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こちらには
『しんでなんかないよ』のネタバレがあります。
また、シナリオに少し大きめの調整を加えています。

本編見る!

DAY 2

天気:☀️☁

KP
微かな雑音に混じって、穏やかなクラシックが聞こえていた。
外からは鳥の声がする。
目を開ければ、いつもの自分の部屋ではなく、木を組まれた天井が見える。
カーテンの隙間から差し込む太陽の光は、昨日ほどではないが明るい。

正気度減少 -2

おはようございます。今日も一日を始めましょう。

手がひやりとするなと思えば、隣で眠っている佐倉の腕に触れているためだった。
牧志 浩太
なんだか正気度減ったぁ。
やっぱりこれ牧志が狂っているのでは?
牧志 浩太
SAN 63 →61
牧志 浩太
「ん……、」

ぱち、と目が開いたのが一番目で。
知らない天井だなと思ったのが二番目で。
ああ旅行で来たんだっけと思ったのが三番目で。
何だか冷たいなと思ったのが四番目で。

それからようやく、その冷たいものが佐倉さんの手であることに気づいた。

ああ包帯換えなきゃ。
ずっとどこかで気にしていたのか、一番先に浮かんだのはそんな言葉だった。

同時にこのまま微睡んでいたいような気もして、動かない佐倉さんの顔を見たくないような気がした。

でもそこにいてくれていることに安堵した。

身を起こして佐倉さんの様子を見る。
そういえば誰にもばれちゃいけないのなら、玄関からすぐ見えない位置に座っておいてもらった方がいいのかな。
KP
顔色は昨日と変わらない。元々肌の色が薄く、少し血の気を失っただけで真っ白になってしまうのだ。
そんな白っぽい肌に、痛々しい赤が見えている。

頭の包帯まで緩んで中の酷い傷が見えていた。
目のあたりから額を抜け後頭部まで。
血は止まっているように見えるが、広範囲の傷から組織液がしみ出しているし、
髪の毛が包帯の下でしみ出していたらしい血液で固まっている。
今日は風呂に入った方がいいだろう。

そんな状態だというのに、また佐倉は寝坊している。
牧志 浩太
ふと、ちらりと棚に目をやった。

佐倉さんのパーカーや俺の荷物は、やっぱり今でも触れてはいけないと感じるんだろうか。

そうだとすれば、そこには開けちゃいけないことが書かれているのかもしれない。
俺を見てる誰かに目にされたら困る…… こととか。
KP
棚に目をやると、少し怖いような、目を逸らしたいような気がした。
しかしそれは昨日ほどではない。
そこに何があるのか、あなたは知っているはずだ。

あなたが入れたのだ、あそこに。
牧志 浩太
その酷い傷と棚を、少しの間交互に見ていた。
白くて赤い、骨みたいだと思った。

そこにはきっと、怖いけど俺が忘れていて、叩きつけられたくなくて、でも知っているはずのものがある。

風呂に入って包帯を換えたらあれを見てみよう、こっそり。そう決意する。
牧志 浩太
「おはよう、佐倉さん」
牧志 浩太
「風呂、入ろうか」

自然に出せていたはずの声は、また少し震えてしまっていた。
縋るように冷たい手を握る。
KP
佐倉は目を閉じたまま返事をしない。
面倒くさがっているのだろうか。
いつもならこんな状態耐えきれずに自分で入るだろうに。
まあ確かに、酷い傷を洗うと大変浸みるだろうし、怪我をしているときの風呂なんて億劫かも知れない。

好物でも作ればその気になるだろうか。
佐倉が拘る『交渉』と『契約』で。
牧志 浩太
……佐倉さんの好物、か。
そうだな、いいかもしれない。
少なくとも俺の気分は上がる。

台所に向かって冷蔵庫を漁る。
KP
佐倉は食に関しては、どれもどうでもいいと思っているか
何でも美味しいと言うかではあるが……
ジャンクフードばかり食べているくせに、
栄養学的にバランスが良ければ嬉しそうではある。

明らかに好きなのはコーヒーだが、食の好物となるとジャンクフードばかりが浮かぶ……
Uber Eatsなんて来るだろうか、ここに。
KP
牧志が作ってくれるご飯は基本何でも美味しいと思ってます。
求めればやけに詳細で具体的な感想も言う。というか分析し始める。
牧志 浩太
楽しい。少しくすぐったそうに楽しげに聞いてる。分析結果を生かしてみたりもする。
牧志の料理が上達しそう。
自分の世話をするためのちょっとジャンクな料理だったのが、そのうちやたらバランスのいい料理を作れるようになってそう。
KP
【アイデア】
牧志 浩太
1d100 90 【アイデア】 Sasa BOT 1d100→77→成功
KP
そういえば、とあなたは思い出す。

いつか、あまり時間が無くて忙しい合間に食事を作ったとき、
黄身が破れて半分スクランブルエッグみたいになってしまった目玉焼きだけが乗った皿を出した事があった。
佐倉は礼を言って珍しいなと笑い、しばらく皿を懐かしむような目で見つめていた気がする。

滅多にないことだが、彼自身が料理をするときも目玉焼きの頻度が高い気がした。
本人は面倒だからだと言っていたが、何か特別な想いでもあるのだろうか?
牧志 浩太
冷蔵庫からなんとなく卵を出して(色々使えて便利だからつい手に取る)
フライパンを見下ろして何を作ろうかと考えたとき、不意にそんな思い出が頭を過った。

