こちらには
『Midnight pool』のネタバレがあります。
佐倉 光
サマナーで悪魔退治屋。ハッカーでもある。
基本、知性・理性・効率、そういったものを重視する冷静な青年。
とある事件より、体中の痛みに悩まされているが、桜色の勾玉により少し改善した。
巻き込まれ体質らしい。
最近、遭遇した事件で恐ろしいものを目撃したことで、繰り返し再発する記憶障害にかかっている。
牧志とは友人。
牧志 浩太
お人好しで温厚、だが意思は強い好青年だったが……。
とある事情で二年より前の記憶の大半を失い、代わりに悪魔使い波照間紅の記憶を持っている。
首から胸へと続く奇妙な【契約】の痣がある。たまに痛むという。
生贄体質らしく、事件に巻き込まれることが多い。
最近酷く心が傷つくことがあり、更に恐ろしいものを目撃したことで、理由のない不安にとらわれ続けていたが、『旅行』により持ち直しつつある。
佐倉とは友人。
シロー
とある事件以来、特殊な事情のため二人が面倒を見ることになった少年。
超美形で類い希な理解力と知性を有する。
年齢は7歳程度。生育環境が特殊だったため、一般的な教育を受けていないので、言語が年齢の割に幼い。最近になって急に一般的な生活を送り始めたので、外界への興味が強い。
前回同様、シナリオ開始前の日常生活シーン(オープニング)を長めに取る予定です。
「ここで永遠にさよなら。」
「Midnight pool」
金髪先輩 様
嫌いな生き物
※人間以外でお願いします。
普通の一般的な生き物の方がいいですよね?
使うのはもちろん本編に入ってからなので、オープニング中に考えて下さっても大丈夫です
駄目ならそれに似た生き物にしとく。
最悪サメとか蜘蛛だな。
蜘蛛は苦手になってもおかしくない(その姿を実際に見たのは入られた当人じゃなくて佐倉さんの方なんですよね)
トキとかもありか。
トキもありですねぇ。
ヘビ トキ 蜘蛛 にしよう。
その三つは見ると思わず「うわっ」となる程度には嫌い。
全部酷い目に遭わされた由来なの悲しいね
ラミアさんの頭が人間でよかったね……
ありがとうございます。
よろしくお願いします。
あなたの記憶は時に曖昧に、時に明確に、浮いたり沈んだりを繰り返していた。
目覚めたあなたに笑いかけてくるのが誰かさえ分からない日から、全く当然のように落ち着いている日まで。
浮いたり、沈んだり。
浮いたり、沈んだり。
少し濁った水の中に、やさしく揺蕩っているように。
そうして浮き沈みを繰り返しながら、少しずつ波を小さくして。
受け止めるべきことを受け止め、忘れるべきことを忘れ、本来のあなたに戻っていく道の途中だった。
奇妙な夢と悪魔を初めて見たあの日のように座り込んだり逃げ出したり、
恐怖に抵抗するために攻撃しようとする時もある。
……何だか扱いに慣れられている。
詳しい情報はPCにテキストで纏めておいた。
しかし割と自分のPCの立ち上げ方が分からなくて困ることも多いので、小さな手帳に最低限の情報をメモしておくようにもした。
大体はこれで乗り切れる、はずだった。
朝起きて牧志があなたの名を呼ぶ声は、前のような痛みを伴うそれではなく。
今日のあなたは何を覚えているのだろう? と、少し楽しそうに確認する声だった。
どうやら、シローは顔を洗っているらしい。
目が覚めたのは知らない部屋だ。どこだろう、ここは。
ふと視線を落とすと、自分の腕に小さな字で『お前は記憶が混乱している。左の腕を見ろ』と書いてある。
腕をまくると、左腕の肘から上にずらずらと細かい字が書いてあった。
『名前は佐倉光。一緒に住んでいる赤茶の髪の奴は友人の牧志浩太、子供はシロー。化け物が目の前にいるならまず身を隠せ。ヘビ女なら仲間の可能性が高い。詳しくは自分のPCか持っている手帳を確認すること』
この情報は信頼していいのだろうか?
