TRPGリプレイ【置】CoC【タイマン限2】収録シナリオ『Look,LOOK Everyone!』 佐倉&牧志 3

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こちらには
『Look,LOOK Everyone!』のネタバレがあります。

本編見る!
KP
外を行く車の音だったか人の声だったか、何でもない騒音であなたは目を覚ました。
何だか、混沌とした夢を見ていたような気がする。

あの日から決まって、おはよう佐倉さん、と呼びかけてきた牧志の声が珍しく聞こえない。
シローはまだ寝ているようで、不思議と静かな朝だと感じた。
佐倉 光
変な夢だった。果てしなく長かったような、短かったような。
内容は全く分からないが、ひたすら牧志が話しかけてきていたような。
目覚めてみると、随分静かだと感じた。

時計を見ると、大体いつも自分が起きる時間より少し早い。
早めに寝たんだったな。なんでだっけ。
佐倉 光
シローを起こさないようにそっと部屋を出た。
コーヒーメーカーのスイッチ入れて、身支度調えて……
あれ、牧志今日まだ寝てるのか?
と思いながら浴室のドアを見て思いだした。
佐倉 光
「!」
慌ててドアを開ける。
牧志はまだそこにいるのか?
KP
衣類乾燥のスイッチが切れた浴室に、あなたのパーカーは静かに吊り下がっていた。

その前には、ちゃんと牧志の顔のアップリケがある。
牧志 浩太
「ん、おはよう、佐倉さん……」
うとうとしていたようだが、あなたに気づいて目を開いた。
牧志 浩太
「夢かと思ったけど、夢じゃなかったな」
そう苦笑する。
佐倉 光
「おはよう……今日終わらせたいな」
パーカーの乾き具合を触れて確かめる。
佐倉 光
「良かった、ちゃんと乾いたな。牧志まで乾燥しちゃってないか?」
リビングに持っていって、いつも牧志が座っている椅子の背もたれに引っかけよう。
佐倉 光
「水飲む?」
そういえばあの奇妙な事件以来、しばらく牧志がこうやって世話焼いてくれようとしたな、と思った。
牧志 浩太
「暑かったし、喉は渇いたかな。あ、ありがとう」

パーカーはよく乾いていて、湿り気も残っていない。
絵の中の牧志の髪も、いつもの質感を取り戻していた。
KP
牧志に水を飲ませながら、あなたはあの事件以後のことを思い出す。

あの後、牧志は翌朝ひどく虚ろな目をして起きてきたと思ったら、当然のように半ば寝ているあなたをソファに運ぼうとしたのだった。
傍らになぜか救急箱が置いてあった。
佐倉 光
牧志が入ってきたな、とぼんやり目が覚めた途端、いきなり物理的に起こされて抱き上げられたからびっくりしたのなんの。
俺がいくら筋肉無いからって随分軽々と。
あれは今思えば慣れだったんだ。

しばらく硬直して、牧志が変になった、これは異変かと考えているうち運ばれそうになったから慌てて声をかけたな。
さすがにそんなことをされるような覚えはないし、牧志もかなり変には見えたけど、話くらいは聞けるかと思って。
佐倉 光
「おはよう……牧志。起きて……る?」
おそるおそる声をかけたのを覚えている。
牧志 浩太
最初、牧志は応えなかった。
ああ、思い出せた。
そう安堵するように呟いて、あなたの頭の形を確かめるように辿った。
そのままあなたを片腕で支えながら、救急箱に手を伸ばそうとした。
佐倉 光
「ちょっと待て、やっぱりお前寝ぼけてるだろう。
起きてー? 朝だぞ? 牧志さん? おーい?
俺は怪我してないからな?」
あまりにもその様子が異様で怖くて、茶化さずにいられなかった。
ゆっくり動いてその腕から抜け出しながら声をかける。
牧志 浩太
あなたがその腕から抜け出そうとして、初めて牧志はあなたの行動に反応した。

数度、緩く瞬きをしてなにごとか呟き、腕の中のあなたを見下ろした。
それからようやく「ごめん、おはよう、佐倉さん」とあなたを見て弱々しく笑った。
牧志 浩太
そういえばその時まで、彼はあなたを見下ろしていたのに、一度も視線が合っていなかったように思う。