ぽたり。

あれ?
昨日ちゃんと洗って乾かしたはずのフライパンに水滴が落ちている。おかしいな。

何だか視界がぼやけて目を擦る。
そうだ、目玉焼きにでもしようかな。
KP
フライパンはよく手入れされているというほどでもなかったが、幸い焦げ付くようなことはなかった。
卵が二つ、フライパンの上でじゅうじゅうと音を立てて焼け、部屋にかすかに香ばしい香りが漂う。

佐倉はベッドに横になったまま、ぼんやりとしているようだった。
何か思い出しているのだろうか。


ラジオからはノイズ混じりの流行歌が流れていた。
牧志 浩太
なんとなく鼻歌を歌いながらぱぱっと目玉焼きを二つ、作る。
皿に盛って軽く醤油を回し、鰹節を振りかけてテーブルへ。
KP
そういえば、カーテンを開けたりする?(描写上の確認)
牧志 浩太
カーテンは開ける。外の光が見たい。
KP
牧志くんは醤油と鰹節派か。
牧志 浩太
鰹節は波照間の癖(鰹節と魚系の出汁よく使う)が混じっています。醤油はどっちの嗜好なのか謎。
KP
薄曇りの空の下、深い森のみどりは朝の光で明るく見えた。
人の気配はない、『ふたり』だけの空間。
明るい新人歌手の希望に満ちた歌声がノイズに埋もれていった。

テーブルに皿を置いても佐倉は起きてこない。
また実力行使で起こすしかないようだ。
牧志 浩太
「佐倉さん、できたよ。食べよう」
そう声をかけると同時に抱え上げようと動いていた。
佐倉さんをベッドから抱え上げ、テーブルの前に座らせる。

今日もコーヒーを淹れて佐倉さんの傍らに置いた。パンを横に添えてから、そういえば鰹節にパン合わないな、なんてことを思い出す。

二人で向き合って、頂きます。と呟いた。
KP
自分の食事をとってふと見れば、佐倉の皿もコーヒーカップも空になっていた。
好物に喜んでいるのだろうか。
佐倉が本当に嬉しいときなんかは、素直に言葉に出せないことが多かったのをあなたは覚えている。
……最近はそうでもない気がするが、何も言わないのはきっとそういう事だろう。
KP
最近はちゃんと素直にお礼とか言うからね。
牧志 浩太
佐倉さんも随分言葉が出るようになってきたなぁ、と最近のログを見てて思います。二人とも結構変化してる。
KP
最近メガテンのログ読んで割と別人レベルになったなと思いました。
牧志くんは心配な方向に別人レベル度が上がっている最近……
牧志 浩太
牧志はすっかり一般人じゃなくなっちゃった……
強くもなっているし日常の解像度も上がっているんだけど、あの夜に引きずられていたときとは別の意味ですっかり一般人じゃなくなっちゃった。
牧志 浩太
「ご馳走様。佐倉さん、どうだった?」

佐倉さんは客観的な感想をくれるものだから、何か聞きたいときは美味しい美味しくないというより、そう聞くのが癖になっていた。聞きながらレパートリーを増やしていったり栄養のバランスを取ってみたりするのは、ちょっと楽しかった。

もっとも最近は、わざわざ聞かないことの方がずっと多かったけど。
KP
問いかけに答えはなかった。
余韻に浸っているのかも知れないし、
後でやたら詳細なレポートが上がってくるのかも知れない。
目玉焼きに? そんなこともある。
牧志 浩太
聞きながら佐倉さんをソファに座らせ、玄関から直接顔が見えない方向を向かせる。
見慣れた姿勢になるように、ちょっと工夫してみたりする。
KP
大分包帯が緩んでいて、運ぶ間にほどけてしまった。
小さな出血は止まっているが、刺激を与えるとまた傷が開いてしまいそうだ。

玄関からはソファはのぞき込まないと見えない位置だ。
ソファの後ろに窓があるが、そこのカーテンを閉めてしまえば完全に外からは見えなくなるだろう。
牧志 浩太
皿を片づけて洗って、風呂の浴槽を洗ってスイッチを入れる。

……よし。
お湯が溜まるまでの間に、あれ、見よう。
覚悟を決めて棚に向かう。
牧志 浩太
ソファの後ろにある窓のカーテンを閉め、なるべく自然な感じで佐倉さんの身体にブランケットか何かをかける。
牧志 浩太
それから、棚に向き合う。
穏やかな音楽も暖かい陽射しも遠く、どこか冷たい所にひとりで立っているような気がした。
KP
棚には、佐倉の黒いパーカーが丸められて入っている。
あとは、あなたと佐倉のポーチだ。

パーカーを出すと、すぐ不自然さに気付く。
丸められているだけなので出すときに自然にほどけたが、
左側の袖が内側に貼り付いてしまっている。

大量の乾きかけた血がついているのだ。

そういえば……

さすがに怪我の治療だけで手一杯で上着の洗浄まで手が回らず、
ひとまず周りに血がつかないように丸めて入れたのだった。

これは、『事故の痕跡』だ。

ポケットには何も入っていない。
KP
ポーチは、あなたのものは少し汚れているが普段通りに見える。
佐倉の物は……血がしみ込んでいるし、手応えもおかしい。
持ち上げるとがしゃがしゃときしむような金属音が聞こえる……
牧志 浩太
……自分の身体で外からの視線を遮るようにして、佐倉さんのポーチを、開ける。
KP
佐倉のポーチを開けると、無惨に破壊されたPCやスマートフォンの残骸が出てきた。
それらはひしゃげ、ガラスはひび割れ、このものたちが受けた受けた強烈な衝撃を想像させた。

