こちらには
『骨組みだけの宇宙』『鬼面夜行』のネタバレがあります。
佐倉 光
サマナーで悪魔退治屋。ハッカーでもある。
基本、知性・理性・効率、そういったものを重視する冷静な青年。
悪魔を召喚して戦う。契約中の仲魔はラミアとマカミ。
とある事件より、体中の痛みに悩まされているが、桜色の勾玉により少し改善した。
巻き込まれ体質らしい。
最近記憶障害が完治したばかりなのだが、今度は牧志への奇妙な執着に囚われている。
牧志とは友人。
牧志 浩太
お人好しで温厚、だが意思は強い好青年だったが……。
とある事情で二年より前の記憶の大半を失い、代わりに悪魔使い波照間紅の記憶を持っている。
首から胸へと続く奇妙な【契約】の痣がある。たまに痛むという。
生贄体質らしく、事件に巻き込まれることが多い。
佐倉とは友人。
シロー
とある事件以来、特殊な事情のため二人が面倒を見ることになった少年。
超美形で類い希な理解力と知性を有する。
年齢は7歳程度。生育環境が特殊だったため、一般的な教育を受けていないので、言語が年齢の割に幼い。最近になって急に一般的な生活を送り始めたので、外界への興味が強い。
※あれからの佐倉さんを見たいので、少し導入を長めにします。
よろしくお願いします!
よろしくお願いします!
あれから、あなたはどこで、どう過ごしていただろうか。
手の中で危うく力強く鼓動する肉の感触が、あなたの両手をいっぱいに染める生温い血の感触が、
あなたの腕を振り払おうと暴れる彼の手足をへし折ったあの音が、今もあなたの肌に、耳に残っている。
そして、それを食べたいと望んだあなたの感情が、胸に残っている。
公園、ビルの裏、物陰に転がり込むようにして、うずくまっていた。
こんな時に逃げ込みたい異界も、近くには見つからなかった。
いっそ魔界に降りて悪魔と殴り合っていた方がマシだっていうのに。
牧志の血を浴びた服はとっくに処分して、体も洗ったのに、いまだに血臭がする。
毛穴の一つ一つにまでにおいが染みついて、とれない。
いつもならこんなもの、一晩眠れば忘れてしまうのに。
折れる骨の音も、肉を抉る感覚も、日常だったはずなのに。
いつだってそんな物が見え、その中で牧志が死んでいる。
それを貪り食おうとして、目が覚める。
いつ眠っているのか、起きているのかも良く分からない。
食べたかった。食べたくなどなかった。
食べたいわけじゃなかった。それならどうしたかったんだ。
いっそ牧志の事を忘れてしまえばいい。
少し前までそんな事も日常だったはずなのに、どうして今は牧志の事が頭から離れてくれないんだろう。
恐らく狂っているのは牧志に対する認識だけなのに、どうしてここまで何もかもが上手く行かなくなってしまっているんだろう。
一週間そんな風にして、なんとか動ける程度まで回復した。
体調も気分も最悪だ。明らかに風邪を引いた。
このままだと死にそうだと思ったので、最低限、ベッドに寝る事にはした。
新しく覚えた魔法も便利だ。風邪も治る。死ぬほど疲れるけど。
ああ、俺は大分まいっている。随分とまずい状態にある。
会わないと本格的に壊れるかも知れない。
会ってしまったら、取り返しがつかなくなるかも知れない。
わからない……
夢には必ず牧志が出てきた。
その中で彼は死んでいたり、生きていたり、失われかけていたり、何気なく歩いていたり、
沈んでいたり、浮かんでいたり、あなたのことを知らなかったり、知っていたりした。
食べようとして目を覚ます夢。食べてしまって目を覚ます夢。
あなたは、そんな夢も見た。
衝動に耐え切れず、心臓を食べてしまうのだ。
弾力のある肉はあなたの口の中で、あるときは彼の怖れと嘆きをぶちまけて破裂した。
またあるときは、穏やかな声を残して潰れた。
口の中いっぱいに血臭が満ちて、人間ひとりぶんの血肉をあなたの腹に注いだ。
目の前で、標本にされた蟲のように痙攣する身体が動かなくなった。
転がっている牧志と目が合った。
何か問いかけられた気がした。
答えられなくて、喉が詰まった。残らず吐こうとしたが、もうそれは俺の中にこびりついていて、とれなかった。
これは……違うな。
ガキみたいに泣きながら目覚めた。
鏡を覗けば窶れ果てた鬼のような何かがいた。
現実で俺は牧志を食っていない。それだけはあの男に感謝すべきだ。
ある意味で現実なのかも知れない。
俺は夢の中に牧志を作り出して殺しているのかも知れない。
現実の牧志を殺さないために?
