本編見る!
牧志 浩太
牧志はあなたを乗せて滑り出す。
こつでも掴んだのか、足元は階段だが急な上下動はほとんどなく、階段の螺旋を沿って、下へと滑らかに降りていく。
相変わらず視界は緩やかに回転しているが、ジャイロでも入っているのか、カンテラの光は変わらず前を向く。
こつでも掴んだのか、足元は階段だが急な上下動はほとんどなく、階段の螺旋を沿って、下へと滑らかに降りていく。
相変わらず視界は緩やかに回転しているが、ジャイロでも入っているのか、カンテラの光は変わらず前を向く。
佐倉 光
「あの時のことを思い出すな。
あの時は俺が靴で浮いて、牧志の感覚を乗せて走ってた。
あと、あの時は昇りだったけどな」
あの時は俺が靴で浮いて、牧志の感覚を乗せて走ってた。
あと、あの時は昇りだったけどな」
牧志 浩太
(だな。
そういえば、あの時と逆だ。
長い長い螺旋階段で、俺は昔の幻を見たり、それ以外のものを見たりしてた)
そういえば、あの時と逆だ。
長い長い螺旋階段で、俺は昔の幻を見たり、それ以外のものを見たりしてた)
佐倉 光
「たとえばここでうたた寝したら、戻りたいと思っていなくても現実に戻るってことか?」
佐倉 光
「この体でも、元の体だったときほどじゃないけど眠気が来ることは普通にあるみたいだし」
牧志 浩太
(あー………、なるほど?
確かにそうなっちゃうよな。
戻ろうと思って寝れば、とか特に言ってなかったし。
そう思うと不便だな。
望む所に来られるんだから、またここに来ることはできるだろうけど)
確かにそうなっちゃうよな。
戻ろうと思って寝れば、とか特に言ってなかったし。
そう思うと不便だな。
望む所に来られるんだから、またここに来ることはできるだろうけど)
佐倉 光
「ああ。
目的地には飛べるらしいから、そんなに気にするようなことじゃないかもな」
目的地には飛べるらしいから、そんなに気にするようなことじゃないかもな」
牧志 浩太
(一日二日、って話じゃないしな、今更。
みんなが苦しい思いをしてなければいいんだけど)
みんなが苦しい思いをしてなければいいんだけど)
佐倉 光
「……何させられてるって言ってたっけな。
写本してるとか丁重に扱ってるとか。
人質なんだからそんな無茶なことはされないだろ」
……
ちょっと前の、牧志の脳が露出していたときのことを思い出して振り払う。
写本してるとか丁重に扱ってるとか。
人質なんだからそんな無茶なことはされないだろ」
……
ちょっと前の、牧志の脳が露出していたときのことを思い出して振り払う。
佐倉 光
「……多分」
KP
牧志は滑るように進んでいく。
やがて周囲を、ひとつ、ふたつ、青白い鬼火がちらちらと照らしはじめた。
どこからか、囁く声が聞こえた。
何かの気配が、すぐ傍の真っ暗闇の中にある。
知っている人のような、知らない人のような声が、耳元で聞こえた。
やがて周囲を、ひとつ、ふたつ、青白い鬼火がちらちらと照らしはじめた。
どこからか、囁く声が聞こえた。
何かの気配が、すぐ傍の真っ暗闇の中にある。
知っている人のような、知らない人のような声が、耳元で聞こえた。
佐倉 光
「!」
声がした方を見る。
その声、聞き覚えあるやつかな。
声がした方を見る。
その声、聞き覚えあるやつかな。
KP
声は知っている人の声に聞こえては、知らない人の声に聞こえ、謎めいた囁き声のようでもあった。
その正体を掴むことはできず、常に曖昧だ。
カンテラの緑色の光はそれらの正体を遮り、道だけを照らしている。
その正体を掴むことはできず、常に曖昧だ。
カンテラの緑色の光はそれらの正体を遮り、道だけを照らしている。
佐倉 光
前に飛び越えたとこかなぁ。
ちなみに中の人ガチでその地名に心当たりがない。
ただ、地形確認したとき「レン高原」は見たような気がしなくもない……
ちなみに中の人ガチでその地名に心当たりがない。
ただ、地形確認したとき「レン高原」は見たような気がしなくもない……
KP
ドリームランドルルブには一応あるのですが、なかなかマイナーな地名ですね。シナリオでもあんまり見ない。>ズィンの
佐倉 光
囁くものたちの谷とはまた違うとこなのかなー
動画であそこでの囁き素材が欲しくてそれだけのためにサブスクに入ったなぁ……
動画であそこでの囁き素材が欲しくてそれだけのためにサブスクに入ったなぁ……
KP
もうちょっと歩いたらあれも出てくるんですが、ここのは別物です。
KP
どれだけ言ったか、やがて階段の一番下へとたどり着く。
そこはあの「アマラ経絡」の光景にも似た、蟻の巣か蜘蛛の巣のような、無数の洞穴と枝分かれする道の群れだ。
そのどこにも何者かの気配がわだかまっているようで、一瞬後には何もないかのように感じられる。
カンテラの光は、行く先だけを真っ直ぐに照らしている。
そこはあの「アマラ経絡」の光景にも似た、蟻の巣か蜘蛛の巣のような、無数の洞穴と枝分かれする道の群れだ。
そのどこにも何者かの気配がわだかまっているようで、一瞬後には何もないかのように感じられる。
カンテラの光は、行く先だけを真っ直ぐに照らしている。
KP
目を凝らし、光の外をよく見てみる、または耳を澄ませてみる?
佐倉 光
耳を澄ませる……と、背中からの声も聞こえそうだなw
佐倉 光
何がいるのか、と目をこらして耳を澄ませてみる。
KP
「もごもごもごもご」
耳を澄ませようとすると、猿轡から解放されようともがく声がうるさい。
囁き声はどうにも曖昧で、よく見ない事には正体が分かりそうにもない。
あなたは、その正体を探ろうと目を凝らす。
耳を澄ませようとすると、猿轡から解放されようともがく声がうるさい。
囁き声はどうにも曖昧で、よく見ない事には正体が分かりそうにもない。
あなたは、その正体を探ろうと目を凝らす。
KP
あなたは、不意にその存在に気づいた。
それは知っている人でも、ましてや人ですらなかった。
蝙蝠のような翼、長い角、そして棘のある尾、黒いなめし皮のような皮膚のほっそりとしたシルエット。
人のような形をしたそれには顔らしきものがなく、そこには空間があるだけだった。
それは、それをただの闇だと思っていたのが嘘であるかのように、何匹も何匹も飛び交っていた。
その異様な生き物どもはあなた達を取り囲み、頭上の闇の中にみっしりと満ちていた。
気づいてしまった佐倉さんは《SANチェック:成功時減少 0 / 失敗時減少 1D6》。
それは知っている人でも、ましてや人ですらなかった。
蝙蝠のような翼、長い角、そして棘のある尾、黒いなめし皮のような皮膚のほっそりとしたシルエット。
人のような形をしたそれには顔らしきものがなく、そこには空間があるだけだった。
それは、それをただの闇だと思っていたのが嘘であるかのように、何匹も何匹も飛び交っていた。
その異様な生き物どもはあなた達を取り囲み、頭上の闇の中にみっしりと満ちていた。
気づいてしまった佐倉さんは《SANチェック:成功時減少 0 / 失敗時減少 1D6》。
佐倉 光
1d100 52 《SANチェック》 Sasa 1d100→ 55→失敗
ちぇ-
1d6 Sasa 1d6→5
あーあ
SAN 52 → 47
もうちょっと真面目にやらなきゃまずいかなぁー
ちぇ-
1d6 Sasa 1d6→5
あーあ
SAN 52 → 47
もうちょっと真面目にやらなきゃまずいかなぁー
KP
あーあ。一時的狂気の【アイデア】ロールをどうぞ。
佐倉 光
1d100 85 Sasa 1d100→ 46→成功
賢いのでー
1d10 症状 Sasa 1d10→5
賢いのでー
1d10 症状 Sasa 1d10→5
KP
短期表でどうぞ。1d10で種別、1d10+4で持続ラウンド数。
佐倉 光
1d10+4 期間 Sasa 1d10+4→ 5+4→合計9
KP
「あなたをその場に釘づけにしてしまうような、極度の恐怖症」ですね。
佐倉 光
自分で歩いているわけではなかったから、牧志の上で息もせずに硬直するな。
背中の「モガモガモガ」だけがよく聞こえることだろう。
それを目にした途端、思考が止まり、目は見開いたままでガラス玉のようにぐるぐるとゆっくり回る恐怖を眺め続ける。
背中の口がなんだか狂ったような歌を歌っている。まるで狂気のオルゴールだ。
背中の「モガモガモガ」だけがよく聞こえることだろう。
それを目にした途端、思考が止まり、目は見開いたままでガラス玉のようにぐるぐるとゆっくり回る恐怖を眺め続ける。
背中の口がなんだか狂ったような歌を歌っている。まるで狂気のオルゴールだ。
牧志 浩太
(佐倉さん? ……えっ、佐倉さん、何かあったのか?)
牧志 浩太
(佐倉さん?)
上に乗っていたあなたと違い、光を追って進んでいたためか、牧志は周囲を見ていなかったらしい。
突然様子の変わったあなたに、何があったのかと驚いて問いかけてくるが……、
光の外を指し示すなり、言葉で示すなり、する?
上に乗っていたあなたと違い、光を追って進んでいたためか、牧志は周囲を見ていなかったらしい。
突然様子の変わったあなたに、何があったのかと驚いて問いかけてくるが……、
光の外を指し示すなり、言葉で示すなり、する?
佐倉 光
「……」
それはしないかな。動けるようになったら黙って首を振る。
何かいる。何かいる。何か恐ろしいものがそこにいる。
震える手でカンテラを握りしめる。
この光が導く道を邪魔するものはない、と言っていた。
これをひたすらに掲げて進めばいいはずだ。
それはしないかな。動けるようになったら黙って首を振る。
何かいる。何かいる。何か恐ろしいものがそこにいる。
震える手でカンテラを握りしめる。
この光が導く道を邪魔するものはない、と言っていた。
これをひたすらに掲げて進めばいいはずだ。
KP
もう遅い。あなたは自らそれを見てしまった。
自ら光の外へ視線を与えてしまった。
自ら光の外へ視線を与えてしまった。
牧志 浩太
(うわぁああああ!?)
KP
牧志の叫び。それらの爪が牧志ごとあなたを掴んだ。
あなたの身体が浮き上がる。
洞穴の天井近くまで運ばれ、自ら行く自由を奪われ、否応なしにどこかへ引きずられていく。
あなたの身体が浮き上がる。
洞穴の天井近くまで運ばれ、自ら行く自由を奪われ、否応なしにどこかへ引きずられていく。
佐倉 光
こいつらが何なのか、〈クトゥルフ神話〉知識(神)で判定する。
KP
正気度 1点を消費し、99%で判定をどうぞ。
佐倉 光
これ、『友』の配下の怪物かな~
だとするとあまり良い結果を生まない気がする。が。
反応が見たい気もする。
野田さんの上司と顔を合わせてぺちーんってやられそう。
今酒のんで酔って寝るのが一番いいのかな?
だとするとあまり良い結果を生まない気がする。が。
反応が見たい気もする。
野田さんの上司と顔を合わせてぺちーんってやられそう。
今酒のんで酔って寝るのが一番いいのかな?
佐倉 光
1d100 99 Sasa 1d100→ 63→成功
正気度 46
正気度 46
KP
あなたはそれをようく知っている。
あなたは二つの感情に引き裂かれる。
嫌悪や恐怖ではなく、厭気に近い不快感が腹の奥からせり上がる。
夜鬼。夜鬼だ。けがらわしい、うるさい、しち面倒くさい、己の遊びを邪魔してくる、ノーデンスのしもべ!
しかし同時に、その名にあなたの心は強い懐かしさを覚えるだろう。
心と体があなたの感情を引き裂く。
あなたは二つの感情に引き裂かれる。
嫌悪や恐怖ではなく、厭気に近い不快感が腹の奥からせり上がる。
夜鬼。夜鬼だ。けがらわしい、うるさい、しち面倒くさい、己の遊びを邪魔してくる、ノーデンスのしもべ!
しかし同時に、その名にあなたの心は強い懐かしさを覚えるだろう。
心と体があなたの感情を引き裂く。
佐倉 光
その節ははちまきをありがとうございました!(半ギレ)
KP
佐倉さん&牧志あの件がノーデンス主催とは知らないんだよなぁ。ノーデンスさんたら。
佐倉 光
しらないねぇ
『俺』は知っているかも知れないけど。
一瞬だけあそこにいたから
『俺』は知っているかも知れないけど。
一瞬だけあそこにいたから
KP
ああー。知ってるかもしれませんね。一瞬だけいたしね。
佐倉 光
「夜鬼めらが。ノーデンスの下僕どもが余計な……」
『俺』が舌打ちをする。
『俺』が舌打ちをする。
佐倉 光
「あれ、ノーデンスって……確か、あの世話になった爺さんだろ。
いくつか名前がある神様だ」
いくつか名前がある神様だ」
佐倉 光
「懐かしい……けど、『俺』はあまり好きじゃないみたいだな」
牧志 浩太
(うわわ、えっ?)
牧志はじたばたと回転しようとしていたが、あなたの声にふっと我に返る。
牧志はじたばたと回転しようとしていたが、あなたの声にふっと我に返る。
牧志 浩太
(えっ、ノーデンスって。
……懐かしいな。そういえば佐倉さん、ここの神殿で世話になったんだっけ)
……懐かしいな。そういえば佐倉さん、ここの神殿で世話になったんだっけ)
牧志 浩太
(じゃあ、こいつらは何をしようとしてるんだろう?
もちろん今度も優しいとは限らないけど、……)
もちろん今度も優しいとは限らないけど、……)
佐倉 光
「ああ、あの時は至れり尽くせりだったな。
神社清掃の返礼だったっけ」
神社清掃の返礼だったっけ」
KP
また、二人とも【アイデア】/2でロール。
牧志 浩太
1d100 45 まきしの【あいであ】 Sasa 1d100→ 94→失敗
佐倉 光
1d100 42【アイデア】 Sasa 1d100→ 3→決定的成功(クリティカル)!