彼はあなたの眼をただ覗き込んでいた。
空っぽのものを覗き込むように。
佐倉 光
これは重症だ。
佐倉 光
あの時は「何かあって牧志はとても疲れているのだ」くらいに思ったが、今改めて思い出してみると、きっと俺は今の牧志並みに何もできない状態だったんだろう。
動けない、意思表示ができない、そのくせ生命維持が必要な状態か。
随分と苦労をかけたんだろうな。

……ただ、全く俺を見ていなかった、どこか諦めたような牧志の目を思えば、それだけで説明がつかない不気味さがあるが。

パーカーに水が消えてゆくのを眺めながらぼんやりと呟いた。
佐倉 光
「俺達、色々なことに巻き込まれすぎだよな……」
自分の額に触れて全く覚えのない縫い目をなぞる。
佐倉 光
「あの時の事、まだ話してくれる気にはなれないか?」
佐倉 光
「しんでなんかないよ」は佐倉が死んでいたこと自体はネタバレにならないから話に出しやすくて助かるなぁ……!
KP
トレーラーとタイトルで起きること自体はだいたい分かりますもんね 助かる!
牧志 浩太
「本当にな。もう数えきれないくらいだ」
牧志は軽く目を伏せた。
牧志 浩太
「ごめん、話したくないわけじゃないんだ。
ただ、まだちょっと怖くてさ。

佐倉さん、大怪我して全然動けなかったんだよ。それで、俺が見てたんだ」

何がそんなに恐ろしいのか、牧志は口にしない。
その口調はどこか、過去の恐怖を引きずっているというより、今なお何かを恐れているようにも聞こえた。
佐倉 光
まだ早いみたいだ。深追いはやめよう。
俺が想像もつかないような酷い怪我を負ってたのを助けてもらった、ってことだ。
佐倉 光
「家でできることも限られてるし、今日は外に出ようと思ってるんだ。
動画撮られるのとかは後々面倒だから極力動かないようにして欲しいんだけど、声出すくらいなら平気だろきっと」
佐倉 光
※そういえば後遺症の期間決めてなかったけど、そこは牧志くんが治りたくなったら治るでいいと思いました。
今の状態だったら「着てもらいたい!」ってなんのかな。
KP
はーい!
着てもらいたい! ってなるの面白いな。一度振ってみます。
牧志 浩太
「まあ、声くらいなら聞き間違いとか電話かな、って思ってくれると信じよう。
動かないようには…… 頑張る」
1d100 60 POW Sasa BOT 1d100→8→成功
牧志 浩太
「また知り合いに会ったりしないといいなー……」
それはフラグだ。
佐倉 光
フラグだな。
牧志の学校の友人に見られるとそれなりにまずい気もするが、
まあイラストだし「似てる」で済むんじゃないかな。
正直現実離れしすぎていて、かえってちょっと見られたとしても平気なんじゃないかな、と思える。
佐倉 光
シローが起きてきたら、適当に家にある物で朝食にして、身支度調えたら出かけよう。
あと埋まっていないのは寒暖差だ。最低限これだけはやっておかないと。
他にも面白……必要そうな事項があれば、試しておかないとな。
佐倉 光
牧志のパーカーは抱えて行こうか、と少し考えたが……
結局なくしたり落としたり奪われたり、なんてことがあっては困るので、着用していくのが一番安全だろうという結論になった。
そもそも服としてちゃんと機能するのかを確かめたいみたいだし。
佐倉 光
行き先は昨日見た科学館だ。おあつらえ向きの特別展示やってるみたいだからな。

KP
外へ出ると心地よい陽光が降り注ぐ。お出かけ日和の晴れ空だ。
牧志 浩太
「昨日も思ったけど、そんなに動けないのに勝手に視界が動くのも変な感じだ」
KP
シローは科学館が楽しみらしく、跳ねるような足取りだ。

