こちらには
『夢の果てならきみが正しい』のネタバレがあります。
佐倉 光
サマナーで悪魔退治屋。ハッカーでもある。
基本、知性・理性・効率、そういったものを重視する冷静な青年。
とある事件より、体中の痛みに悩まされているが、桜色の勾玉により少し改善した。
巻き込まれ体質らしい。
最近、遭遇した事件で恐ろしいものを目撃したことで、繰り返し再発する記憶障害にかかっている。
牧志とは友人。
牧志 浩太
お人好しで温厚、だが意思は強い好青年だったが……。
とある事情で二年より前の記憶の大半を失い、代わりに悪魔使い波照間紅の記憶を持っている。
首から胸へと続く奇妙な【契約】の痣がある。たまに痛むという。
生贄体質らしく、事件に巻き込まれることが多い。
佐倉とは友人。
シロー
とある事件以来、特殊な事情のため二人が面倒を見ることになった少年。
超美形で類い希な理解力と知性を有する。
年齢は7歳程度。生育環境が特殊だったため、一般的な教育を受けていないので、言語が年齢の割に幼い。最近になって急に一般的な生活を送り始めたので、外界への興味が強い。
空がふしぎなピンク色にひかっていて、ガラスでできたおもちゃばこみたい。
正気なんて忘れて、なんだってできるでしょう。
あなたの体が無いことも、あるいは忘れてしまいそうだけど。
「だれのせい?」
これはだれのための旅なんだろう。
Call of Cthulhu 6th
『夢の果てならきみが正しい』
日暮ずむ 様
もしくは今も、夢を見ているだろうか。
あざやかな花の色、名前のわからない鳥、砂埃を運ぶ風。見たこともない壮大な景色。
夢まぼろしと空想の世界は、いつかのあなたのまなうらに在っただろうか。
あるとしても、ないとしても。
こんなに奇妙でおぞましく、冒涜的なものではなかったかもしれない。
この世界はあなたの心を殺すだろう。
脳髄をひっかき、玉ねぎのようにぴりぴりと剥がして、内側のさいごのひとかけらになるまで、あなたの心を侵したいのだろう。
それでもこの世界は、あなたに愛されたいらしい。
この世界も――そう、ほかの『夢』と類されるすべてのものがそうであるように――あなたの夢でありたいのだ。
夢は、夢を見てくれるものがいなければ、夢でいられないのだから。
酷い怪我を負ったあなた達は、病院に入院していた。
あなたがかけ続けた《ディア》のお陰もあってか、その怪我もめきめきと治り、二人とも無事に退院した。
東浪見や波照間に面倒を見られながらあなた達の帰りを待っていたシローは飛び上がって喜んだし、心配でわあわあ泣いた。
しかしその次の日から、牧志は病院に逆戻りしている。
その夜いつものようにおやすみと手を振って、いつものように寝て、それから目を覚まさなかったのだ。
一日ずっと眠り続けて、それから、もう三日。合計四日、今も牧志は眠っている。
ただ眠っているように、安らかに、すやすやと。
ただ、どれだけ起こしても、声をかけても、叫んでも、彼が起きないのだ。
あの時頭に負った傷のせいかもしれないと、何度も検査が行われているが、異常はなかった。
ただただ、彼は眠っている。
痛ましく手に点滴を繋がれ、こちらのことなど知らぬように、彼は眠っている。
それでもまだ良かったのだ。
変な内容であっても話しかければ返事は返ってきたし、
声をかけ続けたら一応目覚めてくれた。
あの時は生きた心地もしなかったな。
終わった、と思ったらまた眠り姫だ。
いい加減起きろよ。寝過ぎで脳味噌溶けちまうぞ。
そうやってひとりでシローの面倒を見るのにも、すこしだけ慣れてしまったような気がした。
主のいない部屋は今日も、静かに埃を積もらせている。
机に置かれたままの桜色の手帳の上へ。
目覚めない眠りといえば、もうひとつ思い出すのは自分が悪夢の中で死に続けていたことだ。
記憶も意志も粉々にされて、死ぬところだったのだ。
あの時は二人の牧志と守護天使が助けてくれた。
もしかして、同じような事が起きているんじゃないのか。
あなたは最近、夢を見ていない。
シローのことや牧志の入院でバタバタしていたからだろうか?