KP
お、クリティカル。
では、はっきりと確信するかな。
あなたはカンテラを見ることを思いつく。
暗い空中を切って飛ぶ夜鬼は洞窟地帯を抜けようとしているが、カンテラは変わらず洞窟の外を指している。
どうやら、向かう方向は同一だ。
このまま掴まれていても、今のところ目的地には近づけそうだ。
夜鬼どもが気紛れを起こして、突然あなた達を地面に落とさなければだが。
まさか、『友』とはノーデンスの事ではあるまいな?
だとすれば、赤の女王は『自分』をおちょくっているに違いない。
では、はっきりと確信するかな。
あなたはカンテラを見ることを思いつく。
暗い空中を切って飛ぶ夜鬼は洞窟地帯を抜けようとしているが、カンテラは変わらず洞窟の外を指している。
どうやら、向かう方向は同一だ。
このまま掴まれていても、今のところ目的地には近づけそうだ。
夜鬼どもが気紛れを起こして、突然あなた達を地面に落とさなければだが。
まさか、『友』とはノーデンスの事ではあるまいな?
だとすれば、赤の女王は『自分』をおちょくっているに違いない。
KP
また、この状況から逃れる方法をも思いつく。
〈夢見〉の力で目の前の夜鬼どもを別の物に変えるなり(相手も抵抗はするが)、飛べる物や武器を呼ぶなり、あるいはあのワインを使って眠ってしまうこともできるだろう。
〈夢見〉の力で目の前の夜鬼どもを別の物に変えるなり(相手も抵抗はするが)、飛べる物や武器を呼ぶなり、あるいはあのワインを使って眠ってしまうこともできるだろう。
佐倉 光
ええー、迷うな。
会いに行きたい気もするし、会ったら確実にダメージだからとっとと逃げた方がいい気もするしぃ!
会いに行きたい気もするし、会ったら確実にダメージだからとっとと逃げた方がいい気もするしぃ!
KP
【アイデア】クリティカルなので「今の所カンテラの光もそっち(夜鬼の行く方)向いてる」ことは確信できます。
ずっとそっち向いてるかどうかは不明ですが、現状そう。
ずっとそっち向いてるかどうかは不明ですが、現状そう。
佐倉 光
「とはいえ『俺』のことは煙たがっていそうなんだ」
佐倉 光
「しかし危害を加えるつもりならこいつらに襲わせればいいんだし」
佐倉 光
「人間や地球を救うためだったら目こぼしか、あわよくば助力が得られたりしねぇかな……」
牧志 浩太
(なるほど……。
佐倉さんと『神』で立場が違うってややこしいな)
佐倉さんと『神』で立場が違うってややこしいな)
佐倉 光
「もしかしたらあの時の礼が言えるチャンス……ともいえるか」
佐倉 光
「一応、目的地に近づいてはいる。少し様子を見よう」
牧志 浩太
(分かった、暫く様子を見よう)
KP
あなた達を掴んだ爪は洞窟を出ると、高く空へと舞い上がる。
爪はあなた達をしっかりと捉え、支えている。
恐るべきリフトの旅だ。地面からの距離に、思わず寒気がするかもしれない。
爪はあなた達をしっかりと捉え、支えている。
恐るべきリフトの旅だ。地面からの距離に、思わず寒気がするかもしれない。
佐倉 光
「自分で飛んでいたときはそんなに怖くはなかったんだけど、
不安定なところに座って吊されてんのは怖いな」
不安定なところに座って吊されてんのは怖いな」
牧志 浩太
(すごい高さだよな、これ。
今の俺じゃクッションにはならないし)
今の俺じゃクッションにはならないし)
KP
見覚えのある風景がはるか眼下に広がった。
荒涼とした平野に点々と、何かきたならしいものが積まれている。
その周辺で人のような姿をしたものが踊っている。
平野には丸い穴のようなものが無数に穿たれていた。
牧志の夢の中で、あなたと牧志が大変な目に遭った、あの場所だ。
カンテラの光は行く先だけを照らし、それらの輪郭を曖昧にしている。
荒涼とした平野に点々と、何かきたならしいものが積まれている。
その周辺で人のような姿をしたものが踊っている。
平野には丸い穴のようなものが無数に穿たれていた。
牧志の夢の中で、あなたと牧志が大変な目に遭った、あの場所だ。
カンテラの光は行く先だけを照らし、それらの輪郭を曖昧にしている。
佐倉 光
「懐かしい景色だ。こうやって改めて見ると……」
佐倉 光
「こんなとこに神殿建ててるノーデンスって不思議な趣味してんな。
手下がいるところに住んでるのか、こんなとこに住んでるから手下がこんなのばっかりなのか」
手下がいるところに住んでるのか、こんなとこに住んでるから手下がこんなのばっかりなのか」
牧志 浩太
(えっ、あのひとこんな所に神殿立ててるのか? 意外だ。
そういえば陰気な所だ、って言ってたもんな)
そういえば陰気な所だ、って言ってたもんな)
KP
やがて、彼らはあなた達を掴んだまま、大きな崖のへりに張り出した、ジャンプ台のような地形へ向かう。
カンテラの光は、その崖の下を指している。
……崖の下は遠く霞んで見えないが、これは、一体、どれほどの高さがあるのだろうか?
カンテラの光は、その崖の下を指している。
……崖の下は遠く霞んで見えないが、これは、一体、どれほどの高さがあるのだろうか?
佐倉 光
万一落ちたり落とされたとき用に夢見でショック吸収剤でも出すイメージ作っとこう……
佐倉 光
「ゲル状で、卵落としても平気なあれ、何でできてんだ……」
牧志 浩太
(あれか、何でできてたっけ……。
ああいう雑学って、意外と詳細覚えてないな)
ああいう雑学って、意外と詳細覚えてないな)
佐倉 光
「いやー、もうちょっと分かりやすいパラシュートにすべきか?」
本体も背中と同じようにぼそぼそ喋っている。
牧志は今丈夫そうにも見えるがさすがにこの高さだとまずい気がする。
本体も背中と同じようにぼそぼそ喋っている。
牧志は今丈夫そうにも見えるがさすがにこの高さだとまずい気がする。
佐倉 光
そういやあの時はストレス溜まりすぎて疲労でちょっとおかしくなって、チキンレースじみたことなんかもしてたな。
牧志 浩太
(夢なんだし、いっそ羽生やして飛べたらいいのにな。
目の前にモデルもいるし)
目の前にモデルもいるし)
佐倉 光
「なるほど、羽……」
牧志の体に巨大な翼がある光景を思い浮かべた。
最悪それで滑空して……
牧志の体に巨大な翼がある光景を思い浮かべた。
最悪それで滑空して……
KP
爪はあなた達を掴んだまま、突き出した崖のへりへとぐんぐんと近づいていく。
佐倉 光
思わず牧志の体にしがみつく。
牧志 浩太
(わっ?)
空中で牧志の身体にしがみついた、瞬間。
空中で牧志の身体にしがみついた、瞬間。
KP
一瞬翼を畳むと、夜鬼はひょいと崖の下へと身を投じた。
がくん。
あなた達の身体に不意、下向きの加速度がかかる。
結晶体の硬い表面を掴んだ手が滑る。
がくん。
あなた達の身体に不意、下向きの加速度がかかる。
結晶体の硬い表面を掴んだ手が滑る。
KP
幸い、落下ではなかった。
夜鬼は軽やかに翼を翻して一瞬の下降を殺すと、変わらぬ速度で下向きに飛んでいく。
夜鬼は軽やかに翼を翻して一瞬の下降を殺すと、変わらぬ速度で下向きに飛んでいく。
佐倉 光
「うわ!」
慌てて指先に力を込め、出っ張りに何とか引っかけようとする。
昔飛んだのとは随分違うルートだ!
慌てて指先に力を込め、出っ張りに何とか引っかけようとする。
昔飛んだのとは随分違うルートだ!
KP
何とか、指が牧志の角に引っかかった!
眼下に霞む風景が少しずつ近づき、凹凸のある風景が見えてくる。
切り立った、滑らかな山脈が聳えているのだと、少し近づいてくると分かる。
その山肌は暗闇の中の目印のように、ぼんやりと青く光っていた。
ぞくりと背筋に寒気が走る。その光の嫌な雰囲気には覚えがあった。
あなたが以前にその手で拾い上げた、あの気味の悪い鬼火だ。
眼下に霞む風景が少しずつ近づき、凹凸のある風景が見えてくる。
切り立った、滑らかな山脈が聳えているのだと、少し近づいてくると分かる。
その山肌は暗闇の中の目印のように、ぼんやりと青く光っていた。
ぞくりと背筋に寒気が走る。その光の嫌な雰囲気には覚えがあった。
あなたが以前にその手で拾い上げた、あの気味の悪い鬼火だ。
佐倉 光
「あっ、あれ! なんつったっけな、鬼火採取したナントカ山脈!」
あれは本当に嫌な感覚だった。背筋が寒い上めちゃくちゃ痛かった。
指先が焦げるのを、どうやって声も出さずに我慢したのか思い出せない。
あれは本当に嫌な感覚だった。背筋が寒い上めちゃくちゃ痛かった。
指先が焦げるのを、どうやって声も出さずに我慢したのか思い出せない。
佐倉 光
「トォークだったかなぁぁぁ!」
牧志 浩太
(えっ、もしかしてあの熱くて痛くて暗くて、そこら中で人が焦げてたやつ!)
牧志は別の幻とごっちゃになっているようだ。
牧志は別の幻とごっちゃになっているようだ。
佐倉 光
「そこは俺は見てねぇっ!
クソ蟲野郎が行ってた方だ!」
クソ蟲野郎が行ってた方だ!」
牧志 浩太
(あ、そうか)
佐倉 光
そういや牧志は自分の視界と俺の視界とクソ蟲の視界視えてたんだよな。
佐倉 光
「大変だったな」
ほぼ落下中みたいなスピードの中で変に我に返ってしまった。
ほぼ落下中みたいなスピードの中で変に我に返ってしまった。
牧志 浩太
(……そうだな。
あの時は俺も佐倉さんも、ほんとに大変だった。
あれからも色々あったけどさ、その中でも一番嫌な奪われ方だったな)
あの時は俺も佐倉さんも、ほんとに大変だった。
あれからも色々あったけどさ、その中でも一番嫌な奪われ方だったな)
牧志 浩太
(俺を取り戻してくれたおかげで、こうしていられるし、
佐倉さんを取り戻せたから、こうやって話していられる。
あの時色々思い出したことだって、なくさないでいられた。
……よかった。それに、ありがとう)
山脈の地表が、その傍らの白い谷がぐんぐんと迫る中、冷たい結晶体の表面がふっと温かくなったような気がした。
佐倉さんを取り戻せたから、こうやって話していられる。
あの時色々思い出したことだって、なくさないでいられた。
……よかった。それに、ありがとう)
山脈の地表が、その傍らの白い谷がぐんぐんと迫る中、冷たい結晶体の表面がふっと温かくなったような気がした。
佐倉 光
「そうだよ。あんだけ苦労して、それからも色々あって乗り越えて生き延びてきたんだ。
つまんない終わりにするためじゃねぇからな!」
そういえば今不確かになっているのは俺の方か。
随分と、意図的なものを感じるほどに符合している。
つまんない終わりにするためじゃねぇからな!」
そういえば今不確かになっているのは俺の方か。
随分と、意図的なものを感じるほどに符合している。
牧志 浩太
(ああ。
俺達はなんとかここにいるけど、それだけじゃ嫌だ。
シローだって先輩だってみんなだって、取り戻すんだ。
佐倉さんだって、別の何かにはさせない)
俺達はなんとかここにいるけど、それだけじゃ嫌だ。
シローだって先輩だってみんなだって、取り戻すんだ。
佐倉さんだって、別の何かにはさせない)
佐倉 光
「今度も上手く行くって。
頼りにしてるからな!」
頼りにしてるからな!」
佐倉 光
「それはそれとしてこいつら、もうちょっと快適性に気を遣ってくれねぇかなぁ!?」
乗っかってるだけの俺のことも考えてくれよ!
乗っかってるだけの俺のことも考えてくれよ!
佐倉 光
そういえばこれ、対の棲みかの作者さんのシナリオでしたねぇ。
KP
なのです。
せっかくなので道中をじっくり描写しています。
せっかくなので道中をじっくり描写しています。
佐倉 光
懐かしい。ありがとうございます!
KP
そう、とても懐かしい!
佐倉 光
背景で対の棲みか動画版BGMにしながらサメと戦っています。
KP
おおー。対の棲みか動画版も懐かしいなぁ。
こちらも見よう。
あああ、BGM聞くと当時の雰囲気の記憶が蘇る
こちらも見よう。
あああ、BGM聞くと当時の雰囲気の記憶が蘇る
牧志 浩太
(ああ、頼りにしててよ。俺も頼りにす)
牧志 浩太
(うわ)
KP
牧志がそう言った所で、再びがくんと揺れが身体を襲った。
山の傍らの谷に落ちる直前で、夜鬼が方向転換したのだ。
見覚えのある真っ白な谷。
どこまでもどこまでも続く、骨の谷。
山の傍らの谷に落ちる直前で、夜鬼が方向転換したのだ。
見覚えのある真っ白な谷。
どこまでもどこまでも続く、骨の谷。
KP
なるほど、あの上から食屍鬼が食い残しを投げ捨てるから、ここには骨が積もるのだ。
佐倉 光
「おっ、目的地が神殿なら近いぞ!