朝に外に出たこともあのキャンプ含めてそんなに多くなく、それだけでも辺りのものを指差しては楽しそうにしている。
KP
「まきし、さくら! すずめ、いっぱいいる!」
KP
科学館までは電車で数駅。
バスもあるし、駐車場があるので車で行くのもいいだろう。
(あなたの車はおしゃかになってしまったので、またシェアカーか何かだが)
好きな交通手段を選ぶことができる。

散歩を兼ねて徒歩でもいいが、徒歩となるとちょーっと長いなあ、という距離だ。
佐倉 光
哀しいお知らせです。
先日事故ったため車がまだありません。
不本意だけどバスで行くしかないなぁ。
シェアカーは一杯だったみたいだねぇ。
シローくんって信じられないほどの美形なはずで、そんな子がキャッキャしながら喋るアップリケと会話してたらそりゃあもう人目を引くだろうねぇ。
KP
それはもう引きますねぇ。しかもそのシローくんを連れているのは大いに目つき悪い佐倉さんなわけで、色んな意味で大層人目を引きそう。
佐倉 光
「えっ……車がない……?」
車で行けば楽勝だと思っていたので、これはちょっと計算外だ。
近所の車は軒並み借りられている。タクシーも近くにいないみたいだ。
この近くの住人、集団移動でもしてるのか?
牧志 浩太
「ああー……。行楽日和の休日……」

牧志が遠い目をする。
都市部あるあるだ。普段車を持たない層が一気に借りて空きがなくなるのである。
佐倉 光
「……バスか」
電車の方が楽なんだがさすがに人目が多い。
仕方ない。近所のバス停に行こう。
なんとなくバッグを前に回して牧志の顔が全露出しない程度に隠して移動する。
KP
「からすー」
牧志 浩太
「ああ、ちょっかい出すと危ないぞ」
牧志がシローを制止しようと手を出しかけ、うっかりあなたのパーカーを引っ張りそうになる。
佐倉 光
「おっとと、あぶねぇ。
意外と強いんだから気をつけてくれよ」
牧志とシローに引っ張られたら転びそうだ。
牧志 浩太
「あっ、そうか、ごめん」
その一瞬自分の状態を忘れていたらしく、牧志は慌てて立ち止まる。
KP
ここで1d100をどうぞ。バスの混雑度です。高い値の方がより混雑しています。
佐倉 光
1d100 Sasa BOT 1d100→12
KP
そこにバスが来た。
幸い客の姿はほとんどなく、偶にうたた寝している老人がいるくらいだ。
佐倉 光
バスでは一番後ろの席で背もたれに隠れるように座ろう。
その方がシローものびのび外を見られるだろうし。

到着まではのんびり景色見て過ごすかな……
KP
「さくら、あれなにー?」
のんびりと過ごそうと思っていると、外をドラマの宣伝のアドトラックが走っていった。

その次は大きなクレーンのいる工事現場、あっイベントで巨大なアヒルが浮かんでる、偶然にも窓の外をシローの興味を引くものが現れては過ぎる。
KP
「まきし、まきし! おおきいあひるちゃんがいる!」
牧志 浩太
牧志があなたに助けて! と視線を送…… ってもあなたの位置からは見えづらい!
佐倉 光
「ああー、うんうんそうだなー。
アヒルちゃんいるなー。でっけーなー。
まきしって名前なんだーなるほどー。
シロー、ちょーっと声ちっちゃくしようかー」
子供が二人分の名前呼んだからっていちいち気にとめる奴もいるまい!
なんてことない顔してスルーだぜ!
KP
突然のアヒルちゃんにちょっと興奮状態だったシローだが、幸いあなたの言葉が届いたらしく、素直に声を小さくした。
つくづく驚くほどいい子である。
KP
佐倉さん、ここで【幸運】をどうぞ。
佐倉 光
1d100 75 【幸運】 Sasa BOT 1d100→45→成功
KP
老人は少し前の席で心地良さそうにうたた寝している……。
幸い、それから大きな問題はなく、あなた達は科学館に到着した。

KP
休日の科学館はそれなりに人気で、子供たちが屋外展示や庭園のそばを駆け回っている。
シローも興味深そうに巨大な風車が回るのを眺めている。

極地体験は1階の展示ルームで行えるらしい。それ以外にも宇宙の成り立ち、蒸気機関の仕組みなど色々な展示がある。
牧志 浩太
「こういうのって思わず触りたくなるよな。今は触れないけど」
佐倉 光
「そうだな、全身で楽しもうぜ」
全身で。

