こちらには
『ファミチキください』
のネタバレがあります。
牧志 浩太
お人好しで温厚、だが意思は強い好青年だったが……。
とある事情で二年より前の記憶の大半を失い、代わりに悪魔使い波照間紅の記憶を持っている。
首から胸へと続く奇妙な【契約】の痣がある。たまに痛むという。
生贄体質らしく、事件に巻き込まれることが多い。
最近身体改造を受けた後遺症で、胃袋が別個の生命になってしまっている。
波照間とは並々ならぬ縁がある相棒。
佐倉とは一蓮托生の相棒。
波照間 紅
真・女神転生発のサマナーで悪魔退治屋。弓術を得意とする真面目な青年。
沖縄出身である。
宇宙に並々ならぬ思いを抱く。
牧志とは並々ならぬ縁がある相棒。
佐倉とは悪魔使い仲間。
佐倉 光
サマナーで悪魔退治屋。ハッカーでもある。
基本、知性・理性・効率、そういったものを重視する冷静な青年。とある事件より、体中の痛みに悩まされている。
基本悪魔を召喚して戦うが、悪魔との契約のカードを使ってその力を一時的に借りることもできる。
巻き込まれ体質らしい。
波照間とは悪魔使い仲間。
牧志とは一蓮托生の相棒。
シロー
とある事件以来、特殊な事情のため二人が面倒を見ることになった少年。
超美形で類い希な理解力と知性を有する。
年齢は7歳程度。生育環境が特殊だったため、一般的な教育を受けていないので、言語が年齢の割に幼い。最近になって急に一般的な生活を送り始めたので、外界への興味が強い。
浦西と五人
少し前に現れた6人の異星人。佐倉と契約して彼の仲魔として存在している。
その正体は危険な不定形生物だったが、事故により『人間』としての意識を持ち、この星での人間との共存を試みている。
「ファミチキください」
はる 様 作
不意に呼びかけられた気がして振り返ると、耳の中で海がのたうつような音がした。
鼻の奥に虫の這うのを感じたかと思えば、生臭い匂いと金属のような味が襲う。
指先にちくちくとした痒みを覚えると、掌の先に何か大きなものの脈動を感じた。
あの出来事の後から、そんなのがずっと続いている。何かが身体を掠めて通り過ぎるように、一瞬で消えていく幻。
あの時はそれほどまでに曲げられたし、替えられた。
元に戻れる確信なんてなかった。
耳の奥でぼうぼうと海がのたうつ音を聞きながら、あの大きな背を丸めて、俺は舌の先に繋がった佐倉さんを守ろうとしている。
そんな夢だった。
それはあまりにも真に迫っていて、舌の先に繋がった佐倉の、諦めだけがどろりとたゆたう目の光すらはっきりと見えるのだ。
それはあなたが選ばなかった、だが確実に存在した未来であると、あなたに突きつけてくるかのようだ。
だが忘れた頃にふと視界の端を、指先を、鼻の奥を、よぎるのだ。
荒涼とした風の音を聞いた。
口の中を埋める舌の感触を、その先に繋がった身体の脱力を、ありありと感じた。
あまりの鮮やかさに、選ばなかったその未来が、どこかにあるのかもしれないと思うようになっていた。
とうとう反撃も叶わず、あの檻の中で腐っていった俺達が、どこかにいるのかもしれなかった。
この辺ファミマってあったっけ」
今日はシローは不在だ。
東浪見がアスレチックにつれていってくれるとかで、早朝から張り切って出ていったのだ。
このへんにはイン&ヤンが多く、ファミリーマートは駅の近くにしかなかったように思う。
幻が連れてきた物思いから不意に引き戻されて、目を白黒させた。
白黒といえばイン&ヤンだ。この辺にファミマはあまりなかったような。
そんなことを考える頃には、幻も物思いも思考から消えていた。
この辺イン&ヤン強いし。
一番近くて駅前?」
佐倉が参加していた女神転生TRPGシリーズは割とペルソナ系のネタも出てきていたので、そのへんのネタもよく使われる。
声が聞こえた。
それはか細く切なく、悲しみと渇望に満ちていた。
悲しみに満ちた胸を打つ声が、聞こえた気がした。
佐倉さんがそんな声を発したことは、あっただろうか?
佐倉は眉根を寄せた。
何、ファミチキ食べたい?