そのぶん、波照間さんにしつこいほど頼んでおいた。あと東浪見とシローにも。
少なくとも、今のこのわけの分からない衝動が収まるまでは会うのは危険だと思う。
そろそろ仕事をしないと色々な意味で死ぬ。
腕輪を通して、栄養ドリンクを流し込む。
大丈夫、暴れていれば少しはスッキリするだろうし忘れられるだろう。
人間のような形をしたもの、人間だったかもしれないものが、あなたの行く手を阻む。
あなたの事情を知っている波照間は何も言わなかった。
他の悪魔使いが怖れるようにあなたを避けた。
一家四人殺してきたばかりって面してるぜ」
横に立つ悪魔使いが、引きつった顔で軽口を叩いた。
ゾンビ退治にいちいち感情を持ち込む方がどうしているじゃないか。
雑にゾンビの胸を吹き飛ばす。
ゾンビの腕を吹き飛ばす。
ゾンビの足を吹き飛ばす。
頭だけ残して粉々にする。
こんなの食いたいなんて思わない。
人間の形をしていようとなんだろうと単純作業だ。思考の入る隙間はない。
プチプチを潰すのとさほど変わらない。
残された頭が虚ろに目を剥いて転がった。
白濁した眼球が転がり落ちた。
何も忘れられていなかったことに気付く。
道理で思ったほどすっきりしていないわけだ。
単ににおいが最悪だからかも知れない。
それでも体を動かせば少しは気分が上向いた。気がした。
いつものように悪魔退治をし、思うさま暴れ回って、スッキリしただろうか。忘れられている瞬間があっただろうか。
枕元に置かれた備品のデジタル時計を見れば、もう真夜中だ。
少なくとも身体は疲れきって、眠りを求めている。
これだけ運動してあれば、夢なんかに捕まらずに眠れるだろう……
孤独で、冷たい、水の底へ。
とうとう意識を手放す直前、水の底から空気が抜けていく泡の音を聞いた。
投げ出されて宙を漂う手足を、柔らかな水が受け止めた気がした。
その感覚にはどこか覚えがあるような気がした。
そのまま沈んでゆく。
「骨組みだけの宇宙」
aki 様
そこは、あなたが望んだとおりの、静かな水の底だった。
あなたは眠った時と同じ人間のかたちで、水の底に立ち尽くしている。
足元にはがれきが散らばり、地面を覆い隠している。
視線を上げれば、遠くで色とりどりの魚たちが泳いでいるのが見えた。
その傍では、美しい珊瑚が波にまかせてゆらゆらと揺らめいている。
美しく、しかしどこか廃墟のようなむなしさを感じさせる世界だった。
しかし望んだ静かな世界だ。
水を呼吸する。
そういえばこんな事があったな。
あの時は水を呼吸できるようになってしまった自分に恐怖したっけ。
いっそこんな現実とかけ離れた異界にいるなら、全て忘れられるかも知れない。
廃墟に見覚えはないかな。
あなたの背後で不意に、がしゃん、と小さな物音がした。
振り向く? 振り向かない?
攻撃態勢で左腕に触れながら振り向く。
人?
違う。あなたがその人を見紛うわけはなかった。
そこに倒れていたのは牧志だった。
苦しげに顔を歪め、手で喉元を押さえていた。
その眼が数度瞬きをし……、あなたを見た。
本編見る!
吸えていると思った水を、吸うことができない。
吐き出した息が泡になり、水の上へと昇っていく。
それは覚えのある感覚だった。
息が、できない。
しかし、あの時とは少し違っていた。
あなたは息を吐く。泡が立ち上る。息を吐く。息を吸う。肺がつぶれるばかりで、息を吸えない。どれだけ吐いても、吸えない。
その異変は、彼を見たあなたを罰するように肺を痛ませた。
思った瞬間、胸に痛みが走った。
胸をかきむしる。このままでは溺れてしまう。
目の前であなたを見つめ、苦しげに喉元を押さえていた牧志が、縋るようにこちらに手を伸ばしてきた。
はく、はく、と。まるで水面から顔を出す魚のように、何度も口が開閉する。
震える指先が宙を掻く。
身体を不規則に震わせ、唇を青白く染めながら、彼はあなたに助けを求めていた。
いつも、そうするように。
それとも。
周囲を観察。する余裕あるのかなぁ。
牧志の様子を確認するなら、
▽〈目星〉〈聞き耳〉【アイデア】それぞれ別情報。
苦しみの中でも恐ろしいと感じた。
しかし牧志と一緒に上へ浮き上がって、空気を……
駄目だ、ここの水には浮けない!