まずはシローが遊んでいるのを付き合いながらのんびりついて行こうかな。
シローの気が済んだら最後に例の展示に行ってみよう。

ああ、アイロンかけてみるの忘れた。
さすがにここで蒸気浴びられるわけじゃないし、熱い、の方はなんか別に考えないとな。
牧志 浩太
「極地体験か。だな」
KP
シローはOKが出るやいなや機械の展示に突撃し、ぐるぐる回しだした。
宇宙の模式図も回しだした。
丸い展望フロアを駆け回る。
なんだか回るのが好きらしい。
牧志 浩太
牧志はそんな様子を穏やかに見ていた。
たまに、フロアを貫く巨大な機械の展示や、動かせる羽ばたきロボットなどを目にして触りたそうにしていたりもした。
KP
シローが回るのが好きなのに特に深い意味はありません。
佐倉 光
子供は回りたがるし回したがるものです、たぶん。
佐倉 光
俺が触っても触れる訳じゃないしなー。
一応近づいて動かしてみるけど、牧志の視界低そうだから、ちゃんと見える訳じゃないよな。
佐倉 光
「解決したらまた来ようぜ」
牧志 浩太
「だな。近いからいつでも来れるし」
牧志は展示の動作音を楽しそうに聞いている。微かに頷いたような動きが伝わってきた。
KP
シローは発話こそまだ辿々しいが、子供向けに書かれた内容を読むことができ、宇宙の模式図が何を意味しているのかも理解できるようだ。
KP
「あそこのほんにかいてたのとちがう」
模式図を触りながら、シローは不思議そうにぽつりと言う。

そういえば彼は、あなたが読むことのできなかったあの場所の書物を読むことができたのだったか。
彼に理解しうる範囲ではあれど。
佐倉 光
「本によって書いてあることが違うのは珍しいことじゃないよ。
だから本当のことに近づきたいなら、同じ物事に対する知識は同じようなものに思えてもいっぱい知った方がいいんだ。
んで、どう書いてあったんだ?」
KP
「そうなの? としょかんない。月にかえるすんでない。ほしのならびちがう」
シローは不思議そうにぺたぺたと模式図を触れる。
佐倉 光
ふーん、絵本か何かかな?
そんな気の利いたものあの本棚にあったのか?
もしかしたらドリームランドの話とか?
別次元の知識なんかがあったりしたのかも知れないな。
あれが読めなかったのは本当に惜しい。
KP
そこで、プラネタリウムのご案内の放送が聞こえてきた。もうすぐ投影があるらしい。
佐倉 光
「お、始まるな。折角だから観に行こうぜ」
こういうの牧志の視界からでちゃんと見えるのかな。

KP
薄暗いプラネタリウムの中は楽しみに待つ子供、興奮して星の話をする子供、世間話をする女性達や半分寝る気の疲れたお父さんなどで半分くらい席が埋まっている。
投影機の蘊蓄たれてる少年もいる。

幸い座席はリクライニングが利くようだ。後ろに人もいないので、強めに倒せば牧志の位置からでも見えるだろう。
牧志 浩太
「始まる直前って、何となくわくわくするよな」
牧志が小声で言う。
佐倉 光
「俺、まともなプラネタリウム初めてなんだ」
牧志 浩太
「あの時は普通のプラネタリウムじゃなかったもんな」苦笑。
佐倉 光
映画館とは少し違う円形の会場や真ん中の投影機、ドーム状のスクリーンに興味津々だ。
どのあたりに座ればよく見えるんだ、などと牧志にこっそり相談しよう。
牧志 浩太
「すぐ前だと投影機が影になるから、真ん中くらいがいいかな。
……たまに連れてってもらったな、プラネタリウム」
投影機の影を見ながら、懐かしそうに呟く。
佐倉 光
おっ、暗いところで怖がる子供用に抱っこできる縫いぐるみが貸し出されている。
シローは平気そうだけど折角だから借りていこう。
佐倉 光
地元のプラネタリウムで縫いぐるみの貸し出しやってたなぁ。
小さいものからほぼ席を占領しそうな大きいものまで色々あった。
KP
ぬいぐるみと一緒にプラネタリウムかぁ、面白い
小さな子供が一緒でも安心ってことかな
ああーなるほど、暗いところ
KP
シローは大きなぬいぐるみを借りてもらって目を輝かせた。嬉しそうに頬ずりしている。
佐倉 光
じゃあ真ん中あたりに座って、シロー共々椅子倒れる角度が深いことに興奮したりしつつ開始を待とう。
もはや保護者ではなくシローと同レベルだ。

