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こちらには『blood red decadence』
ネタバレがあります。


本編見る!


4日目 夕方


KP
目覚めると、大分気分は落ち着いて、だるさも抜けていた。
牧志 浩太
薄暗い書斎の中で目を覚ます。
鼻先をくすぐる本の香りに、また泣きたい気持ちになる。

なあ、爺ちゃん。俺さ、友達と喧嘩しちゃったよ。
それも、俺が一方的に悪いやつ。絶対しちゃいけないことをした。
なあ、どうしたらいいかな。分かってる、どうにもできないってことは分かってるんだ。

爺ちゃんならなんとなく、今できることをしろ、って言う気がしてた。

今、できることをしよう。
目の前に、できることがあるんだ。佐倉さんを殺したくない、俺だって死にたくない、それだけは確かだ。
KP
ふと、思い出すかも知れない。
鎖で繋いだままの佐倉、食事はどうしただろう。
……生理現象は?
牧志 浩太
そうして立ち上がろうとして、
それどころじゃないことを思い出した。

そうだ、自分がいつも腹減ってるもんだから、忘れてた! 佐倉さんの食事、それからトイレ!

慌ててキッチンに向かって食事を用意しようとして、一瞬料理の概念が分からなくなってて手間取る。
あれ、この塊は何だっけ、これをどうしたら食べられる? ようになるんだっけ。

結局、肉にちゃんと火を通そうとして、ちょっと焦がした。
優先順位
KP
さ「さ、先に鎖を外してくれぇ……!」
牧志 浩太
うっかり慌てた牧志の優先順位がズレたせいで佐倉さんが大変なことに!
KP
生理現象なくなっちゃってるっぽい牧志君……優先順位が分からない!
牧志 浩太
生餌の血液しか摂取してませんからね。水も飲めないということは生理現象…… なさそう。
KP
佐倉はしこたま吸われて水分不足だからなんとか……!

KP
なんとかかんとか食べ物? が完成した頃、二階でなにやら叫び声が聞こえていた。
切羽詰まった、必死な叫び声。
あなたを呼んでいる!
牧志 浩太
「佐倉さん、ごめん!」
トレイに乗せた食事を持ったまま、部屋に駆け込む。
佐倉 光
「おせーよ何してたんだよ! 鎖! 鎖外してくれ!」
KP
佐倉は首のベルトに手をかけて必死の形相だ。
顔は赤く、今まで随分逃れようとしていたのか、首元に擦り傷ができている。
牧志 浩太
「あ、あ、うん!」
駆け寄り、慌てて首輪を外す。
っていうか首輪の鍵近くに置いとけばよかった、普通に!
KP
首輪が外れると同時、佐倉は猛ダッシュで隣の部屋に駆け込んでいった。
エリザの服があったという部屋だ。

随分時間が経っても部屋から出てこない。
牧志 浩太
「……?」
少し心配になって隣の部屋へ行ってみる。
扉を軽くノックする。
KP
扉に触れた瞬間、あなたの手に衝撃が走る。
弾かれる。この扉の装飾には、あなたを拒む物がある、とあなたは知るだろう。
牧志 浩太
「痛っ」
思わず顔をしかめて手を見る。
そうか。吸血鬼除けか、これ。
それこそ、殺されそうになった時の避難所だったのかな。

もうちょっと早めに見つけておきたかったな、と苦笑する。
せっかく作った食事だけど、出番、ないかもしれないな。
扉の横に食事の入ったトレイを置いて、扉に背を向ける。

「佐倉さん。俺、書斎の中を見てるよ。
食べ物用意したから、扉の横に置いとく。
俺、しばらくこっちには来ないから、腹減ってるようだったら食べて」
KP
トイレ入ってただけなんだけどね佐倉w
牧志 浩太
結果として客間の情報が共有できて牧志はまたちょっぴり誤解した。
KP
〈聞き耳〉とか……まあいいや、夜に仲直りしてもらおう。
牧志 浩太
ですな。夕方に書斎探索もできることだし、タイミング的にもよさそう。