いや、思い出させた。


事故だ。
このポーチは、その一番酷く損傷を受けた場所に挟まっていたのだ。

あなたは、ひしゃげた車体から必死で佐倉を引っ張り出したことを思い出す。

ざっくりと割れた頭の傷から血がとめどなく流れ、
呼びかけにも返事がなくなり、
体が冷え、目から光が失せ、呼吸と脈が希薄になり、
彼は動かなくなった。
牧志 浩太
「……あ、」

思い出した。
思い出してしまった。

動かないんじゃない。
動かなくなってしまった。
その冷たさを腕に感じながら、呆然としていた。

何も、できなかった。
諦めたくないのに、その手段さえなかった。
きっと諦められないだろうと思っていたのに、どうしようもなく何もできなかった。

ありふれた、何の神秘も、脅威もない、儚さだった。
だからこそ、だからこそ、何も、できなかった。

そこにいる人が何もできないまま、いなくなっていくところを。
ゆっくりと視線が腫れてゆくところを、ずっと、ずっと最期まで。

側で、見ていたんだ。
牧志 浩太
ああどうして忘れてたんだろう。最期までそこにいたはずなのに。目が壊れたように涙が止まらない、あの時は涙を流せるほどの実感さえなかった、きっとこんなことになるなんて、佐倉さん自身も想像してなかった。
牧志 浩太
ふらつく手で自分の日記帳を手に取り開く。
それでも助かったんだろう? 佐倉さんは。そう思いたかった。

この際それだけでよかった。
始まりの事故
牧志 浩太
これだけのピンチをくぐり抜けた二人にとって、神話事象とか悪魔にやられたとかじゃなく、「事故」っぽいのがまたどうしようもなくて重い

ありふれた死は見知った、当然のように覆せないものであるという点で奇妙な死よりも重いんですよね。しんでなんかないけど。

そう思うと、巣窟になっちゃった牧志の所の佐倉さんが死んだ理由は、神秘に取り戻せる可能性を求めてしまうような、「ふつうのことから外れた死」だったのかもしれない。
KP
うーん。波照間さんたちを巻き込まざるを得ない。すまない。
牧志 浩太
お、いいんですよ。巻き込んじゃって。
KP
どうしたって、牧志と佐倉が少しの間でもシロー置いて二人で出かけるわけないよなと。
牧志 浩太
ですよねぇ。
そのまま何かに巻き込まれることも多い二人だから、絶対に託していきそう。
(あと波照間か東浪見あたり来たら面白いなーとは思ってた)
KP
東浪見くんも呼べるんだよねー今は。シローの目問題なくなったし。
東浪見君にしようかなぁ。
牧志 浩太
なんですよね。日常という意味では東浪見は面白いし、佐倉さんのより深い仲間という点では波照間も面白いと思います。
KP
四人でバンガローにでも泊まってもらおうかと。キャンプでもいいけど。
牧志 浩太
なるほどー。
東雲さんいるとしたら男女混合なこと考えると、バンガローの方が手軽ですかね。テントだと複数要るし。
KP
牧志、佐倉、東浪見、シローで行くのがいいかな?
牧志 浩太
だと割と話が楽になってきますね。
牧志、佐倉さん、波照間、シローでも問題ないけど。
KP
でもよい。
取り残されるシローくんの面倒を見るのは誰だ選手権。
牧志 浩太
東浪見はなんか子供の面倒みるの手慣れてそう。
KP
そうなんですよ。
なんかだかより頼りになりそうで。
牧志 浩太
面倒見がよくていい人枠に落ち着きがちな男、なんやかんやで近所の子供の面倒みたりしてそう。しかも体力あれだから一日駆け回っても元気。
シローの好奇心に付き合って思いっきり遊んで世話して、でも当人元気!
家を出た兄貴たちのとこの子供預かったりとか普通にしてそうな感じある。

KP
あなたの日記には、あなたの記憶に鮮明に残っている日常から、
東浪見交えて皆でキャンプに行く計画を立てる様、
シローがはしゃぐ様などが記されている。

つつがなく準備が終わり、東浪見と合流して目的地に向かったこと。
到着時の、シローにあれを見せてやろう、これも経験させたい、といった話し合いの様子などが書かれている。

そこからがらりと様子が変わる。
字は明らかに落ち着きを失い歪んでいる。
文章ではなく、ただのメモだ。
事故
 佐倉さんが■■ 大怪我
KP
とだけ記入されている。
自分で書いた文字に見えるのに、全く覚えがなかった。
牧志 浩太
ああ、そうか。
牧志 浩太
夢にも見てなかっただろうな、とどこか他人事のように感じた。
少し現実逃避が始まっているらしい。
牧志 浩太
そこに何を書こうとしたのか、何となく分かるような気がしたけど、見なかったことにした。

佐倉さんは事故に遭って大怪我をしたけど、助かった。それで身動きが取れなくなって、ここにいる。
牧志 浩太
そうしよう。そうするべきだ。きっと。

きっと。
迷いを払って言い聞かせる。
牧志 浩太
悪いけどシローのことはもう少し東浪見に任せよう。佐倉さんの怪我が治ったら、たっぷり礼をしないと。
KP
その次のページが破られている。
どうやらここがテーブルに置いてあったメモらしい。

事故の後、誰かからあれを聞いて、何よりも大事なことだと確信して書き記したのだ。


あなたの脳裏に誰かの言葉が蘇る。

「死なせたくなければ俺の言う通りにしろ」

何故かその記憶には、何か強く得体の知れない感情が纏わり付いていた。
牧志 浩太
強い、強い感情。
その正体が、何だったのかすら分からなかった。
その強さに、自分で戸惑った。