優しい声だ、と思った。
親しそうに自分を呼ぶ声。何だか知っているような気もする。
こういう時にどうしたらいいのか、分からない。
ひとまず手帳を持って、おそるおそる部屋を出た。
その日あなたに声をかけた男は、簡素な寝間着姿だった。
恐る恐る部屋を出ると、ソファと大きな窓のあるリビングルームに出る。
洗面所の方から、他にも何者かのいるらしい水音が微かにした。
こんな時は警戒すべきである、という認識すら抜け落ちて、ただただ困惑していた。
ここは、俺と佐倉さんの家」
彼はソファに腰掛けて、ゆったりと脚を組み、手をソファの座面にかけた。
その所作に何となく違和感を覚える。
すぐに動けない姿勢を示すためにそうしたのではないか……、という気がした。
ごく一般的な住宅に見える……
そして、目の前の青年にも見覚えがある。彼を見ていると何か思い出し始めた……
……ってなんだろう。何か大事なことだったような。分からない。
でもきっと目の前の彼なら知っていて、答えて貰えるんじゃないだろうか。
期待に満ちた目で彼を見つめた。
『親』と口に出すと、彼は困ったような顔で苦笑した。
困った顔の合間に、どこか痛みのようなものが覗いた。
でも、牧志さんと僕は同い年くらいですよね。親、ってのもおかしいか。花札?」
何か決定的に間違ったことを言った気がする。
あ、朝食べる? 作った物が食べにくければ、パンも買ってあるけど」
あなたの思考が『親』から逸れたことに安堵するように、彼はそのまま話を移す。
そういえば、洗面所や浴室のそばにこじんまりとしたキッチンとダイニングルームもあるようだ。
その時、洗面所の方から幼い子供の声がした。
壁に隠れるようにして、白い小さな手だけが見えている。
少年はその美しい顔で、名を呼ばれて無邪気に、少し不思議そうに笑う。
なんだこれ美形。悪魔じみてる。悪魔? なんで急に悪魔なんて。悪魔っていうより天使とか。
きょうのさくら、おぼえてないけどおぼえてる?」
困ったように笑う。
腕に書かれている文字を指先でなぞって呟いた。
「さくら、わすれたりわすれなかったりする。
でも、さいきん、わすれるの、まえよりへってる」
大丈夫、と少年は小さな手を伸ばして、あなたの腕を撫でる。
でも、落ち着いてくれば思い出すことが多いみたいだから、大丈夫だよ」
大丈夫だよ、と静かに言う声には、親しみと穏やかさがあった。
知らないはずの場所にいるのに、妙に落ち着いているのはそのためか。
撫でてくれる小さな指が、大丈夫だと言ってくれる声が、自分はここにいても大丈夫なのだという確信を与えてくれる。
不思議そうに見回す。
補足すると、今日はシローと一緒に水族館に行く予定だった。
あ、朝一とかじゃないから、ゆっくりしてからで大丈夫」
それなら、身支度をして着替えるべきだろう。
手帳をひとまずテーブルに置いて、洗面所にいって顔を洗ったり手洗いに行ったりしよう。
ボケボケ佐倉でいきます。
コップは二つと、子供用の小さなコップが一つ。
コップと歯ブラシには、「さくら」「まきし」と耐水テープの上から名前が書いてある。
これが自分だ、という確信はない。
何もかもがぼんやりとしていてつかみ所がない。
分かるのは、自分がいる空間が安全な場所で、あの二人は信じられる気がする、ということだけだ。
巨大な蜘蛛のようなものによって仲間達が次々と倒れる夢。
親しい人たちに襲われる夢。
砂漠でなにかおおきなものに見下ろされる夢。
ひたすらに先が見えない道を歩く夢。
誰かの口に不気味なものが入り込む夢。
逃げようとも耳を塞ごうとも
嘲笑うように次々と連鎖するように現われ、歪んで襲い来るそれらから身を守りたかった。
洗面所に射す日差しの色合いが、今は朝なのだと示していた。
外は穏やかな、見覚えのない住宅街の風景。
曖昧な記憶の中で、酷い夢の残滓は散り散りになって白い霧の中に浮かんでいた。
その白い霧にも覚えがあるような気がしたが、何となくいま覗き込むべきものではないようにも思われた。
本編開始タイミング
他にやりたいこととか寄りたい所とかあればもちろんそれも!