眠りが浅くなっていそうなのに、ここ四日間、夢を見ていない。
清潔なベッドで眠る牧志の傍らに寄っていって、繰り返し繰り返し彼を起こそうとするシローの声が、あなたの耳に残っている。
しかしその声さえも、夢に出てくることはなかった。
もう、見るべきだ。
原因も分からずに入院していたとき、彼は死に瀕していた事もある。
もしかしたら何か書き残しているかも知れない。
牧志が普段持っている日記帳を、あなたは確認しただろう。
しかしそこには、彼が眠りに落ちるまでのなんでもない日常や、その前に起きた事件のことが書かれているだけで、彼の現状に関する手掛かりはなかった。
前のような明らかな変調は、そこにはなかった。
明らかな異常に、悪魔に確認させたり波照間を呼んで相談したり、あなたは色々と手を尽くしただろう。
しかし、何も分からなかったのだ。何も。
桜色の手帳は彼の歩いた道そのものだ。
彼が少し前に、それまでに書いた日記帳の内容を全て、これに転記している姿を見たことがある。
だからあなたはきっと、少し躊躇ったのだ。
でも、もう見るべきだろう。あと、彼が残したものはこれだけだ。
そう思って開かずに来た。
しかし、なればこそ開くべき物だったんじゃないか。
最後のページに、「あの夢は心の中に持っておこう。あとできれば忘れよう」と書かれていた。
何か彼は夢を見ていたのだろうか。
▼【アイデア】で判定。
目の前に開いた桜色の手帳が、水を落としたように歪む。
真っ黒な墨が溢れ出し視界が歪む。歪む、歪む。
真っ黒に塗りたくられた景色の中で、ちかちかと不思議な光の粒が瞬いた気がした。
いつもの痛み、じゃない。
明らかな……
やっと見つけた。
これが牧志に繋がる何かなら望むところだ。
手帳をしっかり握ったままで何も見逃すまいと目をこらす。
やがて風は激しい巻き風となり、あなたの手足を引く。
――びゅおお。ごうごう。ひゅおう。ごうごう――
はためく風の音がして、あなたの前髪をしたたかに持ち上げる。
引く力は次第に強くなる。強くなり、あなたの身体を引き裂いてもなお止まらない。
体の節々に激痛が走る。
骨を断たれ、肉を引き千切られ、潰され、掻き回されているような感覚。
暗闇の中で突然に襲いかかってきたその痛みに、あなたは抵抗すらできない。
それは「いつも」の痛みより余程強かった。あなたというものを打ち砕き引き裂き粉々にしようと望む痛み。
皮が裂け肉がちぎれ骨が外れる。
剥がれて捏ねられる。
悲鳴を上げた喉はホースか何かのように潰れ、見開いた目はねじり上げられ。
理由も何も分からないまま粉々になってゆく。
「痛みが引いた」というよりも、虚空に吸い込まれ消え失せたような喪失感をおぼえた。
そしてまた激痛が走る。
そして消え失せる。また痛み、そして消え失せる。
何度も何度もそれを繰り返し、あなたの精神を振り混ぜるように摩耗させる。
慣れたくなどなかったが、受け流す必要は多い。
それでも感じたことのない激痛。
痛みなどといった言葉で片付けられない感覚に蹂躙され、なす術もなく振り回される。
痛みを痛みとして受けとる脳を、自ら破壊してしまいたいと思うほどに。
気がつけば意識が消えていた。
《SANチェック:成功時減少 0 / 失敗時減少 1》。
気づけばあなたは、微かに消毒液の匂いがする空間にいた。
辺りは真っ暗だ。いや、どうやらあなたは目を閉じているらしい。
先程までの激しい苦痛も、風の音も消え去っている。
規則的な電子音が聞こえる。
SAN 70 → 69
1D100 30【CON】 Sasa BOT 1D100→35→失敗
HP 10 → 9
後で牧志に治して貰えるかなぁ……(後遺症)
目を開ける。
規則正しい電子音の傍ら、牧志がベッドの上で穏やかな寝息を立てている。
あなたの身体には響くような痛みが残り、しかし、それはあなたにとってもう慣れてしまった感覚だった。
あなたの身体は裂けてはいない。
道中の記憶は、もちろんない。
一体、どうやってここまで辿り着いたのだろう。
ここは確かに彼の病室であり、あなたは小さな椅子に腰かけている。
傍らにいた看護師は「何かあったら声を掛けてくださいね」と控えめに微笑んで去っていった。
穏やかな風があなたの頬と、安らかに眠る彼の頬を撫でた。
いや、そもそもここに来たという記憶がない。記憶が飛んでいる。
最近よくある記憶障害だろうか?
混乱する。冷や汗が流れている。
最悪の夢の余韻のような、それとは決定的に違うような、いつも体を苛む痛み。お前が生きている事こそが異常だとでも言いたげな、内側から引き裂かれるような痛み。
これがあるとまともに考えるのも困難だ。まずは……
胸にさがっている勾玉を握って傷跡のある額に手を当て、治癒の力を集中する。
普段ならこれで、問題ない程度には収まるのだが……
《ディア》で治癒を試みます。
仕方ない、収まるまで待つしかなさそうだ。
彼は夢を見ているのか?
そういえば持ち物はどうだろう。
自分のポーチは出かける前だから持っていたように思うが、桜の手帳などは手にあるだろうか。
ポーチとその中身は、きちんとあなたの腰にある。
変わらずあの部屋にあればいいんだが。
あれを手に取ってから、俺の記憶はあやふやだ。
その様子はこの四日間、ずっと変わらない。
正常な血色は彼の肌を透し、すこやかな寝息さえ立てているというのに、彼はもうずっと目を覚まさないのだ。
それはあまりに自然で、いっそこのまま数億年の月日が経っても、苔がむして彼を覆っても、そのままであるかのような姿だった。
あなたを置いて、彼はずっと眠り続けるのだ。世界が滅びても、ずっと。
今どこにいるんだよ、お前は。
夢の向こうにでも行っちまったのか?
どこ行くかくらい、言ってから行けよ……心配するだろうが。
彼の傍らで何かが光を反射したのだ。
それは鍵だ。
貴金属の本体に色とりどりの宝石が散りばめられた、古い装飾品のような大振りの鍵。
何度も彼を見ているあなたには分かる。
こんなもの、なかったはずだ。
よく見て、手に取って見る。
手にとってよく見るならば、〈夢の知識〉で判定。
ただ実用品には思えない、象徴のような美しい鍵だった。
その持ち手についた大きな宝石が、あなたの視界いっぱいに広がったかと思うと、――あなたの意識はふたたび暗転する。
一瞬、体のあちこちに、遠い痛みを覚えながら。
牧志がいる場所に行ける、という確信があった。
彼の眠りの意味を知る事ができる。
そしてもし、それが牧志の意志に反する物なら引き戻してやる。
痛みに記憶を霞ませる事のないように、胸元のクリオネとヒランヤをしっかり握りしめ、闇に落ちる。
ずる、ずる、ぬるぬる。
目を開けた時、あなたの目の前は完全な暗闇に包まれていた。
先程と同じように真っ暗闇ではあったが、今回は少し異なるおそろしさが体の芯を震わせた。
視界を染める黒にはなにがしか実体があり、ときどき複雑に歪む緑の光を発してぬらぬらと蠢いている。
あなたの足は地についていない。
呼吸はできているが、のたうつ水に揉まれながらその中を揺蕩っているような、気持ち悪いような気持ちいいような形容しがたい感覚だ。
ずる、ずる、ぬるぬる。
ずる、ずる、ぬるぬる……。
何だか分からないが、恐ろしい存在がそこに在る。
俺はそいつの体内にでもいるのか。
牧志を捕えているのはこいつか。
身構えようとする。できないようなら観察だ。
身構えようとする手足は何を掴むこともできず、ただただ感覚そのものを溶かされていくような曖昧さが全身を包み込む。
▽〈聞き耳〉〈目星〉〈繧?a〉で判定。別情報。
1d100 88〈目星〉!! Sasa BOT 1d100→23→成功
1d100 〈繧?a〉すみませんきーぱー、三つ目のスキル化けちゃっててわかんないんですけどぉ。 Sasa BOT 1d100→39
「もし、……もし、……もし」
それは確かにあなたに向けて呼び掛けられ、近づいて来ている。
遠くの方に黒い球状のモヤが見える。
声はそちらからするようだ。
視界すべてが黒に染まってはいるが、瞬くように複雑な色の光がぎらつく中に、ぽっかりと浮かぶ何者かがあるのだ。
黒い球状のモヤはあなたの眼前に浮かんで停止する。
その部分だけが一切の光を反射せず、闇そのものであるかのようだ。あなたはブラックホールの画像を思い出すかもしれない。
けれどそれはあなたを呑みこむこともなく、暗黒の雲に包まれたままじっとそこにいた。
《SANチェック:成功時減少 0 / 失敗時減少 1》。
その闇をにらみ付けて声を上げる。
自分の目的を忘れないように。
こんな所で恐怖に溺れている場合ではないんだ。
それはゆるゆると穏やかな声を発した。
黒い球状のモヤは、至って敵意はないといった様子で不思議そうにあなたの前で波打つ。
このへんに赤いアザがついた人間。
ここは湖、なんですか?