1d100 98〈目星〉 Sasa 1d100→ 16→成功
1d100 79〈聞き耳〉 Sasa 1d100→ 64→成功
1d100 85 【アイデア】 Sasa 1d100→ 41→成功
あなたは気づく。彼の口からは、あなたと違って泡が吐き出されていない。
彼がもがく度に足元のがれきが音を立てた。自分の心臓の音がやけに大きく聞こえる。
その中でも、彼が空気を求めて、何度も何度も短く息を吸う音ばかりがあなたの耳に響いた。
あのとき彼の死を見たあなたは、気づいてしまう。
彼はこの静かな水の中で、いままた死にかけている。死にかけて、最後の力であなたの手を望んでいる。
1d3 Sasa 1d3→3
1d100 55SANSasa 1d100→ 75→失敗
1d3 Sasa 1d3→3
戻すと変なので、このまま行きます……。
しかしあなたはその苦痛に耐え、思考し、行動することができる。
俺と牧志が一つにでもならない限り……
その考えはあまりにも甘美で恐ろしい。
だがもう考えている猶予はない。
これがもし、理屈の通らない夢ならありうることだ。
牧志の所に駆け寄って触れる。
違う、あれはもう終わった!
あなたの指に冷えた指先の感触が食い込み、瞬く間に侵食していくかのような錯覚。
あなたの手を、牧志が強い力で掴む。
潰れかけていた肺が俄かに膨らみ、噎せ返りそうになるだろう。
全く現実的じゃない。冗談じゃない。思考が乱れて暴れる。
あなたの口からあなたの意によらず息が吐き出され、泡がいくつもいくつも水の上へと昇っていく。
あなたは傍らの身体を通じて呼吸ができていた。
彼は傍らのあなたを通じて呼吸ができていた。
あなたは恐ろしいことに気づく。
これでは、手を離すことができない。
呼吸は戻ったのに苦しい。
てをつなぐ
しかしこれで牧志の〈応急手当〉ロールチャンスが!
体をばらばらになりそうな激痛が襲っている。
呼吸困難のためだろうか。
いっそこのまま砕けて溶け崩れて、いつかの夢の牧志のようになってしまえば楽なんじゃないかと思えた。
ほとんど牧志に抱きつくようにして縋って苦痛に耐える。
牧志の声が少し震えてあなたを呼んだ。
あなたの背に反対側の手を伸ばし、その背をさすろうとして、少し、躊躇う。
その躊躇いはあなたから逃れたいのではなく、その手があなたを苦しめないかと思ったがためのようだった。
躊躇いを含んだ手があなたの背に伸ばされ、名を呼ぶ声とともに、戻りつつある体温をゆっくりと伝えてくる。
1d100 59 〈応急手当〉 Sasa 1d100→ 73→失敗
手の中で震える肉塊を思い出した。
食いたいと思ったことを思い出した。
夢の中でその血を啜って飲み下したことを思い出した。
互いにできることが違い、手を繋ぐことで共有している。
どんな理屈だか分からないが、こんなの、地獄だ。
言葉と裏腹に、目を逸らして恐れるように呟いた。
あの時は、ありがとう。逃げたりして、怖がったりしてごめん」
彼の体温は戻りつつあり、あなたの手に柔らかい熱を伝えた。
その奥に微かに心臓の鼓動を、脈を感じた。
水の中で良かった。
どこまでも貪欲にそれを感じたいと思うと同時、そうあってはならないという強い罪の意識を感じる。
佐倉さんがいてくれて、よかった」
あなたと手を繋ぐ牧志の声に怖れはなく、柔らかい安堵と喜びと、それから会えたことを喜ぶことへの、引け目のような意識が宿る。
と思ったのはめちゃくちゃ泣いてたからです。泣いてもばれないはず!
