こちらには
『花ぐもり』
のネタバレがあります。
元がKPレスなのでいつもより伏せ情報多め。


牧志 浩太(塔)

お人好しで温厚、だが意思は強い好青年だったが……。
数奇な運命に弄ばれた挙げ句、波照間とともに事件に遭遇、独りだけで帰還した。
以来本格的に魔術に手を染め、異なる時が流れる塔に自らをつなぎ止めて波照間の手がかりを探し続けている。
通称魔きし。

佐倉とは運命共同体。最早自分の歳が分からない。


開始前
KP
間違いなく神ルート向きではない話なのですが、いい感じにつらく足掻く佐倉さんが見られそうなシナリオを見つけました。

忘れたくない人の記憶を忘れそうになって足掻く話です。(KPレスとありますが、KPあり可)

こちらは読んじゃった(内容的に回答者Xの時のアレと少し被る所があり、佐倉さんPCが見てみたかったので)ので、KPありでやるならこちらがKPになります。

「しんでなんかないよ」の方のシナリオ。
クトゥルフ神話TRPG「花ぐもり」(KPレス1PL)SPLL:E194676 - ゆめたろう - BOOTH
佐倉 光
ああー。これ。ちょっと気になってました。
佐倉がボケまくってたころから大分時間経ちましたしね!
KP
そうそう!
そろそろこういう話でもそんなに被らないかなって。
途中に色々書くシーンあるので、確実に置き向けだと思います。
(KPレス用のルームデータ付きシナリオですが、KPあり用にシナリオPDFもついています)

そういえば、塔牧志ルートの佐倉さん、「記憶喪失になって数か月ぼんやり入院してたんじゃないか」なんて話もありましたね……?
(あのルートで佐倉さんが牧志忘れちゃうとひどいofひどい)
佐倉 光
ああー。確かに合うかも。
KP
ものとしてはソロシナリオなので、佐倉さんが自由行動できればやれますしね。



忘れることを記憶が曇ると誰かが言いました。
だから花の咲く季節、花びらと共に忘れることを
「花曇り」と、私は呼ぶことにしたのです。


クトゥルフ神話TRPG『花ぐもり』
ゆめたろう 様



KP
 あなたには忘れたくない人がいる。
 忘れてはならない人がいる。

 忘れるべきではない、人がいる。
KP
……あなたは、長い夢を見ていた。
それは、ずっと前の夢だ。

今のあなたが始まった時の夢だ。

あなたの目の前で。
波照間を取り戻そうと禁断の知識に手を出した牧志が、巨大な代償と力に引き裂かれ、たったひとりで消滅しかけた時の夢だ。

もう少しで届くはずの彼の手は、届かなかった。
あなたの手は、彼の手を握っていられなかった。
彼はそのまま、無念のうちに因果すら消えてなくなるはずだった。
KP
……彼は、消えることはなかった。
その代わりに、何者かが彼を引き裂いたのだ。

彼の心臓を引き裂き、吊り上げ、悍ましき魔術で編み上げられた空洞の異形へと変えた。
そしてあなたは望んでか、あるいは意図せずか、その時に彼に巻き込まれた。

そしてあなたは彼に縫い留められ、彼のうちの空洞で生きるようになったのだ。
人として彼とともにあるために、無数の代償を支払いながら。
KP
目が覚めれば、身体にびっしょりと汗をかいていた。
そこは彼の……、『塔』の中ではなく、無機質なビジネスホテルの一室だ。

あなたはそこで疲れた身体を休めながら、『塔』に戻れるタイミングを待っていた。
どうやらその間に、少し眠ってしまっていたらしい。
佐倉 光
「ひでぇ夢……」
俺の無力を突きつける夢。
目の前で相棒を弄び、俺を嘲笑うように去って行くアレの夢。

一歩足を引けば巻き込まれずにすんだ。
しかしあの時俺は、どうしたって退くことができなかった。
失うくらいなら、と手を伸ばした。

結果的にはそれで良かったと思う。
牧志は塔に独りになるところだった。
それだときっとあいつは、引き裂かれたままで戻ってこられなかっただろうから。

あいつに人の姿を思い出させるのに、随分かかったんだ。
あのクソ神、本当にロクなことをしない。
クソ神……ニャルラトホテプのこと。
佐倉 光
時計を見て時間を確かめ、時間があるようならシャワーを浴びておこう。
KP
穏やかな朝の光が、ベッドサイドのデジタル時計を照らしていた。
シャワーを浴びるくらいの時間はありそうだ。
佐倉 光
シャワーを浴びて腹ごしらえをしたら、塔に連絡が取れるか試してみよう。
久しぶりの外だ、楽しみたいのはやまやまだけど今回は時間に気をつけないと。
佐倉 光
今流れが乱れていて、これを逃すとしばらく次が来なさそうなんだ。置いて行かれたらたまらない。
KP
『塔』に連絡を取れば、牧志の穏やかな声が返ってきた。
どうやら、時間のようだ。
これを逃せば、暫く次は来ないだろう。
佐倉 光
「ああ、大丈夫、あと帰るだけだから」
良かった、牧志も元気そうだ。
牧志 浩太
「そうか、無事でよかった。待ってる」
その声は元気そうで、いつものようにあなたの帰りを待っていた。
この時間軸の牧志は現実からずれた場所に塔として存在している。
一度外に出ると、再度入れる時は限られる上、中でどれくらい時間が過ぎているかはその時次第なのだ。
KP
ふと、室内に吊り下げたパーカーに、何かついているのに気がついた。
どこで付けたのだろうか、それは小さな白い花びらだ。
それはあなたの目を少し楽しませるかもしれないし、特に気にならないかもしれない。
何でもない、『外』でしか起きないちょっとした出来事だ。

あの塔の中で、植物は育たない。
外の生き物を生きたまま持ち込むことはできないし、
魔術をもって『何か』を育てようとしても、途中で歪んでしまう。
KP
本編には関係ないけど、何となく普通の生命とは無縁そうな気がしてこうなりました、塔の中。>植物育たない
動物も同様だろうから、つまり鶏を育てて唐揚げを得ることもできない。
佐倉 光
生野菜持ち込めない!? ピザは!?
卵はー!?
無精卵なら行けるか。
KP
無精卵なら行けますね。生野菜も頑張ればいけるいける。
前に唐揚げ微妙に歪んじゃってる、佐倉さんも歪む力に常に呪具で対抗している、みたいな話があったので、「新鮮な食味の野菜」は頑張ればギリギリどうにかなっても、「生きたものを生命活動が続行できる状態のまま持ち込む」「生きたまま育てる」は難しいんじゃないかなくらいの塩梅です。
佐倉 光
なるほどぉ
小動物飼ったりして慰みにすることもできない。
そんなとこに独りで閉じ込められるとこだったんだねぇ。
ヒドイ事するねぇニャルってば
KP
持ち込んだ時点では生きてても、生命活動続行できない状態になってていずれ死んじゃうみたいな。
そう、小動物飼ったり花育てたりとかもできないのかなって。
ヒドイ事するねぇニャルってば。(前回ログの方向を見ながら)
佐倉 光
ええー今回の佐倉そんな状態の牧志置き去りにすんの?
きっと外から帰る時に、バランス取ってくるくる回るインテリアとか買ってくるんじゃないかな。
モビールとか風鈴とかなんか動くヤツ。
KP
にしちゃうんですね。がんばれ佐倉さん。
ああー、静かな塔の中に動きが出来る。>回るインテリア
ヒドイ事するニャル……実はそうとも限らなかったりする。詳しくは『星を喰む』を参照。

佐倉 光
ふぅん、こんな花の近く通ったっけ……
覚えてないな。

なんとなく写真を撮ってからぱっと払い落としてパーカーを羽織る。
境界で歪んで妙なことになっても困るから、こういうのは落としておいた方が無難だ。
KP
写真の中に収まった花は、小さく可愛らしい、ありふれた花のようだった。
花びらと枯れた茎が、ひらりと床に落ちた。


それを見送って『塔』に帰ろうとしたところで、あなたの記憶はとぎれている。



KP
あなたは、ぼんやりとした意識のなかで夢を見ていた。
それは夢ではなく、記憶かもしれなかった。
あなたは、ぼんやりとした意識のなか、だれかの記憶を思い起こしているのかもしれなかった。
本編見る!


「先生、花にも色々な呼び方や意味があるんですよ。」

「例えば『忘れ花わすればな』って知っていますか?
桜やつつじ、草木が 11 月ごろ人の忘れた季節に咲く花のことなんです。
帰り花とも言うんですよ。」

「忘れる、でいうと『都忘れみやこわすれ』という菊の仲間の花があるんです。
薄紫の綺麗な花で……。
昔の偉い方が「この花を見ると都への思いを忘れられる」と言ったことでついた名前だそうです。

都のことを忘れてしまうのはどこか少し悲しいですが、それ程綺麗だったんでしょうね。」

「他にも、スズランや彼岸花は異なる名前をたくさん持っていたりして……」

「花曇りって知っていますか?
桜の花が咲く時期の曇った天気のことなんですが、実は日本では一年中どこかで桜が咲いているそうですよ。なんだか不思議ですよね。」

「先生、花にも記憶があるんですって。ご存知でしたか?」

「先生、今日は天気がいいですね」

「先生、」

風が吹く。雲が流れる。
日の当たる室内が影に包み込まれた。

KP
■曖昧な時間

ふわりと意識が揺れる。

目を開ける。そこは真っ暗闇だった。
体は宙に浮き、ふわりふわりと揺れている。

辺りは暗く何も見えない。
けれど暖かな水の中のような、草原にふく風のような心地の良さがあなたを包みこみ、髪の毛をやさしく揺らした。

あなたはふわりと揺れる意識のなか、いままでのことを思い出す。
『塔』に戻ろうとしたところで、あなたは意識をうしなったのだ。
そうして、だれかの夢を見ていた。

そうして気がつくと、『塔』のなかではなく、ここで浮かんでいた。


佐倉 光
ここはどこだ……俺は早く、帰らないと……
ぼんやりと手足を動かそうとする。
早く帰らないと、あいつが……

※意識ははっきりしますか? しませんか?
 牧志のことは覚えていますか?
KP
あなたは牧志のことを憶えている。
帰らなければならない場所も、わかる。
しかし、意識はどこか曖昧で、目覚める直前のようで。

ふわり、ふわりと漂っているのがどこなのか、あなたはどうなったのか、はっきりとわからない。
KP
ふわり、ふわり。

あなたが牧志のことを思い出したとき、どこかから声が聞こえた。

「   」
揺れるあなたを誰かが呼んでいる。

「   」
それは、よく聞いたことのある声だった。
牧志の声。
あなたを呼ぶ、牧志の声。

「   」
何をいっているのかわからないのに、ひどく、ひどくさみしそうな声だと感じた。
佐倉 光
変な夢を観ている。これは夢の続き? いや、俺は目覚めたはず……
誰かの視点を体験した。あれは、やはり夢?
ここは明らかに異様だ。
俺は、何かに捕まって……?