あなたは?」
普通に問いかけてみることにした。
あかいのは、みてません」
そうしてもらえると助かるな」
正直ここは居心地が悪い。
悪意がなさそうに見えるこいつ、俺をどうこうするつもりならとっくにできている筈だ。ひとまず信じてみても良いだろう。
黒い球体は穏やかな様子で、あなたを導くようにのぼっていく。
それを追って水を掻こうとした時だ。
あなたの足もとを、なにかが掠めた。
それはあなたの体に纏わりつく水とは、明らかに異なる質感をしていた。
▽【アイデア】で判定。
そしてそれは目の前の黒い球体のように穏やかなものではないと、あなたの本能が感じ取った。
急いで地上に向かった方が、良いのかもしれない。
息が切れる。心臓がばくばくと悲鳴を上げて脈打つ。それでもあなたは手を止めるわけにはいかなかった。
遥か下の気配を必死に逃れ、息を切らせて水を掻くうち、水の黒色はやがて薄まり、奇怪な光も見えなくなっていく。
そして頭上の水面に、ぽつぽつと灯る明かりが揺れだした。
どうやら命の恩人? であるらしい奴に声をかける。
もういないかもしれないけど。
さらに浮上しながら脳裏を満たすのは、「ここはどこだ?」という疑問と興味だ。
面白いことが起きている。明らかに。
「わたくし、ここまで。
いいえ、いいえ。おたっしゃで」
暗黒の雲の輪郭はもやもやと曖昧で、今にも眼下の水に溶けて見えなくなってしまいそうだ。
けれど、至って凪いだ様子であなたを見送っている。
ありがとうと手を振る。
黒い球体は、そのモヤの中から何か小さいものをふたつ、吐き出すようにあなたへ寄越した。
切断面に当たる場所はどうなっているんだろう。
ここは暗い。明かりはまだ遠く、水の上に出なくてはよく見ることはできないだろう。
ポケットに入れて水面に上がる。
ドリームランドなら服変わっちゃってないかな。
しかし幸いなことに、ポーチの代わりに革製らしい小袋が腰についており、これに何かを入れることができるだろう。
困惑するが、今はそれどころではない。『耳』を持って水面に出よう。
前髪や顔面に伝う水滴をはらい、たんと湖水を吸い込んで重くなった衣服ごと体全体を押し上げる。
どうやら、そこは何か大きな湖の中らしかった。少し離れた所に見える砂浜に、ぼんやりとした明かりがいくつも見える。
べたべたとまとわりつく水を絞り落とし、肩で息をする。
あなたはふと、自分の内側に何か渦巻くものを感じた。
それはあなたが〈魔法〉を扱うときの力に似ていたが、もっと曖昧で、もっと夢のようななにかだ。
(参考:幻夢境p12~ 大幅な改変あり)
ドリームランドの中でのみ使用可能となる探索技能です。
この技能判定に成功した時、あなたの『想像の力』によって、思った通りのものを『創造』できます。
あなたのための力です。なんだってできるでしょう。そこは夢の世界ですから。
ただし、技能判定に成功したとしても、創造のためには『MPを消費』いたします。
消費MPは基本『1』としています。ですが、内容によって大きく増加することがあります。
正確に創りあげられるか、創りあげたものがずっとそこにあるかどうかの保証もございません。
初期技能値は【POW】と同値です。
(例:【POW】15の探索者は〈夢見〉初期技能値が15)
質問!
小袋はいつものポーチが変化したもので、スマホが変化した何か などは入っているのでしょうか、それとも空でしょうか。
COMPはあるのでしょうか。ある場合何に変化しているでしょうか。
スマホ……もしあったら水晶球とかかなぁ。
エネルギーバーは乾パン、エナドリはワイン袋としてー
(もし変化してたらを考えるの面白いなと思っただけなのでお気になさらず。)
革袋は内側に蝋が塗られているようで、水の中でもこれらのものは無事だ。
・何枚かの羊皮紙らしい紙を留めたものと、見知らぬ鳥の羽根で作られた羽根ペンが何本か、それに小さなインク瓶
・スマホくらいの大きさの水晶の板
・古めかしい和綴じの本。紙は和紙で、中身を見ればあなたの手帳と一致する
・ナッツ類を蜜で固めたものを油紙に包んだもの、エネルギーバーくらいの大きさ
・赤い液体の入った水袋。中身を嗅げばワインのようだ
・例のハチマキと黄緑色の薬
あなたの腕にはCOMPによく似た見た目の銀の腕輪が嵌っているが、モニター部分はないようだ。
PCは「記録するもの」という位置づけが優先されて紙になっちゃったようです。
現代文明の塊なハッカーにして悪魔召喚師なだけに、中世ファンタジーな格好と持ち物になっちゃう佐倉さん楽しい。
困惑してついてた皮袋を開ける。
紙束、本、なんか透明な板。蛇女のカード。
……変に既視感がある。
油紙で包まれた食べ物、酒っぽい液体……
見覚えがある。夢騒ぎの時のアンプルも?