(声で分かりそう)
確かに、直前に寝たような記憶がある。それで起きたら水の底なんだから、普通に考えたら夢だよな。
最近ちょっと、何を普通に考えればいいのか分からないけど」
運良く見ていた。
運良くあの男が対処法を知っていた。
運良く食わずに済んだ。
運良く牧志が生き残っていた。
目が合わせられない。
俺はおかしい。今度こそ」
噛み殺した言葉の代わりに手を強く握った。
そう、早く終わらせればいい。
そうしたらまた離れられる。
微かに彼の周囲の水が揺れる。
牧志はあなたと握った手を見て、困ったように笑ったようだった。
握った手に籠もる力が、少し強くなる。
持ってないかな? こちらも自分の状態を確認する。
また、周囲の状況を今度こそ落ち着いて確認しよう。
靴も履いており、がれきを踏んで足を切ってしまう事もないだろう。
荷物や持ち物はない。ただ、ペンダントは変わらず身に着けている。
牧志も同じ状態のようで、いつもの見慣れたジャケット姿だ。
彼は、真珠色の鱗がついたブレスレットだけを身に着けている。そういえば、そのブレスレットは見たことのないものだ。
今更驚くようなことでもない。
今までにも何度もあった。持ち物は……お守り系だけか。まったく有り難いね。
牧志もなにかお守りのように見える物を身につけているな……
なんだ? あれは。
気にはなったが、話しかけるのに躊躇した。
佐倉さんがブレスレットを見たことがないのは、前回終了後(牧志の監視やめてから)に加工したためです。
佐倉さんからすると「なんか突然見慣れないもの持ってる」になるけど。
それは、一枚の折り畳まれた紙だった。
紙きれに気付いて引っ張り出してみる。
何だろう?
折り畳まれており、何かの絵が描かれているような面をこちらに向けている。
あなたの動きに気づき、紙切れに視線を向ける。
答えて、紙を……片手、しかも左手では広げにくいな。しばらく格闘する。
紙が広がり、中の丁寧で穏やかな筆跡で書かれた文字があなた達の目に触れる。
ここは、深い深い海の底。
かつて大切なものを守り損ねた、亡者の墓場。
彼らの後悔は、それぞれの“力の象徴”に宿る。
傷ついた魂を、どうか救ってあげて。
俺自身が傷だらけで人のことなんか構っていられないんだ。
今だってまともに物が考えられないというのに。
あなた達はまだ、手を繋いでいられる。
深いため息をつく。やるしかないだろう。
変な時に会っちゃったな。
もうこんなことにも慣れたけど、何も今じゃなくてもよかったのにな」
大体は俺達は悪くねぇんだよ……!
牧志があなたの手を握る力は少し強く、その手は温かい。
冷静に、そう、協力、して……
手の温かさをどう受け取っていいかまだ分からなかった。
今回は牧志を傷つけるかも知れないから早く離れたい。
状況は似ているが全然違うな。
あと、離したければ離せるな。たぶんふたりとも死ぬけど。
紙を裏返せば、そこに描かれていたのは何かの図だ。
紙の上部には「N」、下部には「S」と書かれており、「S」の方に小さな点が描かれている所からして、自分たちが立っていた場所が南側なのだろうか。
また、反対側、北側に扉のようなものが描かれている。
そのへんに「順路」とか書いてあるんじゃないのか。
投げやり気分で周囲を見回す。
あなた達のいる場所を覆うように、何本もの太くて白いアーチが床から天井まで伸びている。
それは、巨大な骨のように見えた。
あなた達はそのアーチの端にいる。
また、足元だけでなく、アーチの内側全体にたくさんのがれきが散らばっていた。図で言えば北の方なのだろうか、ひときわ大きながれきの山がある。
アーチの隙間からは外の様子が見え、その先では色とりどりの魚が泳いでいる。
その傍では、美しい珊瑚が波にまかせてゆらゆらと揺らめいていた。
珊瑚の傍にはたおやかな花が咲き、果実が実る木が見える。
海の底のような、地上のような、奇妙な光景だった。
そして、“力の象徴”って奴を探せばいいんだ」
いつか溺れかけた水族館をふと思い出した……
あの時も牧志に助けられたな。
そういえば海の中を延々と泳いでいたような気もする。
夢か何かか。果てない海を彷徨い続けていて、諦めかけた頃に牧志と会った気がする。
海の想い出には碌な事がないな。
大きなトンネルがあって、上に魚が泳いでるやつ」
困惑するような沈黙の中、言葉を探りあぐねていた牧志が上を見上げて、ふと発した。
意外と大丈夫、だったのかもしれないし、症状が落ち着いている時期なのかも知れない。
無意識に呟いていた。まだ、顔はまともに見られない。
鯨の骨か何かだろうか? それっぽく見えるだけかな。
白いアーチは等間隔に置かれ、奥に行けば行くほど大きく広がっている。
そういえば、海の底だというのに、この一帯は明るい。
見ればアーチがほのかに発光し、この一帯を白く照らしていた。
アーチをよく見るなら
▽〈目星〉または【アイデア】。
本当に骨なのだろうかと考えるのならば
▽〈地質学〉または〈医学〉。
アーチを見上げた。
〈目星〉を行う。
骨に関しては〈医学〉で考える。
1d100 98〈目星〉 Sasa 1d100→ 44→成功
1d100 21〈医学〉 Sasa 1d100→ 96→致命的失敗(ファンブル)
大丈夫だと思ったのにもうダメになっちゃったかー。
1d100 1〈生物学〉 Sasa 1d100→ 83→失敗
それを見ていると、不意に意識の中に赤い色が瞬いた。
赤い色。一面赤黒く染まる中、もがき暴れる腕を蛇の尾が掴む。
耳を覆いたくなる程の破砕音。
ぬめる肉の中から突き出した、唐突な、白い色。
目の前の青年が、砕かれた肉になってゆくところ。
あなたは、思い出してしまう。
ありありと。握った手の中に、今も生温かい肉の感触があるかのように。
《SANチェック:成功時減少 0 / 失敗時減少 1》。
目の前のものが見えない。見えるのは掌で蠢く赤い塊だ。
手放さなきゃいけない。そうしないと、食べてしまう。
右手を開く。
悲鳴と共に瞬く間に空気が泡となって出ていき、激しい息苦しさがあなたを襲う。
佐倉さん、そう彼の唇が動いて声にはならなかった。
もがくようにあなたの手を掴もうとする。
HP 8 → 7
1d3 Sasa 1d3→1
失敗してたらかじってたかな!
