こちらには
『おまえが猫耳メイドになるんかい』のネタバレがあります。
こちらはPC視点がデフォルトオープンになっています。
また、こちらは無料版として単品公開されていた版のプレイ記録です。
牧志 浩太
お人好しで温厚、だが意思は強い好青年だったが……。
とある事情で二年より前の記憶の大半を失い、代わりに悪魔使い波照間紅の記憶を持っている。
首から胸へと続く奇妙な【契約】の痣がある。たまに痛むという。
生贄体質らしく、事件に巻き込まれることが多い。
佐倉とは友人。
佐倉 光
サマナーで悪魔退治屋。ハッカーでもある。
基本、知性・理性・効率、そういったものを重視する冷静な青年。
とある事件より、体中の痛みに悩まされているが、桜色の勾玉により少し改善した。
巻き込まれ体質らしい。
最近、遭遇した事件で恐ろしいものを目撃したことで、繰り返し再発する記憶障害にかかっている。
牧志とは友人。
シロー
とある事件以来、特殊な事情のため二人が面倒を見ることになった少年。
超美形で類い希な理解力と知性を有する。
年齢は7歳程度。生育環境が特殊だったため、一般的な教育を受けていないので、言語が年齢の割に幼い。最近になって急に一般的な生活を送り始めたので、外界への興味が強い。
やっぱり猫モチーフは佐倉さんの方が圧倒的に似合う。牧志は見た目が犬系なんですよね。
佐倉視点(ネタバレ)
すぐ目の前に同じように誰かがいるのは分かった。
そこは真の暗闇というわけではなく、わずかな隙間からかすかな光が差し込んでいて影の中にうっすらとものが見える。
誰かの息づかいが聞こえる。
ただただ体に激痛が走り、ものがまともに考えられない。
分かるのはただ、自分の命が脅かされている事だけだ。
ようやく状況が見えてくる。あなたと牧志は箱に詰め込まれている。牧志が下、あなたは上に被さるように。足は適当に折り曲げられていて少し痛んだ。
牧志は生きてはいるようだが、全身に酷い傷を負っているようだった。服は破れ、血を流し、気絶しているのか、反応がない。
その姿を見てあなたは思い出す。
牧志とあなたはトラックにはねられたのだ。
はねられた、といっても軽い接触で済んだあなたは自由に動けないながらも通報して助けを求めようとした。
しかし、トラックから降りてきた男達はあなたが生きていると見るや、暴行を加えたのだ。
そして気を失い……気がついたらここにいた。
しかしここはどこだ。
ひとまず牧志を起こそう。
牧志視点
佐倉だ。
佐倉があなたをのぞき込んできている。
見慣れた真っ黒な目。を縁取るアイメイク。
いつも以上に白い肌にうっすらとピンク色。
口には……口紅。
黒いワンピースの上に白いエプロンを着用している。
肩を縁取る白いフリル。
きゅっと絞られた腰からふんわりと膨らんだスカートの先も白いフリルと
黒いリボンで丁寧に可愛らしく飾られている。
そう、つまり、佐倉がメイドになっている。
いや。それだけではこの衝撃を言い表すに不十分だ。
佐倉のほっそりとした手はゆるいグーを作っている。
頭にはホワイトブリムが揺れていたが、それよりもむしろもっと衝撃的な事に、
彼の黒い髪の毛の中からぴょんぴょんと飛び出ているのは、
変にリアルな猫の耳。あざとく可愛らしく片耳が少しだけ寝ている。
そう、つまり、佐倉が猫耳メイドになっている。
いや、佐倉かこれ?
一応首元にヒランヤと勾玉とクリオネはさがっているようだが、
それらは真っ白なブラウスのひだと……そのささやかながらある胸の谷間に埋もれていた。
胸。
おっぱい。
生物学的にXX染色体を持つ人にあるやつ。
そういえばいつもよりほんのり肉付きがいいかもしれない。
その声は間違いなく佐倉だった。
《SANチェック:成功時減少 0 / 失敗時減少 1》
おまえが猫耳メイドになるんかい
サワガニ 様 作
服装は自由ですけど。
本編見る!
牧志視点
俺がメイドで?
メイドが俺で?
猫? じゃなくて猫耳だな?
佐倉さん結構腰細いなじゃなくて?