何故これだけが?
と思った瞬間、何かに思い当たった。水晶板に触れてすいすいと指を動かしてみて、なんだかしっくり来る感じを味わう。
本を開いて自分が書き付けたメモを見る。
ひょっとしてこれは……俺の持ち物なんじゃないのか。
砂浜の明かりは、何者かが持っているランタンのようだ。
〈夢見〉を使ってみてもよいし、砂浜の何者かに助けを求めてみてもよいし、もうひと頑張りして泳いでみてもよいだろう。
ここはどこだ。
異世界転生って奴?
なんか《ディア》とは違う魔法が使えそうな気がするし。
移動手段、で思い付いたのは、いつか使った空飛ぶ靴だった。
あの靴は出せるだろうか。
〈夢見〉で判定して、成功した場合にMPを【3】消費する。
魔法が使えそうだと思ったのは気のせいだったかもしれない。
さっきもらった耳をよく見てみるかな。
あなたの掌からは何も出てこない。
耳は人形の耳のような質感で、しかし作りはリアルだ。
断面は石膏か粘土のような、白い乾いたものが覗いている。
それはランタンをくわえ、前脚にガラスの浮きを結んだロープを持った猫だ。
これはもしや、かの珍しい【水が好きな猫】なのではあるまいか。
「ニンゲン。なぜうぼすの湖からニンゲンが出てきた?」
しかもその猫は喋った。
ため息をつく。
ここはどこです?」
月に落ちた覚えはないんだけど」
なんだろうこの異界。話が通じるヤツが色々いるから助かるけど。
目をぱちくりさせて猫を見る。
うむうむ、と猫は頷く。
猫は言うなりさっさとロープを引いて砂浜へ戻っていってしまう。浮きがあなたから遠ざかろうとする。
慌てて浮きに取りつく。
ふ、と、軽い砂の感触がした。
次の瞬間には、全身を濡らしていた水が不思議と蒸発しきったように乾いていた。
あなたの真後ろには、ただただ黒い湖面が静かに広がっている。
呑みこまれに来るものをいじらしく待つ何者かの大口のようにも見えるだろう。
そしてあなたの目の前にはいくつもの灯り、――正確には、ランタンの灯りを持った、猫。
そう、何匹もの二足歩行の猫があなたを取り囲んでいる。
「なぜニンゲンが月にいる?」
「月は猫のための場所」
「ニンゲン、なにもの! 名を名乗れ」
月、と呼ばれている異界か。
ここがどこかも分からないし、来たくて来たわけじゃないんです。
人を探してて、変な鍵に触ったらここに来ちゃって」
ナガグツみたいなやつにツメられるのは妙な気分だ。元気かな、あいつ。
猫たちは歌うように言葉を並べながら、灯りを持ったままあなたの周りをくるくると回る。
あなたはまるでキャンプファイヤーのまんなかの焚火にでもなったような心地だ。
……COMP、使えるのか? そういや。
「サクラ! サクラ! そうだそうだ、思い出した」
「おまえを探しているといういきものにであったぞ」
「わすれた」
「へんてこな形をしてたな」
「でもここじゃあみんなへんてこだ」
へんてこって……どんな!? みんな見たんですか?」
「名乗ってたか?」
「なかった」
「ぷるぷるしてた」
「ぷくぷくしてた」
「おいしそうではなかったな」
「まずそう」
よくわからない。勝手なものである。
牧志はどう考えてもそんな感じじゃないが。
そいつ、どこへ行きました?」
あーでも、あいつは探してなかったかな?
「あの灰色の都。猫あんまりおちつかない。ニンゲンあんまり行かない方がいい」
「でもお前を探してるいきもの、まだいる、かも?」
猫たちに教えられた方角には、確かにぼんやりと灰色の都市が見えるだろう。
礼を言ってシレッと立ち去ろうとする。
何か移動手段が欲しい。
……靴が無理なら、そうだな、車とか。
仕方なく荷物を背負って歩き出す。
成功するまで試す、って手もあるんだが。
【CON】的にも移動速度的にもね。
じゃあ3回だけ試す。それで無理なら諦めよう。
1d100 15 ほしいな! Sasa BOT 1d100→40→失敗
1d100 15 ノリモノー Sasa BOT 1d100→4→決定的成功(クリティカル)!
MP 15 → 12
イメージしたのはいつも乗っている乗用車だけど、ここはドリームランド? なんだよな。
さすがに通常成長はしない気がするけど。
成長対象でなければ別の技能成長に振り替えるので、ひとまずメモしておいてください。
あなたの手の中からは何も生まれなかった。
それでもあなたは強く想像する。あなたがその車に乗っている所を、ハンドルの手触りを、車から見える景色を、助手席に座っている人を。
夢見る。
思わず瞬きをすれば、目の前に見慣れた車が現われた。
見慣れた車の……
見慣れた車そっくりの形をした、軽い木でできた馬車だ。
不機嫌そうな白い馬が一頭、車を引いている。
なんだか見たことのある顔のような気もするが、馬に角はない。
あと助手席には誰も乗っていない。
乗らなければセーフだよね!
……まあ乗り物には違いないか。
俺御者なんてやったことねーけど。
※これやっぱり〈運転〉で扱えるんですか?
よくわからないものだが〈運転〉で扱える。
おおいに困惑しつつ、謎都市に向かって『車』を走らせよう。
何でも作れるのかな?