KP
あなたは意識が戻った。
どうやらトイレに座ったまま寝落ちしていたらしい。
佐倉 光
あれ、俺トイレに行きたくて……あれ?
KP
「俺、しばらくこっちには来ないから」
外からそんな声がした。
傷ついたような声だったように思えた。
佐倉 光
扉を開けてみる。
KP
向かいのドアが丁度閉じるところだった。
扉の前には食事が乗ったトレイが置いてある。
佐倉 光
あっ。そうか。誤解されたなこれ。
俺この部屋について共有してなかったし、逃げ込んだと思われたのか。
KP
しかし今のあなたには目眩、頭痛、吐き気などの症状があり、あまり大声を出したり移動するのは辛い。
〈応急手当〉で原因が分かるだろうか。
佐倉 光
1d100 40〈応急手当〉 Sasa BOT 1d100→54→失敗
何だか分からないが、もう少し休まないと無理そうだ……
食事のトレイを部屋に運び込む。
牧志らしくないな、こんなに焦がしてるなんて。

こちらの部屋なら机があるので食事が摂りやすい。トイレも洗面もあるので水も飲めるし遠出の必要がない。水を飲んで、食事を摂って、ドアを開けてもう少し寝よう。

牧志には、後で話せばいいか……

KP
あなたはラヴァルの書斎と思われる部屋に再度踏み込んだ。
明かりを付けると、その蔵書の量に圧倒される。
書物だけではない、紙類なども散乱して荒れていた。
目につくのは、本棚、書斎机、そしてあなたがさっき枕にしていた、うずたかく積まれた本の山だ。
牧志 浩太
「うわ、すごい量だな」

荒れた書斎。
佐倉さんの話、それからあの記述。
地獄へ落ちるだろう、そんな諦めた一言。

この人も、きっと最後まで何とかする方法を探していたのかもしれない。

それなら、ここにはあの人が最後までもがいた軌跡があるんじゃないのか。情報を集め、調べ続けて、最後まで。
きっと、俺と佐倉さんとでそれを見直せば──

きっと、何か。あの人が見つけられなかったものが。

夜が来る前に。

まずは、書斎机を起点に情報を探してみる。
KP
綺麗に整頓された机の上にはいくつかの本が開いて置いてある。
中に、研究資料なのだろうか、繊細な字で丁寧に綴られた一冊のノートがあった。
▽研究ノート
ニーオス・コルガイに生命力を奪われると、身体がしわがれ劇的に年を取っていくらしいが、どうも私にはそのようなことは起こっていない。
さらに、妻の血液を飲んだが妻は吸血鬼化していないところを見ると、この「吸血鬼病」と今の私の状態は違うように思える。


一度、自身の精神に集中した時、私の中に巣食うニーオス・コルガイの精神に接触したことがあった。
奴は非常に傷ついており、回復に全ての力を使っているように思えた。

これらのことから思うに、私の生命力を吸う力も残っていないのではないだろうか?
そして、その半端な力がこの 私を吸血鬼化させているのではないだろうか。

私がエリザを殺してしまう前に、この事態を何とかしなければ。
牧志 浩太
「!」
半端な状態。半端な力。あの本にあったのとは違う可能性。
それなら唯一という言葉だって、その通りじゃないかもしれない。