でも、死なせたくなければ、と言った。確かに聞いた。
それなら、きっとこうするべきなんだ。

少なくとも、そうしないべき、っていう理由はまだない。
牧志 浩太
「よし」
自分のジャケットでそれらを包み、何かから隠すようにして棚に押し込む。
牧志 浩太
「風呂に入って包帯換えよう。
そろそろ風呂沸いてるはずだし、佐倉さんもあれじゃ痒いもんな」

意識して口に出す、痛みを震えを迷いを払うように。
そういう風に動いて喋っていれば、きっと信じていられる。
置きでできること
牧志 浩太
こういう時に表情つけられるようになっててよかったなと思いますね
KP
ですねぇ。
牧志 浩太
牧志の一人称では表現できないこと(発言と思考と表情の乖離)が表情差分で表現できる
KP
そうそう。いいですよねー!
牧志 浩太
ですねー! これはいい
KP
佐倉が一切喋らないものだから、牧志くんの感情を受け止めたりラリーしたりできず、ただただこぼれるままにしなきゃいけないの、割とKPももどかしいというか居たたまれないというか!
牧志 浩太
そう、佐倉さんと会話できないの思った以上に寂しいなってPLも! 思う!
つい前の(佐倉さんと二人で行動してる時の)ログとか読んじゃう

KP
風呂には十分な湯が貯まっていた。

佐倉は少し青ざめて見えた。寒いのかもしれない。
包帯はほどけ、ずり落ちている。
どうせまた自分で動く気はないのだ、風呂にいれてやる必要があるだろう。
牧志 浩太
「佐倉さん、風呂沸いたよ」

棚に背を向けた。
部屋のカーテンを閉じる。

呼びかけ、傷に触れないように抱え上げる。
二人分の換えの下着やら何やらを身体の上に乗せ、一緒に運ぶ。
包帯も換えなきゃいけないし、下着以外はリビングでいいや。
牧志 浩太
「湯を溜めるのって面倒だけどさ、たまに浸かると気持ちいいよな」

風呂場の鏡を覗いて、笑えているか確認する。
ああ、ひどい顔だな。意識してもう少し、口角を上げる。
暫く鏡と睨めっこして、ようやく笑えた。
牧志 浩太
カーテン閉じたのは単純にパンイチになるからです。
KP
風呂は温かく、湯の温度もこんな山中とは思えないほど安定していた。
二人で入ると風呂場は狭かった。
だがそのため、やる気がなさ過ぎる佐倉がかえって安定して壁に寄りかかれた。

傷口をそっと洗うと、赤黒かったり白っぽい黄色かったりするものが少量流れてゆく。

佐倉は痛みに声を上げることも、顔を歪めることもなく、じっと耐えていた。
いつか、痛みには慣れている、と言っていたのを思い出すかも知れない。

冷たく感じる体を湯に沈めると、少し血の気が戻ったように感じた。

あなたも体を洗ったりする?
牧志 浩太
冷たい身体が湯の温度で温まると、そこに生の気配のような幻を感じられて、少し気持ちが和んだ。

自分も身体と髪を洗って、一緒に湯に浸かる。
涙の跡で酷いことになった顔を湯の中でほぐして、大きく息を吸う。
KP
湯の中で体が触れても、もう冷たいと感じることはない。
血で固まっていた髪の毛はほぐれ、
暖かい湯で温まった佐倉の体は血の気を取り戻し、赤みが戻っていた。
声を上げることもなく、体や手をゆらゆらと揺らしながら
湯の温度をしみじみと楽しんでいるように見えた。

リビングから、楽しげなトーク番組が雑音交じりに聞こえていた。
牧志 浩太
ああ、生きてる。
強張った自分の肩から力が抜けていくのと同時に、自然にそう感じられた。

生きてくれているならもうそれだけでいい、そんな気さえした。
牧志 浩太
トーク番組の楽しそうな声と湯の温かさに身を任せて、暫くその時間を楽しむ。
KP
風呂から上がってソファに座らせると、佐倉は随分元気そうに見えた。
しかし体が温まって眠くなったのか、ソファに沈んだまま身を起こそうとしない。

この状態で包帯を巻き直そうと思えばひと苦労だ。
少しの間でもしっかりと自分で座っていてくれればいいのだが……

その気がないのでは仕方ない、何とか自分の肩にもたれさせ、片腕で保定しながらやるしかないだろう。

【STR】×5
牧志 浩太
1d100 55 Sasa BOT 1d100→34→成功
KP
うまいこと安定させて作業を続けることができた。
何しろ二度目だ・・・・・・・、慣れもある。

前回はなかなか上手くゆかず、床や家具が大量の血で汚れたのを思い出した……。
牧志 浩太
「……?」
前回?
前にも同じようなことをしてたような気がする。

そうだ、前もそうだった。
ここだって見覚えがある。

俺はまだ何を忘れてるんだ?
牧志 浩太
佐倉さんの身体を支えながら、傷が見えないように包帯を巻き直し、その上から服を着せる。

風呂に入る前と同じように、外から見えない位置に座らせて、その前になんとなく何かを置いた。
牧志 浩太
全部済ませて、小さくくしゃみが出て初めて自分が服を着忘れていたことに気づく。おっと。