牧志の手の方へ手をのばす。
互いの身体を通して空気が行き来し、あなたの肺を膨らませる。
佐倉さんは俺を助けてくれた。殺したりしてない」
あなたの手を握りしめながら、牧志はその上に声を降らせる。
どうしたらいい。
なんだか体がだるい。微熱が出ているかもしれない。
後で魔法か何かで治さないと……
それこそ佐倉さんは悪くない。こんな、よく分からない異変が悪いんだ。
……大丈夫だよ。今の佐倉さん、COMPも持ってないし、刃物とかもないだろ。
あの時と違って、俺もちゃんとしてる。手を握ってても大丈夫。
だから、いつもみたいに話そうよ」
大丈夫? 大丈夫だって?
ゆっくり呼吸をする。気を落ち着ける。
全く大丈夫だとは思えなかったが、
牧志の言う通り、危害を加えられる要素はない。
ひとまずは問題にならないはずだ。
握った手を見つめてぽつりと答える。
あなたに無理をさせていると分かるのだろう。
また謝罪が口をつきそうになったのか、口元が震えた。
呼吸を共有しているためか、その僅かな震えがあなたの身体で感じ取れた。
強欲
情報色々あるんですが、会話もしたいのでゆっくり出していきます。
佐倉は今「はやく終わらせたい」と思っているので性急に動きますけど、あんまり気にしなくて良いです。
佐倉さんは牧志と手を握っていなければならないだけで大変だもんな。
正直呼吸共有している時点でひとつの存在になっているといえなくもないので、それに気づいたらたぶん少しは落ち着く。
(同じaki様のシナリオでめちゃくちゃ不穏なシナリオ見つけちゃったんだよなぁ)
落ち着いた後で行っても十分ひどいはなしだと思うのであれ。
むしろ今確認した感じ、落ち着く前に行ったら合致しすぎて大変なことになりそう。
直径50cmはあろうかというその巨大な骨の根元に、白い粉が溜まっている。
発光する骨が海水を僅かに蒸発させるほどの熱を発し、塩を溜めているのだ。
そのおかげで冷えないで済んでるのかな」
その冷気は、どうやら背後から漂っているようだった。
振り返れば、自分たちの背後を閉ざすアーチは発光しておらず、ひやりと冷たい。
その向こうには真っ暗な闇が広がっていた。
この光が、辛うじてあなたたちのいるところを守っているようにも感じられた。
ここが人間のいられる場所ではなくて、互いに手を離せば死んでしまうであろう状況であることがゆっくりと染み込んできた。
はくり、と数度口が開閉する。
話そうと言ったくせに、何を話していいのか分からないようだった。
それしかないみたいだ」
苦笑する。
手に取れそうな程の距離に咲く花や果実を前景に、美しい海を背景に、その風景は幻想的な色合いを形作っていた。
▽〈目星〉で判定。
咲いている花は青く、小さな5つの花弁を持つものだ。
実っている果実は緑色の柑橘類で、いかにも酸味が効いていそうだ。
素直な感想が漏れた。
人間が存在すべきではない世界の風景は、背筋が寒くなるほど恐ろしくも美しい。
牧志がぽつりと呟く。
そこには、「人に似た何か」が何体も海底を闊歩していた。
背中を大きく曲げ、大きく離れた二つの目がぎょろぎょろと周囲を見渡している。
水かきのついた手が水をかき分け、それに合わせてえらの様な部分が、ひくりと開閉した。
その生き物は、への字の口を大きく開いたかと思うと、辺りを泳いでいた魚を、ばくん! と丸呑みしてしまった。
人のような、魚のような。
あなたはそれを見たことがあったし、何なら、近しいところへ行きかけたことがある。
この世界は美しくこそあるが、やはり人のあるべきところではない。
《SANチェック:成功時減少 0 / 失敗時減少 1D4》。
その手首で真珠色の鱗が揺れた。
よく覚えていないながら、何が起きたかは何となく知っている。
あれになりかけていたのか、と改めて思うと、牧志に救われていたことを嬉しいと思う。
なにも安心できる状況ではないのだが。
1d100 85【知識】 Sasa 1d100→ 77→成功