イン&ヤンナゲットじゃ駄目な気分?」
笑うなよ?」
そう言われてしいて思い出そうとするのであれば。
あなたは雑音のようにそんな言葉を聞いていた気がする。
気がするが……
いかんせん、異世界の幻覚が強すぎて、そんなか細い意味不明の幻聴、意識に残っていなかった。
遡ると異界の風景が思い浮かんだ。
そういえばその背後に、微かにサブリミナル効果のように聞こえていたような気がしなくもないが、どうにもよく覚えていない。
最近は異界の幻覚がいつになく強くて、そちらに気を取られていたのだ。
……ごめん、最近幻覚が強くて気づいてなかった。こういうの困るな。
うーん……。
ファミチキ食い損ねた幽霊か、ファミチキ食べたいゴブリンでもいるのか?」
だから、違うかなと思ってたんだけど、おまえにも聴こえてたってことか?」
最初は勘違いか、悪魔のいたずらかと思ったんだけどな……」
微かな声が鼓膜をはかなく揺さぶる。
否、それはおそらく現実の音ではないのだ。
ああ、俺にも聞こえてるらしい。
妙に悲しそうな声だ」
何だこいつ、ファミチキ食べたいのか?」
イン&ヤンのヤンニョム唐揚げ」
とりあえず唐揚げは食うけど、ついでにファミマも寄ってやるか?
あ、そういえば今日誰の番だっけ」
日ごとに交替で呼んでいる牧志sのことだ。
牧志s
浦西くん安里くんなら「こ、こいつ直接脳内に……!」って言ってくれるかな?
本編終わってからあんまり出番なかったですしね。彼らのどっちかにしますか。
言ってくれそうなのは浦西の方かな?
名を呼ばれて、先日買った画集を読んでいた浦西が振り返る。
さて、その「声」は彼にも聞こえるのだろうか。
他のみんなはそれっぽいことは言ってなかったけど、お前はどう?」
驚いて、画集をそっとテーブルに置いてから振り払う仕草をする。
ちょうど『つがツラ』のクリアファイルキャンペーンやってるんだ」
浦西は頷いて立ち上がり、リビングの棚(あの事件の後新調した)の中の色分けされた箱の一つから、財布を取り出しポケットに入れる。
リビングを何となくカラフルな印象にしている、それぞれ色分けされた六つの箱は、彼ら個人の領域である私物入れだ。
なんだっけなそれ。略されると分からない。略されていなくても分からない可能性はある。
成長
佐倉は日々の悪魔との交渉経験ということで〈言いくるめ〉伸ばしたいな。
牧志はもちろんだけど、波照間さんもどうぞ。
前回の事件からはそれなりに時間がたって、みんな心の平穏を取り戻してる、ということで。
1d5 Sasa 1d5→5
牧志はあれから大学生活に戻って勉学に励んだということで、〈電気修理〉を上げます。
1d100 44 電気 Sasa 1d100→ 25→成功
おっと上がらず。
1d100 10〈博物学〉 Sasa 1d100→ 13→失敗
1d5 Sasa 1d5→1
〈博物学〉10 → 11
波照間がホットスナックのケースを見つめている。
偶にしか顔を見ないから、なかなか覚えられなくてな」
昨日はありがとう、マジで助かったわ。
あ、そうだ、何か買うなら一個おごりますけど」
揚げたてのインヤンニョムDXチキンが山と積まれている。
キャンペーン中で安いようだ。
折角だし、DXチキンにしよう」
昨日波照間さんが割り込んでくれなかったら確実に食われてたと思うから、今度正式におごらせてもらうよ。
ネコマタに箱に入る話してブチキレられるとは思ってなかったなー」
彼女が誇り高きヤマネコマタだったとは。
ああ、その時はご馳走になろうかな」
TALK
きっと箱に入りたいきもちと、そこらの家猫と一緒にすんじゃねぇッッ! というプライドの間でキレちゃったんですよ
悪魔会話って難しいなー。
悪魔使いに会うたびに箱に入る話フられまくっていい加減うんざりしていたのかも知れない。
「オメーだってワカルだろ悪気が無くても会う度会う度会う度ッッ!」
とか、慌てて割って入る波照間とそんな会話してた。
浦西はホットケースの反対側に置かれたポテトチップと、ミニクリアファイルを合わせてレジへ持っていく。
『津軽で好きになった人が方言すぎてツラみ』、略して『つがツラ』……らしい。
東京の少女が転校先の青森で爽やかなイケメンに出会うが、彼はお爺ちゃん子で方言が凄くて…… から始まるドタバタラブコメだ。閑話休題。