服を着終わって、ようやく閉めたカーテンを開けた。
KP
昼過ぎという時間ではあるが、外は少し光が陰っているように思えた。
牧志 浩太
もう昼か。昼食作らないとな。
何だか、大したことはしていないのに、案外やることが多いようにも感じる。
KP
血まみれの包帯や血に汚れたタオルが残っている。
これを何とかする必要があるだろう。
佐倉は……手伝う気がないようだ。こんな薄情な奴だっただろうか。
牧志 浩太
「……あー」
包帯を換えた結果を見て、思わず声が漏れた。
普通に気が重い。そういえば昨日の洗濯も残ってる。溜めるんじゃなかった。
牧志 浩太
って、陰ってる? 一雨来るのか?
慌てて窓の外を確認する。曇ってきてるようなら気が重くなってる場合じゃない。
KP
雨が来そうという感じではないが、体感よりもずっと時の流れが早いように感じる。
慣れないことをしているためだろうか。
佐倉にやる気がなさ過ぎるせいで、ひとつひとつのことにやたらと時間を取られる。
牧志 浩太
「洗濯機って偉大だって気づくな……」
洗濯板を扱いながら呟いた。
KP
洗うべき物を洗うと、もう全身疲れ切っていた。
洗った物を干さなければならない。
幸い風呂には乾燥機と物干し竿がついていた。
大した量は干せないが、ここだけでも何とかなりそうだ。
牧志 浩太
「お、乾燥機ついてる」
すごいな、これはラッキーかも。そういえば出るわけにいかないんだから、物干しも室内だな。

室内が湿っぽくなるのは何となく嫌だったから、乾燥機の存在は助かる。干すのも地味に大変だし。
KP
一般的なログハウスじゃないなこれ。金持ちの別荘レベルだ。
ちっちゃいしテレビとか無いけど。
牧志 浩太
ですねぇ。貸別荘の豪華なやつかも。
KP
まあそんなこともあるさ。
牧志 浩太
ログハウス風貸別荘、ありそうですしきっとあるある。
貸別荘は一度使ったけど楽しかったなぁ。
KP
洗濯物を干し終わってリビングに戻ると、また更に少し日が陰っていた。
今日は薄曇りだ。今は少し雲が厚い時間なのかも知れない。

体が何となくだるい。想像以上に疲労が溜まっているようだ。
牧志 浩太
「ふぁ……、」
疲れてきた。昼食……、何か簡単なものでいいか。
レトルトカレーか何かあるかな。そこに冷凍の野菜でも入れてレンチンして食べよう。
KP
レトルトカレーは数種類、何点かはご当地物の高級カレーなんかもある。冷凍野菜はそれなりに数が揃っていた。都会から離れた場所では頻繁な買い物などできないためだろう。

佐倉は風呂で温まって怪我をきちんと塞がれたためか、リラックスしているようだ。
KP
佐倉を座らせてレンチンしたカレーを並べていると、ラジオから明るい声が聞こえてきた。

「え~ラジオネーム、朝活さん。
最近妻と朝起きたら少し家の周りを散歩するようになりました。
日光を浴びてのんびりと過ごす時間が楽しみに。
ぜひ、みなさんの小さな楽しみや嬉しかったことのエピソードがあれば聞きたいです。」

パーソナリティたちは、家族や友人、恋人と過ごす時間、季節の行事や日々の些細な幸せなど、様々な話題を提供しては盛り上がっている。
牧志 浩太
「……色々あったよな、佐倉さん」
そんな声を聞きながら、ふっと言葉が口をついた。
牧志 浩太
「徹夜で暗号解きあったり、夜にいきなり思いついて、車走らせて海までドライブに行ったり……、図書館行ったり、旅行したり……、コード書いてる佐倉さんを横で見てたり、緋寒と深山と東浪見と遊んだり……、猫になった後に銭湯行ったり……」

疲労で朧気になっていく意識のままに、カレーを口に入れながらぼんやりと思い出を話した。
KP
一つ思い出を話すたび、佐倉の皿のカレーは消えていった。
スプーンが汚れることもなく、少しずつ、少しずつ。

佐倉は黙ってあなたの話を聞いているようだった。
閉じた目の向こうで、彼は懐かしんでいるのか。笑っているのか。
彼は何も語らない。

カレーが全てなくなる頃、ラジオはまたノイズの海に沈んだ。

もう疲労感は耐えがたくなっていた。
今すぐに眠ってしまいたい、と思えた。
牧志 浩太
「……、」
ふっと言葉が途切れる。
何か言いかけて、何だか喉が詰まったように、何も出てこなかった。
牧志 浩太
「ふぁ……、」
代わりに欠伸が漏れる。
ああ、せめて皿を片付けて洗わないと。
そう思う理性は保たなかった。眠気が地面に引きずり込んでくるようだ。
牧志 浩太
「寝よう、佐倉さん……」
半分言葉がふにゃふにゃともつれた。どうにか力を振り絞って佐倉さんをベッドへ運び、布団をかけて一緒に寝る。
半分無意識に、隠すようにその頭を抱え込んでいた。
KP
佐倉の体温は風呂から上がった直後から比べると大分下がってはいたが、まだ暖かかった。まだ。

深い海に沈んでゆくように、眠りは速やかに訪れた。

KP
ジリジリと壊れたラジオのようなノイズ音が脳を支配していく。
モノクロの映像に映るのは彼がもぬけの殻になった日のことだった。


きっかけは些細なものだっただろう。
シローに色々な物を見せてやりたい、というだけの。
いつの間にかそれが、東浪見を交えたキャンプになっていた。

計画を立てるだけで楽しかった。
シローは些細な話にも目を輝かせた。
牧志 浩太
楽しかった。
今度こそ何も起きないよな? なんて、冗談のように言い合った。
KP
キャンプ地について、テントをたてて二日目の夕方に、佐倉と二人で買い物に出た。
予報にない雨がきそうだったので、予定を変更して物資を仕入れに行く間、
東浪見とシローはテントを片付けてバンガローで待っていてもらう。
そんなちょっとした、後に笑い話になりそうなハプニング。
牧志 浩太
「おやつか何か買って帰ろうか」
そんな話をしていた。
KP
帰りの運転手はあなただった。
車で山を登っていると、天候が急変し視界が悪くなった。
雨がフロントガラスへと強くあたる。
残念だけど仕方ないから明日の朝には帰ろうか。そんな話をしている時だった。