春日さんよりちょっとあるくらいかな違う違うそうじゃない。こんな所で名前出してごめん俺の記憶の中だけど。
ある共通点がある人達の姿が頭の中を巡る。ごめん。
一度目を閉じる。
開く。同時に手も握って開いた。
夢じゃないっぽい。
で、
結局でかい声で叫び返すことしかできなかった。
佐倉視点(ネタバレ)
傷に触れて《ディア》で傷を癒やそう。
牧志視点
佐倉はあなたの頭にすっと手を触れた。
ハスキーボイスだ。
1d100 49 《おまじない☆》 Sasa BOT 1d100→48→成功
佐倉視点(ネタバレ)
だが、その視線はあなたを見ているようで見ていないと感じるだろう。暗くて良くは分からないが……
牧志視点
発した人の状況が何であれ声がちょっと聞いたことのない声であれ、投げかけられるその言葉は少し心を温かく……
いやほんとか? ほんとか!? 何かおかしくないか!?
牧志視点
幸せになぁれなんて言わないだろ佐倉さん。
佐倉視点(ネタバレ)
「おい、牧志!
しっかりしろ。
まいったな、状況が分かっていないのか?」
牧志視点
お席に案内するにゃん」
佐倉はいつもより背が高い。
いや、背筋が伸びているからそう見えるのだ。
確かにこの格好で猫背だと格好がつかないだろう。
その尻、スカートのフリルの下からは黒い猫尻尾がのぞいていてゆらゆらとやけにリアルな動きで揺れていた。
あなたを席に座らせて目をのぞき込む。
1d100 33 《ご主人様は元気かにゃ?》 Sasa BOT 1d100→80→失敗
佐倉視点(ネタバレ)
ただの意識混濁なのか、狂気に染まっているのかどうかも良く分からない。
そもそも彼の内にまともな思考があるかどうかすら定かではない。
箱の外に何者かがいる。
あなたを目覚めさせた衝撃も、箱の外にいる何ものかがこの箱に攻撃を加えたからだ。
牧志視点
〈心理学〉で佐倉さんが本気でそうしているのか、意図せぬものなのか探ることはできますか? 77です。
🎲 Secret Dice 🎲
すなわち「精一杯頑張ってご主人様に幸せになって貰えるようにご奉仕するにゃん」というつよい決意だ。
ついでに言えばあなたはどうしてここにいるのかさっぱり分からないし、記憶も何だか定かではない。
牧志視点
今度は親じゃなくてご主人様!?
佐倉さん、何されちゃったんだよ!?
ついでに本当にここどこだ!?
佐倉視点(ネタバレ)
牧志の目を見て語りかけよう。
牧志視点
佐倉と同じような格好をした女の子達が笑顔と愛嬌を振りまき、主に男性客がちらほらと腰掛けている。
にっこり笑った巻き髪のメイドさんがあなたの視線を捕え……
あなたの目の前に佐倉のほっぺを膨らませた顔が割り込んだ。
ケチャップにゃんにゃんび~む・おむらいす お持ちしまーす!」
佐倉は軽い足取りで席を外れた、と思った次の瞬間にはもう手にふわふわと湯気を立てるオムライスを持っていた。
あなたの目の前に半熟の黄身がとろりと広がった美味しそうな大きなオムライスが乗った皿が置かれた。
鮮やかなパセリとカリッとした付け合わせのポテトがとても食欲をそそる。
佐倉はケチャップを手に取った。どうやらかけてくれるらしい。
佐倉視点(ネタバレ)
おい何見てんだよ、しっかりしてくれ。
俺達の命がかかってんだぞ」
牧志視点
とりあえずオムライスは美味しそうだけど食べていいのか? これ?
佐倉さん(?)の笑顔が眩しい……。
また、必死に直前までの記憶と、佐倉さんが何をしようとしていたか思い出そうとするが、思い出せるだろうか? マヂムリ?
昨日までの事は何となく思い出せるんだけど。
この店には……牧志君は多分見覚えはないな。
佐倉視点(ネタバレ)
牧志視点
佐倉はウインクして見せると、ケチャップを逆さに持ち替えた。
ケチャップの上にはハートマーク……ではない。
メッセージが描かれていた。
「お前は猫の忍者に狙われている」
ケチャップなのに綺麗な字だ。
『うふん』にキャパオーバーを起こした!
思わず叫んで…… オムライスを見て……
そうか、分かったぞ。
これは佐倉さんが、この状況の中で俺に何かを伝えようとしているんだ。
考えろ、考えるんだ、牧志浩太! 俺と佐倉さんの、あの、尊厳のために!
ホントニ?