それで、それから、どうなったんだ。少し焦りを覚えながらノートをめくる。
ニーオス・コルガイは現在の宿主から新しい宿主へ移動することが出来る。この能力から強制的に宿主を変えせる方法を見つけることが出来た。
これでエリザを吸血鬼にする事も考えたが、我々は互いに弱りすぎた。危険すぎる。
二人で生きる方法を見つけるのだ。たとえ罪を犯しても。
外に出て誰かに移すのは駄目だ。吸血鬼が人を見境なく襲うような事態は避けなければならない。
私の中のこれが万全の状態まで回復したなら、人の手に負えない状態になるのは想像に難くない。
《ニーオス・コルガイの強制移動》と、気候を操って人を呼び寄せる《人寄せの呪文》が書いてある。
これは到底許される行いではない。
私はエリザの愛を失うだろうか。
それでも私は二人で生きられるなら
KP
そんな記述でノートは終わっていた。
スライム
KP
※本の山の情報がこっちにくっつきました。
牧志 浩太
洞川さんが巡礼中のせいで「スライム喚んで移す」とかいう方法を思い浮かべてしまいました オデェ
丁度渋谷の女神転生TRPG関連の地を洞川さんが巡って写真を上げてくれていました。
KP
弱点がなーい
一撃死は狙えないけど弱体化するか?
牧志 浩太
弱点は狙えないけど弱体化するかもしれない
KP
残念ながら手持ちカードにスライムはないなぁー。
牧志 浩太
残念。ラミアさんにくっついたらえらいことになる。
KP
倒せない!!

牧志 浩太
「……、」
重い葛藤を感じる文章を、じっと、追う。

何が起きて、何がされて、俺と佐倉さんに何が押しつけられたのか。
これでようやく、全部繋がった。

分かるよ。分かりたくないけど、でも分かってしまう。
こいつはその時に取れる最善の手段を見つけて、そして二人で生きる道を見つけたんだ。

きっと今はあの貧血を治療してもらいながら、野菜とお粥でも味わってるだろうな。

……ああ、何か食べたいなあ。

唯一の味を求め続ける渇望の合間。概念さえ分からなくなりかけている、温かいものの記憶が微かに蘇った。

……懐かしがってる場合じゃないや。これは俺をこの状態から元に戻せる、ようやく見つけた手段だ。
ずっとずっと欲しかった希望だ。

他に手掛かりはないか。
この呪文について、この生き物について、何か情報はないか。何か何でもいい、情報は力だ。
組み合わせれば突くべき穴が見える。

それから佐倉さんと、昨日話しそびれたことも含めて、全部話して突き合わせて。
取れる道を探すんだ。
部屋で一緒にパズルやってた、あの時みたいに。

本棚を調べる。これを補強する情報はないか。別の方向から見られる情報はないか。
何か、この人が諦めた道はないか。
KP
〈目星〉または〈図書館〉をどうぞ。
KP
割と情報共有できてないんだよね、今回。
実は佐倉何も分かってない。
牧志が何かにとりつかれて吸血鬼になった
ここの住人もそうで、もしかしたら立場押し付けられたかも、くらいしか分からない。
牧志 浩太
なんですよね。情報共有できてない。
牧志がこんなんなったせいで、横にいて話せるのにまともに情報共有できない、一緒に動けないという珍しいケース。
一周目に比べて、同じ場所を一緒に探索できている機会も少ないんですよね。(探索場所が増えたとかもあるけど)
牧志 浩太
1d100 89〈目星〉 Sasa BOT 1d100→64→成功
KP
本棚のなかに、栞が差し込まれた医学書を見つけた。

腹腔神経叢(ふくくうしんけいそう) の項目だ。
大体みぞおち辺りにあり、血管が多く集まっている箇所だ。

あなたは思い出すだろう。
この言葉には見覚えがある。
牧志 浩太
思わず、腹を押さえた。
そういえばずっと、腹の奥にいる、と感じている。

そういえば、太陽神経叢が弱点だ、ってあったな。医学用語なのかどうかあの時は迷ったけど、もしかして何か関係あるのか?