閃光が視界を埋め尽くす。
真っ白な視界に遅れて響く轟音。
劈くブレーキ音とタイヤと道路の擦れる音、枝を踏み潰す音にガラスの割れる音。

佐倉が声を上げた。と同時に体に走る衝撃で意識が飛んだ。
牧志 浩太
一瞬で視界がひっくり返った。

そうだ。
俺が。
俺が、あのとき。
KP
暗い視界の中、雨の音が鮮明になっていく。
目を開けぼやけた視界の中、膨らんだエアバッグ越しに見えた光景は真っ赤だった。
痛む体を引き摺って手を伸ばして触れた佐倉の体は、打ちつける雨に負けないほど冷たくなっていた。
牧志 浩太
「佐倉……、さん……?」

一瞬、何が起きたのか分からなかった。
冷たい水が靴の中に染み込んでくるのと同時に、じわじわと目の前の光景が染み込んでくる。

それからは無我夢中だった。
必死で佐倉さんをひしゃげた車の中から引きずり出した。
涙でぐしゃぐしゃになった声で救急車を呼ぼうとした。
ただ目の前のものを受け止めるのが怖くて、怖くて、赤い色を塞ごうと追いかけた。
事故
牧志 浩太
運転手牧志だったのか!!
これはよけいに辛いぞ
KP
牧志くんは悪くないよ……
佐倉の怪我左って事はそうだったんだな、と。
牧志 浩太
なるほどなぁ……。
これしばらく車を運転できなくなっちゃうんじゃ。
KP
牧志くんに落ち度があったかどうかは関係なく、しばらく無理になりそうね。
牧志 浩太
なりますね。運転席に入ろうとすると思い出しちゃう。
KP
運転手佐倉にしようかとも思ったんだけど、
普通運転手は咄嗟に自分を守る方にハンドル切るはずだから、
説得力のためにはこれしか無かったんだ。
牧志 浩太
よけい辛くていいと思います。
KP
エアバッグあるのに死にかけてるんだから余程当たり方が悪かったと思われる。
牧志 浩太
変な挟まれ方をしちゃったか、エアバッグあっても圧迫されるほど強い衝撃で座席が潰れてしまったか。

KP
助手席に座っていた佐倉は頭と腕に深い傷を負い、出血も怪我も酷く、呼吸も脈も浅く、ほとんど死んでいるように見えた。
とっさに当てたハンカチはみるみる深紅に染まった。

不意に。佐倉に何かが入り込んでいった。そう、見えた。
それはどうしようもなく、忌まわしい記憶を刺激した。

誰かの気配がして顔を上げれば、ローブを着た男が立っていてた。
男は堅い命令口調で言った。

「死なせたくなければ俺の言う通りにしろ。
体を持ってついてこい」


男はあなた方の車にぶつかって大きく凹ませた車の所へゆき扉を開け、
荷物を取り出して、あなたを招いた。

あなたは呆然としながらも急速に理解する。
全てはこの男のせいだ。
こいつがハンドル操作を誤り、ぶつかって来たのだ。
牧志 浩太
その時に憎悪を覚えたかどうかは……、分からない。
覚えたかもしれない。きっと覚えた。怒ったことは間違いない。
感情が強すぎて記憶が焼けついている。

それでも、手の中の佐倉さんはまだ生きていた。

冷たい身体を抱え、両手を真っ赤に染めながら、誘われるように歩き出す。
KP
腕の中で冷たく重くなってゆく佐倉を必死で引きずるように運んだ。

KP
ようやっとこの小屋に着いたら、考える余裕も問いただす間も与えられず、
まずは佐倉の傷を塞ぐよう指示され、夢中で処置を行った。
その間に、あの『約束』をさせられたのだ。

日記にあったことを書き込んで、約束を忘れないように書き記してテーブルに乗せ、
気がついたときにはもう男の姿は消えていた。
それから汚れた場所の掃除をし、荷物を棚に放り込んで、その頃にはもう色々限界だった。

いつ眠ったのか覚えていない。
ただ、佐倉を一人で寝かせてはならないとだけ思った。
そうするしかなかった。
牧志 浩太
ゆっくり受け止める時間すらなかった。受け止めることもできなかった。無我夢中で走るしかなくて、佐倉さんは生きてる、生きてる、死んでないって、ずっと唱え続けていた。

離したくなかった。
ただただ、離したくなかった。
離したら本当にいなくなる気がした。

怖気のするような冷たさのことなど考えたくなかった。佐倉さんの身体が鉄の塊のように重く冷たく感じた。
ストッパー
牧志 浩太
「怒り」は牧志の根底だけど、「憎しみ」にはあんまり慣れてないから、留めておける範囲をあっさり超えて記憶がサチっちゃう。
KP
※今までに感じていた謎の忌避感は、記憶がはっきりしていなかった牧志が、それでも約束を守り、佐倉の死から意識を遠ざけようとした結果生じた物です。
よって今後は発生しません。

PL的には、ルールを理解する前に外に出てしまわないためのストッパーです。
牧志 浩太
なるほど。
佐倉さんの死と向き合いたくなくて健忘症でも起こしてもろとも忘れてしまいつつ、それでも約束を守ろうとしたんだろうなと思ったけど、あながち間違ってなかった。
KP
理由は約束を守るためであるけど、死を理解したくないという思いにも合致したんだろうな。
牧志 浩太
ですねぇ。