どれも可愛らしいヒロインと、イケメン、それとファンの間で隠れヒロインと言われている『おど(おじいちゃん)』が描かれている。
ここ最近ですっかり津軽グルメにハマってしまった浦西が、財布の中身と相談しながら一緒にパンを買っていく。
彼らの小遣いは、手伝いや家事・シローの世話などの対価としてあなたから受け取る他、Barでのちょっとしたアルバイトなどから出ている。
アルバイト、というか半分以上監視なのだが、彼らも人と交流できるし、あなたの財布以外からお金を得ることもできるし、で好評だ。
その手にファミチキはない。当たり前だ。ここはファミマではなくイン&ヤンなのだ。
糸目の店員がほかほかのホットスナックを袋詰めしてくれる。
波照間。偶然最初に並んで受け取ったのはあなただ。
店員はポップな太陰太極図がかかれた袋をあなたに渡してくれながら言った。
思わず店員の顔と制服をまじまじと見る。
店員はあなたの反応に首を傾げている。
そして、会計終わったんだから早く退いてくれないかな、という顔をしている。
最近聞こえるあの幻聴だろうか。
何度も対話を試みたが返事してくれないのだ。
慌ててレジの前から退く。
と声を漏らした。
と爽やかにセールストークをかました。
一番くじと財布を見比べて悩んでいると、場違いな声で場違いなフレーズが耳に入った。
店員は小首を傾げた。
これは、現実の声に何者かの悲痛な叫びが混ざって聞こえているのだ。
あれからちょくちょく異界の音を聞いているせいで、逆にすぐに分かった。
これは目の前の店員が発している声では、ない。
ひとまず声を無視してチキンを受け取る。
確かにそろそろ鬱陶しくなってきた。 インヤンニョムチキンじゃ駄目っていうのかよ。
確かに美味いけどさ、ファミチキ。
KFCもこの近くにある。
つい釣られてそんな返事をした。
もう誰もついてこなくても行く気らしい。
慌てて追いかける牧志。
くじコーナーの前で悩んでいた浦西はうっかり置いていかれかけ、これまた慌てて追いかける。
情報交換しながら三人で佐倉さんを追う。
受け取る瞬間に小さく毒づいた。
KFCの店員がびくっと身を震わせる。
あまりにもファミチキファミチキ言われて、ファミチキサンド食いたくなってきたじゃねーか」
チキンと一緒にコーヒー買って飲んでいる。
何も買っていない。
ついてきて月見チキンを買う。
ただ、人の状況無視して声ねじ込んできやがるくせに、
チキン買おうとした時に狙って言ってくるのがムカつくんだよ!」
佐倉は意地になっているようだ。
寝かけた時に邪魔されるのは嫌すぎる」
実感が籠もった。
眼窩を掻き回されるような視界と、頭を割るような痛みでろくに眠れなかった日のことを思い出した。
戻ってきた日、寝ようとして目を閉じると異界フルコースになってしまって、これまたろくに眠れなかった日のことも思い出した。
今はだいぶんましになったから、そういうことはないけど。
本編見る!
波照間と佐倉だけにしとこうか。
《SANチェック:成功時減少 0 / 失敗時減少 1》
SAN 61 → 60
これは連日幻聴と真面目に対話しようとしていたやつ
あんまり腹立てるたちでもないから、気にしてないどころか、そうかファミチキがそんなに欲しいのか君も大変だな、ってなってる
最初は聞き取れなかったとかそういうヤツで。
他の理由も一応考えているので終了後にでも。
終了後にぜひ。
そしてその切実度と恨みがましさはくっきりとした輪郭を持って増し、あなた方の精神に呼びかけてくる。
実はファミマ店員かもな。死んでも宣伝続けさせられてるんだ」
『ファミチキ買ってください』だろ」
佐倉はフライドチキンの骨から肉をむしりながら鼻を鳴らす。
それ結構辛いな」
人数が居るせいで、気を抜くとついつい怪奇現象が話の種になってしまう。
そんなことを言い合っていても状況は変わらない。
力を込めて、願いを込めて、何者かは魂の叫びをぶつけてくる。
あまりの不機嫌具合に気になってしまった。
寝ようとしたところ邪魔されたり、あと一手で勝てた勝負邪魔されたり、ハッキングを……」
そもそも本質的にはやっていることを邪魔されるのが嫌いなのだ、佐倉は。
それは許し難い!