その内容を詳しく読んでみる。
腹腔神経叢(ふくくうしんけいそう)は横隔膜下あたり、いわゆる鳩尾あたりにあります。
太陽神経叢とも呼ばれ、太陽光線が放射状に広がるように、神経が広がりを見せているためこの呼び名がついています……
KP
そんな説明が書かれている。その本をよく見るなら、別ページの人体図解の該当部に、その部位を示す書き込みが赤いペンで追加されていた。
KP
杭以外は出尽くしたかな。
牧志 浩太
かな。
KP
情報共有してくれれば、銀の杭探せると思う。探す理由思い付いた。
牧志 浩太
ほほう。
今度こそ全部情報共有して、二人で前を向きたいですね。
仲直りと情報共有と方針決定、夕方と深夜の間にやることが多いぜ! 楽しみ!

KP
ドアが遠慮がちにノックされた。
佐倉 光
1d3+2 回復値 Sasa BOT 1d3+2→1+2→合計3
HP 7→10
牧志 浩太
「佐倉さん」

扉から距離を取って返事をした声には、これまでにはなかった僅かな明るさと、少し怖れるような感情が入り混じっているだろう。
佐倉 光
扉を開けるなりまくしたてる。
「飯、美味かったよ。サンキュ。
あと、違うからな。誤解だからな。俺あの部屋に逃げ込んだ訳じゃなくて。
あの部屋にもトイレがあるんだよ。そこで座ってたら気絶したらしくてさ。そんだけだから! そんだけ!
まああそこに魔除けがあるかもって言わなかったの、悪かったけどさ」
牧志 浩太
「え、気絶!? 大丈夫なのか佐倉さん、いや大丈夫じゃないだろうけど。

俺が誤解してた間にそんなことになってたのか、何かあっても俺入れないし、大変なことにならなくてよかった」
佐倉 光
「あー、だから、ごめん。
割と余裕ないんだよ、色々。
あんまり冷静になれてない」
ものすごく気まずそうに目をそらす。
牧志 浩太
つられるように、強ばっていた口元から力が抜け、なんだか困ったような笑みになる。

「いいよ、当然だ。血は吸われるしめちゃくちゃ痛いし殺されかねないし俺は話聞かないし、あんなだし」

紙束の中に座り込む。
開けた扉を境界に、向き合う。

「話してくれないんじゃないかって覚悟してたから、話せるだけでも十分かな。
共有しそびれてることが、色々あるんだ」
佐倉 光
「ああ、わかった。教えてくれ」
KP
佐倉はそのまま廊下に座った。
その顔色はずいぶんよくなっているように見えた。
佐倉 光
「お前が悪いんじゃない。お前にそうさせている奴が悪い。
そいつを二人で何とかするんだ」
牧志 浩太
「ありがとう。……少しよくなってるみたいで、よかった。

まず、あれから随分と色々分かったんだ。俺に取り憑いてるのがどんなものか、ってこと。
俺がこんな状態になってるのが、本来の状況じゃないかもしれない、ってこと。

それから」

一度、息を吸う。

「あいつが、俺にそれを押しつけた方法も。それはつまり、俺からも移せるかもしれない、ってことだ」
佐倉 光
「移せる……
なるほど。
とすると、一旦俺に移して様子を見る、なんて手段もあるか?
詳しく教えてくれ」
かくしか?
牧志 浩太
「ああ。
あいつらもそれは考えたらしいけど、特にエリザさんがだろうな、弱りすぎてて危険だと思ったらしい」
かくかくしかじかと、知っていることを全て話します。
牧志 浩太
※発想の取っ掛かりとして、牧志にスライムの話させようかな
KP
ピコーン
生餌を悪魔に移したらどうだろう!
あいつら生命力高いし、俺よりはもってくれるんじゃないかな!
マカミン すうとこない
ラミア  逆に吸いながら締め殺される
牧志 浩太
すうとこない 笑った 確かに