駄目だ、纏まらない。
まずい。
まずい……
佐倉 光
牧志。俺はここだ。帰るから。帰らないと。早く帰らないと、あいつは……

焦りすら不確かで、意識から遊離してゆく。
もがこうという意思はあるのに、何もかもがばらばらで、曖昧だ。
KP
それは、よく知っている声だ。
それは、牧志の声だ。

あなたはもがく。
帰ろうともがく。

それなのに。

あなたは、彼の名前を覚えている。
あなたは、彼の顔を覚えている。
あなたは、彼と過ごした日々のことを覚えている。

彼がどんなふうに話をして、どんなふうに笑うのか。
どんなふうに泣き、どんなふうに怒り、どんなふうに叫ぶのか。

あなたは知っている。

それだというのに、どうしてか酷く悲しくなった。
KP
声の主を思い返そうとしてふと、あなたは異変に気づいた。

記憶が、ぼんやりとし始めている。

覚えているはずなのに。
覚えていたはずなのに。

忘れるはずが、ないのに。
忘れていいはずが、ないのに。

思い返した記憶が、一つ一つ。

花びらが風に吹かれてどこかに飛んでいってしまうかのように、あなたの手の中から消えていく感覚に襲われる。

次、瞬きをしたら。呼吸をしたら。
あっさりと彼のことを忘れてしまうのではないだろうか、そんな焦燥感がこみ上げる。
佐倉 光
ずっと昔こんな事があった。
牧志を忘れてしまって、心労をかけたことが。
それでも牧志はすぐに受け入れて、そんなことですら日常にすることで、俺の苦しみを軽くしてくれた。
そういう奴だ。あいつは、牧志は。
お人好しで頑固で、時に危ういほど一途で、人のことばかり、俺のことばかり、今は波照間さんのことばかり考えていた。
変なのにばかり好かれて、それがあいつの……牧志の出生に関わっていると……知ったような
俺はあいつの……そんなところが……牧志だ。おかしいな。
佐倉 光
嫌な予感は確信に変わりつつある。意識的に名前を思おうとしているのに咄嗟に出てこなくなる。
こんな馬鹿なことがあってたまるか。
俺の記憶は今正になくなろうとしている。
俺はあいつのことを忘れようとしている!
佐倉 光
どんな顔をしていた?
どんな声だった?
どんなしゃべり方をして、どんな風に笑っていた?
何が好きだった? 何に怒りを見せていた?
手繰っても手繰っても不確かで、捕まえようとする端から逃げてゆく。
佐倉 光
駄目だ、俺があいつを忘れたら、あいつは、牧志は独りになる。
どうして独りにしちゃいけないんだっけ? とにかく駄目なんだ。
俺は、俺は帰らなきゃ。帰って……誰に会うんだっけ。
とにかく会わなきゃ、時間がないんだ。
俺はこんなところでぼんやりしている場合じゃないのに!
佐倉 光
そうだ、波照間さん。波照間さんを助けようとしていた誰か。
東浪見の結婚式に出たがっていた誰か。
シローのことをずっと案じていた誰か。
兄弟の名前は浩司。年上だったかな、年下だったか……
俺はあいつとどこかで会って、何かあいつに関わるものを拾ってやって……
牧志浩太。そう、牧志浩太って名前。
手を握ってた。
佐倉 光
必死に右手を握ったり開いたりしようとする。
その理由ももう分からない。

おかしいだろ。
一生の半分以上を俺はどこかで暮らしていて、そこで誰かと一緒にいたのに、
どうしてそいつのことだけ思い出せなくなるんだ!

牧志だ。牧志……牧志……まき……。
……
そこにいたのは誰だっただろう。
KP
忘れたくない。
忘れるはずがない。
忘れては……、

花びらが風に吹かれて飛んでいく。

あなたは、

あなたの手がかろうじて動いた。
そうだ。

忘れたくない。

曖昧に呑み込まれようとする意識の中で、あなたはかろうじて、彼の「名前」を書き留めることができる。
佐倉 光
筆記具持ってる?
KP
持っている。
指先の感触すら曖昧になってゆくが、あなたはペンと手帳を持っている。

それはあなたが、あの一度記憶を失ったときから携帯しているペンと手帳の感触だった。

他の物を持っていないか探すこともできるが、あなたの意識はいまにも呑み込まれそうになっている。

ここで取れる行動は一つだけだ。
佐倉 光
何故自分がそのようなものを持っているのか、などという疑いを押しやり、
『牧志浩太』
と書き付ける。
KP
あなたは彼の名前を書き終えた。
ああ、これで、忘れないで済む。

息を吐くと同時に、頭の片隅でぱさり、と何かが落ちる音がした。
それは柔らかく優しく、まるで花びらが落ちていくほどの軽やかさだった。

それが何かもわからないまま、あなたの意識は闇に溶けていく。


あなたは牧志浩太の [ ××× ] を忘れる。




私ね、あなたのこともう思い出せないの。
姿、形も。どんなことを話したのかも。
それでも私、ちゃんと生きますから。

今度こそ
「一緒に、いきましょうね」

花びらが一枚、落ちていった。



KP
あなたは、不意に目を覚ました。
身体中が、びっしょりと汗で濡れている。

そうだ、酷くいやな夢を見ていた。
あなたが、牧志を忘れてしまう夢だ。

忘れたくないのに。
忘れるべきではないのに。
忘れるはずが、ないのに。

花びらが風に吹かれてどこかに飛んでいってしまうように、ひとつ、またひとつ、忘れていってしまう夢だった。
そのかわりに、彼ではないだれかの夢をみていた。

その夢の中であなたは、忘れたくないともがいていた。

まだ心臓が少し速く鳴っていた。
ひどい夢のせいか、何だか、息苦しい。

けれどあなたは、ちゃんと覚えている。
彼の名前を。顔を。声を。彼と過ごした日々を。
彼がどんなふうに笑い、どんなふうに泣き、どんなふうに怒り、どんなふうに叫ぶのかを。
佐倉 光
酷い夢だった。体調が悪いのかも知れない。
あってはいけないことだからか。
俺はたとえ忘れたとしてもあそこに帰らないといけないんだ。

また、知らない誰かの夢をみた気がする。
佐倉 光
大丈夫。ただの夢だ。
俺は牧志を覚えている。

ただの夢か? それで片付けていいんだろうか。
手元にあの手帳やペンはある?

と言うか今自分はどこにいるんだろう。
KP
あれはただの夢だったのか、あなたの指の先にあの手帳やペンの感触はない。

そうして探そうとすると、辺りが真っ暗闇だと気づく。

視界がない。
あなたはどこか、暗闇の中に身を横たえている。

腕を動かそうとすると、腕がこつんと壁か何かに当たった。
佐倉 光
なんだ?
ここはどこだ。
俺はどういう状態にある……

手探りをし、体を動かそうとした。
腕は何に当たった、触ってみる。
体は思うように動くのだろうか?
KP
手探りすれば、指先に当たるのは木か何かのような、ざらついた質感だ。
身体を動かそうとすれば、頭を天井へぶつけた。痛い。

こつん、こつんと、肘やら膝やら、そこここが壁に当たる。
どうやらここは、狭い。

寝そべった姿勢を強いられたまま、満足に身体も動かせない程。
あなたは真っ暗闇の中、あなたの身体がようやく収まる程の箱に、押し込められていた。

SANチェック成功時減少 0失敗時減少 1》。
佐倉 光
1d100 62 《SANチェック》 Sasa 1d100→ 52→成功
佐倉 光
なんだこれ、箱? 棺……?
持ち物はあるだろうか。
可能なら声を上げてみる。
KP
持ち物を探そうにも、満足に身体も動かせないため、探れるのはポケットくらいだ。
ポケットの中に入っていたものがあれば、それはそのまま入っている。

声を出すことはできた。
しかし、あなたの声に応える者はない。

声が反響して、やはりここが狭い箱の中なのだと気づく。

狭いせいか、息苦しい。
いや、それだけではない。

声を出そうと喉を動かして分かった。
喉に、腕に、腕に、胴体に、脚に、頭に。
全身あらゆる所に、何か細いものが巻きついている。
手や足を縛られているわけではないが、細くしなやかなそれが身体を引っ張り、ひどく動きにくい。
佐倉 光
「おい、誰か! 出し……」
息苦しい。酸素が少ないのか?
首に何か巻き付いている。腕にも、足にも、頭にも。
縛られているのか?