牧志心音うるさく感じそうw
KP
開始の放送が入った。
辺りのざわめきが、少しずつ静かになっていく。

太陽を模した円が西へ傾いてゆく。薄明るかった室内が赤く染まり、次第に明るさを減じていく。

案内に従って一度目を閉じ、開くと、そこは一面の星空だった。
大きく見開かれたシローの眼に星が映っていた。
佐倉 光
シローを連れてきて良かった。
シローは過去の自分のように見えて仕方ない。
自分みたいにならないように、色々見せてやりたい、などと思ってしまう。

真昼の星空を見上げている。
投影されているだけだと分かっているのに、感覚はここを夜空だと認識する。
不思議な食い違いを楽しみながら、夢の世界で宇宙に行ったときのことを思いだしていた。
あの時は必死すぎて景色愉しむどころじゃなかったな、とつい少し笑ってしまう。
KP
ぎっしりと詰まった星々で構成された光り輝く河。
穏やかな声で続く解説とともに、星々の中に神話の登場人物が映し出され、物語が語られる。
佐倉 光
半分うとうとしたりしつつ解説を聞きながら星の海を漂う。
宇宙のことなんかは波照間さんと話すまであまり気にしたことはなかったな……
牧志 浩太
胸の辺りから微かな寝息が聞こえてきた。
あなたの規則的な心音につられてか、牧志は寝入ってしまっているようだった。
佐倉 光
牧志がいびきをかくたちじゃなくて良かった。
KP
解説が終わった後、最後に「それでは、全ての星を映し出します」という言葉と共に、これまで描かれていた線や絵がすべて消えた。

砂を撒いたかのような無数の星々が、視界を埋め尽くした。
本来人間には見ることのできない、光に満たされた、重さすら感じるほどの星の海。
佐倉 光
こんな風景を俺は見たことがある。
ドリームランドだと、このはるか先に踊りが好きな神がいるとかなんとか。
そういえば、木星の近くまで飛ばされたこともあったっけ。
色々思い出しながら吸い込まれそうな星の海を眺める。
それは本物ではなくとも美しいと思えた。
KP
やがてまやかしの夜空に夜明けが訪れ、小さな世界が静かに目覚めてゆく。
無数の星々が姿を消して、そこにあるのは平凡な街の朝だった。
佐倉 光
会場がまだ薄暗いうちに牧志を起こそう。
軽く頬の当たりをかるーくぺちぺち。
KP
あなたは牧志を起こそうと考えたが、そうするまでもなかった。

「星! 星いっぱい! いっぱいある!!」
牧志 浩太
「ふぎゃっ!?」

初めてのプラネタリウムに興奮したシローが、あなたのパーカーを掴んでぐいぐい引っ張りだしたのだ。
KP
「まきし! さくら! 宇宙なった! 飛んでた!」
牧志 浩太
「あああやめてシロー伸びる、伸びるから」
佐倉 光
「あああ、落ち着け落ち着け、ってか静かに。静かにしろ二人ともじゃなくて引っ張るなシロー」
慌ててパーカーを隠すように両手で押さえて、シローが持ってた縫いぐるみで前隠そう。
落ち着いたら外出る………
KP
じーーーーっ。
何だか視線を感じる。

「すげー! 絵が喋ってる!」
知らない子供があなた達をじっと見ている!