あとこれやっぱりカーステレオはないんだろうなぁ。
ちょっと探す。
……あっ。
牧志レーダーなんて作れたりするのか?
馬の蹄から、さらさらと砂の粒がこぼれ落ちていくのが見えた。
辺りは暗い。崩れかけの廃墟ばかりが立ち並び、粘液をまとった奇妙な植物がそれに這っている。
周囲は先ほどの賑やかさが嘘のように静まり返り、規則的な蹄の音ばかりが聞こえる。
ふと、あなたは世界でひとりきりになったように思えた。
ランタンの灯りたちはとっくに遠い。あなたの乗る車の背後に、ちらちらと星くずのごとく光っている。
大地には車輪の跡が一組だけ、長く長く続いていた。
あまりにも手がかりも足がかりもなく途方に暮れてしまう。
食料もない。道も分からない。俺はこのわけの分からない世界でどうしたらいい?
1d100 85 【知識】 Sasa BOT 1d100→36→成功
孤独で、よくわからない色をしていた。
ふと、あなたはこんな話を思い出した。
月には大気がない。厳密に言えば、ほとんど無い。
そのため、月を踏みしめた足跡はずっと残り続けるらしい。
今も月には、いちばん最初に月に到達した船長の足跡が残っているそうだ。
――その時、あなたの視界がわずかに揺らいだ。思わず瞬きをする。
次に見た時には、もうひとりぶん、誰かの足跡が車輪の跡の隣に刻まれていた。
そう、それは確かに、人が大地を踏みしめてできたものだ。
その足跡はどこまでも続き、あの灰色の都市に向かっている。
あなたはその足跡を知っている気がした。なんとなく、そんな気がした。
気付かなかった。分からなかった。
しかし今はある。ならば追うしかないだろう。
足跡を追うように舵輪を操作する。
しながら……食事について考えなければならないな、と思った。
幸い車があるのだから、物資を運ぶ事はできる。
飲み水と、食料……いや、この世界で使える金があればいいのか?
とりあえず数日食べられる・飲める分をイメージしてみる。
そしてどうやら、この世界では「近代社会のもの」は出てこないのだと言う事も今までで分かっている。
保存食か。さっき見た、エネルギーバーだったものとか、あとワインか。水はそのままだと腐るからかな?
……飲酒運転になるな。まあ、いいか。他に車いないし。
1d100 15 のみものたべもの Sasa BOT 1d100→81→失敗
呼吸ができる宇宙、といえば二度ほど経験がある……どちらかに関係があるのだろうか。
考えながら車を走らせよう。
たまには休憩とりながらだけど、水場とかあんのかなぁ。
だいたい馬ってどれだけ頑張れるものなんだ。
馬は不服そうなまま、ずっと、ずっと、歩いてゆく。
やはりここは現実ではないのだろうか。
本編見る!
数多く建てられた石造りの摩天楼に窓はなく、その内側にあるものを悟らせない。
都には大きな港があるようで、あなたの居る場所からでも立派な船の黒い帆がいくつも見えた。
確かに都であるようなのに、生きものの気配は無い。
依然として静まり返ったまま、薄ぼけた灰色があなたを迎えている。
続いていたはずの足跡はやがて石畳で途切れ、追えなくなってしまった。
目立ったら困るし。
車を降りて聞き込みをするか……
静まり返った薄ぼけた都市の街路に、そうっと入り込む。
▽技能判定〈聞き耳〉〈縺ゥ縺〉〈目星〉別情報。
二つ目の技能は1d100振るべき? それとも「持っていない」としてスルー?
いや一応振っておこう。
1d100 〈縺ゥ縺〉この字文字化けでよく見る Sasa BOT 1d100→79
1d100 88〈目星〉 Sasa BOT 1d100→44→成功
古びた木製の車輪が回る時の、さみしく乾いた音が通りの向こうから聞こえてくる。
少し離れた所に、異形の怪物が大きな荷を積んだ手押し車とともに歩いてきていた。
その姿はまず、ヒキガエルを彷彿とさせただろう。
けれど目はなく、代わりの感覚器官だとでもいうようにピンク色の短い触手が鼻のあたりに密集して蠢いていた。
全身が油っぽく照っており、灰がかった白色の体は歩くたびにぶよぶよと揺れて不快感を煽る。
手押し車の持ち手に掛けられた長い爪には、黒ずんだ血痕がこびりついていた。
あなたはそれを見たことがある。
あなたはそれと向き合ったことがある。
あなたはそれと敵対したことが、ある。
あなたはあなたの傍らに立つ人の腹に、それの持つ槍が食い込んだのを見たことが、ある。
月に棲まう獣。拷問愛好者。かの無貌に仕える利己の怪物。
ムーン=ビースト。
それを明瞭な意識で目にしてしまったあなたは、《SANチェック:成功時減少 0 / 失敗時減少 1D6》。
見つかると面倒だ。ここに鏡はないんだ。
殴り合って勝てるとも思えない。
身を隠そうとする。
Sasa BOT 1d100→28→成功
あいつら、話もするように見えたし知性があるのか? 何を運んでいる。
見えるようなら荷車を見る。
車輪の音は近づいてくるにつれて激しさを増しているような気がした。
から、から、から、がら、がらがら、がらがら、がらがらがらがらがらがら――。
地面の振動で、あなたの足もとの小石が跳ねる。その様子にさえ緊張が走った。
▽技能判定〈目星〉〈聞き耳〉別情報。
1d100 79〈聞き耳〉 Sasa BOT 1d100→33→成功
荷車の中から、わずかに人の呻き声のようなものが聞こえた。それも複数人分の声だ。
はっきりと、眼が、合ってしまう。
荷車に被せられた布のあいまから覗いた、確かに人のものと見える眼と。
その眼は、苦悶と絶望に歪んでいた。
喜ぶべきは、それがあなたの探す人の眼ではなかったことだろう。
しかし、あなたは予感してしまう。
あの手押し車に押し込められて、布を被せられ、この都のどこかの塔に連れて行かれるそれらの運命が、決して華やかではないことを。
《SANチェック》。〈目星〉クリティカルしてしまったことにより、0/1d2に増加。
ここに人間はいないように見えるし、人間を探すなら、あれを追いかけた方がいいんだろうか。
嫌だなぁ俺見つかったときにできることないし……
そういえばCOMP使えるか試してなかった。
試しておけば良かったな。
身を隠しながら、その荷車をこっそり追う。
どこへ向かうのかくらいは把握しておこう。
追うならば、似たようなヒキガエルのような生き物がまた一匹、二匹と集まり、その塔へ向かって進んでいくのが見える。
これ以上追いかけるのならば、〈忍び歩き〉-10%で判定。
この街に他に人間はいないのか?