今受け止められる情報ではありません。
じゃあ家の中を色々見て、朝食にして、支度してお出かけかな。
何を見ても記憶に引っかかると思えるものはなかった。
そのくせ、歯磨き粉がどこにあるか知っているし、
意識する前にハンドルに触れて水を出すことができる。
「さくら」と書かれた歯ブラシを洗いながら、
彼らの言うとおりなのかもしれない、と思った。
自分は意識的に『思い出さない』ことにしているのかも知れない。
白い霧を意識すると、背筋に怖気が走り、酷い頭痛が起きた。
思わず胸元に無意識に手を上げたが、なにも触れなかった。
ここに何かがなくてはならなかった気がする。
痛む頭を押さえて居間に戻る時に、無意識にコーヒーメーカーに触れて出た。
視界から追い出して部屋を見る。写真などあるだろうか。
それは科学館かどこかで撮ったもので、三人とも楽しそうに笑っている。
低い位置にあることから、どちらかというと彼に写真を飾る習慣があるというよりは、少年に向けてそうしているのだろう。
その他には、草原と山を描いた既製品のポスターが、部屋の風景として飾ってあるくらいだ。
※他に佐倉さんが何か飾っていれば、それもあります。
自分の顔ですら自信がないのではどうしようもない。
何となく諦め気分になった。
今どうこうしようとしても無理なのかもしれない。
また、どうやら自分はしょっちゅうこの状態になっているらしい、ということはいずれまた治るかもしれない。
呟いて、流れに身を任せることにした。さしあたって朝食の準備があるようなら手伝おう。とくに手作りは嫌、ということはない。
若干の居心地の悪さはあるが。
ちょうど、着替えた牧志が朝食の準備をしようとしていた所だった。
見覚えのない台所だが、包丁などよく使うらしい物は目につく所にある。
何か手伝えることがあればやります」
……この人に指示してもらって、何かを作ったことがあるような気もする。
牧志が野菜を切っている間にあなたがフライパンを温め、シローは卵を…… おっと、案の定殻だらけだ。
こういうのは慣れだ。
むしろなんとなくこういう拙い料理を見ていると何故かとても懐かしい気持ちになる。
野菜切れたら場所を空けて、横から材料いれるか。
辺りに、食事の用意をしている時特有のいい匂いと音が漂ってきた。
多分自分はあまり料理をしたことがないのだろうな、と思った。
フライパン混ぜるのがなんだか怖い。
卵を入れるタイミング? そんなもの分かるわけがない!
後ろにさがって場所を空ける。
牧志はそんなことを言いながら、フライパンを引き受ける。
少しの敗北感をおぼえつつ、フライパンの横に皿を並べる。
シロー君を見て、代わりにやってやることはしないけど、角度変えたりして少しやりやすいように手を貸そう。
嬉しそうにあなた達によそったご飯を見せる。
牧志の頂きます、という声をシローが真似た。
「しんでなんかないよ」の後遺症について
冷やしたり温めたり、薬を塗ったりするのかな。
情報ありがとうございます、やった佐倉さんの痛みにできることがある。
考えようによっては開始直後に〈医学〉または〈応急処置〉の成長チャンスが貰えるということ……?
牧志の技能値ならそれなりに成功するし、だいぶハンデが減る。
開幕ファンブったらすみませんが。
そう、同じこと考えました>成長チャンス
佐倉も《ディア》(応急手当)成長貰えるかもだし、ファンブルならこちらも試せるということ!
牧志もようやく本当に立ち直ってきて、改めて試そうって気持ちになったんでしょう。
そうそう!