佐倉 光
「他に移して殺す、ってのが最善かな……
他の人間を呼んで移すという手段なら俺たちで立証済み、確実にイケると……
人を呼ぶ魔法はある、とはいえ近くに人がいないと無理そうだしなぁ。さすがに町からは呼べないだろ」
腕組みをして唸る。
「移すにしても相手をある程度行動不能にする必要があるし、失敗したら色々終わるな。生餌を移して……ってのも、考えない方がいいな。逃げられたら終わりだし」
ここまで言ってから、言い訳がましく付け加える。
佐倉 光
「倫理的にどうとか言うなよ? あくまで取れる手段を挙げてるだけだからな
牧志 浩太
「分かってるよ、大丈夫。

どうだろうな。思えばあの雨、なんだか不自然だったんだ。
町からは厳しいにしても、ゴンドラが復旧すれば、こっちに来る人間はいるかもしれない。
佐倉 光
だいたいあいつらどうして移してすぐにとどめ刺していかなかったんだ。俺もお前も寝てたんだろ。
こんなの押し付けといて慈悲とかねぇよな。殺してないって自己満足かよ。くだらねぇ」
牧志 浩太
自己満足、かもな。
それか、止めを刺すことにもリスクがあると思ったのかもしれない。
突然目を覚まされたらご破算になる、とかさ」
佐倉 光
「相手が確実に倒せるほど弱ければ?
例えばそうだな、虫とか動物とか……
虫は無理かなぁ、あいつら血の構造が違うし……
肉食ったナイフで刺すってのがなければ、生餌を動物に移すって手もなくはなかったけど、肉食動物の牙とか……」
佐倉 光
「いや、何でもない、忘れろ」
尊厳的にも現実的にも色々問題がある。
牧志 浩太
「人間に一番近いのは豚だ、って言うけどな。
生餌って、動物にも移せるのかな。
移せる…… ん?

んー……
悪魔って人間扱いなのかな。
彼ら、肉体が消えても魔界に戻るだけなんだろ、確か」
佐倉 光
「悪魔か……
ラミアもマカミももしかすると協力はしてもらえるかも知れないけど、
バカ強いから本気で吸血鬼になって襲われたら勝てねぇぞ。

スライムかゾンビでもいれば試すのも……」
KP
佐倉が言葉を止めた。
牧志 浩太
「……何か、思いついたんだな?」
佐倉 光
「いや、ただ……
移す対象、人間じゃなきゃ駄目なのかどうか、って前提だったけどさ。
そもそも生きてなきゃ駄目なのか、って思ってさ」
牧志 浩太
「! そうか、地下室の死体……!」
はっと目が輝く。そうか。
動物か悪魔に移せないのかって考えたけど、死体に移すことができれば、死体ごと銀の弾で撃てば倒せるかもしれない。
死体なら、最初から死んでるんだ。
生きてたその人には悪いけど、それは今更だし。

「でも、それならどうしてあいつは試さなかったんだ。
失敗したのか? 試す余力がなかったのか?」
あれだけ葛藤した人が、どうしてそれを先に試さなかったんだ?
佐倉 光
「さあな……やってみて無理だったのかも知れない。
思いつかなかったのかも知れない。
でなければ、確実に上手く行く方法を選んだに過ぎないのかも知れない。
俺達にはそんなことは分からないよ」
佐倉 光
「けど、試してみる価値はあると思わないか。
死体にうつってそのまま死んでいてくれれば破壊するのも簡単だろうし、
悪魔化したとしても弱点は割れてるんだ」
牧志 浩太
「ああ、賛成。
もし失敗しても、その方法はだめだったって分かる。
行けるかもしれないんだ、試す価値はある」