ヨーロッパ原産の花で、輸入は明治時代。名も、英名の「私を忘れないで」をそのまま当てたものである。
考えるだけ無駄かな。水中で呼吸できるなんて訳のわからない状態なんだ。花くらい咲くだろう。
夢の中っていうの、合ってるのかもしれない。
最近、ただの夢じゃない夢を見過ぎて、何が現実なのか分からなくなりそうだ」
あんまり詳しくない。
そして、牧志の隣にしか俺の居場所はない。
人に合わせるなんて事をするのも久し振りだ……
気が進まなかろうがなんだろうが、動かなければ死ぬ。
恐らくそういうところだ、ここは。
※前に進みます。
流木、空き瓶、ガラス片、金属片、その他雑多な物が山積しており、ごみ捨て場、あるいは漂着物の流れ着く海岸を連想させた。
先程の文章を読んだせいか、墓場のようだ、とも思えるだろう。
……そういえば、こんながらくたの山の中で、二人揃って燃やされかけたこともあった。
なかなか起きてくれなくて慌てたけどな……
その中で異彩を放つのは、がれきの山に隠れるようにして置かれた真っ白な扉だ。
がれきの山の後ろに置かれたそれは、しかし埋もれてはおらず、開けようと思えば開けることができそうだ。
どこでもドアー! なんてことはないだろうなぁ」
ドアをよく見る。
扉には何か文字が書かれている。
「心残りは、もうない?
扉を開くことができるのは、一度だけ」
牧志は一度、あなたの顔を振り返る。
あなたの、焦り、あるいは苦しみを浮かべているだろう顔を。
確認したい
南側にあるのかと思ってたけど、意外とエリア狭い?
↑ ↑
骨 骨
骨 骨
骨 骨
骨 骨
骨壊壊骨
骨扉壊骨
骨佐牧骨
骨 骨
骨骨骨骨
こんなんかと思ってたけど
骨骨骨骨骨骨骨 木
骨 壊扉壊 骨 魚人
骨 壊壊壊 骨 花
骨 骨 魚人
骨 骨
骨 佐牧 骨 花
骨骨骨骨骨骨骨花
こんなの?
骨骨骨骨
骨扉壊骨
骨壊壊骨
骨 骨
骨 骨
骨 骨
骨 骨
骨 骨
骨佐牧骨
骨骨骨骨
こちらでも「描写だけだと位置関係わからん」をやってしまった! 失礼しました。
一番南側に最初立っていて、北の方にがれきの山が見える。
一番北まで行くと、がれきの山と扉がある。という感じです。
がれきの山をよく見るともうちょっと何かあります。
ボランティアがまだ終わってねぇな。
知ったことか、って開けたとして、碌なことにならない気はする」
ぐるりと見回す。
適当なガラクタを手に取った。
地図に書かれた扉はこの扉と大体位置関係一致するかな。
また、地図に何か描いていないかな。
何も無ければ、この近辺から歩きながらめぼしい物を……
手を離せないから手分けできないのだな。
せめて逆方向見て広めの視界を確保するしかないか。
不意に、キン、と金属同士を打ち鳴らしたような高い音が響く。
その耳障りな音に続くように、声が聞こえた。
『どうして、殺したんだ』
牧志の声、のように聞こえた。
『どうして、守ってくれなかったんだ』
あなたを責め、嘆く声だった。
思わず牧志の方を見る。
恐らく彼が発した言葉ではないと思いつつも、見ずにはいられなかった。確認せずにはいられなかった。
あなたの手を握る手に力が籠もる。
彼は苦しそうに引き結んだ唇を微かに動かして、声を漏らした。
『どうして、守れなかったんだ』
声は響く。それはあなたの声だった。
『お前が悪い。お前が弱かったから。耐えられなかったから』
『迷ったから』
『遅かったから』
それはあなたの声で牧志の声だった。幾重にも折り重なり響き返し入り混じる。
『俺が悪い』
『俺のせいで』
『俺の手が届かなかったから』
『お前が悪い』
『お前が仕損じたから』
『お前が』
『お前のせいで』
『『失った』』
無数の声はあなたを、自身を責め立て、喪失を嘆く。
重なる声には、様々な感情が入り混じる。
怨嗟、憤怒、悔恨、憎悪―――濁流のように押し寄せる負の感情が、あなたの手足を引き裂く。
傍らの彼は……、本当にそこにいるのだろうか?