普通に命に関わってるし、大体そうでなくてもイライラするやつだ。
そういえば嫌なタイミングで、ってこともあったかもしれない。
それでもやはり悍ましい世界の流入に比べれば大したことではなかった。
微弱すぎて、何かを邪魔するというほどのストレスにはなり得なかったようだ。
ラジオみてぇに一方的に流してる感じなのかな……」
今日は帰って食べ比べてもしていれば良いんじゃないか、という風情だ。
俺にも先輩にも聞こえてるようだし、一帯に流してるとしたら素直に迷惑だな」
ふらふらと肉屋の方へ寄っていく。
パリッとした表面をそのまま楽しむも良し、マヨネーズや七味もついている。
また、大根おろしにポン酢を土台としたつゆをかけたものもついている。
「いらっしゃいませー」
店員はあなたが興味をひかれたと見るや、すかさず声をかけてくる。
ふらふらと惹かれるように七味唐揚げを買う。
揚げ立ての唐揚げをその場で食べない選択があるわけもなく、近くの路地の壁にもたれていただきます。
東浪見が食ってるのいつも見てたからかな?」
美味そうに食べる様子につられて一つ買ったはいいが、熱さと湯気に大層苦戦している。
ふと幻聴に話しかけてみる。
声は心なしかしょんぼりしている。
やっぱり死に際に聞いた言葉とかなのか?」
こいつは本当は何を伝えたいのか……」
唐揚げを手に精神を統一し、その声が本当に伝えたいことを口調や声の調子から探ろうとする。
他のチキンでは埋められない愛は、唐揚げ好きのあなたにこそ伝わるかもしれない。
同じ鳥を揚げた料理にどれほどの差があるのかと人は言うかもしれない。
だがファミチキは唐揚げの代わりにはならず、唐揚げはファミチキの代わりにはならないのだ!
しかし彼は……どうしてかは分からないが、自らの足でもってファミチキを買いにいくことはできない。だからこそ近しいものに呼び掛けているのだ!
……その哀しげな声から伝わる切なる愛が胸を打ち、共鳴するように強く心を震わせた……!
心が揺さぶられるあまり、眼から涙が流れ落ちた。
同時に何かを受信した。
だくだくと涙を流しながら、ファミマへ向かおうとする!
本体のあからさまな異常に胃袋が驚いて鳴き声を上げているが、本体はそれどころではなかった。
チキン食べたい!!
何があったんだ?」
気持ちが分かってしまっただけなんだ。
こいつのファミチキへの愛が、渇望が、胃袋から湧き上がるファミチキ食べたくてやまない気持ちが……!
佐倉さん、俺もファミチキ食べたい!!」
佐倉さんの両手をがっしり掴んで熱弁する。
胸のあたりで胃袋が「俺は何も言ってませんが!?」とでも言いたげに抗議の声を上げた。
佐倉は、ちょっと引くわぁ。という顔をしつつも頷いた。
何だかんだでずいぶん近くまで来てるし」
心なしかそのとき聴こえた声は、喜びに満ち溢れていたように思えた。
浦西も一歩引いている。なんなら二歩は引いている。
わさわさとファミマへ向かう。
折しもファミリーマートでは、ファミチキ(骨なし)、スパイシーチキン、香ばしチキン(焦がし醤油風味)の3種類を自由に組み合わせて2個同時に購入すると、レジにて100円引きになるキャンペーンを実施中である。同時にチキンセールも行われている。
ホットスナックのケースにはチキン系が山積み、ファミチキバンズも目立つところに陳列してあった。
今もっているチキン系商品、買うファミチキの個数を申告してください。
※唐揚げは全員1個ずつ買っているが、全員その場で食べたので手元に無い
その言葉と共にイメージが浮かぶ。
【アイデア】。
波照間と牧志はプラス20で判定。
波照間と紅が遭遇した大事件のなか、山を登り、道をゆくと見える古い墓地。そこへゆく途中に見た山道だ。
二人ともいる所であの場所絡めてくれてありがとうございます 久しぶりに「紅と紅」の空気感に戻る牧志と波照間。
思わず、先輩と……、紅と、顔を見合わせる。
思わず、牧志と……、紅と、顔を見合わせる。
直後、思わず吹き出した。まさか、こんな文脈であの場所が出てくるとは思わなかった。
波照間もつられて吹き出し、少しばかり笑いあった。
……あの山には、俺が生まれて、そして死んだ場所もある。帰りに寄ろう、と思った。
今になればもう思い出だ。悼むことくらいはできる。
きっと地形も全く一緒なんだろうけど……、正確に言うなら、俺達の場所じゃないしな、そこは」
思い出せなかったことを少しばかり悔いるように、喪失の痛みを思い出すように、浦西は添える。
なんなんだこいつ?