佐倉さんの《ディア》(応急手当)も成長するかも。
ふと珈琲マシンを振り向く。
そういえば何となくさっき触ったのがそれだったな、と納得した。
そうするとあれは自分が使っていた物だということになるし、それなら使い方が分かってもいいはずだ。珈琲くらい自分で煎れよう。
コトン、と小さく音がして、テーブルにカップが置かれる。
何故かそんな台詞がしっくりきた。
確かに家の細かいことは俺がやってることが多かったけど、それ以外で色々頼ってたよ」
役立たずという言葉には、凄まじくネガティブな感情と、半ば誇りのような謎の自信の両方が纏わりついている。
大丈夫だよ、と笑いかけよう。
シローはつぶらな、少し心配を宿した眼であなたを見る。
物を知らない子供が気にする、という流れはあるかも知れないが、
この少年の表情に込められた意味と経験はそれだけではないように思えた。
安心させようとして明るく言った。
除ききれない小さな殻が少し混じっていたが、気になる程ではない。
シローはよほど楽しみなのか、先程の憂いも吹き飛んだ様子で、ぶんぶんと手を振って未知の魚についてあなたに語る。
いきなりの子供のテンションについて行けずにたじろぐ。
しかし楽しそうに語るシローは微笑ましかった。
それに、佐倉さんはしばらく仕事ないみたいだったから、急な仕事がなければ大丈夫」
皿をシローのテーブルに戻しながら牧志が言う。
こぼれた物があれば拭こう。
食べ終わった食器を集めてシンクに移しながら、彼はさらりと言った。
っていうかそもそも僕にそんな力ありません……けど?」
思わず自分の体を見る。筋肉などほとんどない体だ。
食器を洗う微かな音の合間に、そう返す。
強盗かどうかは…… まあ。
向こうがこっちにちょっかい出してくるから、ってことにしといてよ。
穏便に済むこともあるし」
牧志の目をじっと見る。
本気だ。この人本気で言ってる。悪魔とか。契約とか。
理解を越えてる。そんなのゲームかなにかだ。
僕は本当にこの人たちが言う佐倉なんだろうか。
何かの間違いで中身が入れ替わったとしか思えない。
半笑いで話を流した。
さすがに信じられない。
水族館や食事の話から、完全に連続していた。日常を語る声だった。
これが狂気だというのなら、目の前の彼は余程狂っているのだろう。
ノーガード
お守り系全部置いていくのいいなーと思うんですが、少なくとも牧志は勾玉ないのに気づいて渡そうとしちゃうよなと。
佐倉さん、拒否…… する?
拒否まではしないかなって感じだったら、牧志が〈目星〉ファンブって気づかなかったことにします。
さっさと上着着た上で牧志君にファンブルしてもらうか!
泡が何の変哲もない手触りで、滑らかに汚れを流していく。
僕は自覚なく日常を踏み外すような生き方をしていたんだろうか。
少し恐怖をおぼえた。
思い出したら、この違和感から逃げ出したくなるのか、それとも当たり前のようにこの中に入って行くのか。
流れ作業的に皿を洗っていると、そんな得体の知れない恐怖も流れ落ちて行く気がした。
思い出した時にどうなるかなんて、今考えても仕方のないことだ。
洗い終わったら外に出られる格好に着替えよう。
何だか全体的に黒い格好だ。
遊びに出るだけだし、鍵とスマホと財布さえあれば問題ないだろう。
スマホはロックがかかっておらず、データが何も入っていない物がひとつあって、「ボケたら使え」とメモがついていたので、ポケットに突っ込んでいくことにする。
何だか体がとても軽い気がした。
(ポーチなし腕輪なしヒランヤと勾玉なし)
などと声をかけて歩き出す。
牧志がふと、不思議そうに立ち止まるが。
エイっていう魚がいるんだ、大きくて平たいやつ」
といっても、前に何をしていたかとか全然覚えてないんですけど」
佐倉の歩き方からはいつもに増して警戒が抜けている。
いつもなら自然と気を配って、曲がり角の向こうから飛びだしてくるもの、
突然襲ってくるもの、口を開ける異世界などへの警戒を
ほんのわずか滲ませて最低限気を払って生活しているというのに、