《SANチェック:成功時減少 1 / 失敗時減少 1D3》。
また、▽〈聞き耳〉で判定。
1d3 Sasa 1d3→1
SAN 58 → 57
1d100 79〈聞き耳〉 Sasa 1d100→ 8→成功
SAN 52 → 51
そうかな? 自分の心臓を食おうとする奴になんか、幻滅するだろう、普通。
気持ち悪いもんな。
なんだ、これは、守れない……
あなた達を押し流そうとする声の波の中、牧志があなたの名を呼んだ。
助けられたぶん助けて、支えあって歩いてきたはずだ……
ああそうだ、守るなんてそんなの、傲慢だ。
声は、あなたの名を呼ばない。
声は傍らの牧志からでもあなたからでもなく、目の前に積もるがらくたの山の中から聞こえている。
それに気づいた途端、突然声が止んだ。辺りに、再び静寂が戻る。
木箱。
方位磁針。
空き瓶。
本。
それから……、ナイフ。
毒づいて、がらくたの中に光るものを見る。
紙切れに書かれていた言葉を繰り返す。
この中じゃあ、単純に考えてナイフだ……
唾を飲み込んで、我知らず乱れかけていた呼吸を整える。
拾い上げると、刃はひどく錆びてしまっているのが分かる。
本体は残っており、錆びを落とせば使えそうだが、この状態では胸を刺すこともできないだろう。
牧志は戸惑ったようにあなたの方を振り返り、そこにあなたがいることを確かめるような、心細そうな目をした。
1d100 51 《SANチェック》 Sasa 1d100→ 29→成功
ナイフを持ってもらったままでこちらも触れてみようかな。
『俺に敵を倒す力があれば、彼を失うことなんてなかったのに』
呟くような声は牧志のものより少し低く、堅い声に聞こえた。
その声は余韻も残さず消えていくが、あなたの身体にどうしてか、何かを失ったようなむなしさと恐れを残した。
《SANチェック:成功時減少 0 / 失敗時減少 1》。
SAN 57 → 56
その声が聞こえた後に、何だか空しくなって、たった一人になったような気がしたんだ」
だが何も持たない状態で俺に何ができる?
そのせいで牧志が死ぬことがあればどうする?
そんな仮定でぽっかり空いた穴に落ちるような心地がした。
ナイフから手を離して牧志の肩を掴む。
確かめるようにあなたの名を呼び、彼はナイフを足元に置いてあなたの腕を掴んだ。
呼吸と喪失感を、あなた達はしばし共有する。
半ば呆然とナイフを見下ろす。
ただ感情を押し付けられただけじゃないか。
消化しろっていうのか? 無関係な俺達に?
受け止めろ、ってことじゃないよな。話を聞いてやれってことかな」
牧志はナイフを手に取り、がれきの山に向けて声をかけた。
しかし、声が返ってくることはないようだった。
失ったのが人間で、当人ももう死んでいるんじゃあ、不可能だ」
空しさが満ちる。
取り戻せない。
彼がそれを口にするのを躊躇ったことが、あなたの胸の中で空気が揺らめいたことで分かった。
知は力。それならきっとこれも力の象徴。
本を拾ってみるかな。
表紙や背表紙には何も書かれておらず、タイトルや作者は分からない。
中はぐっしょりと濡れ、ページをめくれば破けてしまいそうだ。
読むことは難しい。
『俺にもっと物事を理解する力があれば、彼を失うことなどなかったのに』
その声はあなたの声のようにも牧志の声のようにも聞こえて、全く別人の声とも思えた。
その声はあなたの胸の奥に、胸の奥をかきむしるような喪失感を呼び起こす。
無力を嘆く言葉には軽い苛つきを覚える。
それを何とかしてくれ、っていうのが、さっきの人? の願いなんだろうし」
苛立ちを露わにしたあなたを宥めようとして、ふと、牧志は手元のナイフを見た。
どうしたらいいのか、見当もつかないけど」
こいつなら方向を指し示せるとか?