あの場所にファミチキ届けてやれば、この鬱陶しい声、何とかなるのか?」
実は僕らを鬱陶しい声で動かして、何かの儀式を」
分からないけどこのまま根比べしてるわけにもいかないし、警戒はしておいて、行ってみるしかなさそうだ」
着く頃には冷めてそうな気がするけどなぁ」
〈図書館〉をどうぞ。
1d100→ 19→成功
1d100→ 72→成功
1d100→ 54→成功
ニュースによると、行方不明になっていた少年は2日後に見つかり、酷く錯乱した様子だったようだ。
現地に向かおうと準備していて、ふと気がかりなことを思い出した。
あれはいつ頃のことだっただろうか?
少年は見つかったというが、何か証言していただろうか?
何かとても恐ろしいものを目撃したのではないかと思われるようだったが、おそらくクマか何かだったのだろう、と結論づけられている。
その事を思い出して、雰囲気に巻き込まれていた頭に少しずつ冷静さが戻ってきた。
まさか俺達ごと、そいつの餌じゃないだろうな?
いや、だとすればファミチキ限定な理由がもっと分からないか……。
一度目は死んで産まれるために。
二度目は埋葬するために。
三度目は……何のためだろう?
車は町を抜け、山道をひた走る。
車内は美味しそうなチキンの匂いに満たされていた。
窓開けよう。何か入ってこない程度に。
ここはそうと知らなければ道があることすら気付かないであろう。
例の墓地はもう少し先だ。そしてあなたの……『紅』の『父親』……そう呼んでいいのかは分からないが、あの男が死んだ場所の近くでもある。
▼〈聞き耳〉をどうぞ。
Sasa 1d100→ 70→成功
この森にはなにかが、いる。
鳥の声に混じり、獣の唸り声のようなものが聞こえた。
……殺意を帯びたような、飢えた獣の声が。
〈聞き耳〉成功者は《SANチェック:成功時減少 0 / 失敗時減少 1》
運転を継続する余裕も車を停める余裕もないようなら、シフトレバーとサイドブレーキを使って車を停め、すぐに運転を交替する。
確実に何かいるよな、この森。しかも、まずいのが」
人間の声を装って餌を誘い込むんだ。
餌はチキンじゃなくて、俺達、っていう」
声に軽い焦りが混じった。
えっ、来てくれないんじゃこれ? ここまできて?
その手のチキンをもってきてくれないんですか??
ちょっとそれは殺生じゃないですか??
そんな気持ちが込められたのを感じたかも知れないしそんなのは気のせいだったかも知れない。
この声怪しすぎるだろって思うんだけど、とはいえあのまま邪魔され続けたら佐倉さんが爆発しそうなんだよな。
俺は慣れてるからいいんだけどさ。
スマホを通話モードにしておくから、俺達に何かあったらすぐに助けを呼んでほしいんだ」
サマナー死亡で消えたりしないし、一応Barの関係者だし。
賢いのは間違いなく帰っちゃうことなんだけど、そこは探索者、行くぜ!(こわい)
これでトラップだったら怖いなあ。
あなた方を?
それとも、チキンを?
大丈夫、連絡用にスマホ貰ってるし、そう簡単に召喚が解けたりしないし、Barとも連絡取れる。
牧志、免許借りてもいいか」
……頼む」
【チキチキファミチキチキチキ遭遇ゲーム】
……黒い、丸々とした生き物。
人里に希に現れる脅威、そう。2m級のヒグマだ!
えっここ本州ですけど。
今からでもクマ保険入れます?