「どうなってんのそれ!?」駆け寄ってきた!
佐倉 光
「ARだよAR。今流行ってんだよ」
慌てたりしてはいけない。平然と口車に乗せるのだ!
KP
「なにそれー! はやってんの? すげー! 見せて見せて!」
佐倉 光
見せるけど。
佐倉 光
「大して動いてないぜ?」
ちょっと見せりゃ満足するだろ。
牧志 浩太
「……」
KP
「すげー、ぷるぷるしてる!」
あなたが平然と対応しようとしていると、親が気づいて子供を連れ戻しに来た。

「コラ! よその人に迷惑かけないの!
ごめんなさいね、この子が。ほら、行くわよ」
佐倉 光
「いえー、ありがとうございます。
大人から離れちゃダメだぜー」
佐倉 光
「……人間相手面倒臭い」
悪魔ならぶち倒せば済むのになぁ。
佐倉 光
「シローも。あんまり人前で牧志に話しかけんな」
KP
「だめなの?」
シローは不思議そうにあなたを見上げる。
佐倉 光
「普通服は動かないし喋らないの。
牧志が服になってるって他の人にバレたら、牧志が凄く困ることになるし、下手すると戻れなくなるから、他の人には内緒」
そっかー、こんな初歩的なこと伝えなきゃダメだったかー。
これは俺の認識不足だな。
KP
シローは周囲の子供のシャツや服を何度か見回して、しょんぼりと俯いた。

「わかった。ごめんね、まきし」
牧志の頭をシローの小さな手が撫でる。
佐倉 光
「分かればよろしいっ。さあ、行こう」
本日のメインイベントへ!
KP
いざ極地体験!

KP
1階の展示ホールに設置された箱の外では、大きな空調設備が唸りを上げていた。
周囲には極地についての説明パネルや砕氷船の模型などが並べられ、気分を盛り上げる。

箱の扉は二重になっている。以前に行った雪の中の温泉を少し思い出すつくりだ。
佐倉 光
「あ」
そうかー、俺も入らなきゃ駄目なんだよな。
佐倉 光
寒いの嫌い。失敗した。家で氷くっつけるのにしとけば良かった。

ポケットに手を突っ込んで入ろう。
KP
室内に入ると、痛みすら感じるような強い寒さがあなたを襲った。風はない。
牧志 浩太
「寒っ……」
牧志が声を漏らす。
KP
「冷たい! つんつんする!」
シローが楽しそうに声を上げる。

-15℃、と壁の温度計に表示がある。
もう一つ奥の部屋が-30℃になっているらしい。
佐倉 光
「さっむ」
人間がいられる環境じゃない。
つか-30度にこんな格好で入るなんて正気の沙汰じゃないな!
腕をこすりながら次の部屋に進む。
寒冷地の異変にだけは遭いたくないな。
……いやもう遭ったけど。
KP
扉を開けると、大きな氷の塊が柵の向こうに展示されていた。
全身の感覚を縛りつけ閉じていく強い寒さと静寂の中、ライトアップされた氷が脈打つように光る。

それを視界に捉えた直後。
全身を叩かれたように感じた。

激しい痛みと痺れを感じた後、風が吹きつけたのだ、とようやく理解する。

【CON】×5。牧志は【CON】×3
牧志 浩太
1d100 36 CON Sasa BOT 1d100→75→失敗
佐倉 光
1d100 30 Sasa BOT 1d100→90→失敗
KP
再度、風が吹きつける。

あなたの身体はその一度で凍りついてしまったと感じた。
牧志 浩太
「……」
牧志が言葉すら失って、はくはくと口を開閉させる。
KP
もうこんな所に一瞬だっていられない。死ぬ! 死んでしまう!
佐倉 光
その部屋から逃げ出す。
こんな所に一瞬だっていられるか!
俺は暖かい部屋に戻るぞ!
佐倉 光
数値見ると牧志は寒さに弱くなってるんだな。
KP
外へ飛び出すと、一瞬暑いほどの熱を感じた。
生きている!
暖かい室内の有り難みを、あなたは全身で味わう。