いないわけないよな、あんなに捕まってたんだ。
実際、牧志レーダーって作れないかなぁ。>KP
成功すればMPを【15】消費する。
安易な手段はダメーっていわれた
しかたない。街をとぼとぼ歩いて探索しよ。
そうだなー。人が隠れていそうな建物の奥とか影とかに人の気配ないかな。
街には人の気配がないっていうけど、廃墟っぽい? 窓閉じて閉じこもってる感じ?
ぼんやりとした都市は廃墟というよりも、ただ内側にあるものが知れないといった雰囲気だ。
後ろから気配がする。確かに、何かのいる気配がするのだ。
もしや、先ほど通り過ぎて行ったものと同じ形の怪物か?
あなたの視界は暗いまま、茫然とした時間が過ぎた。それは永いようにも一瞬のようにも感じられた。
そうして次に目を開いた時も、あなたは変わらず灰色の都市の中にいた。
一時停止
なんだかこちらの回線が重いようなので、そのせいかな。ダブクロログ確認中なんですが、リロードが妙に重たい。
背後から声がかけられた。
慎重な、少し怖れるような声だった。
知っている、声だった。
あなたが探していた人の声だった。
言いかけて振り向く。
おかしいな。俺振り向かなかったっけ。
明るい髪の色をした人間ではなかった。
人間ですらなかった。
人間の形をすらしていなかった。
ぷくぷくと絶えず泡立つ不定形の塊は怖気のするような臓物めいた胞に覆われ、それから伸びる粘ついた触手は、時折震えては蠢く。
ぱちんと泡が弾けてはその中に人間の形をした眼や、唇や、髪や爪が覗いた。
そこからずるりと、泡を払いながらあなたに向かって手が伸ばされた。
その手は、あなたがよく知る人の手の形をしていた。
そう、知っている。あなたは。なぜ? ここは灰色の都市だ。縺倥? 繧薙′。彼は探している。
縺ゅ↑縺溘→縺ィ繧ゅ声が掛けられる。その声をあなたは知っている。
彼は牧志浩太だ。
《SANチェック:成功時減少 1D2 / 失敗時減少 1D5》。
1d5 Sasa BOT 1d5→1
くらっとした。
会えて良かった。会いたかったから探しに来た。
こんな形は想像してなかった。
普通に考えて、彼を『牧志浩太である』と認識する自分の方に混乱してしまう。
何を根拠に?
俺を佐倉と呼んだから?
声が同じだから?
そんなの何の証拠にもならないのに。
牧志だな。それは分かるけど。いや、合ってるんだよな?」
眼もできては弾けて消えるのに、それはどうもあなたの姿が見えているようだった。
すまなそうな声で言うそれは、声の響きを聞く限りはやはり、牧志浩太のように思えた。
それは牧志浩太だと、あなたは認識する。
視覚はまったくそのように思わせてくれないのに、なぜか。
合ってるよ、俺が認識する限りは。
俺は牧志浩太だし、佐倉さんを『ボブ』って呼ぶこともできる。
こんな姿になってるのは、俺にもよくわからないんだけど……、どうも、身体をなくしたみたいなんだ」
お前体回収したばっかりなのにもうなくしたのかよぉ」
がっくりと膝をつく。
小さな部屋の中にいる夢を見たのは覚えてる。
窓の外は夜だけど変な色の空で、部屋の中に大きなジオラマがあった。
そのジオラマには凍った山とか、宝石でできた塔とか、猫だらけの街とか、不思議な風景が色々あってさ。
そうだ、この街に似てる風景もあった気がする。
そのジオラマの中に、俺の人形があったんだ。
気になってよく見てみたんだけど……」
訳がわからなくなって、その人形に何かしてしまったんだと思う。
気がついたら俺はこんな姿になってて、
身体を壊してなくしてしまったんだって、それだけ分かってた。
それで、身体を探してうろうろしてた」
ぷつぷつと煮え立ちながら、それはすまなそうに一瞬無数に開いた目を伏せる。
さすがにちょっとびびる。
人形……を探せば良いのか、前みたいにぶった切られた状態で落ちてるのか。
何か探す手がかりになりそうなことはあるか?」
変異
耳が牧志のだって気づけるかこれ?
いやー、そういう感じの化け物になっちゃうのかー。
牧志といえばショゴたんなのか。
ごそごそと小袋を探す。耳のような物を取り出す。
佐倉さんは、俺が包み込めば大丈夫だと思う。
さっきはちょっと勢い余っちゃったけど」
牧志はちょっと衝撃的なことを言った。
というかその口調、既に一度やったってことだろうか。さっき。
敵に見つからないってことかな?
だから、俺で包み込んで進めば見つからないかと思って」
そう言うと牧志(?)はぬるりと身を伸ばし、
あなたと同じくらいの、いやあなたよりも大きなほどの大きさになってみせた。
〈夢見〉について、本シナリオ中では二人で協力して使うことができます。
その場合、二人のMPを合算して消費することができます。
判定は代表者が行ってください。
割と生理的にクるもんがある造形だが、相手は牧志だ。
勢い余って包んだ、ってのはさっきのなんか暗かったときのアレだろう。
俺から見てても佐倉さん溶けたりしてなかったし、何かに触ったら溶けるとか、そういうこともないみたいだし」
お前はそんな感じしないか?」
あなたに言われ、牧志は少し考える。
出ては戻りしている触手が彼の中に入り込み、考えを探すように中をごそごそと探る。
ぷくぷくぷるぷるぬるぬる……
ぷくぷくもぞもぞとろとろ……
ぷくー、ぱちん。
ぽん、と弾ける音とともに太い触手が何かを抜き出して、開いた口に放り込んだ。
あれは…… 何だろう。牧志の考え?