違うな、それにしては体が動く。細いものが巻き付いているだけだ。

その細いものはどんな手触りか。引っ張ったら千切れるか。何か付着しているかな。
ぶっちゃけ生か乾燥しているのか、葉っぱなどはついているのかなと。
KP
それは細くしなやかな、生きた植物の蔓のように感じられた。
強く引けばちぎれて青くさい匂いを漂わせるが、ちぎってもちぎっても切りがない程に、蔓はあなたに絡みついている。
KP
暗闇に少しずつ目が慣れてくると、蔓の至る所に葉と、それからいくつもの蕾がついているらしいのが分かる。

目の錯覚だろうか、蔓が身体の上で動いて見えた。
いや、それは錯覚ではない。
少しくすぐったく感じる程の緩やかな速度で、身体の上で蠢いている。
佐倉 光
植物!? 蔓植物か。こんなに巻き付かれるほど気を失っていた? そんな馬鹿なことがあるか!
そう思ったせいだろうか、蔓が動いているのにはすぐ気付いた。
KP
身体が、痛む。
押し込められた痛みと思えば、そうではなかった。
蔓が、微かにあなたの身体を締めつけていた。
佐倉 光
ぎし、という体を締め付けられる感覚に総毛立つ。
これは、異変だ!
KP
植物に対して〈博物学〉〈生物学〉【知識】1/2で判定。同一情報。

全ての技能で判定してよい。
どれか一つ成功すれば成功扱いとなる。
佐倉 光
割とどれも死んでるな。
1d100 10〈博物学〉 Sasa 1d100→ 76→失敗
1d100 1〈生物学〉 Sasa 1d100→ 62→失敗
1d100 47 【知識】/2 Sasa 1d100→ 28→成功
佐倉 光
アルラウネか、ジュボッコか、そういった悪魔に囚われたのか、とまず考えた。
KP
それは、まったく見知らぬ植物だった。
蔓の伸び方、葉のつき方、乱雑についた蕾の位置にも違和感しか覚えない。
悪魔、なのだろうか。
しかしそれにしては、それは何かを語る様子も、意思を示す様子もない。
KP
〈クトゥルフ神話〉で判定してもよい。
佐倉 光
この佐倉〈クトゥルフ神話〉37しかない!
1d100 37 Sasa 1d100→ 58→失敗
佐倉 光
「おい、誰か! 開けてくれ!」
箱を叩いて叫ぼうとする。
KP
壁を叩こうと握った拳に、妙に力が入らない。
それでも壁を叩くと、こん、こんと軽い音がした。
これは、そう分厚い壁ではないようだ。ただの木の板なのかもしれない。
力を入れれば破れそうにも思える。
KP
身体が痛む。
締めつけられる痛み、だけではなかった。
身体の奥がじくじくと痛むような、気味の悪い痛みがある。
何か、怪我でも負っているのだろうか。
佐倉 光
知らない植物だ。知識の端にも引っかからない。かといって悪魔でもないように思える。

体に力が入らない。痛みがある。
想像に難くないのは、自分がこの植物の養分にされているかもしれない、ということだ!
冬虫夏草、という言葉が脳裏に浮かんだ。あれはキノコだが。
佐倉 光
冗談じゃねぇぞ!
佐倉 光
体の中に根が入り込んでいる可能性がある。
口は? 尻は? 性器は? 目は? 鼻は? 耳は? 体に開いている穴に何かが潜り込んでいる? でなければもっとまずいことだが、体の皮膚を突き破っている可能性は?
体を探って確かめようと試みる。
KP
身体を探ろうにも、狭い箱の中では腕さえ十分に動かせない。
どうにか状況を確認しようともがいていると、じくりと身体が痛んだ。

身体の上を撫でる感触が増えてくる。絡みつく束縛感が、痛みが強まってくる。
絡まる蔓の量が、明らかに増えている。
まさか、成長している、というのだろうか?
KP
悠長にしている暇はなさそうだ。
どうする?
おやすみ
佐倉 光
うわぁぁんひどいよ!
非力な佐倉に何ができるって言うんだぁ。
KP
非力な上に狭すぎて力も入れにくい体勢。ひどいはなしだ。
箱、ほとんどカンオケみたいなのを想像して頂ければ。
腕を回して全身チェックするのも困難なくらいにせまい。
佐倉 光
風呂といいこれといい、狭い場所に押し込められるのが作者さんのご趣味なのかな。
えろいのは認める。
いや、風呂はやってないけど。
KP
ああー。そういえば風呂も。なのかも? >ご趣味

今回植物いるし、わりとシチュエーション的にはえろいところはある。
されてる佐倉さんは大変だけど。
佐倉 光
やられるヤツはたまったもんじゃないけどPLは好きです。いいぞもっとやれ。
KP
しんでなんかないよといい、風呂溺れる話といい、今回の箱カンオケっぽいしといい、生死の狭間みたいなのがご趣味なのかもしれない。
佐倉 光
なるほどなぁー
ここからどうなるのか想像できないこの話。
KP
わりと……、大変。
佐倉 光
大変って……なんだろうな……
KP
PLがというより、佐倉さんが大変。
佐倉 光
それは想像に難くないけど。何が起きるんだろうな。
KP
何が起きるんでしょうね。
佐倉 光
傾向的になんか碌でもないことが起きて死にかけるのは確定事項っぽいからぁー!
イヤだ俺は牧志のとこに帰るんだ!
KP
現時点で既になんだかろくでもない状況ですしね!
果たして無事に帰れるのか植物の悪魔にクラスチェンジしてしまうのか。

佐倉 光
体のつるを引き剥がそうと試みる。優先は手、指、腕だ。それと、体を拘束されきらないように足を広げ何とか腕を体から離す。
箱を破ろうと渾身の力を込め、両腕を目の前の板に当てて押し上げる。
それすらできないようなら膝だ。
KP
力の入らない身体に残る力を振り絞り、目の前に見える緩慢な死に抗う。

最大限に可動部を確保しようとしながら、ままならない態勢で力を込める。
KP
壁に対して〈こぶし〉〈キック〉〈頭突き〉のいずれかで攻撃を行える。(説明略)
佐倉 光
1d100 51〈こぶし〉 Sasa 1d100→ 75→失敗
KP
両腕に力を込めようとした時にはもう、蔓がみっしりと身体に絡みついていた。

どうにか力任せに動かそうとした時、手足を壁に打ちつけ、辺りに不器用な音が鳴り響いた。

その時、ずきりと右手の指が痛んだ。
敏感な指先を爪の間から引き裂かれる、耐え難い痛み。

激痛とともに、そこに違和感が生じる。
指先に何か、異変が生じている。
佐倉 光
定番の拷問きたわ。
佐倉 光
なんだ……指先が痛くて力が入りづらい。
あまりの痛みに、半ば無意識に他の指で痛む指を探った。
KP
そこに触れたのは、柔らかくたおやかな感触だった。
闇に慣れてきた眼が、予感こそしていた、しかし信じがたい光景をとらえる。

花が、咲いていた。
あなたの爪と肉の間を花瓶にして、指先を濡らす赤におぞましく彩られて、小さな可愛らしい花がふたつ、みっつ、咲いていた。

その花は、あなたの内から生えてきたのだ。
KP
SANチェック成功時減少 0失敗時減少 1D2》。
花に対して〈博物学〉〈生物学〉【知識】で判定。
三つ全ての技能で振ってよい。
どれか成功すれば成功扱いとなる。
佐倉 光
1d100 62 《SANチェック》 Sasa 1d100→ 2→決定的成功クリティカル)!
佐倉 光
1d100 10〈博物学〉 Sasa 1d100→ 91→失敗
1d100 1〈生物学〉 Sasa 1d100→ 99→致命的失敗ファンブル
1d100 47 【知識】/2 Sasa 1d100→ 8→成功
佐倉 光
そんなすぐに解消しなくてもぉー
KP
ワーオ。
知識の判定でファンブル成功か。
では、分かるけどいやなことも同時に思い出していただこうかな。
佐倉 光
花……花だって。
しかも体内から? 既に侵入されていた? それも花が爪先ということは、根は。
体内の痛みが嫌な想像とともに重くのしかかる。
俺は既に寄生されているのか、それも深く。

爪と肉を押し広げられる苦痛に呻きながら花を千切ろうとする。
なんだ、この植物は?
性癖
佐倉 光
爪の間にギリギリされる痛みって思考を保てるれべるなのかしらと思いつつ、今からやり過ぎると後が困るので控えめに……
佐倉 光
全然全く関係ないことなんですが、ファミコンウォーズds 失われた光 の世界が、全世界が寄生花病という奇病に冒されて人がバタバタと死んでゆくなか、生存をかけて戦う主人公たちって話だったので、
「もう終わりだぁぁ!」ってなってる中の人。
KP
しかも動きますしね、この蔓。
爪と肉の間ではじっとしていてくれることを願うしかない。

>寄生花病
なんとそれは。終わりだぁぁ!
そういうシナリオも割とありそう。
佐倉 光
人体から花が咲くって性癖にあるっぽいですからねぇー
単純に生理的に嫌だし。

ざっと検索したらそういう花瓶やイラストが出てきた。
KP
きもちわるさ・恐ろしさだけでなく、それらと見た目の奇妙な美しさを兼ね備えているものは性癖になりやすいなと思います。
人が宝石になるとか、人が花になるとか、人間を喰らって美しい蝶が出てくるとか。

下半身だけの人間から花がはえてる花瓶すごいな。
佐倉 光
子供の頃はやたら石化というものにドキドキしてたなぁー
KP
石化かぁー。そういえば以前にもそんな話を伺ったような。
不思議な状態ですよね石化。壊されたら一瞬でグロいことになったり、逆にそれで数百年存在し続けていたり。
佐倉 光
じわじわと時間をかけてというのもオイシイ、石化された状態で意識があってもオイシイし、解呪されたらとんでもない未来だった! というのもオイシイ。石化されたら終了、だとただの死のバリエーションになっちゃうからあまり美味しくないな!
どんな強者も弱者も変わらない強度になって蹂躙されたり保存されてしまうというのにドラマを感じてしまうのですねー。