改めて説明を読むと、安全のために風は数回吹きつけて止まるようになっているらしい。
牧志 浩太
「はあぁああ……」
あなたの身体が、いや、パーカーも一緒に震えていた。
牧志が外気の温もりを吸収しようと身を震わせている。
牧志 浩太
「はあぁ、生き返った……。あれ、体に直接来るのは辛いな」
KP
そういえばあなたはパーカーを着ているが、牧志はあの風を直接受ける羽目になったのだった。ジャケット無しで。
KP
判定値が異なるのはそういう理由です。
佐倉 光
やっぱりそういう理由か。
すっぽんぽんで受けるみたいになっちゃうんだな。
KP
「冷たいねー!」
シローはにこにこしている。
佐倉 光
「さむ、さむぅぅぅぅぅ」歯の根が合わない。
腕をゴシゴシして足を踏みならす。
佐倉 光
「そ、そうか、牧志は服着てないことになるのか。
それ問題だろ、割と」
牧志 浩太
「い、一応シャツとズボンは着てる感覚はあるから!
どうなってるのか分からないけど!」
牧志がまだ歯をガチガチ言わせる音を立てながら、慌てて補足する。
KP
そういえば牧志がこうなった時、落ちていたのはジャケットと荷物だけだった。
シャツは一緒に取り込まれたのかもしれない。どういうことかよく分からないが。
佐倉 光
「なるほど着たきりになるってことだな!  それも割と問題だろ!
服は着たり脱いだりして体温調節するもんなのに、服自体が体温調節できねーじゃねーか。
寒すぎたら凍え死ぬのかやっぱ!?」
すっかり体冷えたし、暖かいものでも食べに行こう。
ラーメンとか蕎麦とか。
良からぬ相談
佐倉 光
でもってアクシデントでバシャアしてコインランドリー行けば良いんですか?
まだ町駆け回ってないしなぁ。脱いでて風に飛ばされても良いけど。
KP
なるほどそれだ! まさかの分割行動
両方とかどうでしょう? ラーメン食べて暑くなって脱いで、風に飛ばされた後、取り戻した後でバシャァしちゃってコインランドリー
佐倉 光
じゃあそれで!
KP
ok!

牧志 浩太
「凍え死ぬかも。
さっきは鼻の頭が痛くて手足が取れそうで、あのままいたら死にそうだった。風って怖い」
KP
科学館の近くには割と何もないが、少し離れれば飲食店が色々ありそうだ。

佐倉 光
あまりにも寒すぎたので、歩いていて一番最初に見つけた美味しそうなラーメン屋にでも入ろう。
中華蕎麦いいな。あっさりしたやつが好きだ。
食券は普通の二枚、子供セット一枚。
佐倉 光
あっ。目の前で狙ってたボックス席が埋まってしまった。
KP
「いらっしゃーい」
赤を基調とした程よく脂っぽい店内からは、快い醤油と豚脂の香りが漂ってくる。

ボックス席は少ししかなく、目の前で埋まってしまった。
牧志にはカウンターに突っ伏すようにして食べてもらうほかないだろうか。

シローは不思議そうに店内を眺めている。
佐倉 光
「あー、すみません、二つともこっちです」
ひょろっとした色白の青年がそんな事を言ってラーメンどんぶりふたつを目の前に置く。しかも同じ奴を。
佐倉 光
まあ、大食いなのに痩せ型なんてのも珍しくないし。
佐倉 光
シローの目の前に子供用セットを置いてやる。
小さいラーメンとゼリーとジュースだ。
佐倉 光
丼を頑張って持ち上げて牧志を隠しつつ、自分と牧志、交互にラーメンを口に運ぶ。二膳の箸を交互に使って、食べて食べさせ。
佐倉 光
食事に集中、できない!
こども?
佐倉 光
連れているお子様が手がかからない子なのに、子供に食べさせているみたいな体験をしている。
KP
意外な体験する佐倉さん。
佐倉 光
四歳頃まではこんな体験をするんだ……
相手は胸じゃないが。
KP
ですねぇ……

KP
「らーめん!」
シローはきらきらしたゼリーと美味しそうなジュース、初めてのラーメンに目を輝かせる。
ラーメンに早速とりかか…… あっ、こぼしてる。長い麺を食べるのはなかなか難しいらしい。

胸のあたりから、熱いラーメンを啜る音と牧志の吐息が聞こえてくる。
食事に集中、できない!