見ろよ、骨の谷だ!」
明らかに見覚えのある風景で少し心が躍った。
見ろよ、骨の谷だ!」
明らかに見覚えのある風景で少し心が躍った。
佐倉 光
いや、山ほどの死体で喜ぶってどーよ。
牧志 浩太
(お、佐倉さんが言ってたの、ここか)
佐倉 光
「なるほどなー、書で読むのとみるのは大違いだ。
どんだけ食ったらこんなに溜まるんだよ」
あの時は谷底を見下ろしながら谷の中を飛んでいたので、上の方は見えなかったのだ。
どんだけ食ったらこんなに溜まるんだよ」
あの時は谷底を見下ろしながら谷の中を飛んでいたので、上の方は見えなかったのだ。
牧志 浩太
(ずっとここに投げてきたんだろうな、食べ残し。
あの時、あいつの視界の中で焦げてた人は今も焦げてるのかとか、ちょっと考えるな……)
あの時、あいつの視界の中で焦げてた人は今も焦げてるのかとか、ちょっと考えるな……)
佐倉 光
「……牧志だなぁ」
さっきのお返しとばかりに呟いた。
さっきのお返しとばかりに呟いた。
KP
夜鬼は風を切り、飛んでゆく。
谷はどこまでも白く、夜鬼がどれだけの速度で飛んでいるのかよく分からないが、時間の感覚を失う程に大きい。
谷はどこまでも白く、夜鬼がどれだけの速度で飛んでいるのかよく分からないが、時間の感覚を失う程に大きい。
佐倉 光
「この谷、こんなに広かったかな。
ここ飛んでた頃は地図覚えたり牧志を引き留めるのに一杯一杯で、あっという間だった気がして……いや、やっぱり遠かったかな」
ここ飛んでた頃は地図覚えたり牧志を引き留めるのに一杯一杯で、あっという間だった気がして……いや、やっぱり遠かったかな」
佐倉 光
「夢か。そういえばあいつら元気にやってるかな。
どっかで会えりゃあ、頼りになるんだけどな」
自分にそっくりの青年達のことを思い出した。
失われた友人たち本人ではないが、やはり彼らも助けに来てくれたのだ。
どっかで会えりゃあ、頼りになるんだけどな」
自分にそっくりの青年達のことを思い出した。
失われた友人たち本人ではないが、やはり彼らも助けに来てくれたのだ。
牧志 浩太
(あいつら……、そっか、ここは夢の世界なんだ。
ここのどこかにいるはずなんだよな。
どうしてるんだろうな。
頼りになるだろうし、今どうしてるのか知りたいな。楽しくやってるよな、きっと)
ここのどこかにいるはずなんだよな。
どうしてるんだろうな。
頼りになるだろうし、今どうしてるのか知りたいな。楽しくやってるよな、きっと)
KP
夜鬼たちは長く長く飛び、ようやく谷の終わりが見えてくる。
人影も建物の姿もないひらけた平野を、彼らは横切っていく。
時間の感覚が分からなくなるのは、カンテラの光が無数の骨の合間で蠢く得体も知れぬものどもから視界を遮るためもあるのだろう。
その先に続くひらけた平野に、棲むものの姿がないためもあるのだろう。
人影も建物の姿もないひらけた平野を、彼らは横切っていく。
時間の感覚が分からなくなるのは、カンテラの光が無数の骨の合間で蠢く得体も知れぬものどもから視界を遮るためもあるのだろう。
その先に続くひらけた平野に、棲むものの姿がないためもあるのだろう。
佐倉 光
「いつ見ても寒々しい世界だ」
段々肝が据わってきた。
きっとここに棲まう神は俺にとっては友好的じゃない。
しかし知らぬ相手ではない。
『俺』ではなく俺の話なら聞いてくれるかも知れない。
とくに牧志は関わりが深かったようだし、牧志なら加護を得られるんじゃないだろうか。
何とか会って助けを請う。話を聞く。きっと無駄にはならない。
段々肝が据わってきた。
きっとここに棲まう神は俺にとっては友好的じゃない。
しかし知らぬ相手ではない。
『俺』ではなく俺の話なら聞いてくれるかも知れない。
とくに牧志は関わりが深かったようだし、牧志なら加護を得られるんじゃないだろうか。
何とか会って助けを請う。話を聞く。きっと無駄にはならない。
KP
変化のない光景にうんざりする頃に、平野は終わる。
やがて行く先に、闇の中に薄暗くわだかまる、都市のような影が見えてきた。
無数の建物がひしめいているようなのに、そのひとつひとつの形は暗さのせいで伺い知れず、どこか生気がない。
やがて行く先に、闇の中に薄暗くわだかまる、都市のような影が見えてきた。
無数の建物がひしめいているようなのに、そのひとつひとつの形は暗さのせいで伺い知れず、どこか生気がない。
佐倉 光
「街だ……あの時見えたのは本当に街だったんだな」
佐倉 光
「いや、街の形に見えるだけの……岩か何かなのか?」
住人の姿でも見えれば確信が持てるのに。
住人の姿でも見えれば確信が持てるのに。
牧志 浩太
(あの時も見たんだな、ここ。
どうなんだろう。街みたいに見えるけど、暗くてよく分からないな)
どうなんだろう。街みたいに見えるけど、暗くてよく分からないな)
KP
ふと、あなたの行く先で誰かが囁いた。
声のような、不協和音のような。
ひそやかな高い囁き笑いに聞こえるのに、意味を捉えようとすればするりと逃げてしまう声。
あなたはその囁きに覚えがあった。あの時もこうやって、くすくすと嘲るように囁くものがあったのだ。
声のような、不協和音のような。
ひそやかな高い囁き笑いに聞こえるのに、意味を捉えようとすればするりと逃げてしまう声。
あなたはその囁きに覚えがあった。あの時もこうやって、くすくすと嘲るように囁くものがあったのだ。
KP
あの囁き声絶妙で素敵でした。キャー、ヤダーッ、キャハハ、って声のようにも聞こえるのに、耳を傾けようとするとやっぱり声じゃないってなる。
>ささやくもの素材
>ささやくもの素材
佐倉 光
そう、これしかない! って思って、それが使いたいが為だけにサブスクにお金払った!
KP
いや、本当にこれしかないの、分かります!
はっきりと嘲笑う声に聞こえるのに、耳を傾けようとするとすり抜けていってしまう腹立たしさと実体のない不快さを実物で聞くことができるとは。
今回の描写に活かさせてもらいました。
はっきりと嘲笑う声に聞こえるのに、耳を傾けようとするとすり抜けていってしまう腹立たしさと実体のない不快さを実物で聞くことができるとは。
今回の描写に活かさせてもらいました。
佐倉 光
「うわ、そうだった。
ちょ、勘弁しろよ。そういうのは背中だけで充分なんだよ」
背筋をこすり上げるような不快な音、振動に、あまりの居心地の悪さに身を震わせた。
ちょ、勘弁しろよ。そういうのは背中だけで充分なんだよ」
背筋をこすり上げるような不快な音、振動に、あまりの居心地の悪さに身を震わせた。
牧志 浩太
(……絶妙に腹立つ声だな、これ。
何言ってるか分からないのに、笑われてる気だけする。
グレムリンにおちょくられた時を思い出す)
何言ってるか分からないのに、笑われてる気だけする。
グレムリンにおちょくられた時を思い出す)
KP
街が近づいてくると共に、耳の内側を擦る囁きは行く先だけでなく、あなたの傍ら、後ろからも聞こえ始める。
声ばかりがやたらと存在感を持って聞こえるのに、住人の姿はひとりも見当たらない。
声ばかりがやたらと存在感を持って聞こえるのに、住人の姿はひとりも見当たらない。
佐倉 光
「あの時は上空を飛び過ぎただけだったからそんなに気にならなかったけど、気持ち悪いな。
耳塞いで喚き散らしたくなる。
目的地、ここじゃないだろうな?」
ガラスを爪で掻く音を思わせる笑い声がかすめ、振り向いても影すら見えない。
耳塞いで喚き散らしたくなる。
目的地、ここじゃないだろうな?」
ガラスを爪で掻く音を思わせる笑い声がかすめ、振り向いても影すら見えない。
KP
都市が目の前に迫る頃には、声は四方八方からあなた達を取り囲むようになっていた。
ウフフッ、アハハ、キャハハハ、ヤァダーッ……
はっきりとこちらを嘲笑う声と聞こえるのに、決して近づいてくることはない。
その正体を確かめようと振り返っても姿はなく、耳を傾ければただの聞き間違いと思える。
こちらの気の所為だと責任を押しつけて、安全地帯から一方的に嘲笑ってくる、声、声、声。
ウフフッ、アハハ、キャハハハ、ヤァダーッ……
はっきりとこちらを嘲笑う声と聞こえるのに、決して近づいてくることはない。
その正体を確かめようと振り返っても姿はなく、耳を傾ければただの聞き間違いと思える。
こちらの気の所為だと責任を押しつけて、安全地帯から一方的に嘲笑ってくる、声、声、声。
佐倉 光
「あぁぁぁ苛々する!」
牧志 浩太
(いやいや、無視だ、無視しよう、そっちがそのつもりなら俺だって無視してやる)
KP
カンテラの光はそんな声に目もくれず、都市の上空、更に向こうを指している。
あなたはその声に耳を塞ぎ無視しようとすることもできるし、断固たる決意でその正体を暴いてやるべく、その声によくよく耳を澄ませることもできる。
どうする?
あなたはその声に耳を塞ぎ無視しようとすることもできるし、断固たる決意でその正体を暴いてやるべく、その声によくよく耳を澄ませることもできる。
どうする?
佐倉 光
前回だって特に害はなかったものだ。
無視しよう、無視!!
背中に背負ってる声とまとめて意識から追い出す。
無視しよう、無視!!
背中に背負ってる声とまとめて意識から追い出す。
KP
不快な囁き声と背中でもがく声が、よく分からない不協和音を生む。
牧志 浩太
(佐倉さん、話しよう話。どうでもいいやつ。
最初のお題は、結晶体だからこそできること。
俺は、この尖った所擦りつけたらおろし金の代わりになると思う)
カクテルパーティー効果の類を活用すべく、牧志はあなたと下らない話をすることにしたようだ。
最初のお題は、結晶体だからこそできること。
俺は、この尖った所擦りつけたらおろし金の代わりになると思う)
カクテルパーティー効果の類を活用すべく、牧志はあなたと下らない話をすることにしたようだ。
佐倉 光
そういえばあの時もこうやってやり過ごしたっけ。
佐倉 光
「それ結晶自体も摩耗しねぇか?
どれくらい堅いんだ、そもそも。
削って確かめるってわけにもいかねぇし。
そもそも何でできてんのお前。
透明度は水晶とかそのあたりに見えなくもないけど、
なんか屈折率高すぎな気もするし。
レーザーポインタ当てたらめちゃくちゃ虹できそう」
どれくらい堅いんだ、そもそも。
削って確かめるってわけにもいかねぇし。
そもそも何でできてんのお前。
透明度は水晶とかそのあたりに見えなくもないけど、
なんか屈折率高すぎな気もするし。
レーザーポインタ当てたらめちゃくちゃ虹できそう」
牧志 浩太
(どうなんだろ?
俺の感覚では余程のことがなければ平気そうな気がしてるんだけど、感覚だしな。
何でできてるんだろ、俺)
俺の感覚では余程のことがなければ平気そうな気がしてるんだけど、感覚だしな。
何でできてるんだろ、俺)
牧志 浩太
(ダイヤモンドはそうそう落ちてないだろうけど、水晶でも落ちてたら試してみるか?
ちょっと引っ掻くくらいなら、そんなに痛くないと思うし)
ちょっと引っ掻くくらいなら、そんなに痛くないと思うし)
佐倉 光
「例えばその体に傷がついたら治るのか?
砕けたり傷ついたらつきっぱなしってのも困るぞ。
長生きするほどに不透明になっちまう」
砕けたり傷ついたらつきっぱなしってのも困るぞ。
長生きするほどに不透明になっちまう」
佐倉 光
「……割れた場合、意識も割れんの?」
きになる。
きになる。
佐倉 光
話していると、不快な囁き声が遠くなってゆく。
牧志 浩太
(うーん、どうなんだろう?
確かに、不透明になるたびに削り直してたら、そのうちなくなっちゃうよな)
確かに、不透明になるたびに削り直してたら、そのうちなくなっちゃうよな)
佐倉 光
「こんだけでかければそうそうなくならないとは思うけどな」
牧志 浩太
(風化とかでなくなるまでが寿命、ってことだったり……して?
途方もないな)
途方もないな)
佐倉 光
昨日「宝石の国」の最終巻を読んだばかりです。タイムリー?
KP
あらタイムリー。
佐倉 光
彼らの場合明確に「本体となる部分」があって、かけらに意識は宿らないっぽいなぁ。
KP
ムトルブリスの場合、砕け散ってもくっついて復活するらしいので、割れても勝手にくっついて元に戻るでしょうね。
牧志 浩太
(……割れたら意識も分かれるとしたら、俺の破片を何かにくくりつけたら俺、生きてる武器になれる?
石器だけど)
石器だけど)
佐倉 光
「……」
佐倉 光
「……
試したくなるから、やめよう」
馬鹿な話をして懐かしい景色の中を飛ぶ。
こうやっているとなんだかこれも楽しめるように気もしてきた。
試したくなるから、やめよう」
馬鹿な話をして懐かしい景色の中を飛ぶ。
こうやっているとなんだかこれも楽しめるように気もしてきた。
牧志 浩太
(やめとくか。
俺も色々試したくなってきた)
俺も色々試したくなってきた)
KP
そうやって話していると、あれだけ苛立たしかった囁きも、気づけば意識の向こうに消えていた。
都市の影が眼下を過ぎ去る。
都市の影が眼下を過ぎ去る。
KP
やがて遠くに、見覚えのある黒い石の建物が見えてきた。
上空から見ると、屋根に黒い夜鬼の像が七つ並んでいるなどの、あの時は気づかなかっただろうことにも気づく。
その戸からこぼれる温かそうな光に向かって、カンテラの光が伸びている。
どうやら、目的地はあそこで間違いないようだ。
上空から見ると、屋根に黒い夜鬼の像が七つ並んでいるなどの、あの時は気づかなかっただろうことにも気づく。
その戸からこぼれる温かそうな光に向かって、カンテラの光が伸びている。
どうやら、目的地はあそこで間違いないようだ。
佐倉 光
あんなところに像があったのか。
前回、夜鬼は像も本物も見なかったな。
前回、夜鬼は像も本物も見なかったな。
佐倉 光
「あ、あそこ。前回スタートした場所。ノーデンス神殿だ」
戸の明かりを見て微笑む。
あの明かりを見て、前回も今回も、どんなにほっとしたか知れない。
寒々しいこの土地で、あの神殿は安らぎの場所だった。
戸の明かりを見て微笑む。
あの明かりを見て、前回も今回も、どんなにほっとしたか知れない。
寒々しいこの土地で、あの神殿は安らぎの場所だった。
牧志 浩太
(あ……、あそこがそうなのか)
牧志が穏やかな視線をそちらへ向けた。
あの中に質素な寝藁と人間的な生活の場があることを、あなたは知っている。
牧志が穏やかな視線をそちらへ向けた。
あの中に質素な寝藁と人間的な生活の場があることを、あなたは知っている。
KP
像があるなと眺めていると、そのうちの一、二体がこちらを向いた。
石造りのように見えた羽を羽ばたかせ、あなた達を掴んで飛んでくる夜鬼に場所を譲る。
どうやら生きているらしい。
あなた達を掴んだ夜鬼は静かに速度を落とし、翼を畳んだ。
戸から少し離れた所へあなた達を降ろすと、入れ替わって屋根へ止まる。
石造りのように見えた羽を羽ばたかせ、あなた達を掴んで飛んでくる夜鬼に場所を譲る。
どうやら生きているらしい。
あなた達を掴んだ夜鬼は静かに速度を落とし、翼を畳んだ。
戸から少し離れた所へあなた達を降ろすと、入れ替わって屋根へ止まる。
佐倉 光
「ガーゴイル的なもんかと思ったら止まり木だった」
佐倉 光
ナビは不足していたけど、一応送ってきてくれたってことだな。
手を振って神殿の前へ。
今回この扉の向こうに待っているのは一体なんなのだろう。
扉開いてても閉じててもノックをして中に入る。
手を振って神殿の前へ。
今回この扉の向こうに待っているのは一体なんなのだろう。
扉開いてても閉じててもノックをして中に入る。
KP
青銅の両開きの戸は開いており、温かそうな光が建物の内側からこぼれている。
テーブルに椅子に、本棚。
あの時見たままの、質素な、だが清潔に整えられた室内が見える。
テーブルに椅子に、本棚。
あの時見たままの、質素な、だが清潔に整えられた室内が見える。
牧志 浩太
(お邪魔します)
牧志が扉の向こうに声をかける。
牧志が扉の向こうに声をかける。
KP
温かそうな室内へと、あなた達は神殿の戸を、潜る。
KP
……あなたの足はその前で、どうしてか、ぴたりと止まってしまった。
佐倉 光
「……っ?」
牧志 浩太
(……あれ、)
牧志が心細そうな声で困惑を発した。
牧志もあなたと同じく、戸の前でひたりと止まっている。
牧志が心細そうな声で困惑を発した。
牧志もあなたと同じく、戸の前でひたりと止まっている。
佐倉 光
止まった原因は何だろう。
内部からのものか、外部からのものか。
内部からのものか、外部からのものか。
KP
あなたはその温かな光に、どうしてだろう、どうしてか手酷く拒絶されていると感じる。
開かれている筈の戸は、あなたが通ることを許されていない。
開かれている筈の戸は、あなたが通ることを許されていない。
佐倉 光
「牧志。『俺』は随分と嫌われているみたいだぜ」
牧志なら、と思ったがそれでも駄目なのか?