KP
突如扉を叩く現実の音があなたを叩き起こす。
ノックが聞こえている。何者かが玄関に来ているようだ。
壁に掛かった時計は夜の九時を指していて、外は真っ暗になっていた。
牧志 浩太
「う、あぁ、」
思い出してしまった記憶が指先を震わせた。身体が酷く酷く重かった。

俺が、俺が佐倉さんを。あいつが。
両手を真っ赤に濡らした血の感触が怖気のするような冷たさが包帯の感触が鉄の塊のような重さがまだ残っていた。

ありふれた出来事の受け入れがたさと突然さが、まだ腕の中に残っていた。
身体を温めて寝たはずなのに、全身が雨に濡れ続けたかのように重かった。

ああ、でも、駄目、だめだ。
出ないと不審に思うかもしれない。中に入ってくるかもしれない。

誰にもばれてはいけないってあいつは言った。呻きながら身体を起こす。

佐倉さんの身体に布団をかけて、玄関へ向かう。
扉を開けずにノックを返す。
KP
若い男の声がドアの向こうから聞こえてくる。
「こんばんは、近くで事故があったと聞いたためこちらに参りました。
破損した車があったのですが、何かご存知ありませんか?」
牧志 浩太
一瞬迷った。事故のこと、言おうか。でもそうしたら状況調査しに中に入ってくるんじゃないか。説明とかさせられるかもしれない。あの場所に戻るわけにはいかない。

それに、あの男に何かあったら不味いかもしれない。
牧志 浩太
よし。
牧志 浩太
「そうなんですか? いえ、何も。しばらくここにいたので」
全力で何気ない声を作り、そう返す。
記述について
KP
※KP的にこれ問題だよなと思うので、一つ大きな訂正。
約束を「外に出るな」から「玄関を開けるな」に変更させて下さい。
本来シナリオでは「小屋の外に出てはいけない」が約束なのです。
牧志 浩太
おおっと、分かりました。
お手数おかけいたします。
「開けるな」だとより孤独みが上がるなぁ。
KP
これでPLには開けるだけでまずいのが分かっちゃったけど、どうせ開けようとすると【アイデア】的なの入るし……
牧志 浩太
外に出るなだと開けるだけでまずいとは分かりにくいけど、【アイデア】的なのそこで失敗したら問答無用でアウトなのかなぁ。
KP
そうなんだよなぁ。
いや、「これ約束的に本当に開けていいのかな?」と思うだけなんですよね。
外から人入れるなとは言われてないし、開けて対応するだけなら問題なく見えちゃうじゃん……
牧志 浩太
なんですよね。むしろ人を玄関で迎えて、姿を見られつつ死んでないように会話するのがミソとかかと思った。
KP
そう考えてもおかしくないのよー。
牧志 浩太
ダイスロールなしで普通にその文章が入ってくれるなら、PL的には「まあKPのストップかな」とは分かるかな? >開けていいのかな

それもダイスロール失敗すると挟まれない、とかったら厳しいなと思うけど。
KP
一応なしで入っては来るけど、そうすると「PCの判断」じゃなくて「PLの判断」で止める必要が出てくるなーと。
牧志 浩太
確かに。「PCに情報がない・RP的に蓋然性がないからこれは判断に入れないでおこう」ときっちり分けようとしたがためのアウトじゃ厳しいし、演出的なミソがどっちなのか分かりにくいし、ここは明確になってた方がいいかもですね。
開けようとした瞬間に「PCがそう思った」と入るんならアリかなってライン。

KP
お話をお伺いしたいので扉を開けてくれませんか?」
男の声は諦めが悪い。
「あなたおひとりですか? 他にいませんか?」
牧志 浩太
「俺ともう一人です。今は寝てます」
玄関を塞ぐように扉にもたれて返す。
KP
「すみません、扉を閉めたままではこちらが話しにくいんですよ……
もう一人の方にもお話聞きたいんで、開けて貰えませんか?」
雨音の向こうに、男の声が紛れながら聞こえた。
牧志 浩太
「それはすみません。すっかり寝てしまっていて、もう遅いですから」
時間の遅さを少し強調して、窘めるような声を出す。

少し申し訳なく思ったけど、佐倉さんの命がかかってるらしいから、こちらも開けるわけにはいかない。
KP
「寝てる? 違うでしょう? 血の匂いがします。隠してますよね?」

〈聞き耳〉をどうぞ。
牧志 浩太
1d100 97 Sasa BOT 1d100→7→成功
KP
男の声だったものは、ひずんであやふやになっていた。
性別も良く分からない。
牧志 浩太
「……!」
不意に怖気を感じた。何だ、この声。

そうだ、俺は最初何を考えてた?
何かが俺達を監視してるんじゃないかって、そう考えてたんだ。

扉の向こうに、いるのか。
その、何かが。

……棚の中にあった雑貨の中に、ロープや針金はあっただろうか。

あれば、そろりと扉の前を離れて、それらを扉と何かに巻きつけて扉を開かないように固定する。
置き楽しい
牧志 浩太
とりあえず明確になったおかげで牧志の行動がちょっと狂気じみました。楽しい。
開けるなの昔話っぽい展開、再び!(1回目はそういえば初置き卓でしたね、あの時は置き卓という遊び方を教えてくれてありがとうございます!)
KP
置きやりたい! って話に乗って下さって有り難うございます!
牧志 浩太
いえいえ、あれも楽しかったしおかげで今すっごく楽しい!