《SANチェック:成功時減少 0 / 失敗時減少 1d2》
リアルで熊に餌をやったらダメ、絶対。
1d100 55 波照間《SANチェック》 Sasa 1d100→ 43→成功
一瞬、凍った。見間違いと思った。
しかし恐るべき偉容は、瞬きしても消えることはない。
それは理解不能なために恐ろしいのではなく、理解可能なために恐ろしい。
それの存在を習性を限界を俺達は知っている。
問題はその限界が、人間数人なんかよりも遙か上にあるってことだ。それが分かってしまうことだ。
えっと音で知らせ、いやだめだ、俺達は餌になるものを持ってる。
音を出さずに距離を離そうとジェスチャー。
そのまま距離を離す。
あなた方は身をできるだけ縮め、土の香りに同化しようとでもいうかのように息を殺す。
強烈なチキンの香りだけが周囲に漂っていた。
香りはすれども姿は見えず。
クマは苛立ったようにうなり声を上げると、走り去っていった。
その吠え声が「ファミチキ」と聞こえたのは……いくら何でも気のせいだろう。
強烈な獣のにおい。
心臓がきゅっと縮んだ。心音すらあちらに聞こえそうな錯覚にとらわれた。
胃袋が鳴きだしたらどうしようと気が気じゃなかったが、どうやら胃袋も恐怖のあまり縮こまっていた。
頷きあって先に進む。
いっそ祈りのように感じるほどだ。
幸運にも? 不運にも?
あなた方は熊と遭遇しただけでこの森を突破することができたようだ。
通り抜けてみると、そこは異界だったのかと思えるほど奇妙に暗くて濃密な悪意と食欲に満ちていた。
一体何が潜んでいたというのだろうか……
突破!
クマで2って一番上どう見ても神話生物ですよね??
神格じゃないですかwwww
思わず変な声が漏れる。
へたり込んでしまいそうになるのを叱咤して奥を目指す。
あれですら、まだ生易しいと分かってしまう。
どう考えても普通じゃない。普通の場所じゃない。
佐倉がいつの間にか詰めていたらしい息をつく。
このチキンを早く手放してしまいたい!
それは住むための家、というよりは物置か何かのような簡素な作りで、中から明かりが漏れている。
「ファミチキください……!」
声は呼びかける。嬉しそうに、愛しそうに、求めるように。
どうやらあなた方を呼びつけたものはここにいるようだ。
扉は閉ざされており、中は見えない。小屋には窓もなく、中の様子はうかがえない。
あなたは……どうする?
簡素な小屋に誘い込む声。
よくて魔女、悪くて牙の生えた口が待ってるやつだろ、これ。
扉を開けてみる。
先輩、佐倉さん、後ろで支えてて」
カンテラの明かりが揺らめく中、照らし出されたのはやはり外観から想像できるとおりの殺風景な部屋であり、その下に……
おお、なんということだろうか。
そこに立っていたのは性別の域を超えた、完成された美そのものであった。
目にするだけで心を打たれ、その衝撃に精神は打ち震える。正に感動である。
これは人か。否、このようなものが人であるはずがない。
青磁の肌は怪しく艶めき、素肌に流れ落ちる髪は光を反射し清流のごとく。
儚げな風貌ながら永遠を感じさせる深い瞳、高く、だが下品ではない鼻、血色を宿した唇は綻ぶ。
《SANチェック:成功時減少 0 / 失敗時減少 1》
SAN 53 → 52
SAN値 60 → 59
想像の外だ!
何もかもを忘れて一瞬、向き合ってしまう。
異界の氷から削り出したかのような、絶対零度の美。
どんな熱も概念を失い、宇宙さえ動きを止めてしまいそうな程の。
美という形の中に納まっていながら、それは人が想像しうる美とは思えなかった。
これは。
これは、何なのだ。
まあ確かに、先輩その辺気にしないもんな。
何となく分かる。
先輩はあれだな。
綺麗な人って言うには超越しすぎていて、「そういうもの」だって思ってるな。
「そういうもの」なら気にしないもんな、先輩。
《SANチェック:成功時減少 0 / 失敗時減少 1d2》
1d2 Sasa 1d2→1
SAN 52 → 51
1d2 Sasa 1d2→2
SAN 59 → 57
先輩の余裕
でかい鬼! 七階で話しかけてくる謎の何か! ファミチキねだる異様に美しい何か! なるほどそういうものだな って受け入れちゃう波照間。
ファミチキを一つ取り出して渡す…… 前に、その人(?)の声と、聞こえていた声が同じ物かどうかと、あの声が今も聞こえるかどうか確認する。
とうとう求めていたものに巡り会えたのだ!