危険なものに襲われることなど微塵も想像していない、
なんなら道路の車が突然歩道に飛び込んでくる、などのような、
日常のちょっとした危険に対する警戒すらない状態だった。
などと言う姿など、シローは初めて見たかもしれない。
あなたの様子を見て、牧志はさりげなくあなたを庇う。
シローが心配そうに、あなたと手を繋ごうと手を伸ばした。
シローと手をつなぐ時は車道側に立つ、のような当たり前のことも抜けている。
どうやら随分と不注意になっているらしい。
気をつけよう、と思うと過剰に怯えたような動きになってしまう。
駅に着くまで気が休まらなかった。
牧志がぽつりと呟いたのが、あなたには聞こえたかもしれないし、聞こえなかったかもしれない。
海に面して建てられたそこに辿り着くまでには、一度乗り換えがある。
シローと手を繋いでやっているのか、繋いで貰っているのか分からない。
そもそも自分の中にどの程度の物が残っているだろう。
手探りしてもただ漠然とした不安があるだけだ。
不安そうに外を見るあなたに、牧志が呼びかける。
彼の手にはスマートフォン。その中に水族館の公式Webが表示されているようだ。
やはり見たことはないが、楽しそうな雰囲気は分かる。
水族館の何たるかを知っている、っていうのは、不思議なものですね。
僕自身のことより水族館がどういったものかって情報の方が
大事なんてことはないだろうに」
あっ、エイがいる。
「みなも水族館」とある。
海洋生物の保護・調査・研究を行いながら展示をしているそうだ。
公式Webを詳しく見てみる?
それらを詳しく追うなら、〈図書館〉または〈コンピューター〉。
無視して公式Webを見るなら、牧志の持つスマートフォンと同じ画面が表示される。
記憶無いけど使える? ということでしたら、「記憶が失われても知識や技能は残っている」なのかなと思います。
楽しかった、大水槽が目白押しなどの内容の他、一つあまりいい気持ちにならないものがある。
・水族館に付属している研究団体は、海洋生物を用いた生物実験を行っているらしい。
・実験内容と結果についての批判が寄せられている。
といったものだ。
これはあくまで要約だが、原文にはもっと刺激的な文言も使われているのだろう。
客を集めることを目的としている施設でこんな情報が出ているなんて」
実験内容について、大体どのような物かって内容は読み取れる?
ここで〈オカルト〉で判定。
それは先程の批判などといったものよりも、さらに他愛ない噂のように見えた。
真夜中のみなも水族館に幽霊が出るらしい、というものだ。
小さくすすり泣くような高い声、鈴のような音、ぺたぺたという足音を聞いた……。そうだ。
そこから、女の子の幽霊がいるという話になっている。
他にも、水族館が人面魚を飼っているだとか、地下に化物を匿っているだとか、そこから面白おかしい噂が増えている。
そんな変な噂が生えるほど古い施設じゃないし、なんだろう?」
いくつか噂を追ってみたものの、横にいるシローにあまり見せていい情報でもないかと考え直し、公式サイトに移動する。
できたばかりのはずだけど、さっきの批判と絡んで噂が生まれたのかな。悪魔なら何かしら連絡が来てると思うし……」
牧志はあなたがちらりとシローを見たのに気づいて、噂の話をやめる。
とある香水のブランドが、みなも水族館と提携したらしい。
「MtM…MeltyMisery」という流麗なロゴと一緒に、人魚をあしらった涙滴形の美しいボトルが表示されている。
人魚? そういえばさっきの怪談に人魚……いや、あれは人面魚だったか。
リアル魚をモチーフにしそうな水族館にしては珍しいとも言えるテーマだ。
むしろ面白半分に湧いている噂を逆手にとって、こんなオカルトをモチーフに持って来ているのかも知れない。
だとしたら大した商売根性だ。
声をかけて、他に変なオカルトテーマの展示やらないか探してみる。
シローが声を上げたとき。
牧志が立ち上がる。
慌てて立ち上がる。万一はぐれたら大変だ。
またシローに手を繋いでもらおう。
どん!