KP
ロープがあったはずだ。
足音を忍ばせ、扉の前を離れようとしたその時、また声がした。

「処理に困ってイる、でしょう? そゥでシょう」

それは軋んだ耳障りな音だった。
牧志 浩太
「誰だ」
答えず、ただ問う。

扉に強くロープを巻きつける。
間違ってでも開かないように。誰かが開けないように、開けてこられないように。
KP
「死体、くだサぃ な」

あなたがロープを巻き付け、結ぼうとしたその時
どん! と一際大きく扉を叩かれる。
続くように何本もの手が指先がカリカリと扉を引っ掻く音が聞こえた。

真っ暗な部屋に窓の外の長い影がゆらりと映りこむ。
到底人間とは思えない歪な形をして、蠢いていた。

SANチェック成功時減少 1失敗時減少 1d3
牧志 浩太
1d100 61 《SANチェック》 Sasa BOT 1d100→70→失敗
1d3 Sasa BOT 1d3→2
SAN 61 → 59
牧志 浩太
「ないよ、そんなものは」
怒りを込めた声で、静かに断言する。
牧志 浩太
「ここにいるのは、生きた人だけだ」
KP
外にいるなにものかは幾度も幾度も扉を叩き、引っ掻く。

「クださ ぃよ 死体 ほしィ」

叩く。引っ掻く。

腐った肉の臭いがする。

「いら ナぃでしょ そんナも ノ」

叩く。引っ掻く。

執拗に、執拗に、執拗に。
牧志 浩太
そんなもの。
その言葉に激しい怒りが巻き起こった。

要らないものか。
牧志 浩太
「要るよ。居る」
KP
どれだけ続いたのか。突然ぴたりと音が止んだ。

「また、来ますね」

『若い警官』の声がして、ドアの外の気配は消え去った。
牧志 浩太
「はぁ……、驚いた」
扉にずるずるともたれ込む。
牧志 浩太
「なんだあいつ……、狙ってるのか。失礼な奴だな」
改めて開かないように、扉にロープを巻きつけて固定する。
牧志 浩太
「でも、そうか。それは、こうなるよな」
何となく自分のしていることに確信が持てて、方向性が定まった。
それが何となく、へたり込む身体に力を与えてくれる気がした。
あけるな
KP
これ開けるだけで【STR】判定発生して、失敗するとKPCロストしちゃうからなぁ。
やっぱり「開けるな」って警告にすべきでしょ……
牧志 浩太
なるほどなぁ。
昔話っぽくて面白い展開だけど、それならやっぱりここは「開けるな」であるべきだなーとこちらも思います。
「外に出るな」じゃイマイチらしくない。
KP
そうなんだよなぁ。いいんじゃないかなはっしゃくさま的な奴で。
牧志 浩太
そうそう。そこを脳内変換するのがキモとは思えないし、何より「開けるな」の方が「らしいな」と思います。
KP
「開けるな」ではいけない理由が、ここでちょっと事故らせたい 以外に見当たらなくて。
牧志 浩太
ですよねぇ。
事故らせたいにしては、ミスリーディングの方向が分かりにくすぎるし。
KP
なんかちょっとホラーなシーンが背景でぐだっちゃって申し訳ない。

確信
KP
今回の話始まって、ちゃんと会話した(?)のがここで初めてだという……
牧志 浩太
しかし会話の相手があんまりにあんまり。
KP
「死体くれ」「ない」「残念」
会話成立したよよかったね
牧志 浩太
「残念」よりもっと粘ったじゃん!
でも実は「そうかこれでいいのかも」っていう確信を牧志が得られたのが一番大きいので、その意味ではよかったねかもしれない。
佐倉さんじゃないけど、敵と戦い方が明確なら戦えるんですよ。
KP
確かに。
牧志 浩太
得体の知れない約束を守るべきなのか、このままここにいていいのか、呑まれるべきじゃないんじゃないか、ずーっと迷ってましたからね。
あとやっぱり、正しく怒れたことも大きいかな。本当にもう望みのない死体だったとしても、「いらない」なんてことはないんですよ。
KP
それはそうだ。
怒ってくれてありがとう。
牧志 浩太
いえいえ。
牧志の根底は怒り、ちゃんと怒れるなら立てる。

KP
もう開いたカーテンの向こうには何も見えない。
起きたばかりだというのに、安心したら眠気が押し寄せてきた。

こんな時にも佐倉は暢気に眠っている。
ラジオからはピアノの音が途切れ途切れに聞こえていた。
牧志 浩太
「疲れた」
ドアに巻きつけたロープを確認して、もう一眠りすることに……ああ、その前に皿だけ洗っとこう。

うつらうつらしながら皿を洗う。
ああ、夕食抜いちゃったな、まあいいか。歯磨きしないと。
KP
眠ってろくに体力を使っていないせいだろうか、
それとも酷い空腹をおぼえるような時は過ぎてしまったのだろうか、
さほど酷い空腹はおぼえていない。
眠気がある内に眠ってしまえば無視できるだろう。
牧志 浩太
のそのそと台所へ行って二人分のコップと歯ブラシを取ってくる。
KP
歯を磨いてやると、佐倉はまた口をゆすがずに水を飲んでしまう。
牧志 浩太
まあいいか、毒じゃないだろうし。……毒じゃないよな? 食器用洗剤は飲んじゃだめっていうけど。
牧志 浩太
自分も歯を磨いて、眠気を逃さないうちにベッドに入る。今から夕食を作る気は起きなかった。
牧志 浩太
「おやすみ、佐倉さん」
起きたときよりも少し安心して力の抜けた腕で、佐倉さんの頭を抱えて眠る。
KP
佐倉の肌は、あなたの熱をうけていたせいか、まだ少し温かかった。

コメント By.KP
あの時何が起きたのか。
肝心なことは曖昧なままでものごとが少しはっきりと見えてくる。

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本作は、「 株式会社アークライト  」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

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