という感じですかね。今は昔ほど石化そのものが好きってワケじゃないんですが、ネタとして美味しいなぁと思います。
宝石になるってのは概念になかったなぁ。
KP
石化された状態でずっと意識があって、思考しかできない状態で次第に意識すら変質していくとか。
解呪されたらとんでもない未来だった! も美味しいなぁ。
佐倉 光
某ゲームの主人公が石化されて妻と共にオークションに出されるくだりからはドキドキしたなぁ。
KP
ああー。それはすごいシチュエーションだ。
まとめて買われるか離れ離れになっちゃうか。

そういえばヒュプノスさんも石化させて保存得意でしたね。思考しかできないどころか、永遠の責め苦がついてくるけど……。
佐倉 光
そんなことまでするんですかあのお兄さん。
保存が好きなのね……
KP
あれ、違うな。侵入者を「もっともふさわしい姿」に変えてしまう、だけでした。石像にされるのどこで見たんだったかな、失礼しました。
佐倉 光
『眠りの神』って小説に、そうなのかな、どうなんだろう、ただのヤク中でそう思い込んだだけ? みたいな不確かな話があるみたいですね。
主人公は友人が石化したと信じている。
KP
みたいですね。
それを元にしたシナリオか何かあったのかな。
石像にされて保存されるみたいなの読んだような気がしたんだけど。
佐倉 光
ドリームランド本と基礎ルールで記述が違うって書いてあるなー
KP
ああー。
夢の神ですもんね。ドリームランドが本来の姿か。
とはいえやっぱり好きな姿に変えてしまう記載だけですね。それが石ということもあるかもだけど。
佐倉 光
なるほどー、だから前回のシナリオだったのか。
KP
ということですねー。

KP
あなたが思い出したのは、目の前の花に関する知識と、今このタイミングで思い出したくはなかっただろうことだ。

異様な位置から咲いている花の形は「キブシ」という花によく似ていた。

本来は垂れ下がって咲く花だ。
一つの枝に近くで見れば葡萄の実、遠くから見れば藤の花のように、大量の黄緑色の花が連なる。

けれど指先からは2~3輪、5mmほどの小さい花がつきだしているのみである。

本来は黄緑色の花だが、暗い視界の中でどうにか見える花は、それよりも白いようにみえた。
KP
花言葉は「待ち合わせ」「出会い」「嘘」だという、場違いな雑学まで一緒に思い出した。
KP
指先から小さく芽吹く花を見て思い出してしまったのは、黴についての話だ。

外に黴が出た食べ物は、中はもう胞子に埋め尽くされているから、外だけ削って食するべきではないのだ、という……、

では、あなたの体内は……?

SANチェック成功時減少 0失敗時減少 1》。
佐倉 光
1d100 62 《SANチェック》 Sasa 1d100→ 25→成功
佐倉 光
くそ、一体どのタイミングでやられたんだ。
服についていた花びら、あれも関係あるのか?

自分の体の中に根を張り、地下茎のように臓器の隙間をぬい、血管や骨に絡む植物を思い浮かべてしまった。
キブシ、に似てはいるが、そのもののはずがない。
常識的に考えて、植物は人体内では生きては行けないのだ。
これは悪魔か、怪異。
佐倉 光
苗床になって死ぬ未来しか見えねぇぞ!

指先の痛みに耐えながら箱のようなものを押し開けようと力を入れ続け、叩き続ける。
腕輪はつけてるかな。
KP
腕輪の有無を確かめようとした時。

その異様さを証明するように、視界の中で白い花が光りだした。
その光が、視界を真っ白に染める。

それと同時、見知らぬ誰かの記憶が、脳を掻き分けるようにして無理矢理入り込んできた。

KP
あなたは奇妙な夢をみる。
佐倉は何者かの回想を見る。「わたし」と「先生」との出会いの記憶だ。
佐倉 光
まただ。
もう疑うべくもない、この意味深な夢は俺をこんな状況にしている何かの影響。
この花が見せているのか?
夢の主は女か?
KP
ふわり。
奇妙な夢に微睡んだ意識の中。

夢に引き出されるように、あなたの頭の中に、牧志と初めて出会った時のことが思い出された。

思い出している場合ではないというのに、暗い孤独の中で死に瀕している状況のせいか、否応なしに記憶が蘇ってくる。

もう、ずっと前のことだ。
それなのに、鮮明に浮かぶ。

何が起こって、
どこで出会って、
どんな話をして、
ともに何をして、
そのとき彼に、どんな感情を抱いたのか。
彼はそのとき、どんな顔をしていたのか。
佐倉 光
俺は、俺は波照間さんからきた電話が何だか気になって、波照間さんの部屋に行った。
そこに牧志がいた。寝起きみたいな格好で、髪を降ろしてベッドに座っていた。
プライベートの邪魔をしたな、と思ってそのまま立ち去った。
その時は割と波照間さんの背景だったし、殆ど記憶にない。

本当に出会ったのは、俺たちが変な団体に捕まえられ、手を離れないように繋がされた時だ。
あいつは隣に無防備な間抜け面で寝ていた。
目が覚めたら俺の名を親しげに呼んだ。
事情を知らない俺は、あいつを油断のならない悪魔だと思い、
次に底抜けにお人好しの一般人だ、邪魔だな、と思った……

もうずっとずっと昔の話なのに、どうしてこんなに鮮明に思い出せるんだろう。
KP
鮮やかな記憶が、ふわりと風に揺れる草木のように頭の中を通り過ぎていく。

通り過ぎて、
通り過ぎて、
KP
ふとまばたきをした。
その一瞬、追憶がとぎれた。
佐倉 光
……邪魔だ、と思って、思って……何があったっけ?
KP
ぱさり、
瞬きをして気がつく。

牧志と初めて会った時のことを、あなたは思い出していたはずだ。

だというのに。
思い出せないのだ。

何が起こって
どこで出会って
どんな話をして
ともに何をして
どんな感情を抱いたのか。
彼はそのとき、どんな顔をしていたのか。

その全てが、あなたの中から消えていた。
花びらが風に吹かれて飛んでいくように。
佐倉 光
記憶の中の俺は、いきなり牧志に謎解きのメモを押しつけている……
どうしてそんなことを、したんだったか。
俺はあいつの何を信じる気になったのだったか。
どうしてこのまま別れるのを惜しいと感じたのだったか。

今思い出していたはず、だったのに。
佐倉 光
あの夢が現実になろうとしているのか?
いや、これこそが夢?
KP
どうしてあなたは、普段なら応える気にもならないだろう、彼の願いに応えたのか。

あなたと気が合うようには見えない青年の、何をそんなに気に入ったのか。

いくら思い出そうとしても、その理由はあなたの中にない。
代わりに、白い部屋で笑う誰かの記憶があるだけだ。


あなたは牧志と、「初めて会った時の記憶」を忘れる。



KP
視界が戻る。
手がぴくりと痙攣するかのように一瞬動く。

気がつけば、あなたは変わらず暗い箱の中にいた。
先程光を放っていた花は、もう光ることもなく静かに指先で咲いていた。
慣れてきたのか、指先の痛みも和らいでいた。

あるべき記憶を思い出そうとすれば、代わりに白い部屋の光景が浮かんだ。

SANチェック成功時減少 1失敗時減少 1D3》。
KP
片手が腕輪に触れていた。
佐倉 光
1d100 62 《SANチェック
1d100 62 《SANチェック
佐倉 光 - 今日 22:03
CCB<=62 《SANチェック》 (1D100<=62) > 43 > 成功 Sasa 1d100→ 55→成功
1d100→ 16→成功
SAN 62 → 61
佐倉 光
くそ、おかしい。
俺はたったさっきまで、牧志と出会った時のことを思い出していたはずだ。
はっきりと、あいつと出会った……白い部屋? いや、波照間さんの家だったか?
あまり、いい想い出ではなかった気がするのに、どうしてあいつを信じようと思ったんだ。

まずい。
今回の異変は体を侵蝕されるだけかと思ったら、記憶にも異常が出ている。
今はまずい。
俺は帰らないと。今帰らないと、まずいんだ……!

腕輪に触れ、召喚ができないか、通信ができないか、せめて《アナライズ》ができないか、試してみる。
KP
腕輪に触れると、みっしりと詰まった蔓の感触が指先に触れた。
ボタンの間に細い蔓が入り込んでいる。葉が絡み合って画面を覆い隠している。
そのせいかボタンを押してもふわりと頼りない感触がするだけで、画面が反応する様子はない。
KP
壊れないCOMPなので壊れてはいないけど、間に蔓が挟まってボタンが反応しない感じです。
佐倉 光
この状況では仕方ないですねー。
展開しなきゃ大したことできないし。筆を振るう隙間もない。
KP
あとCOMPあるのに間にみっしり蔓が詰まって動かないの異様で怖いなと思って。
壊れないCOMP……佐倉のCOMPは牧志の願いによる神の加護で、物理的なダメージに大変強いのだ。
KP
腕輪を操作しようとするあなたの腕を、じわりと蔓が締めつけていく。
じわり、じくり。
痛みとともに、生命を侵される予感とともに、蔓が皮膚に食い込んでいく。
佐倉 光
「く……そ……」
うめき声のような物を漏らし、葉をかき分ける。蔓を押しのける。
なるべく体の動く部分に隙間を作れるように、拘束され切らないように力を入れる。
KP
【CON】×5で判定。
佐倉 光
1d100 35 【CON】 Sasa 1d100→ 88→失敗
KP
ぎりぎりと、脳を直接締め付けられているかのように頭が痛んだ。
激しい痛みに吐き気を覚える。
幸い痛みは一瞬で去ったが、全身にびっしょりと汗をかき、不快感が残る。
佐倉 光
「あぁ、アァァァ!」
体内を冒されている。
脳にまで到達しているのだろうか?