ところで他のメイドさんは猫耳なのだろうか。
猫耳なのは佐倉さんだけ?
でも他のヒトの猫耳猫尻尾は佐倉みたいなフッサフサした感じじゃないかな。
佐倉視点(ネタバレ)
はぇ」
牧志視点
佐倉はそのままオムライスをすくい上げると、あなたの口に近づける。
この行動、これは佐倉さんからのメッセージだ。
きっと佐倉さんやこの人達は意図に反してこんなことをさせられてうわぁあああ!
まつげが長い。爪は綺麗に整えられて、いつも彼がつけている勾玉のような桜色に輝いている。
思わず怪しいオムライスを受け入れてしまうだろう。
あなたが困惑しながらもオムライスを受け入れるその耳元に、佐倉は囁いた。
身を守る為の武器を探せ」
その額には汗が浮かび、瞳には焦りの色があった気がする。
佐倉視点(ネタバレ)
牧志視点
佐倉さんだ!
こんな状況だけど正気だ! 正気の佐倉さんが、いる!
助けを求め、巻き込まれた俺を助けようとしてくれている!
ここは敵地だ。“猫”が俺達を狙っている。
明らかに怪しいオムライスなのに受け入れさせてごめん牧志。
フツーに受けいけられている!
でも「ニンジャ」はシレッとなかったことにされてる!
大丈夫ニンジャもちゃんと覚えてますよ!
ぶくぶく泡立つ様な、小さな生き物が胴体を震わせて声を絞る様な、そんな声だ。
それと外側の壁で爪研ぎをする音も。この音の主が猫の忍者なのだろうか。
店の他の皆は全く気が付いている様子がない。
狙われているのが自分だけだからだろうか?
佐倉視点(ネタバレ)
外の化け物が諦めるまで、ここで持ちこたえるしかないか……
牧志視点
オムライスを食べながら、こっそりと辺りの様子を窺う。
鋭い獣の牙を間近に感じたような気がし、背筋がひやりと冷えた。
ここは猫の腹の中なのではないか、そんな感覚さえ覚える。
持ち物やベルトポーチはちゃんとあるか。何か自分に変化は起きていないか。
あなた自身には多分……変調はない。
いや、軽い頭痛がするかも知れない。
牧志視点
可能なら厨房の方も覗く。
また、獣の声と音がした方向を確認し、そのあたりで外の様子を窺う。
佐倉は何事もなかったかのようにニコニコしている。
佐倉視点(ネタバレ)
何? 切羽詰まっちゃってんの? こんな状況で?」
ぽかんと口を開け……
「いやいや無理無理無理! トイレとか無理だから我慢しろ!?」
牧志視点
なるべく平然としていたいんだけど。
佐倉さんにこんなことを強いている何者かに、俺の命を狙う何かに、本当は内心怒りたいんだけど。
だけど。
色々あんまりにもあんまりだ。
そんな諸々が拮抗して、何とも言えない表情になっているのを自覚しながら、大回り気味にトイレを目指す。
佐倉視点(ネタバレ)
牧志視点
あの人形が並んでいる所は何?」
また、それらの物について佐倉さんに聞く。
佐倉はついてきてくれるみたいです。
一個一個見ます? どこからにしましょう。
背が伸びているだけでこんなにも存在感があるものだろうか。
猫耳でかさ増しされているためだろうか。胸囲があるからだろうか。
さらに幅広のスカートを着用しているためだろうか。随分いつもより大きく見える。
何だか牧志が背丈を意識する局面が多い。
女の子になってるのに背丈同じなのか。
佐倉さん、こんなに背が高かったんだな。
遙か上に佐倉さんの顔がある気がして、何なら少し怖い。
もし今の佐倉さんが敵に回らされたら勝てないんじゃないか、そんな錯覚さえ覚える。
アイ、上から撫でてごめん。
今ならお兄ちゃん、あの時アイが怒った理由が分かるよ。
佐倉視点(ネタバレ)
あの人形が並んでいる所は何?」
やっぱり寝てるー!? なんか楽しそうな夢みてるー!?