牧志なら、と思ったがそれでも駄目なのか?
牧志 浩太
(ああ……、そうみたいだ。
なんだか俺も、拒まれてるような気がする)
牧志は悲しそうに呟いた。
なんだか俺も、拒まれてるような気がする)
牧志は悲しそうに呟いた。
佐倉 光
目的地はここで間違いなさそう?
KP
カンテラの光は、戸の前の空間にあなたが立つと、ふっと消えてしまった。
この中ではなく、「ここ」が目的地だったとでもいうのだろうか。
この中ではなく、「ここ」が目的地だったとでもいうのだろうか。
佐倉 光
「ノーデンス! 皇津様! ご助力を得たくて来ました!
ここへ導いてくれたのは、あなたではなかったのですか!」
奥へ向かって叫んでみる。
あの神官のおっさんくらいいないだろうか。
ここへ導いてくれたのは、あなたではなかったのですか!」
奥へ向かって叫んでみる。
あの神官のおっさんくらいいないだろうか。
KP
奥へ向かって叫ぶと、部屋の奥の方から誰かの動く気配がした。
少しして姿を見せたのは、見覚えのある長い乱れた髪の神官だ。
杖を横向きに渡し、背後に誰かを庇うようにして、……厳しい目であなた達と向き合う。
その足は戸を隔てて、一歩たりともこちらへ近づくことはなかった。
少しして姿を見せたのは、見覚えのある長い乱れた髪の神官だ。
杖を横向きに渡し、背後に誰かを庇うようにして、……厳しい目であなた達と向き合う。
その足は戸を隔てて、一歩たりともこちらへ近づくことはなかった。
佐倉 光
覚えのある、顔だ。さすがに名前は忘れてしまったが。
牧志でも駄目なのか。
牧志でも駄目なのか。
佐倉 光
「お久しぶりです。その説は大変お世話になりました。
お陰で友人を守ることができました」
お陰で友人を守ることができました」
KP
「ああ、久しいな。取り戻す事ができたのか」
親愛を感じさせる口調とは裏腹に、髪に埋もれた彼の眼はあなたをひたりと見据え、一瞬として相好を崩すことはない。
親愛を感じさせる口調とは裏腹に、髪に埋もれた彼の眼はあなたをひたりと見据え、一瞬として相好を崩すことはない。
佐倉 光
「今の私たちが、不快な存在であることは理解しているつもりです。
それでももう一度お力添えをいただきたく、お願いに上がりました」
可能なら頭を下げる。
俺の中で『俺』が喚いている。
こんな奴に頭を下げるな、嘲って今までの礼にこのあなぐらに大砲でもぶち込んでやれと。
それでももう一度お力添えをいただきたく、お願いに上がりました」
可能なら頭を下げる。
俺の中で『俺』が喚いている。
こんな奴に頭を下げるな、嘲って今までの礼にこのあなぐらに大砲でもぶち込んでやれと。
KP
「面を上げよ。おまえにそうされる謂れはない。
おまえをここに呼んだのは、私ではない。
そのようなものに成り果ててしまったおまえに、私達が力を貸す事はない」
おまえをここに呼んだのは、私ではない。
そのようなものに成り果ててしまったおまえに、私達が力を貸す事はない」
佐倉 光
「……」
俺達はここにいるべきではない存在。
直接拒絶されるとさすがに人間の部分が痛んだ。
それでも大きな恩義に対する礼は言えたのだという安堵もあった。
俺達はここにいるべきではない存在。
直接拒絶されるとさすがに人間の部分が痛んだ。
それでも大きな恩義に対する礼は言えたのだという安堵もあった。
KP
彼が冷たく宣言したとき、彼の背後でなにか気配が動いた。
聞き覚えのあるような声がほそぼそと、彼に何かを言う。
聞き覚えのあるような声がほそぼそと、彼に何かを言う。
KP
「只野……、くん」
声の主は神官の背後に隠れながら、控えめにあなたをそう呼んだ。
ここにその名を知る者がいようはずのない、あなたのもうひとつの名で。
あなたは声の主の名を思い出すだろう。
照野陽子。彼女が『ここ』に、いるはずがない。
声の主は神官の背後に隠れながら、控えめにあなたをそう呼んだ。
ここにその名を知る者がいようはずのない、あなたのもうひとつの名で。
あなたは声の主の名を思い出すだろう。
照野陽子。彼女が『ここ』に、いるはずがない。
思わぬ再会
佐倉 光
なんと照野さんとは!
KP
なんとそうだったのです。WAO。
佐倉 光
これは長旅になりそうだなー。
酒飲んでショートカットしたら勿体ないな!
酒飲んでショートカットしたら勿体ないな!
KP
本当なら地下世界の旅はサッと短く済ませてしまうこともできたのですが、「せっかくだから」で対の棲みかの時のことを大いに絡めたらこんなことに。
たぶんこの調子でいくので、それなりに長旅になります。
初めてのちゃんとした街、セレファイスも楽しんでほしいし!
たぶんこの調子でいくので、それなりに長旅になります。
初めてのちゃんとした街、セレファイスも楽しんでほしいし!
佐倉 光
そうだセレファイス観光もできる!
この旅の最初の目的地が、前回の始まりの土地だったのエモいわ。
これ牧志いないで独りで廻っていたら随分と趣変わっていただろうなぁ。
この旅の最初の目的地が、前回の始まりの土地だったのエモいわ。
これ牧志いないで独りで廻っていたら随分と趣変わっていただろうなぁ。
KP
牧志いなかったら随分と孤独で、冷たい旅になっていそう。前回の恩人には拒絶されるし。
そのぶん好き勝手はできるけど。
そのぶん好き勝手はできるけど。
佐倉 光
もっと足早に、何なら酒ショトカ活用しそうではある。
KP
ああー、しそう。ただ取り戻すための道になる。
佐倉 光
囁くものたちの谷で今度は牧志がカクテル効果絡みの話振ってくれるのもエモいんですわ。
KP
脳みそのノイキャン。あのあたりは本当に綺麗な振り返りになって楽しかった。
佐倉 光
懐かしたのしいです。ありがとうございます。
KP
こちらこそ積極的に乗ってくれてありがとうございます。楽しい。
佐倉 光
「え」
慌てて顔を上げる。
出口のない悲嘆が彼女から聞いた最後の声だったはずなのに。
慌てて顔を上げる。
出口のない悲嘆が彼女から聞いた最後の声だったはずなのに。
佐倉 光
「照野さん!? どうして、ここに。
どうしてこんなところに!?」
どうしてこんなところに!?」
KP
「只野くん……、なの?
君こそ、どうして、こんな所に」
彼女は神官の背後から、僅かに顔を出した。
慎重にあなたの顔を窺いながら、問いかけてくる。
君こそ、どうして、こんな所に」
彼女は神官の背後から、僅かに顔を出した。
慎重にあなたの顔を窺いながら、問いかけてくる。
KP
「ここから見ると君は、随分恐ろしいもののように見えるわ。
本当に……、只野くんなの?」
本当に……、只野くんなの?」
佐倉 光
「そちらから見えるという姿は間違っていなくて、
僕も、照野さんや他の人たちとは違うものに『なってしまっていた』というか」
僕も、照野さんや他の人たちとは違うものに『なってしまっていた』というか」
佐倉 光
「ここにいるのは、姿は変わってしまっているけど、牧志です」
牧志 浩太
(牧志です。
あの時は……、お世話になりました)
牧志は彼女の様子に気を払いながら、恐る恐る声を発する。
あの時は……、お世話になりました)
牧志は彼女の様子に気を払いながら、恐る恐る声を発する。
KP
「牧志……、くん?」
信じられない、と呟いた声を、彼女は喉の中で飲み込む。
信じられない、と呟いた声を、彼女は喉の中で飲み込む。
KP
「そう……、そうなのね……。
信じられないけど、きっとそうなのね」
信じられないけど、きっとそうなのね」
佐倉 光
「騙すつもりはなかったんですけど、僕自身は照野さんに会ったときからこの状態でした。
ただ、少なくとも僕はまだ人間のつもりだし、
照野さんと別れた時と同じかそれ以上に人の側にいると思います」
ただ、少なくとも僕はまだ人間のつもりだし、
照野さんと別れた時と同じかそれ以上に人の側にいると思います」
佐倉 光
冷たい目を向けてくる神官に、少しの間話を続けさせて欲しい、と詫びる。
KP
神官は無言で杖を下ろし、油断なく視線を向けたまま一歩下がった。
KP
彼女は神官の背中からそろりと離れ、あなたと扉を隔てて向き合う。
その振る舞いや口調は、あの時に比べてどこか寄る辺なく、幼く見えた。
その振る舞いや口調は、あの時に比べてどこか寄る辺なく、幼く見えた。
佐倉 光
「照野さんはあれからどうしてここに来たんです?
人間はある意味滅びたと聞いたんですが」
人間はある意味滅びたと聞いたんですが」
KP
「そう……、私達や東京だけじゃなくて、みんな駄目になっちゃったのね」
彼女は胸の前で、ぎゅっと両手を握る。
ぽつ、ぽつ、と握った拳の間から声を漏らすように、話しだした。
彼女は胸の前で、ぎゅっと両手を握る。
ぽつ、ぽつ、と握った拳の間から声を漏らすように、話しだした。
KP
「憶えていることは、あまり多くはないの。
あの後、私はうたげくんと一緒に街に戻った。
あの子の家に向かおうとしたの。
逃げても仕方ないなら、自分の目で確かめたかったって。
でも、その途中に橙色の煙がやってきて、あの子がおかしくなってしまった。
私はそうなったあの子を連れて家に向かった。
その途中で、街が燃やされて……、
そして気がついたら、ここにいた。私だけ……」
あの後、私はうたげくんと一緒に街に戻った。
あの子の家に向かおうとしたの。
逃げても仕方ないなら、自分の目で確かめたかったって。
でも、その途中に橙色の煙がやってきて、あの子がおかしくなってしまった。
私はそうなったあの子を連れて家に向かった。
その途中で、街が燃やされて……、
そして気がついたら、ここにいた。私だけ……」
牧志 浩太
(……)
牧志の沈黙が、痛ましい気配が滲む。
牧志の沈黙が、痛ましい気配が滲む。
佐倉 光
「そうか。うたげくんも」
彼女は何も知らないのか。
こんな状況で「生きていて良かった」などと言えるだろうか。
それでもあの探偵さんよりは、
少なくとも人間に悪意を持っているように見えないここで保護されているだけマシだろうか。
彼女は何も知らないのか。
こんな状況で「生きていて良かった」などと言えるだろうか。
それでもあの探偵さんよりは、
少なくとも人間に悪意を持っているように見えないここで保護されているだけマシだろうか。
KP
「ええ、そう。
でも、もう誰もいないのね。あの子も、誰も。
例え悪魔でも、君達に会えてよかった」
彼女はもう少しで泣きそうな、そんな顔で目元を綻ばせた。
でも、もう誰もいないのね。あの子も、誰も。
例え悪魔でも、君達に会えてよかった」
彼女はもう少しで泣きそうな、そんな顔で目元を綻ばせた。
佐倉 光
「ここは、僕が知っている中では安全なところです」
言外に良かったとつぶやく。
言外に良かったとつぶやく。
佐倉 光
「僕たちは捜し物をしているんです。
誰宛か分からない手紙か何か、お持ちではないですか」
誰宛か分からない手紙か何か、お持ちではないですか」
KP
「そう、そうよ。
君を、ずっと待っていたの。
たぶん神様ね、私をここに連れてきて、君にこれを渡せと言ったの。
だから私は、ずっと待っていた」
彼女は服の中をたぐると、両手の中に小さな金色のコンパクトのような小箱を乗せて、大切そうにこちらへ差し出した。
彼女の細い手が温かな光の中から外へ出て、外の冷たさでみるみるうちに指先が赤く染まる。
君を、ずっと待っていたの。
たぶん神様ね、私をここに連れてきて、君にこれを渡せと言ったの。
だから私は、ずっと待っていた」
彼女は服の中をたぐると、両手の中に小さな金色のコンパクトのような小箱を乗せて、大切そうにこちらへ差し出した。
彼女の細い手が温かな光の中から外へ出て、外の冷たさでみるみるうちに指先が赤く染まる。
佐倉 光
「やっぱり……でもわざわざ……」
照野さんを使うなんてどういうつもりだ。
照野さんを使うなんてどういうつもりだ。
佐倉 光
「ありがとう」
KP
「ありがとう、君達は何かを探しに行くのでしょう?