空間が狭くなってゆく。
このままでは内側からか、外側からか、押し潰されてしまう!
KP
HP-1。
佐倉 光
HP 10 → 9
KP
狭い空間に先程よりも、蔓の感触がよく触れるようになってきた。
蔓はもはや、絡みついているだけではない。
この狭い箱の中が、蔓で満たされつつある。

圧迫感に息が苦しくなってくる。
早く。早く、ここを出なければ。
KP
壁に対して〈こぶし〉〈キック〉〈頭突き〉のいずれかで攻撃を行える。(説明略)
佐倉 光
1d100 51〈こぶし〉 Sasa 1d100→ 26→成功
1d3 Sasa 1d3→3
佐倉 光
痛みへの怒り、冒される怒りを全て拳に乗せ、叩きつけた。
KP
あなたは力の入りにくい身体で、どうにか拳を握る。
目の前の壁に、すべての力と怒りを叩きつける!

ミシリ。拳を受けた所から、木が軋む音が聞こえた。
手応えが、あった。
このまま殴り続けていれば外へ出られるのではないか、そんな希望がよぎる。
佐倉 光
箱から出られればまだ打つ手があるかも知れない。
更に力を入れて箱を破壊しようと試みる。
KP
1d2を振ること。
佐倉 光
1d2 Sasa 1d2→2
KP
ずきり。
左腕の内側から迸った激痛が、あなたの拳をひるませた。
あまりの耐え難い痛みに、思わず目を瞑ってしまう。

今度の痛みは、一瞬で去ってくれることはなかった。
皮膚の内側を丹念に針で突き刺されているかのような痛みが、断続的に続く。
その度に堪えきれない悲鳴が、喉から迸り出ることだろう。
佐倉 光
痛みに耐えかね叫ぶ。
中に何かがいる!
吐き気が戻ってくる。
げっげっと喉の奥を悲鳴に叩かれ、体内に蠢くものを否応もなく意識させられる。
痛みに体を震わせて、ぎりぎりのところで考える。
回復魔法ディアは? 内側のものを活性化させでもしたら、まずい!
KP
ぎりぎりの所で回転させていた思考を、
一瞬、今までの比にならない激痛が引き裂いた。

皮膚が、組織がぶちり、ぶちり、と嫌な音を立てる。
刻みつけるように、点々と、引き裂かれる。
佐倉 光
「――――――!」
内側から裂けた。痛みのあまり泣き叫んだ。
痛みにのたうち回りたいほどだというのに体の自由が効かない。
切れ切れになる息が狭い空間で響き渡り、顔の横に涙が流れ落ちた。
KP
それを最後に。
痛みはじくじくとした熱感を残し、少しずつ和らいでいく。
佐倉 光
痛みが消える。
それは到底喜ばしいことには思えなかった。
裂けた。中から何かが出てきた。それで圧が解放されて安定した。だから痛みが消えたのだ。
何が出てきたんだ・・・・・・・・
痛んでいた場所に触れる。
KP
痛んでいた場所に触れれば、点々と柔らかいものが触れた。

視界に、様変わりした腕が目に入る。
左の手首から二の腕にかけて、螺旋状にぽつぽつと、長い花弁を持つ星形の白い花が咲いていた。

指先に咲いた物とは随分形の違うその花は、腕を彩る悪趣味なアクセサリーのようだった。

佐倉 光
わぁー、はえちゃった。
KP
はえちゃいました。
佐倉 光
生きて帰れるのかなぁ!?
KP
まあ…… 【いきて】は帰れるんじゃないかな。
佐倉 光
わーい、生き物を持ち帰れるねー
……歪んだらどうなんの。
KP
ねじれた花の塊になるかもしれない。塔が花の塔になる。
佐倉 光
やだこわい。

KP
花に対して〈博物学〉〈生物学〉【知識】で判定。
三つ全ての技能で振ってよい。
どれか成功すれば成功扱いとなる。
佐倉 光
1d100 10
1d100 1
1d100 47
佐倉 光 - 今日 8:55
CCB<=10〈博物学〉 (1D100<=10) > 11 > 失敗

佐倉 光 - 今日 8:56
CCB<=1〈生物学〉 (1D100<=1) > 17 > 失敗

佐倉 光 - 今日 8:56
CCB<=95/2【知識】 (1D100<=47) > 80 > 失敗
ALL失敗
〈博物学〉、惜しい。
佐倉 光
別の植物だ……

暗がりの中でそれを認識する。
体内に複数種類の植物が存在する。
現実的に考えればあり得ない。悪夢のようだ。
花に彩られた腕をごしごしとこすって花を落とそうとする。
KP
咲いている花は、平たい高山植物だ。

まるであなたの腕を山野の地面にしたようなおぞましく可愛らしい光景からは、擦っても花は落ちない。
短い茎が手に触れ、「それは皮膚から生えている」という事実を実感させられるばかりだ。

その生え方、花弁のつくりは「エーデルワイス」という花によく似ていた。

有名な花だからか、花言葉は「奥ゆかしい美しさ」「高貴」「崇高」「勇気」「忍耐」「初恋の感動」「大切な思い出」と様々にある。

独特の星形と柔らかな綿毛に覆われた姿が特徴の山野草であり、アルプス山脈の過酷な環境下で生きる強さを表して上記の花言葉がついたとされる。

しかし間違っても、人体から生えてくるべき花ではない。
KP
点々と腕を彩る白い花が、登山道のライトアップのように、視界の中で光りだした。
螺旋状に柔らかく光るさまは、一瞬、奇妙に美しい。

その光が、視界を真っ白に染める。

それと同時、見知らぬ誰かの記憶が、脳を掻き分けるようにして無理矢理入り込んできた。

KP
あなたは奇妙な夢をみる。
佐倉は先ほどと同一人物と思われる誰かの夢を見た。この想い出には桜が付き纏っている。
KP
ふわり。
奇妙な夢が、あなたの脳から記憶を引き出す。

思い出している場合ではないのに。
それどころではないのに、記憶が蘇る。
引っ張り出されるように、鮮明に、ありありと浮かぶ。

それは牧志との、最も印象的な出来事。
あなたの心に、今でも残る記憶の楔だ。
KP
※複数の出来事を思い出しても構いません。
想い出
佐倉 光
どっかで牧志が塔化したやつ入れたいんですけど、ここでやったほうがいいですかねー
大事な記憶の発掘シーンがあるんだな。
しんでなんかないよと丸かぶりというのもアレだしバリエーション増やしたいな。
KP
お、では軽く開示。
このあと、

・忘れたくない人の表情(印象的な表情を浮かべた時のこと、複数可)
・忘れたくない人をあなたがどう思っているか(そう思った時のこと、複数可)

が出てきます。
佐倉 光
というかこっち塔なんだから、塔化してからのエピとか捏造とか入れてもいいよな……
ナルホドエピソードじゃなくてその人のアクション系か……開示ありがとうございます。
KP
お、もちろん捏造もOKOK
なんでもない日常のこととかでもOK
いっぱいいれてもOK
佐倉 光
入れたら忘れるじゃないですかヤダー
KP
ふふ
あ、でもやっぱり開示しておこうかな
出目次第でもあるけど、入れたこと以外も忘れるシーンあるので、そこは遠慮しなくてもOKです
佐倉 光
おっ。あなだらけにされちゃう! 色々考えとこう。ありがとうございます!
最後の方に持って行きたい話決めたし、塔化やってもいいかなー。
KP
忘れたくない人のことを思い起こす話なので、せっかくだから色々思い起こせたほうが楽しいかなって

佐倉 光
誰だ、お前は。
俺に入り込んでくるのは誰だ。
お前のことなど知ったことか。

誰かの優しい想い出は、苛立ちを呼んだ。
それなのに、呼応するように想い出が想起される。

俺たちがその夢のような外の世界から断絶されることになったきっかけだ。
俺は詳しいことを何も知らない。
後で牧志に聞いただけだし、牧志自身もあまり覚えていなかった。
佐倉 光
しかし俺は『あの時』のことだけははっきり覚えている。
牧志と波照間さんを探していた俺は、牧志が何か儀式のようなものに挑んでいるのを見た。
あいつは波照間さんを救おうとしていた。
既に俺には手が出せる状態じゃなくて、牧志が波照間さんの手を掴もうとしているのを遠くで見ているしか無かった。
佐倉 光
そして、あいつが来た。
あいつはゴミでも引っ掛けるように牧志に爪をかけて一気に引き裂いた。
牧志は弾け、波照間さんは消えてしまった。
その空間は現実から切り離されたまま、どこまでも続く空洞になってしまった。

牧志は自分が人間だという事を忘れて、随分長いこと肉塊のようだった。
俺は、知識や想い出を拾い集めて、覚えている限りのあいつを思い出させるために随分と長いこと話しかけた。うろついた。無駄なことをした。
KP
ああ、鮮やかに思い出される。

それはまったく意思など感じない肉塊のようだったのだ。
引き裂かれた左目から絶えず涙を流し、ずくずくと蠢きながら、苦痛とも悔恨ともつかない悲鳴を垂れ流すだけの何か赤い肉のかたまりだったのだ。

あなたはまともな応えも返さないそれに、何もないうつろな空洞の中で永遠と話しかける、端から見るものがいれば狂人だっただろう。

その肉塊が、牧志の引き裂かれた心臓だったことに気がついたのは、空洞の正体に気づいてからだった。

その日から彼の心音は、もとの正常な音を失ってしまった。
恐らくは今も彼の胸の中で、あの赤い肉塊は引き裂かれたまま動いているのだろう。
佐倉 光
なんの気なしに空洞に外から持ち込んだ本を置いたときに、目を見開いたままだったあいつがわずかに動いて、それで俺は、この空洞こそが牧志だったんだと気づいた。

牧志がようやっと動くようになり、音を発するようになり、それが意味を持った言葉になり、流されるままだった塔を、牧志を外へつなぎ、アマラ経絡に完全に安定させるまで、どれくらいかかったか。
打ち込まれた混沌を切り分けて人間としてのデバイスを作り上げるのにどれだけかかったか。
俺達がそうやってもがいている間に、外でどれだけの時が流れ、どれだけの変化が起きたか。