ほんのかすか、焦げ臭いにおいがした。
牧志視点
……今もどこからともなくそんな恐ろしい気配を感じている気がする。
いかにも何かありそうな、人形のあたりから確認する。
しっかり見てくれよにゃん♪」
なんだか、この両端の猫に見覚えがある気が……する。
▼【アイデア】で判定。
そういえば、自分はこの猫耳メイドカフェに入る前に何をしていたのだろうか。
さっぱり思い出せない。
猫マスコットを見ていると、その目玉がぎょろっとこちらを見た。
鬱陶しそうに、厄介そうに、冷酷な目。
あなたはその目に恐怖心がある。
まるでこの目の持ち主に、命を脅かされたことがあるかのようだ。
害意しか感じられない目つきに、ぞくりと背筋が冷えた。
そうだ。間違いない。
訳の分からない状況に見えて、俺は今、確かに命を狙われているんだ。
そして、きっと佐倉さんも。
佐倉視点(ネタバレ)
手を掴んで押し戻す。
牧志視点
そのマスコットそのものや、それがあった場所に何かあるだろうか。
その指先が触れる瞬間、あなたは違和感をおぼえた。
真ん中の猫マスコットが木の枝になっている。
何かがぶつかって折れただろう枝に、血が付いている。
何かを忘れているのか、そもそも認識していなかったのか。
判断はできなかった。
《SANチェック:成功時減少 0 / 失敗時減少 1》
佐倉の手がソッとあなたの手を握る。やわらかい。あたたかい。
微かに呻く。
佐倉視点(ネタバレ)
これはただ意識が朦朧としているだけなのか?
実はもっとまずい状態じゃないのか?
だが、光が見えた。
燃えている。
燃えているのだ。山積みのガラクタの一角が。
大ピンチである。
牧志を起こそうと叫ぶ。
牧志視点
佐倉さんはずっと正気で、何かを知っていて、何かの目を盗んで俺にそれを伝えようとしてくれている。
あの一言だけ佐倉さんの口調に戻ったのは、きっとそういうことだ。
植えられているのは苔だ。大変地味だ。
変わり種の盆栽だろうか?
▼〈博物学〉もしくは【アイデア】/2
山だ。小さい小さい山の精巧なミニチュアだ。
苔に見えたのは小さな小さな爪楊枝の先ほどの木で、生えている植物はソヨゴ、アセビ、ツガ、ヒノキ、ミズナラ、カエデ。
みっしりと生えているため苔に見えてしまったのだ。
実際ミニチュアでこういう森を再現するときは苔を使うというが……
フェンスに囲まれた場所に積まれている、というわけでもなく、本当にただ山の中腹に積まれているだけといったものたち。
細かいビーズのようなタイヤ、刻んだ紙くずのように見えるのは木材。
人目を忍ぶような道の果てに無造作に積まれたそれらは、不法投棄された廃棄物といった雰囲気を醸し出していた。
小さな山の煙は薄く、燃える炎は爪の先に灯せるかどうかという程度だが、何故かあなたの心に不安を呼び起こした。
普段ならきっと、その精巧さにため息をついたんだろう。
その美しさに似合わない光景。
燃える炎の中に無造作に積まれたものたちは、心に不安を呼び起こした。
山の木々に血痕はついていないだろうか。
ゴミ山の中に、炎の中に、見たことのあるものはないだろうか?
だが見れば見るほどに惹き込まれていきそうな精巧さだ……
古いタイヤ、壊れた家電、業務用らしい冷蔵庫、廃車になったバスのようなもの、
壊れた椅子に机、廃材に……
佐倉視点(ネタバレ)
箱のふたの隙間が少し広がった。外からかすかに煙のにおいがする。
火事は少しずつ広がっているようだった。
牧志視点
その衝撃はあまりに大きくて、そのミニチュアに突っ込みそうになった。
かすかな煙が喉を刺激する。なんだか咳がしたくなった。
佐倉視点(ネタバレ)
牧志視点
佐倉視点(ネタバレ)
牧志視点
パーツが散らばっていれば拾う。
拾い上げながらそれと、それがあった所を見る。
そんなに派手に吹き飛んだのだろうか。
佐倉視点(ネタバレ)
牧志視点
至近距離とは言え、小さくて軽いミニチュアとはいえ、
たかが咳ごときでそんなに痕跡もなく派手に吹っ飛ぶものだろうか?
あからさまにおかしい。
佐倉視点(ネタバレ)
ごめん、飛ばしちゃったみたいだ」
牧志視点
何故かバカデカボイスで強調された。
佐倉視点(ネタバレ)
牧志視点
その途中で玄関を見る。
佐倉視点(ネタバレ)
体温が下がっているような気がする。
「おい牧志! 目を開けろ! 牧志ーーーー! 牧志返事しろーーーーーー!」
牧志視点
尻尾がくねくねして、耳がピンと立っている。
ぴょんぴょんと跳びはねて嬉しそうだ。跳ねるたびスカートがふらふらと楽しげに舞う。
牧志がシリアスと頭が痛いの間を反復横飛びする羽目になっている!