あなたは不意の衝撃に襲われる。
悲鳴を上げて、反射的に謝る。
相手の声とあなたの声が重なった。
相手は大きなスポーツバッグを背負った学生で、部活か何かの一団なのか、同じ柄のバッグを背負った学生達が周囲にいる。
拍子で吹っ飛ばされたとかなければ、ぶんぶんと首を振って自分は大丈夫だと示してから、はっと自分が手を繋いでいた少年のことを思い出す。
知っている人は、誰も。
繰り返し謝りながら去っていく一団の向こうには、少年も、牧志もいない。
あなたは、はぐれてしまったのだ。
見知らぬ場所、行き先もわからぬ場所の中、顔も知らぬ人々の行き交う中で、
たった、ひとり。
どうしよう。
周囲を見回し、途方に暮れて標識を見つめ、人混みの中目をこらす。
家に戻ろうにも道も満足に思い出せない。
住所も分からない。
今更になって、自分があの手帳を置いてきたことを思い出した。
読む気になれなかろうとも、こういう時のために持ってきておくべき物だったのだ!
頭の中の何も無い真っ白な部分に、冷たい不安と恐怖が急速に溜まって行く。
どうしたらいいか分からない。
何ができるか分からない。
道に立ちすくんだままでおろおろとよろけるようにして二人を探す。
頭が働かない。何も考えつかない。
辛うじて駅のホームや改札に戻ることを思いついて振り向いたが、どこから来たかすら定かではない。
やっと自分が、昔のことはおろか、最近のことですらおぼつかない状態であるらしいことを知った。
血の気が引く。
思わず叫んでいた。
途方に暮れるあなたに、また誰かがぶつかる。
どん!
あなたにぶつかった誰かは、謝りもせずに髪を振り乱して走っていく。
どん!
あなたを突き飛ばして誰かが走り去っていく。
〈聞き耳〉。
翻弄されるままによろめいて、壁際に逃げ出そうとする。
あなたは気づく。
ぶつかってきた彼らは、「逃げて」いるのだ。必死に。「何か」から。
あなたは……、どうする?
本編見る!
もしシローが牧志からはぐれてたら?
壁に貼り付いて二人を探す。
そこには、人が倒れているようだった。
一人ではない。
何人も、折り重なるようにして、倒れている!
様子を見に行くなら〈目星〉で判定。
この位置から確認するなら、〈目星〉/2で判定。
1d100 42 Sasa BOT 1d100→93→失敗
【POT12】とあなたの【CON】で対抗ロール。
1d100 20 Sasa BOT 1d100→37→失敗
ここは、どこだったのか。
どうして、あなたはここにいるのか。
あなたは誰を探していたのか。
いや、探していた誰かなどいたのか。
あなたは誰で、
あなたは何なのか。
あなたの数少ない記憶が、思考が崩れ、消える。
何もかも分からなくなるような、強い意識の混濁。
強い喪失感。
あなたが失われる。
失われて、しまう。
《SANチェック:成功時減少 1 / 失敗時減少 1D4》。
SAN 75 → 74
残り少ない自分を構成するものが崩れ落ちてゆく。
元々そんな物なかったような気さえしてくる。
無意識に胸元に手を上げたがそこには何もない。
左腕に触れても細い手首があるばかりだ。
そこには何があるべきだと思ったのだろう。
何に触れたかったのだろう。
目を見開いて、恐怖に震える。
なくなりたくない。きえたくない。わすれたくない。
助けて、助けて、と無意識に呟いていた。
あんなのはもう二度とごめんだ。
僕はヒナドリじゃない。
足下を掬い、世界を歪め、色を混ぜて。
雑踏が人々の逃げ惑う声が幾重にも反響して、あなたを攫う。
誰かに手を握られている。
──息が、出来ない。
突然、あなたはまるで呼吸の仕方さえも忘れてしまったように、気道が痙攣する感覚を覚える。
【INT】×6で判定。
顎をあげて苦しさに喘いで震え、空いた手で胸元をかきむしるようにした。
手に触れているのは何だ。
いや、誰かが握っている? 誰が……
息を吸う、吐く、意識しようとしてもただ肩がぶるぶると震えているだけで、苦しさだけが増してゆく。