ここでいくつファミチキを渡すか、またはファミチキではないチキンを渡すかも自由。
ところであの森の熊やらは君がやったものなのか? そういうのは怖いんだが」
ファミチキひとつ渡そう。
こちらもファミチキひとつ渡す。
佐倉は無言でファミチキを突き出した。
その美の化身は光輝いた。
良い匂いが漂った。
鈴の降るような軽やかな音が鳴り響いた。
人間の感覚で言えば、微笑んだのだ。
1d100 75【幸運】
Sasa 1d100→ 4→決定的成功(クリティカル)!
とにかく喜んでもらえたらしいと認識した直後、視界が光に満たされた。
咄嗟に腕で目を庇う。
背後で扉が閉まり、いつもの曲が聞こえる。
あなたがたの右手には温かなファミチキ、左手にはカードが一枚。
というわけで皆さんどうだろう。
佐倉は持っていなかったので真新しいVカードが手の中で燦然と輝いている。
持っていなかったので新しいカードだ。
他の二枚のVカードも同様5000ポイント入りだ。
どうやらこれがお礼ということらしい。
ファミチキくださいの声は聞こえなくなっているだろうか?
まるで洗車直後にワックスかけたようになっている。
車の中に浦西が寝ているか、それとも混乱した状態で座っているだろう。
さぁびす
あの声からして、ファミチキは渡せたのか?」
車の中から混乱した様子の浦西がもぞもぞと出てくる。
残ったファミチキにかぶりつく。
結局何だったんだ。あのヒグマ何だ。
巻き込まれた諸々の中でも、まあ訳が分からない。
それか、もしかしたら単純に俺達の反応見たかっただけ、とかさ」
佐倉さんの考えてることが分かるような気がした。
結局何も分からないんだろうな、何だったのか。
このポイント、何に使う?」
結局アレは何だったのか?
案の定、例の場所に再度足を運んでも森はそんな物騒な顔をしてはおらず、鳥たちの声が響くばかりなのだった。
ファミチキください
【GOOD END】
でもそのお陰で車は戻ってきたか……
多分これが佐倉の特性で、ある程度の余裕がないと実力出せないタイプだからいつも逃げ道探してるんだろうな。
だから余計に面白がられて余裕を奪われちゃうのかもしれない。
今回ファンブル出したの波照間さんだけなんだな。変な偏り方してる。
なるほど今後も唐揚げ食べていればいいんですね
なんですよね。波照間がファンブル一度出しただけで牧志も佐倉さんもクリティカル連発。
やっぱり唐揚げの加護では。
1d100 79〈聞き耳〉 Sasa 1d100→ 53→成功
1d100 79〈聞き耳〉 Sasa 1d100→ 34→成功
〈聞き耳〉は無理!
【幸運】は魂の叫びだったので、説得で。
1d100 17 説得 Sasa 1d100→ 8→成功
あらあら。
変動なしおわり。
【幸運】は森に蠢くものから逃れようとして出したものだし、牧志も波照間も〈隠れる〉で行きます。
ファミチキ【アイデア】クリティカルの分はどうしよう。
お、いいのがあった。
牧志のファミチキ【アイデア】クリティカルは〈製作:肉料理〉を上げます。
自作せずにファミチキ食えということか。
1d10 上昇
Sasa 1d10→8
1d100 22 牧志の〈隠れる〉 Sasa 1d100→ 72→失敗
1d10 Sasa 1d10→2
牧志は〈隠れる〉14→24。
1d10 Sasa 1d10→7
波照間は〈隠れる〉10→17。
で以上でございます。
「ファミチキくださいとしか喋れないんじゃないか」は合ってたんだなぁー。
あのあと無事ファミチキゲットしたもとおじさん、どうなったんです??
自分にファミチキ供えるつもりでいたら、おじさんに供える結果になるとは。
あの描写でニャル様関連だろうなーとは思ったけど、間におじさんが挟まっていたとは。
なんというタイミングだ。
波照間さんには普通霊障ボリュームでひっそり聞こえてた。
そして牧志のタイミングが悪すぎてスルーできちゃって、佐倉さんだけストレス溜めることになったと。
ビヤーキーにショゴスwwwいるwwww
ファミチキ狙ってくるショゴス面白すぎる。見た方はそれどころじゃないけど。
あれクマに見つかってたらどうなってたんです? 死???