猫忍者が狙ってるんですよ!?
また、出入りする人はいるだろうか?
佐倉さん……。くそ、見ていると頭がくらくらしてくる。
この状況に惑わされている場合じゃないっていうのに。
思い出せ、波照間紅。佐倉さんは交渉のためなら案外何でもやるぞ! メイドでも! いや無理か。
無理だな。それは無理。
佐倉視点(ネタバレ)
牧志視点
スマートフォンはあるだろうか? また、電波は通じているかも確認する。
とってもキュートでポップな字体で「三代目猪狐巳流狗組」と書いてある。
▼【知識】で判定。
自分はいつの間にか反社猫耳メイドカフェに来てしまったのかもしれない。
普通に可愛らしい店構えで、そういった要素は見えないのだが。
扉は白い木で作られていて、閉じているため外が見えない……
佐倉視点(ネタバレ)
隙間からはまたがりがりと執拗に引っ掻き続ける不穏な音がしていた。
差し込む光は少しずつ多くなってきている。
この箱を閉ざすものは着々と破壊されつつあるようだった。
牧志視点
まだまだ帰るのは早いにゃん」
彼……いや彼女の背後で、さっき聞こえた不穏な爪音が聞こえた気がした。
佐倉視点(ネタバレ)
ぼやっとしていたら火事で死ぬ!」
牧志視点
見たことのある店名だなと思って見てただけなんだ」
まあ、そうだな。
当然、ただで出してもらえるはずがない。
スマートフォンはあるだろうか? また、電波は通じているだろうか?
電波の表示の前には黒猫が寝ていて見えない。
カメラアプリは普通に立ち上がるようだ。
カメラアプリを立ち上げ、フォトスポットに立ち、佐倉さんと自分を入れて写真を撮る。
佐倉さんの横に顔を寄せて、なるべく背後のフォトスポットが広く画面に入るようにする。
佐倉視点(ネタバレ)
牧志視点
……なんだろう。寒気がする。
▼〈医学〉または【CON】×5
背筋がゾクゾクする。頭がクラクラしてぼんやりする。
それは女性の佐倉の顔があまりにも近いから……ではない。
なんだか寒いのは、ピカピカで無機質で、冷蔵庫の中みたいなステージに寒さを錯覚しているから……ではない。
あなたは気付く。これは怪我をした時の、貧血の寒さだ。
自分の体を調べてみても怪我はない。しかし、寒いのだ。
自分はもしかしてピンチなのではないだろうか?
胸を押さえ、呻く。
血が、命が足りない感覚が分かる。
分かるに決まっている。錯覚とは思えなかった。
この感覚はもう何度も味わった。つい、最近にも。
血がついた木の枝を思い出した。
俺は何か現実ではないものを見せられていて、きっと怪我を負わされている。
その写真が何か、自分に見えていなかったものをとらえてはいないか。
手元が不意に暗くなってふと顔を上げると、目の前に男性客のドアップがあった。
腕を組んだメイドさんと談笑しながらまっすぐに歩いてくる。避けきれない!
咄嗟にスマートフォンを、取り落とさないように握りしめる!
ぶつかった部分が煙のように消えた。
二人は何事もなかったかのように舞台に上がって写真を撮り始める。
消えた!
まさか、ここにいる、居させられているのは俺と、佐倉さんだけなのか?
幻にしてはあまりにもリアルで息づかいが聞こえるほどだが、
おそらくこれは現実ではないのだろう。
▼《SANチェック:成功時減少 0 / 失敗時減少 1》
きっとそうだ。そうしよう。そう決めた。
この匂いも柔らかい髪も幻だ。
佐倉があなたの胸を見て叫んだ。
見下ろした先に、見慣れない出っ張りが見えた。
あなた自身の胸が膨らんでいる。
たぶんこれも幻。
幻……なのか?
《SANチェック:成功時減少 1 / 失敗時減少 1d3》
1d3 Sasa BOT 1d3→3
SAN 65 → 62
ま、ま、幻……だよな? 幻だ、幻!
俺は取り込まれかけていてこれは事態が進行しているまずい兆候だ、呆気にとられてる場合じゃない、惑わされている場合じゃない!