そんな中でも俺は牧志のことを忘れたことはなかったし、言葉を取り戻した牧志が最初に発したのは俺の名前だった。

忘れるはずがない。
あの喪失から復活まで。辛くとも苦しくとも、牧志が人としての姿を、心を、言葉を、取り戻していったのは、俺の大部分を占める、大事な記憶だ。
その間には牧志の記憶は薄れるどころかより鮮明になっていったんだ。

後でそれは、俺自身が牧志の一部として取り込まれたからだと気づいたが……
KP
忘れるはずのない大事な記憶が、鮮やかに脳裏を過ぎていく。
花が咲いて、風に吹かれ、空に舞うように。
そして、散っていくように。

KP
ふと、あなたは瞬きをした。

ぱさり。
KP
瞬きをして目を開いた、一瞬。
大事だと思っていた記憶が。忘れるはずのない出来事が。

何だったのか、分からなくなっていた。

確かに、覚えていたはずなのに。
ありありと、思い出したはずなのに。

そこだけぽっかりと穴があったかのように、何も思い出せない。

何が起きたのか。
そのとき牧志は、どうしていたのか。
どうしてあなたは、牧志は、こんなことになったのか。

そもそも、こんなこと、とは何だったのか?
どうしてあなたはそんなにも、懸命に牧志の所へ戻らなければならないと、そう思っていたのか。

思い出せ、ない。
思い出そうとすればするほど、舞い散る桜の思い出が、代わりにあなたの中を埋めた。
KP
牧志が塔であることも忘れちゃった。
佐倉 光
帰らなきゃ。俺は帰らなきゃいけないんだ。
牧志の所に。
何故?
佐倉 光
俺と牧志は随分長い付き合いだ。
あいつの、ずいぶん奇妙な家で。
どうしてあそこに引っ越したんだっけ。
何かとんでもないことが起きて……引っ越さなければいけなくなった気が、するのに。

桜だ。
桜が散って、俺の頭に乗ったのを牧志が取ってくれて……
いやおかしいだろ。俺の方が背が高いのに?
近所に桜が?
そりゃあ桜くらいどこにでもあるだろう。
そういえば奇妙な異世界に行ったことがある。
ずっとずっと昔、真夏に桜が咲いている家に……
あの時の記憶だっただろうか?

欠けている。
欠けているのは分かるのに、何がどこまで欠けているのかが分からない……
KP
欠けている、欠けているはずだった。

白い部屋で初めて会った記憶も。
桜の下でまた来ようと話した思い出も。

どれだけ思い出せても、欠けている、はず、なのに。

記憶の中に花が降っていた。


あなたは牧志との 「印象に残っている出来事」 を忘れる。



KP
手がぴくりと痙攣したかのように一瞬動いた。

視界が戻る。
あなたは変わらず、暗くて狭い箱の中にいた。

花はもう光ることも痛みだすこともなく、静かに腕の上で咲いていた。
KP
SANチェック成功時減少 1失敗時減少 1D3》。
佐倉 光
1d100 61 SAN Sasa 1d100→ 59→成功
SAN 61 → 60
はなさくおもいで
佐倉 光
これ、記憶が「花の中で誰かに桜を取って貰った記憶」に書き換わっていて、それに違和感をおぼえられない状態でしょうか?
それとも失ったことに自覚はあるんでしょうか?
KP
おっと、紛らわしくて失礼しました。

「失った、忘れてしまった自覚」はきちんとあります。

思い出そうとしても思い出せず、代わりに白い部屋や桜の思い出が出てきて邪魔!!!! な状態です。
佐倉 光
牧志のことを想いだそうとしているはずなのに、誰のかわからんロマンスっぽいものを思いだしてしまうと。
佐倉 光
花をむしるべきなのかむしるべきではないのか考えあぐねておるー
記憶が花の形で外に出てきちゃったならむしっちゃいけない気がするしね!!
あーでも咲いてから記憶取られてんだよなー。
まあさっき「こすってもとれない」って言われたしー
KP
生えてるから擦っても取れるわけがないですね。
むしったら取れるかも。
佐倉 光
こすったら花弁がむしれるかなって。
KP
なるほど、確かに。
とはいえ硬いものに当てて擦るわけではないし、力が入りにくい状態だから擦って花弁が落とせたかどうかは微妙かな。
佐倉 光
だいぶ脱力してたか花が丈夫だった!
余力がある内にむしってみよっかなー

佐倉 光
引っ越そう、などと思ったことはなかったはずで。
そう、波照間さんに何かがあった気がして……次に思い出せるのはもう数年後の光景だ。
その間を埋めるのは、どう考えても嵩が足りない桜の想い出。

ふざけるなよ。俺と牧志の数年を、そんな一日で埋め尽くすな!

怒りにまかせ、目の前の板を叩く。
まずい。この花、俺の中に巣くってついでに記憶も食ってやがる。
俺は帰らなきゃいけないんだ!
帰らないと、一刻も早く帰らなければならなかったはずなのに!

頭の中に咲き乱れる花をはねのけながら、箱から出ようと暴れる。
KP
暴れるあなたをやさしく罰するように、長い蔓がするすると胸の上を這ってゆく。

振り払おうとしたその時。
腕の横をすり抜けて、するり、と首に蔓が巻きついた。
佐倉 光
締められる!
咄嗟に指を、手を、その下に滑り込ませようとする。
KP
咄嗟に滑り込ませようとした指は、あなたが思ったようには動かなかった。
身体の痛みが強くなる。
全身を襲う脱力感が、手の動きを緩慢なものにしていた。

蔓はあなたのか細い抵抗を無視して、ゆっくりと首に巻きついていく。
じんわりと強くなっていく締め付けは、だんだんとあなたの喉から酸素を追い出していく。

頭がぼうと熱くなる。
生理的な涙が頬を流れ、思考がぼんやりと揺らいでいく。

狭い箱の中では新鮮な空気を吸うこともできず、反射的に開いた口に入るのは細かい蔓ばかりだ。
KP
【CON】×5で判定。
佐倉 光
1d100 35 【CON】 Sasa 1d100→ 86→失敗
佐倉 光
何だよこの悪意! 殺される!

体内に侵入しようとする蔦を噛んで、歯の隙間で呼吸をしようと試みる。
侵入しようとする蔓を追い出そうと弱々しい咳をする。
頭が痛い。
酸素が足りない……!
KP
脳が酸素を失い、思考が回らなくなっていく。
視界が、じんわりと霞んでいく。
牧志 浩太
ままならない視界に、茶色い髪が見えた気がした。

牧志だ。
牧志が見える。

彼はあなたを静かに見ている、のだろうか。
表情の抜け落ちたその顔が、怒っているのか悲しんでいるのかわからない。
佐倉 光
「まき……し……たす……け……」
それに無理だ、あいつは来られない。どうしてだっけ。
俺は、俺は自分で何とかして、帰らないと

ああ、あいつどんな顔をするんだっけ。
牧志 浩太
「……」

彼の手があなたに伸ばされた。
縋るように嘆くようにやさしく、冷たい手があなたの首に触れる。

その手が、あなたを救うことはなかった。
その手に、ゆっくりと力がかかる。

牧志の手が、ぎりぎりとあなたから酸素を奪っていく。
佐倉 光
かは、と息の塊を吐いて肺を震わせる。
鋭い耳鳴りが聞こえ、目の前がちかちかする。
ただでさえ暗いのに急速に視界が失われてゆく。
体の表面を這う蔓の忌々しいきしみ、自らの血潮が流れる音。
暴れる首の大動脈。
ひしゃげて痛む気管。
牧志 浩太
「忘れちゃうんだな。
今度こそ、本当に」

溜息をつくように落とされた声。
その目は穏やかな絶望を湛え、あなたを静かに責めているようにも思えた。
佐倉 光
「まき……」
やめてくれ、と声を上げることもできなかった。
こんなところにあいつがいるわけがない、と何故か確信しているのに、冷たい手はどうしてか現実に思えた。
今までに何度忘れたって穏やかに見守ってくれたはずの彼が、忘れることを責めている。
牧志がこんなことをするはずがないのに、その声には変なリアリティがあった。
佐倉 光
そうだ、俺があいつを忘れて、あそこに帰らなかったら。
大変なことが起こる。
だから牧志は怒っているのかも知れない。
牧志 浩太
軋む音とともに、意識が薄らぐ。
彼が何かを言ったような気がしたが、声は聞こえなかった。
KP
HP-1。
佐倉 光
HP 9 → 8
佐倉 光
窒息判定かなー

KP
先程の格闘が功を奏したのか、蔓の力がふっと弱まる。
喉が解放され、勢いよく酸素が体内に入り込んでくる。
あなたは激しく咳き込み、呼吸を整えるだろう。
こめかみを落ちる冷や汗が止まらない。
KP
気がつくと、彼の姿はない。
あれは、ただの夢か幻だったのだろうか。
佐倉 光
酸素を脳に送り込みながら、混乱した思考をなだめる。
牧志はここにいるはずがない。いたとしてこんな狭い箱に入れるはずがない。
入れたとして、俺の首を絞めるはずがない。
あれはただの幻だ!