「兄ちゃん食べるねぇ。子供用のハサミあるけど要るかい?」
あなたが悪戦苦闘していると、盛大にこぼしているシローを見て店主が話しかけてきた。
佐倉 光
「あっ、は、ハイ! お借りしマス! そこに置いていただけるとッ!」
丁度牧志の口に運んでいたところだったので慌てて丼で手元を隠す。
……箸が変なところに突っ込んだ気がする。
牧志 浩太
「()」
何だか言い表しがたい叫び声が微かに聞こえた気がする。
佐倉 光
丼で胸元隠したままでシローの麺ちょっと切ってやろう。
佐倉 光
飯の味がしねぇ……
KP
周囲から「かわいー」だのいう声が、聞かせていないつもりなのだろうが聞こえてくる。
あなたとシローはうっかり注目を浴びている。

「兄ちゃん若いのに大変だねぇ。俺も息子が三歳だか四歳の時に盛大にこぼさせて、思わず息子を叱ったらそりゃもう嫁に絞られてね。知らんかっただけなのにああも怒ることねぇよなあ」

店主が勝手に語りだしたが、こちらはあんまり気にする必要はなさそうだ。
佐倉 光
「ははははははそーですねーうん、子供だからねー、しょーがないですよねーアハハハ」
やらかしたくさい。とりあえず牧志の方はちょっとストップして自分の麺をさっさと食べきり、汁を飲む振りをしつつ牧志の麺を手探りで運ぼう。
すまない牧志。もう急いで出たいんだ。
牧志 浩太
偶に悲鳴が聞こえてくるが些事だ。
KP
シローはちゃんと完食して「おもしろかった!」とあなたに笑いかける。

あなたは逃げるように店を後にするだろう。あなたの苦労をよそに外はいい天気だ……。
佐倉 光
暑い。疲れた。汗かいた。

店を出て思わず反射的にパーカーを脱いで腕に引っかけ……
佐倉 光
なんか忘れているような気がするな?
……あ。牧志。
KP
その時、突風が吹いた。

辺りで悲鳴が聞こえ、帽子や上着を持っていかれた人々が慌ててそれらを追いかける。
あなたのパーカーも例外ではなかった。
牧志 浩太
「うわぁああああ!?」
KP
「まきしー!?」
KP
牧志の悲鳴。シローの叫び。
一瞬のことだった。

あなたの腕にパーカーはなかった。
見慣れたパーカーが、牧志の悲鳴とともに風に巻き上げられてどこかへ飛んでいく!
佐倉 光
「あっ!」
血の気が引いた。道路にでも飛んでいったら大惨事だ!
自分の迂闊さを悔いながら走る。
どうして今日こんなに風が強いんだよ! おかしいだろ!

コメント By.佐倉 光
なんとなく牧志の状態が分かったことで少しずつ大胆になる佐倉。
シローも連れてのんびり休日を愉しみに行くのだった。

中の人としては、初めてシローくんとマトモに絡んで遊べて楽しいターンでした。

TRPGリプレイ CoC『meow!!』牧志&佐倉 2(終)

黒猫が貴方の手の甲を舐めて、顔をこすりつけていた。

TRPGリプレイ【置】CoC『青白い馬』 波照間&東雲 2

「あなたはその時まで一緒にいてくれる?」
「もし、一緒にいられるのなら」

TRPGリプレイ【置】CoC『青に染色』 牧志&佐倉 5

協力なんて存在しなかった。
最初から、対話も、制御も、協力も。

できなかったのだ。

【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト  」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

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TRPGリプレイ ダブルクロス3rd 第九話『枷』 1

「いっぺん捨てられるのは案外楽さけど、拾われたと思っての二度目は結構来るんさ?」

TRPGリプレイ ダブルクロス3rd 番外編

ダブルクロス
番外編 1
■前回ラストで子供たちがみんなでホラー映画鑑賞会していた裏で、大人たちは何をしていたのか……
女二人でひたすら呑んでました。
みたいな。

TRPGリプレイ CoC『meow!!』牧志&佐倉 1

猫とこっくりさんやっている奇妙な青年は、おおいに人目を集めたようだ。