世界樹の迷宮を彷徨う者たち
フォレスト・セルは破壊され、迷宮の謎の全ては明かされた。もうここに冒険者が集うこともなくなるだろう。シェルナギルドはその役目を終えた。
冒険者ギルドに集い、思い出話に花を咲かせるギルドメンバー。
夜中を過ぎた頃、ルシオンが静かに口を開く。
冒険者ギルドに集い、思い出話に花を咲かせるギルドメンバー。
夜中を過ぎた頃、ルシオンが静かに口を開く。
ルシオン
「皆さん、リーダーとして、ギルドの解散を宣言します。
今まで本当にありがとうございました」
今まで本当にありがとうございました」
ラピス
「……そう」
バルロンド
「潮時か」
キリク
「淋しくなるな」
ユディト
「……ええ」
チェ=パウ
「そっかぁ、目的なくなっちゃったもんね」
ルビー
「なくなった、というより、それぞれにやるべき事ができたからね。前向きに考えようじゃないか。ねえ? ジンライ」
ジンライ
「……ゴホン。まァなんだ、出会いあれば別れもまたありってな」
チェ=パウ
「エトリアにいればまた会えるよ~」
ラピス
「そうよね。
私はもう少しキタザキ先生に教えを請おうと思うの。新しい素材はこれ以上なくたって、技術を高めることは出来るはずだわ。
姉さんは?」
私はもう少しキタザキ先生に教えを請おうと思うの。新しい素材はこれ以上なくたって、技術を高めることは出来るはずだわ。
姉さんは?」
ルビー
「さァねぇ、どうする?」
ジンライ
「しばらくは遺跡探索かねェ」
ルビー
「ジンライの気が済むまでは付き合おうと思ってね」
ラピス
「……そう。たまには帰ってきてね」
ケイン
「へー。いつの間にそんなことに」
ゴート二世
「遺跡、ねえ。ルビーに気苦労かけんなよ」
ジンライ
「過去に拘って遺跡に引きこもろうってんじゃァねえさ。俺の記憶が、その、なんだ、エトリアの役に立つってんなら、一肌脱ぐのも悪かねぇ」
ルシオン
「そうですか、良かったですね」
キリク
「……うん、本当に良かった」
チェ=パウ
「ユディトはどうするの?」
ユディト
「執政院で働けたら良いと思っています」
チェ=パウ
「え、それはまたなんで?」
ユディト
「私は、迷宮を訪れる冒険者に頼らずとも繁栄できる道を探そうと思います。それが深淵をのぞいた者の役目のような気がいたしますから」
ケイン
「そうか。色々考えてんだな。
……まさか執政院でもその格好?」
……まさか執政院でもその格好?」
ユディト
「ケイン」
ケイン
「冗談だって、冗談。お前、テラー系の呪いはやめたんだろ」
チェ=パウ
「あたしはもう少しここで歌っていたいな。みんなにも会いたいし。
ケイン君は?」
ケイン君は?」
ケイン
「オレ? そうだな、もう少し迷宮の中を探索して、モリビトのことを調べてみようと思うんだ。
シェルナギルドが解散するなら、新しくギルド立てようかな」
シェルナギルドが解散するなら、新しくギルド立てようかな」
ラチェスタ
「ケイン、レンジャーが必要なら言え」
ケイン
「お、マジ? 手伝ってもらおうかな。
なー、バルロンド、もし良かったらさ」
なー、バルロンド、もし良かったらさ」
バルロンド
「済まないが、冒険者家業からは足を洗うつもりだ。
だが、探索以外で役立てることなら協力は惜しまん。いつでも声をかけるがいい」
だが、探索以外で役立てることなら協力は惜しまん。いつでも声をかけるがいい」
ケイン
「そうか。なんでやめちゃうんだ?」
バルロンド
「……生まれたんでな」
ケイン
「ん?」
バルロンド
「子供が生まれたのだ。何かと忙しくてな」
ルシオン
「そう! おめでとう!」
ゴート二世
「マジかよおい! 良かったな!」
チェ=パウ
「わあ、お祝いしなきゃ!」
ルシオン
「私は旅に出ますので、本当にお別れですね」
ゴート二世
「俺も」
キリク
「僕も旅に出ようかと思っているんだ」
バルロンド
「そうか……ルシオン、帰るのか?」
ルシオン
「ええ、一度戻ろうと思っています」