何揉んでるの……
あーあ、正気で焦っている佐倉さんの前でおっぱいに溺れかけてしまった。
とっても柔らかくて、暖かい感触が指先に伝わった。
思わずそれをむにむにと揉んでしまう。
こんなことしている場合じゃない、幻を見ているだけだと分かっているのに、手が離せない……。
柔らかくて弾力があるそれを揉んでいると不思議と心が落ち着いた。
なんだか気持ちいい。
佐倉視点(ネタバレ)
目を開けろ! このままじゃ死ぬんだよ! 俺達!」
牧志の肩掴んでできるだけ力入れて揺する。
牧志視点
ご主人様のほうがおっきいなんてひどいにゃん!!!」
佐倉視点(ネタバレ)
牧志視点
佐倉はプンスコしている。
二人ともピンチなのに、こんなものに溺れている場合じゃない!
あってしかるべきだろう自分のおっぱい揉んだんだから。
佐倉視点(ネタバレ)
牧志視点
フォンデュフォークをガスコンロの直火で炙っていた。
そのサイズはバットほどもある巨大なもの。なんだか禍々しい。
「消毒ってこうでしたっけェ?」
もうひとりのメイドが慌てたようにたたみかけている。
「違うよ!? 普通に洗って拭くだけでいいよ!?
取手が木だから大丈夫だけどそれ銀で出来てるから! 熱伝導すごいから! 危ないから置いて! ちょっと休も! ね!?」
二人はドタバタと部屋から出て行った。
佐倉は踊るような足取りでそのフォークの側で跳ねる。
さっとそれを拾い上げる。
全部幻なら見た目通りのものとは思えないし、向こうから用意されたものが役に立つのかどうかも分からないが、少なくともこれに何かはあるんだ。
佐倉視点(ネタバレ)
それなら離すな、しっかり握っててくれ!」
牧志視点
何より今あなたも佐倉も女性である!
万一の事があってもおそらく即死はないだろう。
まあ、客が覗くのはどうかという問題はあるが、店員である佐倉が一緒にいるのだ!
大いに気は引けたし、何か開けるべきでない扉を開けているような気はしたが、最初から全部幻なのなら構うことはない!
真っ暗で視界の悪い交差点、青信号の横断歩道を渡っている自分が一台の小型トラックに跳ねられている。
それはスピードを緩めずに走り去り、トラックの影からどこにもいなかった猫耳メイドがパッと2人現れた。
メイドの周りには猫の忍者がたくさんいて、倒れている貴方を見てにゃんにゃん鳴きながら道路で爪研ぎをしている。
道路の真ん中で猫耳メイドが立っている。
猫の忍者があなたを狙っている。
「兄ィ、どげんしよ」
「ついでに山に捨てたらよか」
「ほうじゃの」
道路の真ん中で猫耳メイドが低い声で喋った。
猫の忍者があなたを狙っている。
トラックが走ってきてあなたを跳ねる。
猫耳メイド達は血に塗れながらあなたの体を車内に詰める。
佐倉がそれを見ている。
「兄ィ、見られちょる」
「ついでに殺したらよか」
佐倉視点(ネタバレ)
ついでに火事もそれなりに大きな炎になってきていて、すぐ近くにある古いタイヤに燃え移りかけているのが見えた。
このまま扉が開けられて、たとえ俺が逃げられても動けない牧志は確実に殺される。何が何でも起こさないと。
牧志を揺さぶりながら危機を喚き続けよう。
牧志視点
武器を取れ。
佐倉はあなたにそう詰め寄る。
ささやかな胸を押しつけるようにして、何度も何度も語りかけてくる。
猫の忍者があなたを狙っている。
《SANチェック:成功時減少 0 / 失敗時減少 1》
Sasa BOT 1d100→79→失敗
SAN 62 → 61
手の中の“武器”を構える。
その幻は奇妙な出来事をこそ伴っていたが、
それは人間の悪意に見えた。
そうか。
俺はずっと夢を見ているんだ。
あの時と同じであの時と逆だ。
それは人間の悪意に見えた。
当然のような別れが俺を狙っている。
きっとありふれた偶然で、きっと何よりも恐ろしいただの人間の悪意だ。
それでもまだ俺はここにいるらしい、
そして手の中には何かがある。
それなら不確かでもそれを取るしかない。
まだ終わっていない。
閉じられた扉の向こうからは何の音もしない……
いや。爪を研ぐ音が聞こえる。
引っ掻く音が聞こえる。
あなたを狙う猫の忍者がそこにいる。
ステージは見てみたいけど、そのまま行くのが流れ的に綺麗そう。
ああ、ここで出せばいいかな。
背が低めで肉付きが良い女性……
ではない!