神話生物も攻撃はしてきません。
ここにおいて価値あるものはファミチキただ一つなのです。
途中でファミチキなくなっちゃってたらどうなってたんです?
足りないもしくはあげない場合はBAD ENDです。
ストレスで佐倉さんが爆発する! 胃袋やら異界やらファミチキやら、牧志から日常生活が遠ざかってしまう!
なんで例の場所近くだったかって言えば、色々呼ばれたりして縁が色々絡んでる場所だし、ロアさんも来たことあるしで、あいつもちょっかい出しやすい場所だったからですね。
呼んだ探索者がどんな顔するか見たがったんじゃないですかね。
今回のヤツは完全に愉快犯だから。
茶番系シナリオも意外にニャル様じゃなかったりしたし。
今回は愉快犯ニャル様だった分、牧志が「いつも以上にわけわからんな???」ってなった。
しかも今回はあんまり堪えてない牧志と温度感が違ってしまっているし。
初回に何か決定的なのやられたんでしょう。
なお、元ネタは沖ツラ(沖縄で好きになった子が方言すぎてツラすぎる)でございます。>つがツラ
あまりの精神ガードの高さで「普通に話しかけても聞いてもらえなかったので、ガードが緩む隙に話しかけた」が正しい。
その結果タイミングが悪い時にばっかり話しかけてしまい、おじさんに悪気はないのに佐倉さんが最高に怒ることに。
もう一人には声は届いてるっぽいのに何故か届いていないかのような反応されるしー
牧志sも聞いてはいたとおもいますが、波照間さんと同じでチューニング合うのに時間がかかったんだと思います。彼ら一日しかいないからほぼ気付かなかった。
浦西はね、なんか、アンテナが合ってたんじゃないかな、デムパに。
弁解したいのに喋れない!
牧志、【POW】-1されるほどのこれをスルーできてしまったのは、異界の干渉が相当強かったんだろうなぁ。
日常生活できる程度に弱まるまで一週間かかっていたのでは。
途中の牧志の〈心理学〉はやっぱりファンブったんですか?
折角のギャグシなので大袈裟表現したらあんなんなっただけです。
ファミチキへの愛を唐揚げシンパシーで読み取ってしまった!
しらんけど。
あの分解事件からは数ヶ月経った想定ですから、随分薄まっているはずではありますが、その分変な信号の流入に慣れちゃって、オートで無視してるんじゃないかなと……
もう変なものが見えたり聞こえたりするのに完全に慣れちゃったかー。
聞こえているのが同じものなのかどうかよくわからない!
でも今回ちゃんと(?)事件だったわけで、牧志はまた佐倉さんの様子を細かく聞くようになると思います。
別の問題に紛れて異変をスルーしたせいで大事件になったこと、前にもありましたしね。
セール中にファミチキ食べときたいなー、などとおもった今回の置き卓でした。
ななチキはなんか違うじゃない!
土日に何とかファミチキ食べようと思います!
病にやられていたせいで絵ができてませんッ
がんばれば明日には何とかなるかな。
病み上がりですし、無理はなさらず
>次回
ちょっと今回のシナリオからの連想で回したくなった茶番シナリオがありまして、そのシナリオがこれまで牧志たちと絡んでいない神話生物がチラ出するんですね。
それを先に回して、その間に絵を描いていただくのもありかな? と思いますがどうでしょう。
お願いします! なんだろう。
確かに親和性は高いなぁ
(内容は知らないけど)
あ、と思ったら一度だけ絡んでるか。>神話生物
差支えがなければノリノリで真夜中の悪事を決めてしまうシナリオこのまま回そうと思います。
いつから始めましょう?
チャンネルだけ作っておきます。
ファミチキ楽しかったー!
楽しかった! ありがとうございました!
ファミチキたべたくて仕方なくなっちゃうんですよねこういうの置き卓でやるとさぁ!
実はこのシナリオやっている頃体調崩してたのでチキンどころじゃなかったのでした。ファミチキください!!
※終了後体調が少し回復した頃に食べた。
【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
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PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」
TRPGリプレイ【置】CoC『えっ? 手のひらから唐揚げ出せるんですか?』 佐倉&牧志(塔) 1
「クイ……テー……カラ……アゲ……
喰いてぇ……唐揚げェっ!
ニクやマガツヒと違って唐揚げは来ねぇんだよ……どうして唐揚げは来ないッ!」