きっと脳が酸欠で正常な機能を損ないかけている。
でなければ、体内に侵入したいまいましい植物によって。
想像するだに恐ろしいが、怯えている場合ではない。
残った力を振り絞って箱を破壊しようと力を込める。
KP
あなたは残る力を振り絞り、外へ出ようと力を込める。

こんな箱の中で、朽ちる訳にはいかないのだ。
帰らなければならない。どうしても。
……その理由が思い出せなくとも。
KP
壁に対して〈こぶし〉〈キック〉〈頭突き〉のいずれかで攻撃を行える。(説明略)
佐倉 光
1d100 51〈こぶし〉
なんかSasaさん調子悪いね。

佐倉 光 - 今日 23:11
CCB<=51〈こぶし(パンチ)〉 (1D100<=51) > 39 > 成功
1d3
佐倉 光 - 今日 23:12
1d3 (1D3) > 3
お、今回も調子がいいぞ!  Sasa 1d3→1
KP
バキリ。
渾身の力に、とうとう反対側で小さく木の割れる音が聞こえた。

とうとう、僅かではあるが、あなたを閉じ込めるこの牢獄を打ち破ったのだ。
このまま力を込め続ければ、外に出られるに違いない。
佐倉 光
手応えがある!
俺の行動は無駄じゃないんだ。
一気に喜びがわき上がり、元気づけられ、再び攻撃を加えようと力を込める。
KP
1d2を振ってください。
佐倉 光
1d2 Sasa 1d2→2
KP
不意に。
喜びを掻き消すように、左目に激痛が走った。
佐倉 光
容易に想像もしたくない光景が頭をよぎった。
ここから植物が、花が咲く?
もうアウトだろうそんなの! 脳の至近だ!
KP
目の奥がじりじりと痛み、涙が勝手に溢れる。
眼球を突き刺す痛みに目を閉じ耐えれば一瞬、激痛と共にぐちゃりと何かがつぶれる音がした。

目が酷くあつい。痛みで上手く息ができない。
ひと呼吸毎に眼窩の奥を刺す痛みに、呼吸することすら恐ろしくなる。
佐倉 光
まさしく予想したとおりの、それ以上の激痛に切れ切れの叫び声を上げる。
目の前の板に頭を打ち付ける。
KP
声を上げようが、頭を打ちつけようが。
眼窩の奥を貫く痛みは離れず、止まず、あなたの動きについてくる。

頭を打ちつけたことで、また壁が少し軋んだ気がした。
決して逃れられない激痛が、徐々に収まっていく。
しかし、左目の奥には未だに、じんわりと痛みが居座ったままだ。

そこで何かが揺れているような感触があった。
そこを飾るように、何か柔らかいものが揺れている。
佐倉 光
右目を閉じてみる。視界はどうなっている?
KP
右目を閉じて、気づく。
何も見えない。真っ暗闇だ。
暗い、のではない。視界が……、ない。

今も痛む左目が、完全に光を失っていた。
KP
SANチェック成功時減少 0失敗時減少 1》。
佐倉 光
1d100 61 SAN Sasa 1d100→ 43→成功
佐倉 光
くそくそ、目をやられた!
このまま体中から花を噴き出して死ぬのではないか?
そんな絶望がひたひたと忍び寄ってくる。
目に居座る熱。今までの流れだと……右目に光は飛び込んでくる?
KP
右目の視界の左端に、白いものがちらちらと揺れている。
全貌こそ伺い知れないが、視界に居座って消えないそれは、白い花弁の先だった。

あなたが予期した通り。
丸い花弁の先が、淡く光を放ち始めていた。
KP
花に対して〈博物学〉〈生物学〉【知識】で判定。
三つ全ての技能で振ってよい。
どれか成功すれば成功扱いとなる。
佐倉 光
1d100 10〈博物学〉 Sasa 1d100→ 9→成功

1d100 1 〈生物〉 Sasa 1d100→ 54→失敗
1d100 47 【知識】 Sasa 1d100→ 5→決定的成功クリティカル)!
佐倉 光
これ一個成功した時点で止めるべき?
KP
成功した時点で止めてもOK。
成長を狙って全部振ってもOK。
三つ全部「振ってもよい」なので。
佐倉 光
なるほど。じゃあ遠慮なくクリティカルもらっとこ。
佐倉 光
目は来るだろうと思ったけど!
「失われた光」だと目やられたらもう死んでるんだよな!
KP
でもまだあるんですよねぇ。
佐倉 光
次どこ来るのかなー。心臓か脳天か。鼻から出たら笑う。
KP
鼻から花。ちょっと面白くなってしまう。

KP
その丸い形に、見覚えがあった。

「クリスマスローズ」という花によく似ている。
薔薇の原種によく似た形と、キリストにまつわる神話からそう呼ばれる園芸花だ。

神話ではキリストが誕生した日、マデロンという羊飼いの貧しい少女が、聖母マリアのもとへ祝福に訪れ捧げものをしようとした。
しかし寒い冬のことであり花の一本も見つからずがっかりして涙を流した。
その少女の涙が種となり、種から芽が出て、クリスマスローズが咲いたという。
KP
そういえばこの花の花言葉は、「私を忘れないで」。
KP
クリティカル特典

……あなたの脳裏に、ふっと記憶が蘇る。
それはこの形の花にまつわる、小さな、なんでもない記憶だった。

牧志が花を育てようとして、何度も何度も失敗している。
四方八方にねじれて枯れた花を捨てる、寂しげな後ろ姿。

あなたはその表情のない記憶を、忘れないで済んだ。
KP
視界の左端から、光が視界を真っ白に染めていく。
それと同時、見知らぬ誰かの記憶が、脳を掻き分けるようにして無理矢理入り込んできた。

KP
意識がふわり、と揺れる。
あなたはまた、夢を見る。
佐倉は先ほどと同一人物と思われる誰かの夢を見た。『わたし』は『先生』と喧嘩などをしながらも、その表情や仕草を愛しげに見つめている。
KP
ふわり。
揺れる意識の中。

奇妙な夢が、あなたの脳から記憶を引き出す。

いまここに目の前にあるかのように、見えない左目の視界の中に、鮮明に浮かぶ。
直接脳を掴んで引き出されてでもいるかのように、蘇る記憶が止まらない。

それは牧志の表情だった。
穏やかに微笑む顔。寂しそうに笑う顔。泣きだす一歩手前の苦笑。
笑顔、泣き顔、怒り顔、必死な顔、叫ぶ顔、苦悶の表情。

あらゆる表情が、仕草が、癖が、それを見た時の出来事とともに、ふわりと風に揺れる草木のように、頭の中を通り過ぎていく。
佐倉 光
緩やかに走り出す塔での暮らしのなか、牧志はあまり表情を見せなかった。
波照間さんを助けるための知識を集め始めて、昔のような顔を少しずつ取り戻していった。
それでも、相手は俺一人だけだ。以前とはやはり、何かが違った。

そう、いえば。

目覚めたらあいつが塔の壁面全体に鎖を這わせていて、いたく驚いたことがあった。
何事だと訊いたら、全部の牧志の危機だと、ここに引っ越して? から見たことがないような厳しい顔で言っていた。
「覚えているだろう」と言った牧志はその時、決意に満ちていて、そしてこの上なく嬉しそうだった。

俺はできる限り、牧志の負担を減らすことに努めた。
犬どもの目を誤魔化すために精神を最低限の形にしてあっちの俺の手に送り込む。
完全にあっちの俺頼みになってしまうし、敵に付け入る隙を与えてしまうが、
あっちの俺は上手くやるであろうことを、俺たちは知っている。

人を思える、人のために動ける、様々な牧志と対話をする牧志は、本当に嬉しそうで活き活きとしていた。
あの日からだ、牧志が完全に昔のように笑うようになったのは。
会いたかった
佐倉 光
あとはチキンと曲の話もしようかなと
KP
初登場の時の塔牧志とのその後の話の塔牧志とのギャップ、見せる顔の違いだけじゃなくて、こんなところからも来てたんだなぁ……。
佐倉 光
人と話すのが好きな牧志が独りになってしまったら、
さすがに佐倉一人では代えにならないだろうと。
KP
自分の問題でもあったし、牧志たちを助けたかったのもそうだけど、承諾した理由はそういう所にもあったのかもしれない。
片目牧志が「会いたかったから」承諾したように。

KP
表情の薄いぎこちない顔が。
どこか超越したような微笑が。
どこか泣きそうな薄く掃いた笑みが。
頼む、と告げた真顔が。
心の底から嬉しそうな笑顔が。
ころころと、昔のようによく色を変えるようになった、引き裂かれた左眼が。

浮かぶ。
浮かぶ。
ふわり、ふわりと頭の中を。
あたたかい春風のように過ぎていく。
佐倉 光
俺が妙な本を持ち込んだせいか、二人して変な夢を見たこともあった。
鎖がなくてどこまでも歩いて行けるのだと知ったあいつの嬉しそうな顔!
耳から変なものが出てくるんじゃないかと慌てる顔。
動物と触れあう穏やかで優しい顔。
所詮夢なのに、あの時は変に真に迫っていた。
あれからしばらく唐揚げが続いて、下層の本の一部がべたべたになったっけ。
あの一件から思い出されるのは、なかなか見たことのない、牧志の赤面した忘我の表情だ。
何考えてたんだ、あいつ。
KP
あれは本当に変な夢だったけど、思い返せば悪いものでもなかったかも……、しれない?
いや、それはどうだろう。

牧志はそれより前にも料理をしたり何か作ったりと、ここに変化を作ろうと挑戦していることはあったが、あれから頻度が増えた気がする。
サラミの一件とか。
佐倉 光
たまに楽器を弾くという趣味ができたのはいいことだ。
始まりのあの時のように弾けるようになるまで、どれくらいかかるか分からないけど。

あの時は周囲の流れが安定していて、
牧志も久しぶりに人と話し、外界に触れ、コンサートを聴きに行った。
まあ色々大変だったわけだけど、安定していたお陰で浩子さんにも久々に会えて、みんなでセッションしたな。
あれは本当に楽しかった。
牧志は自分を縛る鎖のことも全部忘れて、笑っていたんだ。
KP
あの音楽の一件から、塔には音楽が増えた。
花を育てることはできなくとも、音楽なら手の中から生み出すことができた。