服がビリビリになって手と足が露出してすりむけていて、顔面は蒼白。
頭にはタンコブが出来て血がダラダラ流れている。
そんな光景は一瞬でかき消え、厳しい顔の女性がこちらを見ている。
だがそれでも、その一瞬の光景こそが真実なのだと、あなたはその身を襲う寒気から思い知った。
《SANチェック:成功時減少 0 / 失敗時減少 1》
扉の横に置かれた空き缶に山ほど積まれた煙草の吸い殻があり、鼻が曲がりそうな臭気を放っていた。
煙草は二種類あるらしい。
SAN 61 → 60
佐倉さんの方を一度振り返る。
身軽にするためジャケットを脱ぎ捨てる。
なんでもない理由でゴミのように俺を投げ捨てた奴らがそこにいる。
なんでもない人間の理由もない害意がそこにいる。
佐倉視点(ネタバレ)
だが軋む扉は最早限界だった。扉をぐるぐると巻いて外から閉ざしていたダクトテープらしき物がみるみる引きちぎられてゆく。
牧志視点
もういいか、もっかい写真撮るかー
これが何かのせいで見ている夢なのか、ただネコミミメイド見たせいで牧志が見ている夢なのかが問題。主に牧志の沽券的に。
いや、彼女は……彼は、ずっと叫んでいた。
叫んでいたのだ!
その“武器”を構え、外へ飛び出す!
真っ暗だ。
タバコと鉄の匂い、頬どころか全身をぎりぎりと締め付ける痛み、煙にむせる肺。
いつも通りの男の佐倉が叫んでいる。暗くて何も見えないが、きっと必死の形相だ。
あなたは狭い空間にいる。
ガン!
あなたたちがいる小さな箱が揺れる。
ガン! ガン!
強烈な力で叩かれている。
かすかに歪んだ扉の隙間、何か尖ったものが侵入してこようとしている。
明るく可愛らしい場所から、暗く汚らしい場所へ。
身体はひどく痛くて寒い。頭ががんがんと痛む。
これが、現実だ。
咄嗟に身を起こす。
あなたと佐倉は体をおり曲げて何か小さい箱に詰められているのだ。
あなたの手には鉄パイプが握られていた。
猫の忍者があなたを狙っている。そうだ、猫の忍者が自分を狙っているのだから。
バガッと、扉が開いた。
牧志は武器を手に、何とか忍者を撃退する。
怪物が動かなくなるのを見届けて、ようやく怖気がやってきた。
危なかった。爪が微かに頬を裂いていた。
もう少し遅かったら裂かれていた。
ダクトテープでぐるぐ巻きにされていたらしいそれの表面は傷だらけで、今までこの化け物が絶えずこの箱を開けようと執拗に攻撃し続けていたであろう事が分かった。
辺りは燃えているが、まだ逃げられない程ではない。
しかし急がなければ、積み上がった古いタイヤに木材まで火が届いたら危険だ。
佐倉があなたに手を差し伸べる。
佐倉さんの手にしがみつく。駆け出す。
全身は痛むし頭はがんがんと響くし足元はふらつくが、それどころじゃない。
走らなければ、死だ!