ゴート二世
「ったく、そんなのブッチしちまえばいいのに。クソマジメなんだから」
ルシオン
「そういうわけにもいきませんよ」
ラピス
「故郷に帰りづらい理由でもあるの?」
ルシオン
「ええ、まあ」
ゴート二世
「オジョウサマは大変だよな」
チェ=パウ
「お見合いとか?」
ラピス
「! セカンド、素直にならなきゃ駄目よ」
ユディト
「いつも共にあるからといって油断してはいけませんわよ」
チェ=パウ
「そうだよ。がんばって! みんなで応援するから!」
ゴート二世
「何言ってんだてめーら」
ジンライ
「キリクは帰るのか?」
キリク
「いずれは。しばらくは自分の力を試してみようと思っているんです。姉に家のことは大丈夫だから帰ってくるなって言われました」
ジンライ
「そうか、帰るところがあるってのはいいモンさ、大事にしな」
キリク
「はい」
チェ=パウ
「そうかぁ、いなくなっちゃうのかー。淋しくなるね。折角仲良くなれたのに」
キリク
「たまに手紙書くよ」
ラピス
「こうやってみるとみんなばらばらね」
ルシオン
「大丈夫。ギルドという囲いがなくなっても、私たちはきっと繋がっているのですから。
また会えますよ。いつか、どこかで」
また会えますよ。いつか、どこかで」
数日後、エトリアから続く街道、分かれ道にて。別の方向へ行ったキリクの背を見送りながら。
ルシオン
「また二人になりましたね」
ゴート二世
「ああ。いい奴らだったな」
ルシオン
「エトリアは、みんながいればきっと大丈夫ですね。
さて、私たちも行きましょうか」
さて、私たちも行きましょうか」
ゴート二世
「……どうしても戻るのか?」
ルシオン
「ええ、オジョウサマは大変ですから。お見合いが待っているんしょうか? 政略結婚の役に立つ自信ないです、私」
ゴート二世
「冗談はいい。お前の任務って、フォレスト・セル絡みだったんだろ。で、命令違反する気満々だ。……図星だな?」
ルシオン
「……とっくにしたよ、命令違反。フォレスト・セル、調べないで壊してしまった。
はぁ、今から報告のことを考えると気が重い」
はぁ、今から報告のことを考えると気が重い」
ゴート二世
「資料ならバルロンドが……」
ルシオン
「あれならうっかり破棄しちゃった。書類では残っていないんだ」
ゴート二世
「二人で何か随分話してんなと思ったらそんな事してたのか……」
ルシオン
「あんな物を地上へもたらしてはいけない。
きっと神も分かってくださります」
きっと神も分かってくださります」
ゴート二世
「神がどう言ったってエライさんが納得するかよ」
ルシオン
「しないだろうな。永遠の命、脅威の生命、握ればどんなに力になるかわからないし」
ゴート二世
「しないだろうなってお前……」
ルシオン
「それでも、私は私に背くわけにいかないから」
ゴート二世
「この不良聖職者……」
ルシオン
「誰かさんの影響かな」
ゴート二世
「しょうがねーなぁ、付き合ってやるか」
ルシオン
「頼りにしているよ。
正直、エトリアに来た時より怖いんだ。それでもフォレスト・セルを壊そうと思えたのも、戻ろうと思えたのも、きっとみんなと会ったから。
そしてあなたがいたから。ありがとう」
正直、エトリアに来た時より怖いんだ。それでもフォレスト・セルを壊そうと思えたのも、戻ろうと思えたのも、きっとみんなと会ったから。
そしてあなたがいたから。ありがとう」
ゴート二世
「俺が勝手についてってるだけだ、礼なんか言うな」
ルシオン
「言いたいから勝手に言っただけ。
全部終わって、もし私がまたあなたと会えたら、また旅にでも出ようか。その頃にはきっと身軽になっているから」
全部終わって、もし私がまたあなたと会えたら、また旅にでも出ようか。その頃にはきっと身軽になっているから」
ゴート二世
「……そうか。そうだな。んじゃ、行くか」
ルシオン
「行きましょうか」
END
お付き合いありがとうございました