どうか、気をつけてね。
ふふ、悪魔に気をつけてだなんて、不思議」
彼女は悪戯っぽく、微かに笑う。
どうか、気をつけてね。
ふふ、悪魔に気をつけてだなんて、不思議」
彼女は悪戯っぽく、微かに笑う。
佐倉 光
「こう見えて僕、人間のつもりなんで」
わざとらしいほどに肩をすくめて返す。
わざとらしいほどに肩をすくめて返す。
KP
「……ごめんなさい」
彼女はひくりと肩をすくめる。
彼女はひくりと肩をすくめる。
KP
「これは、わたしの罪」
佐倉 光
「罪?」
小箱を受け取る。
小箱を受け取る。
KP
「これはピックスと呼ばれるもの。知ってる?」
※知っていてもいなくてもよい。
※知っていてもいなくてもよい。
佐倉 光
「ピックス?」
しらない。
しらない。
KP
「これは、神様の体のいれもの。
この中には、神の体と信じられているパンが少し入っている。
わたしは小さな頃から教会に通っていた。
ある日、これがどうしても、どうしても欲しくなって……、忘れられなくて、盗んでしまった。
わたしはそれから、ずっと罪人だった。
だからわたしがここにこうしているのは、ずっと受けるべきだった罰を受けたからだって、そう思ってた。
あなたがもし神様なら……、わたしはようやく、ピックスをあるべきところに返せるのかもしれない、神様が償いの機会を下さったのかもしれないって、そう思ってた」
この中には、神の体と信じられているパンが少し入っている。
わたしは小さな頃から教会に通っていた。
ある日、これがどうしても、どうしても欲しくなって……、忘れられなくて、盗んでしまった。
わたしはそれから、ずっと罪人だった。
だからわたしがここにこうしているのは、ずっと受けるべきだった罰を受けたからだって、そう思ってた。
あなたがもし神様なら……、わたしはようやく、ピックスをあるべきところに返せるのかもしれない、神様が償いの機会を下さったのかもしれないって、そう思ってた」
KP
「でも、君は人間なのよね。神様でも悪魔でもなくて、人間だっていうんでしょう。
だからこれは、わたしの罪のまま」
だからこれは、わたしの罪のまま」
佐倉 光
「じゃあ自称人間の悪魔程度にしときますか。
その神様に返せるようなら返しときますよ。
『俺』はなんか届けるの得意らしいし」
その神様に返せるようなら返しときますよ。
『俺』はなんか届けるの得意らしいし」
佐倉 光
『俺』は彼女が信じて畏れている神とは別のものだろうという気がしたし、このへんが妥当なとこだろう。
佐倉 光
「言っちゃあなんだけど、それが罪なら俺はもう地獄にいて、体砕かれてますね。
大丈夫、報いを受けてるわけじゃなくて、ただのとんでもないとばっちりだ」
そして声を潜める。
大丈夫、報いを受けてるわけじゃなくて、ただのとんでもないとばっちりだ」
そして声を潜める。
佐倉 光
「ここのリンゴ目茶苦茶美味いんですけど、まだ食べてなかったら頼んでみれば?
ここだってそう悪いとこじゃないです。……まあ、外は暗いけど」
ここだってそう悪いとこじゃないです。……まあ、外は暗いけど」
KP
「ふふ……、ありがとう。
そうね、その林檎で何か作ってもいいかもしれない。
どうか、君の旅路に幸いがありますように。
君の探し物が、見つかることを祈ってる」
彼女は小箱をあなたにすっかり渡してしまうと、あの時よりも随分と細く弱く見える指を組んで、祈りの形をとった。
そうね、その林檎で何か作ってもいいかもしれない。
どうか、君の旅路に幸いがありますように。
君の探し物が、見つかることを祈ってる」
彼女は小箱をあなたにすっかり渡してしまうと、あの時よりも随分と細く弱く見える指を組んで、祈りの形をとった。
佐倉 光
その場で箱をちらと開けて、彼女が言うとおりの物が入っているか確認する。
KP
小箱の中には、小さなパンのかけらが入っていた。
食べてしまうこともできそうな、乾いた小さなかけらだ。
食べてしまうこともできそうな、乾いた小さなかけらだ。
佐倉 光
小箱の中身を確認したら、背嚢に入れる。
蓋が開いてしまわないように、奥の方に入れて固定する。
蓋が開いてしまわないように、奥の方に入れて固定する。
佐倉 光
彼女には『約束』を果たしてくれたこと、
神官には、少しの間不快な存在が主の地を穢すことを赦してくれたことに対する礼をしよう。
神官には、少しの間不快な存在が主の地を穢すことを赦してくれたことに対する礼をしよう。
KP
彼は何も言わずに、ただ首を僅かに動かして頷くようなそぶりをした。
それがいまの彼にとって、最大限の譲歩らしかった。
それがいまの彼にとって、最大限の譲歩らしかった。
KP
「そうだ、これを。
神様は、君にピックスを渡したら、ここであなたを眠らせるようにと言ったけど、君達は神殿に入れないようだから」
照野は奥へ走ると寝藁を取ってきて、あなたに渡す。
その間に、背後の壁に刻まれたレリーフが見えた。
杖を持ち貝殻に乗った、あごひげの男性が雄々しく描かれた神々しいものだ。
その姿は胸の奥から込みあげる懐かしさと、胸の奥を引っ掻く苛立ちであなたの心を引き裂く。
神様は、君にピックスを渡したら、ここであなたを眠らせるようにと言ったけど、君達は神殿に入れないようだから」
照野は奥へ走ると寝藁を取ってきて、あなたに渡す。
その間に、背後の壁に刻まれたレリーフが見えた。
杖を持ち貝殻に乗った、あごひげの男性が雄々しく描かれた神々しいものだ。
その姿は胸の奥から込みあげる懐かしさと、胸の奥を引っ掻く苛立ちであなたの心を引き裂く。
佐倉 光
神のレリーフからは目を逸らす。引き裂かれてしまいそうだ。
佐倉 光
「……こんなとこで寝られるわけないだろ……」
色々な意味で。
色々な意味で。
佐倉 光
寝わらを受け取って、背後の暗がりへと足を引く。
佐倉 光
「ありがとう。元気で」
佐倉 光
「行こうぜ、牧志」
傍らの相棒に声をかける。
傍らの相棒に声をかける。
牧志 浩太
(ああ、行こう。……なんだか、また背負わされちゃったな。
でも、彼女に会えてよかった)
傍らの相棒を振り返ったとき、あなたは驚くべき出来事に気づく。
そこに牧志が、いる。
あの固そうな結晶体ではなく、人間の姿の牧志が、立っている。
何だか透けているし、表情が変わらないし、
3Dモデルみたいに棒立ちのまま緩やかに回転しているが、確かに牧志だった。
でも、彼女に会えてよかった)
傍らの相棒を振り返ったとき、あなたは驚くべき出来事に気づく。
そこに牧志が、いる。
あの固そうな結晶体ではなく、人間の姿の牧志が、立っている。
何だか透けているし、表情が変わらないし、
3Dモデルみたいに棒立ちのまま緩やかに回転しているが、確かに牧志だった。
佐倉 光
「牧志!? えっ、ちょっと待て、やっぱり気のせいじゃない!?」
声を上げてから、これ以上ここで騒ぐと怒りを買いそうで怖いので、神殿の扉から離れる。
声を上げてから、これ以上ここで騒ぐと怒りを買いそうで怖いので、神殿の扉から離れる。
佐倉 光
「お前、人間の形になってる。
なんか彫像がくるくる回ってるみたいになってるけど」
なんか彫像がくるくる回ってるみたいになってるけど」
佐倉 光
「……その形で浮いて回られるとガチ異変って感じ」
牧志 浩太
(えっ、俺が人間になってる!?)
ぴくりとも動かない真顔のまま驚いてぐるぐると回転するが、周囲に姿が映るようなものがない!
ぴくりとも動かない真顔のまま驚いてぐるぐると回転するが、周囲に姿が映るようなものがない!
KP
背嚢の中で、『フランケンシュタイン』の本が一瞬光った。
佐倉 光
さっき箱を入れた時に本が光っていた気がしていたのだ。
慌てて本を引っ張り出してみる。
慌てて本を引っ張り出してみる。
KP
本を取り出せば、ふうっと光は消えた。
しかし、表紙の絵が明らかに変化している。
裸で痛ましい継ぎ接ぎを晒していた体の部分が、美しい衣服を着た姿に変わっているのだ。
しかし、表紙の絵が明らかに変化している。
裸で痛ましい継ぎ接ぎを晒していた体の部分が、美しい衣服を着た姿に変わっているのだ。
佐倉 光
「なんだこれ……」
牧志に本を見せる……。
牧志に本を見せる……。
佐倉 光
「視線が定まってないけど見えてる?」
本を持って一緒にぐるぐるする必要があるのか? と一瞬迷って、動かずにそちらへ向けた。
本を持って一緒にぐるぐるする必要があるのか? と一瞬迷って、動かずにそちらへ向けた。
牧志 浩太
(あ、ああ見えてる。体が服を着ると俺が人型になる?
それともさっきの箱を開けたから?
俺視点特に何か変わってるって気はしないんだ、さっきも回ってたけど普通に視界回ってなかったし。
佐倉さん、俺って本当に人型になってるのか? それともそう見えてるだけ?)
透明な牧志がずい、とあなたに迫る。
それともさっきの箱を開けたから?
俺視点特に何か変わってるって気はしないんだ、さっきも回ってたけど普通に視界回ってなかったし。
佐倉さん、俺って本当に人型になってるのか? それともそう見えてるだけ?)
透明な牧志がずい、とあなたに迫る。
佐倉 光
「そうか、俺が幻を見ている可能性もあるな!?」
牧志の表面に触って、それがそのままの感覚なのか確かめる。
確かめてみて……ほんの少し前の実験のことを思い出す。
牧志の表面に触って、それがそのままの感覚なのか確かめる。
確かめてみて……ほんの少し前の実験のことを思い出す。
牧志 浩太
……その表面はひやりと冷たく、固い。結晶だ。
しかし、もはやその表面は鋭利な面や辺に覆われてはいない。
見える通り、ちゃんと人間の形を、している……。
しかし、もはやその表面は鋭利な面や辺に覆われてはいない。
見える通り、ちゃんと人間の形を、している……。
佐倉 光
「あー、少なくとも俺の脳は、牧志の形をした結晶、と認識してる。
ただ、表情もないし半透明だし浮いて回ってるし、控えめに言って割と異様」
ただ、表情もないし半透明だし浮いて回ってるし、控えめに言って割と異様」
牧志 浩太
(俺の形をした結晶? 彫像?
しかも浮いて回ってる……、
……すごいなそれ)
牧志が困惑を映すように、上下方向にくるくると回る。
……視界の中で人間の形の牧志が逆立ち状態になり、また立った状態に戻り、横向きになる。異様だ。
しかも浮いて回ってる……、
……すごいなそれ)
牧志が困惑を映すように、上下方向にくるくると回る。
……視界の中で人間の形の牧志が逆立ち状態になり、また立った状態に戻り、横向きになる。異様だ。
佐倉 光
「この本の男が人間に近づくと同時に牧志も……人間に戻る?
それとも牧志の状態がこっちに反映される?」
それとも牧志の状態がこっちに反映される?」
佐倉 光
「どういう理屈かは分かんねぇけど、やる気出てきた!」
本には表紙以外に変化は出ていない?
本には表紙以外に変化は出ていない?
牧志 浩太
(まあ、でも、そういうことだな。
かけらを集めていけば? 人間に近づいていけるかもしれないのか。
俺も、地球とみんなのかけらの一部、ってことなのかな)
かけらを集めていけば? 人間に近づいていけるかもしれないのか。
俺も、地球とみんなのかけらの一部、ってことなのかな)
KP
本の中身に変化は出ていない。
変わったのは表紙だけらしい。
変わったのは表紙だけらしい。
佐倉 光
「……まあ、やり甲斐が感じられるのはいい。モチベ保てるしな」
佐倉 光
周囲をぐるりと見渡す。
寝なきゃならないよなぁ。
しかし暗い大地は、敷き藁を敷いたからと言ってここで寝たいと思えるほどの安全さも快適さも感じない。
寝なきゃならないよなぁ。
しかし暗い大地は、敷き藁を敷いたからと言ってここで寝たいと思えるほどの安全さも快適さも感じない。
佐倉 光
せめて形だけでも寝られる場所が欲しいよな。
見上げれば夜鬼が見える。
いつこの地の主の気が変わって、あの谷にポイ捨てされるか分からない。
見上げれば夜鬼が見える。
いつこの地の主の気が変わって、あの谷にポイ捨てされるか分からない。
佐倉 光
〈夢見〉でテントを作成します。既にそこに設置されている状態で(重要)。
おやすみ
KP
牧志の異様さがアップしたところで、眠いのでそろそろ失礼いたします
ありがとうございました!
ありがとうございました!
佐倉 光
ありがとうございました! 佐倉もテント立てて寝ます!
KP
テントだ!