ここで、俺達は燃やされようとしていたのだ。
ゴミと一緒に。なんでもない理由のない人間の悪意によって。
どっちにしろ、諦めたくないと願う間もなく、死んでいたのだ。
もしもしっ!? 消防!? 火事と事件両方です! 至急助けてくださいっ!」
あなたは帰宅途中信号無視をした小型トラックに轢き逃げに遭い、
事件発覚を恐れた短絡的で計画性のない反社会的な人物A・Bに山中に不法投棄されてしまったことを知る。
佐倉は牧志の事故及び車内に運び込まれる瞬間を目撃してしまった為暴行され、巻き込まれてしまったのだ。
詰めの甘い犯罪者達は犠牲者たちの死を確認せずに業務用冷蔵庫にまとめて放り込んでダクトテープでぐるぐる巻きにし、
そのまま不法投棄のゴミとともに山中に放棄したのだ……。
あいつら吸っては捨てしてやがったからな」
佐倉は忌々しそうに吐き捨てた。
ディア使って少し治したとはいえ大怪我には変わりないし。
しかも周囲燃えてるし。
もえもえキューンだし。
もう少し遅れてたら、死んでたな」
あいつらの詰めが甘くなかったら。
俺がもう少し目を覚ますのが遅れたら。
今更になって、血が足りないのとは別の震えが、背筋に走った。
呟く。怖い。どうして怖いかってありふれているからだ。
おそろしいものが顔を出さなくたって、人間は簡単に死ぬ。
諦めたくないともがく間さえ与えられずに。
病院の隣のベッドで佐倉がため息をついた。
事情聴取で警察官に言われた事を思い出す。
あいつの死体は残っていたはずだけど……
いや、そういうこともあるのかもしれない。
あれくらいで、死んだりなんかしていなかったのかもしれない。
そもそも死ぬものかどうかだって、分からないし。
そういえばあの化け物がいなかったら、それはそれで蒸し焼きになってたのか、俺達。
佐倉がこっそりかけ続けた回復魔法の力もあって、あなた方は超回復力を発揮し、数日で退院できる事になる。
いまだ体は痛むが、動けないほどではない。
あなた方は退院の手続き待ちで待合室でテレビを観るともなしに見ていた。
可愛らしい猫耳メイド達が映っていて、日本のカルチャーを盛り上げたいのだとインタビューに答えている。
その子にあなたは見覚えがある。
あの悪夢のような店にいた店員だ。
店内の様子にも見覚えがあった。
あなたが悪夢のひとときを過ごしたあの店そのものだ。
さすがに店内のプランターには花が植えられているようだったが……
あれは、見覚えがある。
あの夢の中で見た空間に、よく似ている。
ただの夢…… じゃ、なかったのか?
いや、そんなはずもないか。
どこか番組で見たことがあって、夢に見たのかな。
結局あれは、単純に死にかけてる俺が見ていた夢だったわけだ。
佐倉さんがずっと呼んでいてくれた声は、聞こえていたみたいだけど。
あんな夢を見たことは黙っておこう。
女の子になって揉まれたい願望? いや、やめよう。
あなたはメイド喫茶など行った事もないわけだが……
ないわけだが。
もしかしたら失われた記憶の向こうで行った事でもあったのだろうか。
通ってたとか言われても、それはそれで困る。
あの夢の印象が強すぎて、今更行こうって気にもならないし。
というか絶対に佐倉さんを思い出すし。
うーん。
珍しいものに反応してるな、と佐倉が首をかしげた。
丁度佐倉さんのことを考えていた時だったから、ちょっと驚いた。
あれはあの程度で死にはしないのだ。
呟く。
こうやって過ごす日常の裏に、照らし切れない程の闇があることは、もう驚くに値しない。
その上を綱渡りしながら、俺達は生きている。
小柄な怪物がまだ街に潜んでいる事を。
人類は人ならざるものに狙われている事を。
それは悪夢のような現実だということを。
猫の忍者に狙われています。
END
【えもえもにゃん】
正気度獲得 1d3
牧志は「おそろしいなにか」の存在を素直に受け止めちゃうからなあ。
ちょっといろいろ衝撃が強すぎて。
にしても本当に置きなのに一日で終わったんだが!?
ほんと佐倉さんの尊厳が死んだかと思ったら牧志の尊厳が死んでた話だった。
冒頭の猫佐倉も作ったの確か「対の棲みか」の頃だよ。
佐倉さんが牧志錯乱中の出来事を当人に伝えなかった(エンディング描写的に、ぽい)ために答え合わせは行われず、胸の感触の答え合わせも行われず、牧志は変な狂気の芽をそっと胸の奥にしまった。
どんな夢見てたかなんてしらないよ。
成長ロール
1d100 66
Sasaさん笑い転げてる。
1d100 66 くるかな? Sasa BOT
1d100→14→成功
1d100→89→成功
成長はなし。
合いそうなら合間に軽い話! って時にまたやりたい。
今回本当に面白すぎて駆け抜けちゃった。
……三重かな。
しかもしかも起点が交通事故(信号無視)っていう。
ウェンディゴとも普通に戦えば死んでたと思うしー。
ある意味運が悪くて運がよかったわけで。
しかし本当にギャップのどうしようもなさと猫モチーフの変な似合い具合は佐倉さんの方がはるかにこのシナリオ合うので、回して頂けてよかった。
牧志は逆に困惑して???? ってなってるのが似合うし。
佐倉さんの意図してなさそうさがすごい。>メイド
猫になったことありますしね佐倉さん。
レトリーバか柴か。
どうして佐倉が猫耳メイドさんなんかになっているんだ!?
とにかく二人とも真剣であるが故の不思議空間へようこそ。
【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
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