喉の奥で、ごぼ、と湿った音がした。
喘ぐ胸に、微かな振動が伝った。
吸って……、吐いて。
誰かがあなたの顎を上げ、狭まった気道を確保する。
誰かがあなたの胸に手を当てる。
子供を寝かしつけるような指先で、ゆったりとしたワルツのような、規則的なリズムを伝える。
そのリズムは、誰かが息を吸って、吐くのと同期する。
そうか、こうやって息を吸えばいい。吐けば、いい。
必死で誰かの動きを、音のタイミングを、概念をトレースする。
吸う。吐く。痙攣して痛みが走る。吸う。吐く。軋む。吸う。吐く……
優しく寝かしつけるような根気良く優しいリズムに揺られて、
ようやっとだれかの声を聴く。
誰かの声がした。
穏やかな声が、はっきりと聞こえた。
それは、牧志という名らしいあの青年の声だった。
心配そうにあなたの顔を覗き込むシローの姿と。
あなたの手を取り、心配そうにあなたの眼を覗き込む牧志の姿があった。
しかしすぐに意識に戻ってくる。
目の前が歪んでよく見えない。何かがいるなら逃げなければならなかったはずで……
夢でも見たのだろうか。それとも、過去の記憶か何かなのだろうか。
人が倒れていて……」
呼気を漏らしながら呟くうち、自分が見たものや感じたことが
本当にあったことなのか、急速に自信がなくなっていった。
周囲を何度も見回す。不吉な幻の残滓がどこかに残っていやしないかと。
不吉な夢などどこにもなく、ただ空は薄暗くて。
夏にしては、すこし寒かった。
あれは僕の不安が見せた幻だったんだろうか。
きっとそうなんだろう。
世界が今おかしくないならやっぱり、壊れているのは僕の方だ。
思わず呻いて身を縮めた。
あなたが声を上げかけた時、背中に柔らかい温もりが触れた。
背を撫でる手の温度が、気を落ち着けてくれる。
だから幻を見たのかな。
だんだん、痛みが引いてきました」
二人に心配を、迷惑をかけてしまった。
二人とはぐれて不安になりすぎたのかも、しれません」
きっとそうだ。
強い不安で奇妙なものを見、奇妙なことをする、なんてことは、前にもあったじゃないか、という気がするし。
牧志はそっとあなたの背から手を伸ばし、あなたの服についた埃を払う。
恐慌が去れば痛みもほとんどなく、やはり気のせいだったのだと思えた。
二人を安心させるように笑って歩きだそう。
少なくとも俺が知ってる中では、そんなことはなかった」
頭の中に、微かに靄がかかったような心地。
何となく、違和感があるような気がした。
しかし歩いていると、その違和感も薄れていく。
『いつも』なら無視したりしない夢を忘れる。
自分を守るために見ない、見えない、聞こえない。
それは多くの人が日常を守るためにしている自然なことであり、普段の彼にとっての『逃げ』である。
今の佐倉にそんな自覚など ない。
水族館巡りですが、シロー込みがいいですか? 抜きがいいですか?
佐倉さんとじっくり対話するなら、牧志と二人きりの方がいいかなとも思ってるんですが。
抜きの場合は引率付きキッズツアーが生えてシローと別行動になります。
遠慮なく壊れられるし。
また記憶を失ってしまった佐倉。
今回は人のことのみならず、自分のことまで根こそぎ忘れてしまっている。
何もかも忘れ、大事な物も持たず、三人仲良く水族館へお出かけだ。
女神転生TRPG派生CoC 4人の牧志について(シリーズ内シナリオバレあり)
これは佐倉と牧志がセットで動くことが多い、女神転生TRPG派生タイマンCoCシリーズのひとつのシナリオについて、大変致命的なネタバレがあります。
【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト 」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。
Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」