確かにこれは寝づらい環境。寝床、重要。
確かにこれは寝づらい環境。寝床、重要。
佐倉 光
ひょっとして牧志が地球とリンクしてたりするかなぁ……
KP
なるほど。
簡素な一人用のテントなら、6MP。
回転している牧志が一緒に入れる大きさなら、高さが要る関係で13MP。
4MPを追加する毎に、寝袋の追加・快適さのアップ・広さの1段階アップ・形状を面白くするなど、何かしらテントを良いものにすることができる。
簡素な一人用のテントなら、6MP。
回転している牧志が一緒に入れる大きさなら、高さが要る関係で13MP。
4MPを追加する毎に、寝袋の追加・快適さのアップ・広さの1段階アップ・形状を面白くするなど、何かしらテントを良いものにすることができる。
佐倉 光
今回はワインを使う間の気分的な物だし、13MP使って身を隠す空間を作れるだけでいいや。
1d100 81 夢を観るための空間を〈夢見〉 Sasa 1d100→ 55→成功
MP 70 → 57
1d100 81 夢を観るための空間を〈夢見〉 Sasa 1d100→ 55→成功
MP 70 → 57
佐倉 光
テントを想像する。
牧志も入れるものとなるとファミリー用のそこそこ大きなヤツだ。
前に東浪見と一緒にキャンプに行ったときのヤツの再現でいいかな。
前室もあるそこそこ立派なヤツだった。
……そういえば初めてみんなでキャンプに行ったときに酷い目に遭ったんだったなぁ。
俺の車は廃車になるし、体に一生物の傷はできるし、あれからずっと体が痛い。
今の体になって一番嬉しいことは、あの痛みが綺麗さっぱり消えたことだ。
牧志も入れるものとなるとファミリー用のそこそこ大きなヤツだ。
前に東浪見と一緒にキャンプに行ったときのヤツの再現でいいかな。
前室もあるそこそこ立派なヤツだった。
……そういえば初めてみんなでキャンプに行ったときに酷い目に遭ったんだったなぁ。
俺の車は廃車になるし、体に一生物の傷はできるし、あれからずっと体が痛い。
今の体になって一番嬉しいことは、あの痛みが綺麗さっぱり消えたことだ。
牧志 浩太
あの後はしばらく牧志も大変だった、ようだ。
暫くはあなたが動いて生きていると気づくのに時間がかかったし、あなたを抱き上げるのにはすっかり慣れてしまったし。
暫くはあなたが動いて生きていると気づくのに時間がかかったし、あなたを抱き上げるのにはすっかり慣れてしまったし。
KP
あなたの目の前で、寒々しかった空の色が変わっていく。
ぱん、と大きく布が張る。
緻密に織り上げられた麻布とよくしなる木の骨はあの時のままの形をし、あなた達を優しい色合いで包み込む。
ぱん、と大きく布が張る。
緻密に織り上げられた麻布とよくしなる木の骨はあの時のままの形をし、あなた達を優しい色合いで包み込む。
佐倉 光
「おっ、よしよしいい感じだ」
あの神殿ほどじゃないが居心地良さそうだ。
あの神殿ほどじゃないが居心地良さそうだ。
牧志 浩太
(あ……、東浪見のテントか、これ)
牧志が懐かしそうに言って、首が動く様子はないのだが、なんとなく視線を上に向けたように感じた。
牧志が懐かしそうに言って、首が動く様子はないのだが、なんとなく視線を上に向けたように感じた。
佐倉 光
「寝わらもらったし、寝具はそれでいいな」
マントに包まって藁の上に寝ればそれなりに寝心地が良さそうだ。
マントに包まって藁の上に寝ればそれなりに寝心地が良さそうだ。
牧志 浩太
(だな。麻のテントに藁か、……そんな場合じゃないけど、旅行みたいだな)
牧志は足元でテントの布の感触を確かめているのか、暫くテントの中をうろうろと回転した。
牧志は足元でテントの布の感触を確かめているのか、暫くテントの中をうろうろと回転した。
佐倉 光
「テント立てて酒呑んで寝るって完全キャンプだな」
佐倉 光
「ところで前々から気になってたんだけど、
ワインで寝る場合、牧志に呑ませるにはぶっかけりゃいいのかな」
ワインで寝る場合、牧志に呑ませるにはぶっかけりゃいいのかな」
牧志 浩太
(あ、たぶん大丈夫じゃないか?
さっき佐倉さんが寝た時も、佐倉さん寝たな、って思ったら一緒に意識が落ちてたんだ。
一緒に行くつもりで寝れば、そうなるのかもしれない)
さっき佐倉さんが寝た時も、佐倉さん寝たな、って思ったら一緒に意識が落ちてたんだ。
一緒に行くつもりで寝れば、そうなるのかもしれない)
牧志 浩太
(寝るというか、いま夢の中にいるんだから……、起きる?)
佐倉 光
「まあ確かに。
そうか、とりあえず俺が寝ればいいんだ。
そうなると寝た瞬間消えるのか、そのまま暫く残るのかは気になるところだけど。
夢では危険になったら酒をあおるってのも手かな?」
そうか、とりあえず俺が寝ればいいんだ。
そうなると寝た瞬間消えるのか、そのまま暫く残るのかは気になるところだけど。
夢では危険になったら酒をあおるってのも手かな?」
牧志 浩太
(俺の認識ではほぼ同時だったかな。
寝た俺がしばらくあっちに残ってたりしたかどうか、は分からないけど。
それなら、確かに寝て逃げるってのも一案だ)
寝た俺がしばらくあっちに残ってたりしたかどうか、は分からないけど。
それなら、確かに寝て逃げるってのも一案だ)
佐倉 光
「いつかみたいに飯食ったら起きる?
唐揚げ定食でも出して食ってみるかなぁ。
神殿で林檎もらえないかって少し期待していたせいか、腹が減った気がするんだ」
唐揚げ定食でも出して食ってみるかなぁ。
神殿で林檎もらえないかって少し期待していたせいか、腹が減った気がするんだ」
佐倉 光
起きずにちゃんと食べられたらそれはそれで幸せなんで!
KP
それはそれで楽しい。キャンプ飯だ!
牧志 浩太
(確かにキャンプだ、これ。
そう言われたら、余計に何か食べたくなってきたな。
唐揚げもいいけど、焼肉とか。バーベキューとか)
そう言われたら、余計に何か食べたくなってきたな。
唐揚げもいいけど、焼肉とか。バーベキューとか)
佐倉 光
「よし、バーベキューセットにしよう」
牧志は食べられんのかな?
まあいい出してから考えよう。
牧志は食べられんのかな?
まあいい出してから考えよう。
牧志 浩太
(いいな、楽しみだ)
牧志 浩太
(……胃袋が外に出てるのに、食べられるのか、俺?
というか、今あいつどこだ?)
というか、今あいつどこだ?)
佐倉 光
「衛星みたいにくっついてたよな?」
牧志の周りをうろうろしているものがないか見てみる。
牧志の周りをうろうろしているものがないか見てみる。
KP
牧志の周りを見ても、くっついていたはずの胃袋はいない。
消えてしまったのか。いや、何かと目があった。
透明な牧志のちょうど胃のあたりに、また何か透明なものが埋まっている。
どちらも透けているので見づらかったのだ。
胃袋だ。
食道の方向に向かって、大きく湾曲した牙が口(噴門?)を取り巻くようにいくつも生えている姿には、見覚えがある。
大きな牙の内側には細かい牙と歯が生え揃い、これで来た物を噛み砕くのだろう。
そして、魚か何かのように表側と裏側にひとつずつ、ぎょろりと眼が開いている。
……どうやら眼があるらしい。胃袋なのに。
牧志本体に巻き込まれたのか、胃袋もひたりとも動くことも鳴くこともなく、模型のように停まっていた。
そうやって単独で見ると、奇妙に膨れた腹を持つ虫か魚のようにしか見えない。
消えてしまったのか。いや、何かと目があった。
透明な牧志のちょうど胃のあたりに、また何か透明なものが埋まっている。
どちらも透けているので見づらかったのだ。
胃袋だ。
食道の方向に向かって、大きく湾曲した牙が口(噴門?)を取り巻くようにいくつも生えている姿には、見覚えがある。
大きな牙の内側には細かい牙と歯が生え揃い、これで来た物を噛み砕くのだろう。
そして、魚か何かのように表側と裏側にひとつずつ、ぎょろりと眼が開いている。
……どうやら眼があるらしい。胃袋なのに。
牧志本体に巻き込まれたのか、胃袋もひたりとも動くことも鳴くこともなく、模型のように停まっていた。
そうやって単独で見ると、奇妙に膨れた腹を持つ虫か魚のようにしか見えない。
佐倉 光
「あ、いた!」
叫んだとたん目が合った。
叫んだとたん目が合った。
佐倉 光
「……よう」
そういえばまともに見るのは初めてかもしれない。
手術の時はそれどころではなかったのだ。
そういえばまともに見るのは初めてかもしれない。
手術の時はそれどころではなかったのだ。
牧志 浩太
(え、いたってあいつが? 見えるのか?)
KP
胃袋はあなたの声に気づいた様子もなく静止しているが、牧志の体も動かないことを考えると、実はこちらに気づいているのだろうか。
外から見ても、よく分からない。
外から見ても、よく分からない。
佐倉 光
「お前の体今スケスケだから。
で、胃袋だけ独立してるからか、埋まってるように見えるんだよ、牙とか目とかついてて、作り物の魚みたいだ。
他の臓器が見えたりはしなくて、後は普通に一個の塊に見えるんだけどね」
で、胃袋だけ独立してるからか、埋まってるように見えるんだよ、牙とか目とかついてて、作り物の魚みたいだ。
他の臓器が見えたりはしなくて、後は普通に一個の塊に見えるんだけどね」
牧志 浩太
(う、うーん……、なるほど?
胃袋だけ浮かんで見えるのか。標本みたいだな、それ。
胃袋展示して歩いてるって、変な気分だな)
胃袋だけ浮かんで見えるのか。標本みたいだな、それ。
胃袋展示して歩いてるって、変な気分だな)
牧志 浩太
(それにしても、眼もあるのか俺の胃袋。
眼があるのに、見てるのがずっと体の中って、どんな気分なんだろうな)
眼があるのに、見てるのがずっと体の中って、どんな気分なんだろうな)
佐倉 光
「さぁなぁ。元々お前の胃袋なんだし、そこにいること自体には疑問を抱かないんじゃないかな……
地球にいる俺たちが、どうして銀影系の外にいないんだろうと疑問を抱かないようにさ。
少なくとも今はお前と一緒に結晶化してるから、動いちゃいないけど」
地球にいる俺たちが、どうして銀影系の外にいないんだろうと疑問を抱かないようにさ。
少なくとも今はお前と一緒に結晶化してるから、動いちゃいないけど」
牧志 浩太
(確かにな……、そういうもの、ってことか。
空を見上げて月と星が見えるのに、俺達が疑問を抱かないように。
疑問を抱かれても困るから、それでよかったけどさ)
空を見上げて月と星が見えるのに、俺達が疑問を抱かないように。
疑問を抱かれても困るから、それでよかったけどさ)
佐倉 光
「……正直、結構面白い」
鏡作って見せてやろうか。
鏡作って見せてやろうか。
KP
〈夢見〉で鏡を夢見るならば、装飾の無い手鏡なら3MP。全身鏡なら6MPといったところだ。
佐倉 光
1d100 81 鏡作りたい Sasa 1d100→ 32→成功
手鏡サイズでいいや。
MP 57 → 54
手鏡サイズでいいや。
MP 57 → 54
KP
あなたの手の中に、そっけない木枠の手鏡が現われる。
そっけないが表面はちゃんと平滑で、物を映せそうだ。
そっけないが表面はちゃんと平滑で、物を映せそうだ。
佐倉 光
鏡を牧志の方へ向ける。
これで見えるかな?
これで見えるかな?
牧志 浩太
手鏡の位置をあれこれやっていると、牧志の視界にもそれが入ったらしい。
牧志 浩太
(……)
牧志はしばし絶句した。
牧志はしばし絶句した。
牧志 浩太
(俺の胃袋、こんなのだったのか……。
牙ってこんなに大きかったのか? うわ、本当だ目がある)
牙ってこんなに大きかったのか? うわ、本当だ目がある)
牧志 浩太
(このままどこかに泳ぎ出しても生きられそうだな、こいつ。
素直に俺の胃袋でいてくれてよかった)
素直に俺の胃袋でいてくれてよかった)
佐倉 光
「胃袋のやつも初めて外や自分の体の主を見たかも知れねーな」
牧志 浩太
(確かにな。案外、今びっくりしてるかも)
佐倉 光
ともあれバーベキューセットも出そう。
佐倉 光
「折角だから豪勢にやりたいな。
各種肉だろ、野菜だろ、マシュマロに飲み物に……
食べ物のことを考えたら急に腹が減ってきたぞ。
こんな立場じゃなきゃ、照野さんたちも誘うんだけどな」
各種肉だろ、野菜だろ、マシュマロに飲み物に……
食べ物のことを考えたら急に腹が減ってきたぞ。
こんな立場じゃなきゃ、照野さんたちも誘うんだけどな」
牧志 浩太
(ああー、いいな、でっかいステーキ肉がいい。
野菜もいいな、人参の甘いやつにピーマンに、ああ、マシュマロもいいな。焦げ目つけたい。
飲み物か、ここで甘いココアって呼べるのかな?)
野菜もいいな、人参の甘いやつにピーマンに、ああ、マシュマロもいいな。焦げ目つけたい。
飲み物か、ここで甘いココアって呼べるのかな?)
牧志 浩太
(…………うーん)
牧志は途中まで楽しそうにバーベキューのイメージを具体化していたが、ふと困ったように唸った。
牧志は途中まで楽しそうにバーベキューのイメージを具体化していたが、ふと困ったように唸った。
KP
バーベキュー用具と多種の豊かな食べ物と温かい火! をまとめて夢見るならば、一人分で7MP、二人分で10MP。
佐倉 光
ではテントの外に出て夢見しよう。
折角だからしっかり牧志のイメージも反映させるために二人でやろうか。
そうするとロール技能値さがっちゃうかー
折角だからしっかり牧志のイメージも反映させるために二人でやろうか。
そうするとロール技能値さがっちゃうかー
KP
おっと、本シナリオでは、牧志と協力する場合は〈夢見〉の技能値が低い方(牧志の技能値)になる。
成功するまで試みることは可能だが、MPは毎回消費することになる。
成功するまで試みることは可能だが、MPは毎回消費することになる。
佐倉 光
じゃあ何が食べたいかしっかりヒアリングしてこちらでやろう。
1d100 81 バーベキュー食べたい! あったかいもの飲みたい!! Sasa 1d100→ 32→成功
1d100 81 バーベキュー食べたい! あったかいもの飲みたい!! Sasa 1d100→ 32→成功
佐倉 光
そろそろ休憩しないとMPが随分減ってきたな。
ここでワイン飲まないで寛いでMP回復……したらノーデンス様の心証悪くしそうだなw
別のとこで休むか。
ここでワイン飲まないで寛いでMP回復……したらノーデンス様の心証悪くしそうだなw
別のとこで休むか。
牧志 浩太
(俺はやっぱりいいよ。
佐倉さんの食べたいものにして)
何が食べたいかと聞くと、牧志はふとそんなことを言った。
佐倉さんの食べたいものにして)
何が食べたいかと聞くと、牧志はふとそんなことを言った。
KP
予定通り二人分で作る?
