館〉でファンブったからですね。
結婚! に引っ張り込まれちゃったのは〈精神分析〉ファンブル
佐倉 光
ああー、そっちか。大事なところでファンブルしすぎ。
KP
割と今回、佐倉さん大事な所でのファンブルが多いんですよね。
その結果面白いことになってるけど。
佐倉 光
おかしいなぁ本人至って真面目なのに。
KP
おかしいなぁ。ダイスの女神が面白いことを求めているに違いない。

牧志 浩太
「うん……、うん……」
息を詰まらせて泣きじゃくる牧志の背から、彼の心が伝わってくる。

からからになるまで泣いて、彼は何度も息を吸って、吐いた。
また、あなたの手を取れるようになるまで。
佐倉 光
牧志の呼吸が落ち着くまで、自分の波だった心と目から漏れるヤツが落ち着くまでそのままでいよう。
鬱屈した想いを溜め込んで溜め込んでねじ曲げてぶつけたのは最悪だった。
今度から適度に発散するようにしないとな。
佐倉 光
ふと、白いフリルに包まれた肩と、綺麗に結い上げられている髪が目に入った。
純白のドレスを着て泣きじゃくる牧志と抱き合って、
泣いてる白タキシードの俺。
佐倉 光
「真剣に悩んで気持ちをぶつける格好じゃねぇんだよな」
牧志 浩太
「っふふ……、はは……、そうかもな」

肩を震わせ泣きじゃくる声が、やがて小さな笑いになる。
牧志は涙と鼻水でどろどろになったままの顔を上げ、微かに笑った。
佐倉 光
牧志が笑い出すと同時に声を上げて笑った。
何だかとても懐かしい心持ちだ。
随分前に音楽があの塔に紛れ込んでからだいぶん長いこと、こんな事はなかったような気がする。
ハンカチなんかがあっても体からは離せないのかな? あれば渡すけど。
KP
残念ながらハンカチはない。
目の前の博物館で借りるなりするしかなさそうだ。
佐倉 光
「引き籠もってないでたまには外に出ないとな!
塔から無理矢理でも連れ出してくれる異変に感謝してもいいくらいだ」
牧志 浩太
「本当にな、偶には外に出なきゃ駄目らしい。
こうやって佐倉さんの気持ちも聞けたし、丁度よかったよ」
牧志 浩太
「うー」
牧志はずぶ濡れになったドレスの布で涙を拭い、鼻をかむ。ちーん。
佐倉 光
「いつまでも歩いていたい気分だけど、生け贄にされちゃかなわないな。
そろそろ行こうか」
牧志 浩太
「よし、行こうか。
丁度よかったで済むうちに、何とかしないとな」

立ち上がった牧志の姿を見て、気づくことがある。

鼻水まみれになったはずのドレスが、汚れひとつなくなっている。
どうやらこのドレスは、汚れることもないらしい。
そういえば、あなたの服からも濡れた感覚が去っている。
牧志 浩太
牧志の鼻の下が真っ赤になっているのは、治っていなかったが。
佐倉 光
「乾くの早。いや、なかったことになってるのか」
もしかして渡した薔薇の数戻ってたりするのかな?
佐倉 光
どうせ俺の目も真っ赤だろうし恥ずかしいもクソもないな。
ソデで顔の汚れを拭いて、それが乾いてパリッとした状態に復元されるのを観察しようとする。
KP
少女に渡したはずの薔薇も、牧志のドレスの宝石も元に戻っている。
汚れのついた布を見ていると、するすると染みが小さくなっていく。
表面についた汚れが収縮すると同時に布の皺が消え、何も付着していない状態に戻っていく。
牧志 浩太
「そういえば、転げ落ちたりしてるのに皺ひとつないな、この服」
佐倉 光
「便利だな。何でできてるんだろ。こんなの夢の服じゃないか」
普段着られそうな服だったら持ち帰りたいくらいだ。
佐倉 光
「そういや夢だった。行こうか」
牧志 浩太
「夢だったな」
目元を真っ赤にしたまま、牧志は小さく肩をすくめた。

コメント By.佐倉 光
大混乱の果てにとうとう結婚を誓う二人。
いやいやこんなことしている場合じゃないんだが!?

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