思わず《アナライズ》を試そうと腕輪に指を滑らせる。
俺、まだ夢を見てるのかな? 前みたいに夢を共有してる?」
牧志は不思議そうに胸に手を当て…… 胸? よくわからない。とりあえず塊の一番膨らんだところに、塊から突き出した手を当てている。
ここではどうやら機械なんかは存在を置き換えられちまうみたいでさ……」
自分の持ち物を見せて説明しよう。
そういえば俺、何も持ってないな」
触手が持ち物に近づいてきて、その先に見慣れた色の眼がひとつ開いた。
覗き込んでいるのだろうか。
何か関係あるかもしれない、って思った方がいいな」
牧志は自分の中から何かを取り出すと、それに何かを書きつけて自分の中に戻した。
頭に刻んでいる…… のだろうか? うーん。
こっちだとなんかファンタジーっぽいし……ダウジングとか、占いとか、そんなので?」
方位磁針のような物を想像したのに、つい、棒を倒して道を探す想像なんてしてしまった。
ぽんぽん、といくつか連続して弾ける音がした。
その鈍重そうな見た目と裏腹に、牧志がいつも歩くくらいの速度では動けるようだった。
もぞりと塊全体が震え、触手の群れになってあなたに襲いかかる。
生まれては弾けを繰り返している形容しがたい無数の色を含んだ泡があなたの視界いっぱいに広がり、怖気のするような不調和をもたらす。
先程は背後からだったから、きっとこれを見ずに済んだのだ。
思わず声を上げる。
悪いなと思うけどちょっとこれは慣れるのに時間がかかりそうだ。
近づき僅かに触れたところで触手が止まる。視界いっぱいにぷるぷるぷちぷちもぞもぞしている……
悪いけど見た目が大分アレなんでびっくりするんだよ。
どうにも本能に訴えてくる感じのヤツなんで、慣れるのに時間かかるかも」
こわごわと蠢く触手を見る。
小腸内壁かなんかみたいだ……なんて思っちゃ駄目だ。これは牧志だぞ牧志。さっき包まれたときだってなんてことなかったろ!
慣れちゃってたけど、そうだよな。驚くよな」
うーん、と牧志は触手にまみれた手を自分の身体に向ける。
牧志の手の形をした手の表面からもぷつぷつと泡が浮かび、細い触手が絶えず巻きつく。
あ、親指の横にもう一つ爪が生えた……。
後ろからやろうか、さっきみたいに」
うぞり、と牧志の身体が蠢き、あなたの背後に移動する。
……さっきとは違って存在に気づいてしまっている分、どうしてもふつふつと煮立つ気配を感じてしまう……。
これはこれで……正直怖い。
慣れるしかねぇよなー。
会話は完璧牧志だし。
どうしてか俺には「これが牧志で間違いない」と確信できるし。
漏れる引きつり笑いと柔らかい何かが蠢く感触が合わさって、くすぐったいようにも思える。
それが瞬く間に背中全体に広がり、あなたの全身を包み込んだ。
何を作ろう
・方位磁針
・クリスタル
・方向が分かる棒と距離が分かるダイスのセット
・ダウジング棒
・方向を教えてくれる人形
・そっちへ飛んでく蟲
・〈ナビゲート〉してくれるなにか
そっちの方向へ流れる水の塊とか砂の塊なんかも面白そう。
瓶に詰まった水(牧志がお守りにしているヤツからの着想)で、パーツがある方に波が立つもしくは水が寄っていくとかいかがでしょ。
中に意味なく謎生物とかがぷかぷかしてても面白いかも知れない。
ああー、それは面白そう。瓶があればうっかり無くしたりしにくそうですしね。
中に時々いなかったはずの謎生物とかぷかぷかしてそう。
ユニークな姿
しかも素早いショゴスって怖くない?(肉体的な力は変わってないのかも知れないけど)
割とこれ系に豪胆な佐倉でも慣れるの大変そうだなって思った。
しかも出てくる体の一部が牧志だし。
なんか馴染んでるし。
でも馴染んでるからこそ拒否感持たなくて済んでる気もする。
なおかつ、元シナリオにもCoCらしいヤツで! って書いてあるもんで。
肉体的な力は変わっていませんね。
本人あんまり気にせずショゴ化して馴染んでるのがまた良い。
こうなってからそこそこ時間経過している&驚いても一人状態だったので、慣れちゃってるんですね。
見てしまったせいだろうか。
先程はただの静かな暗闇に思えていた場所に、あの黒い湖の水に似て手足を背中を腹を絶えず撫でる感触と、ぷつぷつと煮立つ音、泡が弾ける振動と、生まれる圧迫が微かにずっと感じられている。
喰われてしまいそうだ。
本能がわめきちらす。
死にたくない。食われたくない。怖い。気持ち悪い。
その全てを捻じ伏せて、無意識に息を止めながら耐える。耐える。
牧志を探す。いや牧志はここにいるから……
牧志が壊した人形のような物を探せる何か。
結構漠然としているな。
こう、方向と距離が分かる感じの……方位磁針とかソナー的な……
うわぁぁぁぬるぬるしてて集中できない!
どうしようもなく「液体」と「わけの分からない生き物」という認識が思考に割り込んでくる!
〈夢見〉でそんな感じのマジックアイテムを作成します!
アイテム作成
成功するまで実行するなら、〈夢見〉で3回判定して頂いて、以下の通りの処理とします。
・成功すれば、1時間以内に作れた!
・3回とも失敗した場合、作れるまで1d5+1時間かかった……。
消費MPは【15】。牧志にはMPをいくつ貸してもらいますか?