佐倉 光
「そうか? 大して違わないけど」
一応二人分は作ろうかな。
一応二人分は作ろうかな。
佐倉 光
「食べられなさそうか?」
まあ必要って程でもないし、一人前出して分け合うってのも手ではある。
言ってしまうと気分を味わいたいだけだしな。
まあ必要って程でもないし、一人前出して分け合うってのも手ではある。
言ってしまうと気分を味わいたいだけだしな。
牧志 浩太
(うん。
さっきから食べたい物考えてただろ、でも全然腹が減ったって気がしないんだ。
胃の調子が悪い時みたいに、何かを食べられるって実感が湧かない。
俺、口も動いてないんだろ?
たぶん、食べられないんじゃないかな、これは)
さっきから食べたい物考えてただろ、でも全然腹が減ったって気がしないんだ。
胃の調子が悪い時みたいに、何かを食べられるって実感が湧かない。
俺、口も動いてないんだろ?
たぶん、食べられないんじゃないかな、これは)
佐倉 光
「胃がカチカチの鉱物になってるの見えるしな、まあ無理かも」
佐倉 光
一人焼き肉は楽しいが、食べられない人を前にしての一人焼き肉はいろいろしんどい。
KP
それはそう。
佐倉 光
「一人で食っても盛り上がらないし、やめとくかな」
牧志 浩太
(何だかごめん。
これから俺がもっと元に戻って、物食べられるようになるかもしれないし、そしたら一緒にバーベキューしよう)
これから俺がもっと元に戻って、物食べられるようになるかもしれないし、そしたら一緒にバーベキューしよう)
佐倉 光
じゃあ、生産するものをいつもの携帯食に変更しようかな。
あー、折角だから前にここでもらった林檎とか。(KP(佐倉の中の人)が勝手に出したやつ)
あー、折角だから前にここでもらった林檎とか。(KP(佐倉の中の人)が勝手に出したやつ)
KP
なるほど。
みずみずしい林檎をひとつ出すのなら、1MP。
判定はさっきのでよい。
MP 54 → 53
みずみずしい林檎をひとつ出すのなら、1MP。
判定はさっきのでよい。
MP 54 → 53
KP
あなたの手の中に、ずしりと重みが生じる。
つややかな林檎がひとつ現われた。
瑞々しい表面はこの寒々しい場所で生命の息吹を感じさせ、あのとき貰った林檎そっくりに見えた。
つややかな林檎がひとつ現われた。
瑞々しい表面はこの寒々しい場所で生命の息吹を感じさせ、あのとき貰った林檎そっくりに見えた。
佐倉 光
「じゃ、バーベキューはまた今度ってことで」
林檎を服でぬぐってゆっくり囓る。
心細い闇の中をたった独りで飛ぶときに、これが随分と支えになってくれた気がする。
一応牧志も食えそうか色々試してはみるけど。
接触させてみたり。
林檎を服でぬぐってゆっくり囓る。
心細い闇の中をたった独りで飛ぶときに、これが随分と支えになってくれた気がする。
一応牧志も食えそうか色々試してはみるけど。
接触させてみたり。
KP
果肉に歯を食い込ませると、爽やかな香りを纏った快い水分が口から鼻腔へと弾けた。
あの時の記憶でできた果実は、あの時のままに、喉の渇きと空腹に染み通る喜びを与えてくれた。
あの時の記憶でできた果実は、あの時のままに、喉の渇きと空腹に染み通る喜びを与えてくれた。
牧志 浩太
牧志の口に当てても胃袋に当ててみても、彼らが動くことはなく、服事件の時のように林檎が減ることもなかった。
牧志 浩太
(林檎の匂いもわからないな、この身体)
佐倉 光
「そうか。
逆に考えりゃ、飢えや渇きで苦しむこともない、ってことだな」
逆に考えりゃ、飢えや渇きで苦しむこともない、ってことだな」
牧志 浩太
(ああ、それは大丈夫そうだ。
便利でもあるし不便でもあるな)
便利でもあるし不便でもあるな)
佐倉 光
「今の状態の胃袋って存在意義……」
存在意義を失ったものは、別の存在意義を得るため進化してゆくのだろうか?
存在意義を失ったものは、別の存在意義を得るため進化してゆくのだろうか?
牧志 浩太
(うーん、存在意義。
いつもみたいな鳴き声が聞こえないから、それこそどう思ってるか分からないな)
いつもみたいな鳴き声が聞こえないから、それこそどう思ってるか分からないな)
佐倉 光
食べ終わって何となく満足したら、酒呑んで寝よう。
字面が駄目な人だ。
字面が駄目な人だ。
KP
生命を得た喜びを腹に、ワインを開ける。
濃い血液に似た色のそれの栓を開けると(コルクは捻れば抜けるようになっていた。親切設計だ)鼻をくすぐるのはアルコールの芳しいにおいだ。
それを口の中に流し込むと、葡萄酒というにはあまい、不思議な味がした。
濃い血液に似た色のそれの栓を開けると(コルクは捻れば抜けるようになっていた。親切設計だ)鼻をくすぐるのはアルコールの芳しいにおいだ。
それを口の中に流し込むと、葡萄酒というにはあまい、不思議な味がした。
佐倉 光
ワイン飲むのはテント内で、一応入り口などちゃんと閉めてからにするよ。
呑んだら蓋を閉めて背嚢に戻し、寝わらの上にマントに包まって横になる。
呑んだら蓋を閉めて背嚢に戻し、寝わらの上にマントに包まって横になる。
KP
OK。
厚みのある布をしっかりと閉じれば、外と遮断された穏やかな空間が得られる。
厚みのある布をしっかりと閉じれば、外と遮断された穏やかな空間が得られる。
佐倉 光
「おやすみー」
牧志 浩太
(ああ。お休み)
KP
そう言い交わした直後、意識は一瞬途切れている。
寝入ったという感覚すらないほどに急速な眠りだった。
いままでが夢を見ていたのだから、夢も見なかったのは当然だ。
目が覚めるとあなたは布と寝藁の中ではなく、冷たい石の天井とフワフワモコモコの中にいた。
寝入ったという感覚すらないほどに急速な眠りだった。
いままでが夢を見ていたのだから、夢も見なかったのは当然だ。
目が覚めるとあなたは布と寝藁の中ではなく、冷たい石の天井とフワフワモコモコの中にいた。
牧志 浩太
(おはよう)
牧志は寝た時と変わらず、透明で人型で直立不動で緩やかに回っていた。
牧志は寝た時と変わらず、透明で人型で直立不動で緩やかに回っていた。
佐倉 光
「……おはよう」
寝たのか起きたのかよくわからないな。
寝たのか起きたのかよくわからないな。
佐倉 光
「休めた気がしねぇー。どっかでちゃんと休憩取った方がいいな」
牧志 浩太
(それがいいな。これは寝た気がしそうにない。
さっきのが夢だったなんて思えないよ)
さっきのが夢だったなんて思えないよ)
佐倉 光
ひとまず牧志がちゃんといて良かった。状態も引き継ぐのか。
今の状態ならこの布被せなくてもいいかな?
今の状態ならこの布被せなくてもいいかな?
牧志 浩太
今の牧志は、 光も出ていないし人型だ。
フワモコがなくても差支えなさそうではある。異様だが。
フワモコがなくても差支えなさそうではある。異様だが。
KP
あなたの背中でもごもごともがいていた口の気配も、きれいさっぱり消えている。
カンテラもなくなっており、しかし背嚢の中には小さな箱と本、それに赤の女王の手紙が入ったままになっている。
なお、「眠って起きた」扱いになるため、MPはすべて回復する。
カンテラもなくなっており、しかし背嚢の中には小さな箱と本、それに赤の女王の手紙が入ったままになっている。
なお、「眠って起きた」扱いになるため、MPはすべて回復する。
佐倉 光
服がいつものパーカーになっているのを確認して、現実に戻ってきたのだと自覚する。
佐倉 光
「お、良かった、あの鬱陶しい口が消えたな」
正直延々と何やらもごもご言ってて不快だったのだ。
なんだったんだ、あれは。
正直延々と何やらもごもご言ってて不快だったのだ。
なんだったんだ、あれは。
牧志 浩太
(だな。よかった)
KP
手の中でかさりと音がした。
そして、何だか外が騒がしい。
そして、何だか外が騒がしい。
佐倉 光
なんだろう。手の中を見下ろす。
KP
手の中を見れば、見慣れない小さな紙片がある。
それには手紙のものとは異なる文字で、こう書かれていた。
それには手紙のものとは異なる文字で、こう書かれていた。
おまえがもし覚醒の世界の記憶を持つならば、セレファイスのクラネス王を尋ねてやってくれ。
佐倉 光
「ん、手紙……誰からだ。寝てる間に入れられたのかな」
牧志 浩太
(誰のだろうな、照野さんじゃなさそうだし。
とすると、あの修道院の神官か、そうでなければあの、皇津様の神官さん?
でも、あの人佐倉さんに頼み事なんてしそうになかったしな……)
とすると、あの修道院の神官か、そうでなければあの、皇津様の神官さん?
でも、あの人佐倉さんに頼み事なんてしそうになかったしな……)
佐倉 光
「皇津様んとこのひとは違うだろうなー。
一秒だって関わりたくないってレベルで目茶苦茶嫌われてたし『俺』。
照野さんっぽくもない気がするから、そうすると最初の修道院の人か?」
紙きれも本に挟んで背嚢に入れておく。
一秒だって関わりたくないってレベルで目茶苦茶嫌われてたし『俺』。
照野さんっぽくもない気がするから、そうすると最初の修道院の人か?」
紙きれも本に挟んで背嚢に入れておく。
佐倉 光
「覚醒の世界ってのは、目覚めている間の世界ってことか?
そうすると、こっちで入れられたってのもおかしいか。
夢の住人の仕業かな」
首を傾げる。
そうすると、こっちで入れられたってのもおかしいか。
夢の住人の仕業かな」
首を傾げる。
佐倉 光
「セレファイス、ってのは行き先にあったな」
外の様子はどうだろう。〈聞き耳〉をたててみる。
外の様子はどうだろう。〈聞き耳〉をたててみる。
牧志 浩太
(ああ、あったな。
なら、ついでに行ってみてもいいかな)
なら、ついでに行ってみてもいいかな)
KP
外は何やらひどく騒がしい。
ムーンビーストの叫び声と走り回る音、それからこれは…… 猫の声?
ムーンビーストの叫び声と走り回る音、それからこれは…… 猫の声?
佐倉 光
「……ネコ?」
興味を惹かれた。
こちらで逢った猫には助けられた記憶がある。
そして牧志に会わせてやりたいと思ったのだ。
もしかしたらそいつって可能性がゼロではない。
外に出てみる。
興味を惹かれた。
こちらで逢った猫には助けられた記憶がある。
そして牧志に会わせてやりたいと思ったのだ。
もしかしたらそいつって可能性がゼロではない。
外に出てみる。
牧志 浩太
(猫……、だな?
もしかして、ユキ……、にしては、なんだか騒がしいな)
不思議そうな牧志もあなたの横をついていく。
もしかして、ユキ……、にしては、なんだか騒がしいな)
不思議そうな牧志もあなたの横をついていく。
KP
外へ出ると、あの静謐で陰気な都市の雰囲気は一変し、どこもかしこも大騒ぎになっていた!
最初に目に映るのは、猫、猫、猫!
都市のそこここに、大量の猫が襲ってきているのだ。
彼らはムーン=ビーストたちにじゃれたり、神殿や家のそばで寝転んだり壷に手を出して割ったり、もうやりたい放題だ。
ガシャーン! パリーン! ミャー! ステーン!
もうわけがわからない。
見た感じユキの姿は見当たらないように見えるが、サバトラ茶トラ白黒三毛グレー…… 混沌としすぎている。
ムーン=ビーストたちはどうも猫が苦手なのか、おろおろとその間を走り回るばかりで、制止どころか手も出せていない。
最初に目に映るのは、猫、猫、猫!
都市のそこここに、大量の猫が襲ってきているのだ。
彼らはムーン=ビーストたちにじゃれたり、神殿や家のそばで寝転んだり壷に手を出して割ったり、もうやりたい放題だ。
ガシャーン! パリーン! ミャー! ステーン!
もうわけがわからない。
見た感じユキの姿は見当たらないように見えるが、サバトラ茶トラ白黒三毛グレー…… 混沌としすぎている。
ムーン=ビーストたちはどうも猫が苦手なのか、おろおろとその間を走り回るばかりで、制止どころか手も出せていない。
牧志 浩太
(何だこれ)
佐倉 光
「何だこれ」
KP
なぜか猫まみれ。
佐倉 光
どうして猫が。
KP
この後会う猫に聞けばわかるかもしれません。
佐倉 光
「そーいやユキさんと逢ったの夢んなかだ。こっちじゃねぇや」
佐倉 光
「つーか月にも猫いるんだな」
無視して寝てしまってもいいんだが、寝ているときに侵入した猫に悪戯されても困るな。
状況が訊けそうなヤツ、近くにいるだろうか。
無視して寝てしまってもいいんだが、寝ているときに侵入した猫に悪戯されても困るな。
状況が訊けそうなヤツ、近くにいるだろうか。
牧志 浩太
(あ、ああ。だな?
ウサギじゃなくて猫までいるんだな、びっくりした。
そうか、ここ夢の中じゃないんだよな。現実のほうが夢っぽくないか?
正直頭がついていかない)
ウサギじゃなくて猫までいるんだな、びっくりした。
そうか、ここ夢の中じゃないんだよな。現実のほうが夢っぽくないか?
正直頭がついていかない)
KP
辺りにいるのは楽しそうにいたずらの限りを尽くす猫たちと、おろおろと翻弄されるムーン=ビーストたちだ。
彼らは横笛どころではなさそうで、話が…… 聞けない!
猫たちはひとしきり好き勝手したあと、後片付けなどはせずに去っていく。
後には大変なことになった建物と、足跡まみれのムーン=ビーストたちが残された。
彼らは横笛どころではなさそうで、話が…… 聞けない!
猫たちはひとしきり好き勝手したあと、後片付けなどはせずに去っていく。
後には大変なことになった建物と、足跡まみれのムーン=ビーストたちが残された。
KP
と、あなたの胸の中に猫が一匹飛び込んでくる。
佐倉 光
「うわ!?」
慌てて落とさないように腕で抱えるようにする。あったかい!
なんだ? 普通の猫!?
慌てて落とさないように腕で抱えるようにする。あったかい!
なんだ? 普通の猫!?