方位磁針を拾う。
本は【INT】や〈図書館〉
木箱は「は【CON】でやれれば」とかで。
方位磁針は〈ナビゲート〉、空き瓶は……【アイデア】? わからん。
普通に能力値な気はしている。
上蓋が外れており、針が頼りなく揺れているのが分かる。
よく見てみれば、針の赤い部分、N極が南側を、白い部分、S極が北側を指していることに気づく。
地図とは真逆の方位を示しており、どうやら磁石が狂っているのだと分かる。
『俺に安全な道を選ぶ力があれば、彼を失うことなどなかったのに』
……あなたの中に、奇妙な喪失感が降り積もってゆく。
こいつらみんな似たようなことで後悔してるんだな。
詳細はどうあれ、その時自分が無力だったと悔やんでいる」
木箱と空き瓶を見下ろした。
不気味さが遠ざかり、興味が湧いてくる。
空き瓶にどんな意味が込められているっていうんだ?
純粋な興味をもって空き瓶を拾い上げる。
コルクで栓がされており、よく見れば中に一枚の紙が入っているらしい。
コルクを外せば、紙を取り出すことができそうだ。
『俺に想いを届ける力があれば、彼を失うことなどなかったのに』
喪失感はいよいよ強まり、身体に穴が開いたかのように感じる。
なるほど〈交渉力〉とか【APP】かなー
強まるばかりの喪失感を埋めるように、牧志の手を無意識のうちに引き寄せていた。
1d100 85 【アイデア】 Sasa 1d100→ 25→成功
どこからか海に流されてここに来たわけではなく、ただここに沈んでいったのだろう。
それなら……この中の紙が、想い?」
当然のように牧志に瓶を渡してコルクを抜こうとする。
そこには、短い言葉がつづられていた。
その筆跡はあなたのものでも、牧志のものでもあるように見え、あるいはどちらのものでもないように見えた。
今までありがとう。
一緒にいられて幸せだった。
最後に、一つだけ言わせてほしい
(空白)
おそらく、この手紙は書きかけなのだろう。
つーか宛名書かないと、届けることもできねぇだろうが」
海に流そうとしたらやりそこなって落ちた、とか?
流しても、結局届けたかった所には届かない気がするけど……」
今の自分の内面を文章にしたらさぞグロテスクになるだろうし、それを目にすることで感情がよくない方に固まりそうだ。
軽く背筋が寒くなった。
牧志の唇が微かに動きかけて、あなたの中を音が通りかけて、やめた。
代わりに彼はあなたの手を握った。
しかし、気になるものは気になる。
木箱にも触れる。
ガラスの蓋がついており、中には綿が敷き詰められている。
また、白い綿に紛れるようにして、中には小さな骨が何本も入っていた。
どうやら骨格標本のようだが、骨はばらばらになり、何の生き物だったのか判別するのは難しい。
ガラスの蓋は、簡単に開けることができそうだ。
これも『木箱』ではないなぁ。
観察力、〈目星〉、【知識】?
『俺に正しい答えを導く力があれば、彼を失うことなんてなかったのに』
その声は、あなたの胸をつきりと痛ませた。
あなたの全身を掴んで下ろそうとするような、ひどい喪失感があなたを苛む。
一瞬、胸の空洞に牧志を押し込んで埋めたい衝動に駆られた。
呟いて耐える。耐える。
けれどこれは絶対に違う!
佐倉さんは何も失くしてない」
衝動に耐えるあなたの肩を牧志が掴む。あなたが普段そうするように、牧志はあなたの眼を覗き込む。
呟いて牧志の手を胸に押し当て、目を意識的に見つめ返す。
そうだ、俺達は二人の人間で、この状態が正しい。
牧志も俺も、互いのために生きているわけじゃない、ふたつの個だ。
深呼吸をして空気を巡らせる。
しかしこれは牧志が吸った『空気』だ。
今の俺達は本当に『個』であると言えるのか?
面倒なのは、俺の方だ。
落ち着いたことを明示するように呟いて、牧志の手を掴んだ手の力を抜く。
知らずにあちらからも籠もっていた手の力が、ふっと抜ける。
それでも手を離してしまうことはない。
彼の口調に合わせて呼吸が焦ったり、和らいだりするのが、あなたの胸ではっきりと感じ取れた。
彼の発する声が呼吸を揺らすのすら、感じ取れてしまう。
牧志に異常な執着を持ってしまい、それが治るまでと距離を置いているところだったのに、強制的に牧志と会わされてしまう佐倉。
この状況を喜ぶべきか、憂うべきなのか?
最悪(良)のタイミングで起こる怪奇現象。ひたすら佐倉の心がかき乱されます。
【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」