外の声を聞き、あなたと共に歩く牧志は穏やかに微笑みながら、本当に嬉しそうだった。
あの時だけは、二人とも外の時間を歩けていた。
夜眠れば、次にちゃんと朝が来た。
佐倉 光
塔の二人にはたまにあるシナリオが逆に癒しの時になってたんだな。
KP
ということですねぇ……。
外と触れられる時間だったり、いつもと違う状況だったり。
停滞した塔の中の違う時間なんだ。
KP
表情、表情、いくつなんて数えられない程の無数の表情が過ぎて、流れていく。

あなたの右目が熱くなって、ぽたりと涙が落ちた。
その落ちた音にふと気を取られたとき、
いくらでも浮かぶはずの顔が、じわりと滲んだ。
KP
思い出せなかった。
さっきまで、思い出していたはずなのに。

彼はどんな顔をしていて、
どんなふうに笑っていたのか。
その眼はどんな色をしていたのか。

笑顔が。泣き顔が。怒り顔が、無限の孤独の果てで、寂しそうに苦笑する顔が。
いくつもいくつも浮かぶのに、全部、全部。

見えなかった。
分からなかった。
思い出せなかった。

顔にだけ墨を落としたかのように
その全てがあなたの中から消えていた。

記憶の中であなたとともにあるのは、曖昧な顔のない誰かだった。


あなたは牧志の「顔」を忘れる。


KP
表情と一緒に顔自体も忘れました。
いよいよ本格的に記憶が穴だらけ。>表

佐倉 光
また、奪われた。
忘れたんじゃない。奪われたんだ。この花に。

奪われているのは『俺の記憶』じゃない。『俺の記憶にある牧志』だ。
たとえ忘れてももう一度会えば問題ない。家に戻って牧志に『ごめん、久しぶりに忘れた』と言えばいいんじゃないか、という気もした。
しかし何故か、忘れたら最後だ、という気がした。
あの塔が、俺たちの家がどこにあったのか?
どうやったらあそこに帰れるのか?
いつの間にか俺は、そんなことまで忘れてしまっている!
忘れてはいけないのに。
忘れたら牧志は、

牧志は、どうなる?

笑うのか? 怒るのか?
絶望するのか? 泣き叫ぶのか?
何も分からない。あいつの顔は常にぼんやりとしていて、付きまとうのは『あいつはもう人間らしい感情を失ったままなんじゃないか』という俺の不安だけだ。

どうして俺は帰らなくてはならない?
どうして俺は、こんなに焦燥感と絶望を抱えている?

俺はひとりで死にかけている。
どうして牧志が助けに来るはずがないと確信しているんだ?

分からない。思い出せない。
忘却は死に等しいとまで思う理由が分からない。
ただ空々しく花が咲き乱れている!
KP
どうして、帰らなければならないと感じるのだろう。
どうして、忘れてしまってはいけないのだろう。

忘れてしまっても、受け入れてくれたはずだ。
あなたが危うい時、彼はいつも助けに来たし、あなたもまたそうしたはずだ。

それなのに、どうして忘れてはいけないと思うのだろう。
奪われてはならないと思うのだろう。
彼がここに助けに来るはずがないと、どうして思うのだろう。

顔を失った記憶は曖昧であやふやで、そんな彼が本当にいまも人としてそこにいるのか、もしかするとあなたはすべて失ったあとなのではないか、それすらも忘れてしまったのではないか、そんな空白の不安が思考を焼く。
KP
手が、ぴくりと痙攣したかのように一瞬動く。

片方だけの視界が戻る。
先程光を放っていた花はもう光ることも痛みだすこともなく、静かに片目を苗床に咲いていた。
KP
SANチェック成功時減少 1失敗時減少 1D3》。
佐倉 光
1d100 60 SAN(前回間違えてた) Sasa 1d100→ 76→失敗
1d3 Sasa 1d3→2
佐倉 光
曇るどころか虫食いだ
佐倉 光
SAN 60 → 58

俺はあの時、牧志が波照間さんを助けようとした時に牧志を失っていて、それを認めたくなくて妄想に浸っていただけなんじゃないのか?
だから俺は、あいつの住む場所も知らないし、顔も思い出せなくなっているんじゃないのか?

疑念がわき上がった。
佐倉 光
いや、違う。さっきまでは覚えていた。思い返していた。確かにそこにあった。
この体中に咲く花に不当に奪われているんだ!
俺は穴だらけにされている。
何故か牧志の記憶だけを狙い撃ちにされている!

俺は帰らなきゃならない。
帰らないと、大変なことになる。
佐倉 光
それが何かも覚えていないのに?
牧志が今も生きているか、分からないのに?
佐倉 光
死に物狂いで目の前の壁を押す。力を入れる。
音がしたのはどこだ!
ここから出る。
こんな息苦しく何も見えないところにいたら緩慢に死んでゆくだけだ。
正常な思考などできるはずがない!
KP
抗うべく力を込める身体を包み込んでいく蔓が、緩やかに締めつけを増していく。

蔓がいよいよ肉に食い込む。
皮膚の下を這う嫌な感触がする。
締め上げられる身体がぎしり、ぎしりと悲鳴を上げる。
蔓があなたを破壊するのが先か、あなたが壁を破壊するのが先か、
KP
力を入れたその時、ずきりと心臓が痛んだ。
拍動が乱れる。バクバクと心臓が早鐘を打つ。

血管の中に、血ではないものが這っている感覚を覚えた。
何かに割り込まれた心臓が、血流を確保しようと必死にもがいているように思えた。

胸の中で蔓が這いずっているのを感じる。
息が苦しい。胸が苦しい。
心臓を緩く締め上げられている、そう感じる。

何かが胸の中を這っている。
何かが胸の中に満ちている。
何かが胸を突き破ろうとしている。
何かがあなたの心臓を、やさしい殺意で直接触れている。
もどかしく逃れがたい気味の悪さが、あなたを苛む。
KP
【POW】×5で判定。
佐倉 光
1d100 75 【POW】 Sasa 1d100→ 9→成功
佐倉 光
「っが」
全身を絡め取られ、締め付けられ、悲鳴を上げる。
この化け物ども、体内への侵入をもはや隠しもしない!
苗床おれを支配したということか。

開いた右目から激痛で涙がぼろぼろとこぼれ落ちている。
意思に関係なくがちがちと顎が鳴り、全身が引きつる。
感覚などないはずの心臓が、我が物顔に侵入してのたくる蔓に締め上げられてもがく。
右手で掻きむしるように胸を掴んだ。
KP
今にも心臓が握り潰されてしまうのではと思うほどの苦痛に、残された片目から涙がだらだらと落ちる。
狭い箱の中で身を捩ろうとも、体内を這う苦痛からは逃れられない。
KP
霞む視界に、牧志の姿が映った。
佐倉 光
牧志、助けて……
KP
墨を落としたように黒く塗りつぶされた、目も口もない顔で、あなたの顔を静かに覗き込んでいた。
佐倉 光
手を伸ばそうとした、その指先が恐怖に引きつる。
感情が分からない。
どんな顔をしていたかすら分からない。
KP
恐怖に引きつる指を、彼はやさしく取った。
目も口もなくても、その手つきは穏やかだった。

彼はあなたの手を取ったまま、苦痛に悶える心臓の上に、反対の手を伸ばした。
そして、そっと撫でた。

彼の手のひらは暖かく、あなたを落ち着けるように、何度も何度も、緩やかに撫でる。
それから小さく祈るように、指先であなたの胸を少し押した。
それはまるで、

「忘れないでくれ」

そう願うかのようだった。
佐倉 光
ああ。忘れたくない。
牧志はこうやっていつも俺を助けてくれた。
だから俺は牧志に借りを返すために。いや。
牧志を支えたいと思ったんだ。
KP
HP-1。
佐倉 光
HP 8 → 7
佐倉 光
苦しい胸に力を込めるように、深呼吸をする。
KP
ふっと苦痛が和らいだ。
気がつけば、目の前に彼の姿はない。
心臓を苛む苦痛も、微かな違和感だけを残して消えていた。
佐倉 光
だから、帰らなきゃ。
帰らなきゃいけないんだ。
あいつを一人にしちゃいけないんだ!
こんなところで花まみれになっている場合じゃない!
KP
冷や汗が止まらない。未だに心臓がバクバクと音を立てている。
あなたは時折ぐらつく意識を掻き集め、違和感に侵された胸で深く息をする。
KP
壁に対して〈こぶし〉〈キック〉〈頭突き〉のいずれかで攻撃を行える。(説明略)
佐倉 光
1d100 51〈こぶし〉 Sasa 1d100→ 11→成功
1d3 Sasa 1d3→1
佐倉 光
脱力感と痛みが酷い。だが渾身の力を込める。
KP
ごつん、あなたの拳が壁に当たる。
全力で殴ったはずなのに、殆ど力が入っていない。
しかしそのまま力を掛ければ、ミシミシと反対側で裂ける音がした。

脱出は近い、のではないか。
佐倉 光
まだ動ける。力が入る。
まだ俺は死んでいない。

もう一度、力を入れる。
外に出ればどうにかなるというわけではないが。
もう帰る場所も分からないが。
ここで寝ていても花と夢に殺される!
KP
もう一度力を込めた時、首でぶつりと音がした。
内側から溢れ出る、沸々とした痛み。

首をぐるりと縫い止めるように、うなじから始まった痛みが首を取り巻いていく。

コメント By.佐倉 光
【塔】から外出していた佐倉は、タイミングをはかって帰ろうとしていた。
それだけだったはずなのだが……

基本KPレスのシナリオをKPあり版で回していただきました。

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【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト  」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」


TRPGリプレイ【置】CoC『レミングス・ドリーム』牧志&波照間&佐倉 1

「オマエ、あのバカがどこにいるか知ってるか」

TRPGリプレイ【置】CoC【タイマン限2】収録シナリオ『Look,LOOK Everyone!』 佐倉&牧志 1

「お、佐倉さん」
「よう、東浪……見るなっ」


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