KP
人間より温かくて柔らかいそれは、短い黒い毛の先がうっすらと金色に光って見える、美しい猫だった。
それは小さな口を開くと、はっきりとした人間の言葉で話しかけてくる。
「ちょっと神様、あんたの眷属のせいで怪我しちゃった。手当をしてくれない?」
猫が世話を焼かれるのは当然だといった雰囲気で、猫はずいっと足を出してくる。
そこには確かに、毛皮の奥に小さな傷が走っている。
それは小さな口を開くと、はっきりとした人間の言葉で話しかけてくる。
「ちょっと神様、あんたの眷属のせいで怪我しちゃった。手当をしてくれない?」
猫が世話を焼かれるのは当然だといった雰囲気で、猫はずいっと足を出してくる。
そこには確かに、毛皮の奥に小さな傷が走っている。
KP
なんだこの猫?
佐倉 光
「え、あ、ああ?
眷属って、ムーンビーストのことか?
俺が何者なのか知ってるのか」
ひとまず《ディア》してみるぞ。
眷属って、ムーンビーストのことか?
俺が何者なのか知ってるのか」
ひとまず《ディア》してみるぞ。
KP
いつもの《ディア》するなら、〈応急手当〉の判定をどうぞ。
佐倉 光
1d100 53 〈応急手当〉 Sasa 1d100→ 82→失敗
佐倉 光
集中してみた……
佐倉 光
「猫が喋ってる!?」
早速集中が乱れた。
早速集中が乱れた。
佐倉 光
う、うーん、牧志は何とかできそうかな。
無理そうなら〈治癒〉するかな。
無理そうなら〈治癒〉するかな。
牧志 浩太
牧志は物理的に手も足も出ない!
KP
しかし、あなたが手当をする意図を見せると、猫は満足そうに頷いた。
「うん、いいやつだね、あんた」
その様子は本当に傷をどうにかしたかったというより、どこかあなたを試していたかのような、尊大なものだ。
「うん、いいやつだね、あんた」
その様子は本当に傷をどうにかしたかったというより、どこかあなたを試していたかのような、尊大なものだ。
KP
「ありがとう。あたしケット・シーってんだ、いい名前だろ?」
佐倉 光
「え、ケット・シー?
ああ、同種の悪魔か……
いい名前だな、よろしく」
懐かしい気分になった。
ああ、同種の悪魔か……
いい名前だな、よろしく」
懐かしい気分になった。
牧志 浩太
(ケット・シーか、何だか懐かしい名前だな。
こんな所で同種に会うとは思わなかった)
こんな所で同種に会うとは思わなかった)
KP
「よろしく。
そうだ、お礼にいいこと教えてあげるよ。
あたし、[セレファイスの猫の族長]の知り合いなんだ。
あいつにケット・シーの紹介だって言いな、便宜を図ってもらえるから。
あいつはセレファイスの市場のそばにいる。
青灰色の大きな猫で、見たらすぐわかると思うよ」
そうだ、お礼にいいこと教えてあげるよ。
あたし、[セレファイスの猫の族長]の知り合いなんだ。
あいつにケット・シーの紹介だって言いな、便宜を図ってもらえるから。
あいつはセレファイスの市場のそばにいる。
青灰色の大きな猫で、見たらすぐわかると思うよ」
佐倉 光
「ああ……どうもありがとう。
丁度セレファイスに用があるんだ、助かるよ」
丁度セレファイスに用があるんだ、助かるよ」
佐倉 光
「あんた長靴を履いて帽子被った、やたら礼儀だの気にする同種のヤツ知ってる?
もし知っていたら、佐倉がよろしく言ってたって伝えてほしいんだ」
もしかしたらもうあの魔界はないのかも知れないが、名前でつながっている可能性はある。
もし知っていたら、佐倉がよろしく言ってたって伝えてほしいんだ」
もしかしたらもうあの魔界はないのかも知れないが、名前でつながっている可能性はある。
KP
「んー、長靴かあ、知らないね。
長靴みたいな毛色の猫なら知ってるけど」
フニャア、と猫はマイペースに伸びをする。
長靴みたいな毛色の猫なら知ってるけど」
フニャア、と猫はマイペースに伸びをする。
佐倉 光
「そうか、残念だな」
KP
「あんたら面白そうなにおいがするね。ついてっていい?」
佐倉 光
「……えっ? いや、構わないけど俺達これから寝るんだぜ?
夢の世界に用事があるんだ」
そこまではいくら何でも無理だろ? と言外に問う。
夢の世界に用事があるんだ」
そこまではいくら何でも無理だろ? と言外に問う。
KP
「長靴猫だっけ、もし見かけたら伝えとくよ。
ああ、あんた知らないのかい? 猫はどこにだって行けるんだよ。
夢の中くらいひとっ飛びさ。
まあでも、あたし寝たいし夢の中はいいかな」
猫はひょいとあなたの腕の中から降りると、またマイペースに欠伸をして、牧志の身体を駆けのぼって頭の上に乗っかった。
ああ、あんた知らないのかい? 猫はどこにだって行けるんだよ。
夢の中くらいひとっ飛びさ。
まあでも、あたし寝たいし夢の中はいいかな」
猫はひょいとあなたの腕の中から降りると、またマイペースに欠伸をして、牧志の身体を駆けのぼって頭の上に乗っかった。
牧志 浩太
(うわ)
佐倉 光
「……そうなのか、知らなかったな」
それは全猫がそうなのか、この猫が悪魔だからなのか。
それは全猫がそうなのか、この猫が悪魔だからなのか。
KP
「この世界、猫は神様より偉いからね」
猫は鼻先をつんと伸ばして、ふふんと笑った。
猫は鼻先をつんと伸ばして、ふふんと笑った。
佐倉 光
「別に、ついてくるのは構わないけど……
そういやあんたは月の猫なのか?
ここに来たのは地球が滅びたから……ってわけじゃないのか?」
それともいつもこんな感じなんだろうか。
そういやあんたは月の猫なのか?
ここに来たのは地球が滅びたから……ってわけじゃないのか?」
それともいつもこんな感じなんだろうか。
KP
「あたし? 猫は猫だよ。
ああ地球、滅びちゃったんだっけ?
誰か知らないけど惜しいことするよね、あそこにはあたしたちのシモベがたーくさんいたのに」
ああ地球、滅びちゃったんだっけ?
誰か知らないけど惜しいことするよね、あそこにはあたしたちのシモベがたーくさんいたのに」
牧志 浩太
(軽いな)
佐倉 光
「なるほどね。猫を養うために仕事してたヤツも多いっていうもんな」
しかし神より偉いとは大きく出たな。
いや、神が人間の意識が作り出した存在なら、『人間より偉い』猫が神を越えるのも自然なことか?
しかし神より偉いとは大きく出たな。
いや、神が人間の意識が作り出した存在なら、『人間より偉い』猫が神を越えるのも自然なことか?
佐倉 光
「養ってくれる人間が滅びたら猫はどうするんだ?」
猫も結構人間への依存度が高い動物だっていうけどなぁ。
猫も結構人間への依存度が高い動物だっていうけどなぁ。
KP
「え? 普通に暮らすよ。
夢の世界にはニンゲンいっぱい住んでるし、ニンゲンいなくても魚や鳥はいるしね。
ここの連中にちょっかい出してれば、退屈もしないし」
何を言っているんだろう? と言わんばかりに猫は小首をかしげた。
夢の世界にはニンゲンいっぱい住んでるし、ニンゲンいなくても魚や鳥はいるしね。
ここの連中にちょっかい出してれば、退屈もしないし」
何を言っているんだろう? と言わんばかりに猫は小首をかしげた。
牧志 浩太
(え、待て待て待って待って。ニンゲン? 夢の世界に人間が住んでる所があるのか!?)
佐倉 光
「へぇー、いるのか、人間。
そういえばノーデンスの神官は人間っぽい姿はしてたけど。
まともな動物もいるのか? 見たことないなぁ。
化け物ばっかりの場所じゃないってのか。
人間や普通の動物なんかは、例えばどういう所に住んでいるんだ?」
そういえばノーデンスの神官は人間っぽい姿はしてたけど。
まともな動物もいるのか? 見たことないなぁ。
化け物ばっかりの場所じゃないってのか。
人間や普通の動物なんかは、例えばどういう所に住んでいるんだ?」
KP
「いろんな所にいるよ?
でも、オオス=ナルガイのあたりが多いね。
あそこは覚醒の世界の人間が夢見た場所のひとつだから、暮らしやすいんじゃないかな」
猫は緩やかに尻尾を振って言う。
でも、オオス=ナルガイのあたりが多いね。
あそこは覚醒の世界の人間が夢見た場所のひとつだから、暮らしやすいんじゃないかな」
猫は緩やかに尻尾を振って言う。
牧志 浩太
(そうなのか……。ここにも、人がいるんだな。
どんな人たちなんだろう。言葉は通じるのかな)
どんな人たちなんだろう。言葉は通じるのかな)
牧志 浩太
(会ってみたいけど、ちょっと怖いな。
街なんかあるのを見たら、夢の中だってこと忘れてしまいそうだ)
街なんかあるのを見たら、夢の中だってこと忘れてしまいそうだ)
KP
「あ、そうそう。
あんたらが行くセレファイスも、オオス=ナルガイの谷にある街だよ」
あんたらが行くセレファイスも、オオス=ナルガイの谷にある街だよ」
佐倉 光
「へぇ……」
ちら、と牧志を見上げる。人間ばっかりの所に行ったらクッソ目立ちそう。
ちら、と牧志を見上げる。人間ばっかりの所に行ったらクッソ目立ちそう。
佐倉 光
「次に行くのはそこ以外にしとこうかなー。
流れ的にもう少し目立たなくなってくれるかも知れないし」
流れ的にもう少し目立たなくなってくれるかも知れないし」
牧志 浩太
(あー、それこそローブにフードでも被せてくれたらって思ったけど、回ってるのはどうしようもないもんな……)
佐倉 光
「最初の状態から徐々に軽減されているから、今の状態そんなにインパクトあるように思えないけど、
改めて考えてみたら異常どころの騒ぎじゃねぇしな」
改めて考えてみたら異常どころの騒ぎじゃねぇしな」
牧志 浩太
(確かに。あんまり自覚無かったけど、そうだな。
そうか、意外な所で実際的な問題が出ちゃったな)
そうか、意外な所で実際的な問題が出ちゃったな)
佐倉 光
初手でセレファイスに行ったら大騒ぎだったかもしれんなぁ。
KP
かもしれない。まあ化け物よくいるドリームランドだし、レン高原で大神官に会った時点で光は出なくなっているので、ちょっと大騒ぎになるだけで済……む ?
佐倉 光
「しかし、そうするとそこにも知っている人がいる可能性もなくはないかな?
寝れば誰でも行けるってわけじゃなさそうだし、そんなに期待したって仕方ないけど」
寝れば誰でも行けるってわけじゃなさそうだし、そんなに期待したって仕方ないけど」
牧志 浩太
(たぶん、手紙にあった『あなたの友人』ってのは俺じゃなくて照野さんのことだろうし、あれは赤の女王の差し金だったんだろ。
そうなると、セレファイスにも誰かいるかは微妙だな)
そうなると、セレファイスにも誰かいるかは微妙だな)
佐倉 光
「あの神殿で宿を借りろとかふざけた冗談かましてるし、
ダブルミーニングだったとしても不思議じゃねーけどな」
ダブルミーニングだったとしても不思議じゃねーけどな」
牧志 浩太
(……先輩ならしれっと居そうだな、なんて、思っちゃったよ)
牧志は寂しそうに苦笑する声をもらした。
牧志は寂しそうに苦笑する声をもらした。
佐倉 光
「……そうだな。
波照間さんも東雲さんも、割とシレッと境界越えて生きていそうな気は……するな」
そうであってほしい、と思った。
波照間さんも東雲さんも、割とシレッと境界越えて生きていそうな気は……するな」
そうであってほしい、と思った。
牧志 浩太
(……だろ。だと、いいな)
佐倉 光
牧志の頭の上に陣取る猫を見上げた。
佐倉 光
「サンキュ、ケット・シー。少し希望が湧いたよ。
一緒に来るのは良いけど、俺達多分寝てばっかりになるぜ?」
一緒に来るのは良いけど、俺達多分寝てばっかりになるぜ?」
KP
牧志は相変わらず回っているが、猫は平気そうな顔で周囲の風景を眺めている。
「そりゃよかった。いいよ、ここおもしろいし」
風景が回るのが面白いらしい。
「そりゃよかった。いいよ、ここおもしろいし」
風景が回るのが面白いらしい。
佐倉 光
とりあえず戻って、夢の続きを見ようかな?
なんとなく空を見上げる。
ここは月の裏側だ。地球は見えない……
なんとなく空を見上げる。
ここは月の裏側だ。地球は見えない……
KP
月の都市に大騒ぎが訪れようと、空には変わらず星が光り、滅んだ星の代わりのように黒い石が浮かぶばかりだった。
KP
地下の神殿までは大騒ぎも及んでおらず、偶像に覆われた空間は変わらずそこにある。
あなたが敷いていたフワモコも、牧志にかぶせていないならそのままだ。
あなたが敷いていたフワモコも、牧志にかぶせていないならそのままだ。
佐倉 光
「戻って寝るか」
なんとなく牧志の体を軽く叩いて神殿の部屋に戻る。
なんとなく牧志の体を軽く叩いて神殿の部屋に戻る。
牧志 浩太
(だな)
KP
牧志の肩は冷たくて硬い感触がしたが、人間の肩の形をしていた。
佐倉 光
ワインを一口含んでしっかり背嚢に片付けてから、フワモコの上にごろっと横になる。
次は……
次は……
KP
さて、どこへ行こうか。
佐倉 光
「[歓楽かなわぬ地ズーラ]にしよう」
あまり行きたい場所じゃないけどな。
あまり行きたい場所じゃないけどな。
牧志 浩太
(確か、あの死体が歩き回ってる所だっけ)
KP
あなたは目を閉じる。
眠りの波が、それと意識することもないほどの速度であなたをさらっていく。
眠りの波が、それと意識することもないほどの速度であなたをさらっていく。
MIDNIGHT DEJAVO
MIDNIGHT DEJAVO
TRPGリプレイとかゲーム関連
コメント By.佐倉 光
記憶の地を訪れる。
しかし立場が違う今、あの時のような安らぎはもう得られないのだ。
記憶の地を訪れる。
しかし立場が違う今、あの時のような安らぎはもう得られないのだ。
【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」
※コメントは最大500文字、5回まで送信できます