さすがに慣れるなそれは。
こちらは8点消費。
1d100 15〈夢見〉! Sasa BOT 1d100→8→成功
『今の牧志はそれなんだ』と強く強く念じる事でひとまず追い出した。
それはそれで牧志に抱きしめられているようでなんとなく微妙な気分になってしまうが。
『今の牧志はそれ』なんだから別に微妙でも何でもない!
この感覚は人をダメにするソファとかそんな奴だ。そういうことにしよう。
ダメになってる場合じゃねーけど。
目を閉じたままで暗闇の中に描き出す。
周囲の牧志から流れ込む力とイメージを手の中に安定させて、
彼が失ったものを見つけ出せる何かを生み出す。
なんだか生暖かい。
何ができかけてるんだ。
しかし集中を切らさないように目は開けない。
何かが凝りつつあるあなたの手に、暗闇の中から牧志が手を重ねた。
見知った形の手だった。
やっぱりぷくぷくもぞもぞしていたが。
それははっきりと分かった。
多少ユニークな感触だが、心強い。
一人でどこだか分からない世界をウロウロしているよりも、二人でいる方がいいに決まっている。
たとえどんな姿だろうと、牧志は牧志だ。
同時に、周囲を埋める泡がぱちんと弾け。
周囲の風景と空気の感触が、あなたの前に戻ってきた。
ぬるぬる…… もとい、牧志はあなたの横にいた。
集中のためか、無意識に呼吸を止めていた。
泡が弾けると同時、光と空気が押し寄せる。
手を開くとそこには小瓶があった。
中に少しぬるついて光る水が半分ほど溜まっている。
たぷんたぷんとゆらめくそれは黒く、タールか何かのように見えた。
しかしその表面は生き物のようにざわめいている。
不意にその中から小さな目がひとつ見つめ返してきているのに気付く。
それは見つめ続けるとゆるゆると目を細めて視線を逸らした。
呟くと、瓶の中でなにか黒い波のような物が起きて左右にゆるゆると揺れた。
……なんか違うらしい。
かわいい
塊の中から牧志の手が伸びてきて、瓶に触れる。
作るのそれなりに疲れたし、役に立って貰わないと困るぜ……」
ウニウニしている瓶を指でつまんでじっと観察する。
それは黒い帆が見える大きな港の方角だった。
あのヒキガエルが集まっていた灰色の塔の前を通り過ぎ、左手に折れると港のある方に辿り着くようだ。
海越えるのかなー」
開いてる小袋があれば入れておこう。
建物も壁も地面も、ほとんどが灰色の石でできているのだ。
視界に入る建物はすべて何階分にも高く伸びており、どこか東京のオフィス街を彷彿とさせる。
しかしそのどれにも窓がないことが、都市をひどく陰鬱に見せた。
その奥に見える灰色の塔はひときわ高く、その周囲に集まったヒキガエル達はしきりに港との間を行き来しているようだ。
佐倉さんは俺の中か、車の中に隠れた方がいいかもしれない」
牧志に包まれて車運転してればいいのか?
できるのか??
塔の方に反応はありそう?
車が通れるような大きな通りを通って港へ行こうとすれば、勢い塔の前を通ることにはなる。
街の外を大回りして向かうこともできるが、それなりに時間がかかる。
もともとこんな形だから、少しくらい手が出ててもわからない…… といいんだけど」
船に乗るっぽいし。
馬はずしたらついてこないかな?
不服そうでもこの馬はあなたが望んだものなのだ。
牧志は触手を伸ばして、ぬるぬると車の表面を撫でる。
お前もう重い物引かなくて済むんだからちょっとは機嫌直せって。
もうちょっと付き合ってくれよ」
馬の首を軽く叩こうとする。
整った毛並みの奥によく張った肌と、人間より高い体温の温もりが触れた手に伝わった。
秩序だった生物の感触だ。
靴にしとけば持って行けたのになー。
結局一人乗りになっちゃうからあんまり役には立たないけど。
一瞬またあの暗闇が訪れたが、周囲を包み込むものがもぞもぞと蠢くと、あなたの視界に周囲の風景が戻った。
目元に届く外気からして、どうやら目の所だけ穴を開けているようだ。
あなたの両手に触手が絡みつき、泡立ちながら溶ける無数の胞が重なる。
牧志があなたの腰の革袋を探り、あなたの手にあの水晶板を持たせた。
滑らかな表面は、傾ければ辛うじてあなたの姿を確認するのに使えそうだ。
これ角度によっては鏡代わりになるんだな。
写真とか撮れねぇかな」
水晶板を傾けて姿を映すと、そこに映っていたのは絶えず変形する人間大の塊だった。
あなたの眼や耳はうまく泡の合間に隠されていて、外からははっきりと見えない。
突き出している牧志の手とあなたの手も、同じような泡と触手に覆われて区別がつかないようだ。
ぬるぬるした謎の物体を見て思わず声を上げる。
はみ出してないの確認したら、手の中に板を隠しながら歩いてみる。
歩き出すと爪先が浮いたまま、ぐずりぐずりと潰れるような滑るような、微かな感触と共に身体が動きだす。
視覚と触覚と聴覚が、あなた自身が「それ」になったような錯覚を抱かせた。
意外にも重さはあまり感じず、移動は差し支えなくできそうだ。
二人三脚か、二人羽織か。まあ何とかなるさ。
さーて、腹括って港へ向かうぞ。
化け物たちはあなたと馬をちらりと見たが、特に興味を示す様子もなく、積み荷の中身を持った槍でつついたり、塔の中へ何かを運んだりしていた。
目覚めなくなった牧志を探して夢の中を彷徨う佐倉。
どんな姿になっても牧志は牧志だけど……その姿ちょっとユニークすぎる。
TRPGリプレイ【置】CoC『えっ? 手のひらから唐揚げ出せるんですか?』 佐倉&牧志(塔) 3(終)
牧志は唐揚げにされた自分自身の手足を想像して、恐怖すると同時にどうしようもなく興奮してしまっている。
だめだ。戻ってきてほしい。戻ってきてくれない。
【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」