僅かに明るさを宿していた声が、明確に力を取り戻し始めていた。それは夜が近づいているからかもしれなかったし、それ以上に、今度こそはっきりとした希望が見えたからかもしれなかった。
佐倉 光
「ひとつ気になっていることがあるんだよ。
客間で見つけたメモのことだ」
牧志 浩太
「客間で見つけたメモっていうと、聖水とか日の光とかいう、あれか?」
佐倉 光
「ああ。あれは吸血鬼を殺そうとした方法だろう?
現実的で簡単な方法にはバツがついてた。
実際に試してみたんだろうな」
佐倉 光
「で、印がついていなかったのが銀の弾丸と銀の杭。
実際、銀の弾丸が込められた銃があったことを考えると、
銀の杭もここにあるんじゃないかと思えるんだ……」
牧志 浩太
「……そういうことか。間近から杭刺してOKなら、銃より使いやすいかもしれないな」
佐倉 光
「つーか、ヴァンパイアに打ち込む物っていったらトネリコの杭だよなぁ……」
牧志 浩太
「うーん、まあ吸血鬼っていっても宇宙吸血鬼らしいし。宇宙吸血鬼って何だよって感じだけどな」



4日目 深夜


佐倉 光
「……よし。じゃあ、行くぞ」
立ち上がって牧志を招く。
牧志 浩太
「……ああ」
頷いて、立ち上がって……、歩き出そうとして、少し躊躇う。

気づけば、すっかり陽が落ちているのが、感覚だけで分かる。昼夜の変化を肌で感じ取ることを、当然のものとして認識している。
KP
佐倉が向かうのは寝室だ。
牧志 浩太
「……その、佐倉さん」距離を取ったままその後ろについて、声をかける。
佐倉 光
「何だよ。そろそろ時間だろ」
牧志 浩太
「……うん。
こいつをもし追い出して、死体に入れられたとして、ゾンビになったそいつと戦うかもしれない、わけだよな。

佐倉さん、ラミアさん呼べそう?」
佐倉 光
「さあ、マグネタイトに余裕はあったと思うけど、こういう時って役に立たないことが多いからな……」
牧志 浩太
「そうか……。ラミアさん呼べるなら、佐倉さんに戦うの任せて俺は寝てるってのも考えたんだけどな」
吸血
KP
そちらから言い出す流れを考えていたなら引っ込めるけど。
牧志 浩太
お、じゃあ、牧志が微妙に話を振ろうとしかけてるところに佐倉さんが重ねる感じでどうでしょう。
KP
それでよいですよー。
そもそもそろそろ牧志の食事時間だから行こうって誘ってんだ。
牧志 浩太
おっ、ではそれで。
牧志は佐倉さんがそのつもりで言ってくれてることを、ちゃんと受け止めきれてない感じですね。
KP
まあ、苦手なあいつが出てきても今回はおとなしくしといてやるわ。
あいつも理性働くみたいだし。

佐倉 光
「それはそれでいいけど」
佐倉 光
「いや、ちょっと勘違いしてないか?
まず移す呪文を覚える必要があるんだろ?
今日は無理だ無理」
牧志 浩太
「あ、いや、そうじゃない。ごめん。

ラミアさん呼べるなら、今日は佐倉さんに客間で寝てもらって、佐倉さんの体力を養っとこうと思ってたんだ。
あの客間にいれば、安全みたいだからさ」

そこまで言って、少しまた言いよどむ。
「でも、それが無理なら、俺も動けるだけの体力を残しておいた方がいい。

そのためには……、
佐倉さんに、血を吸わせてもらう必要がある。

あんなことの後に、悪いけどさ。
真夜中になる前なら、俺も少しは正気を保ててる……、と、いいんだけど」

あまり自信はない。
今でさえ、本当に冷静に考えてそう言っているのか、少しわからない。
佐倉 光
「だから行こうって言ってるだろ。
吸血しないでいたら明日、呪文覚えるとか戦うどころじゃなくなる」
佐倉 光
「あいつも頭は働くみたいだから大丈夫だとは思うけど、
正直仲良くなれる気はしない」
佐倉 光
「どうせ血をやらなきゃいけないなら、
俺の精神衛生のために、お前がいい」
牧志 浩太
「……! ごめん、ありがとう。
そうだな、それなら早めにしよう」

佐倉さんの後ろについて、寝室の扉をくぐる。
今の俺のままでいられるようにと祈りながら。

KP
佐倉は深呼吸をしてベッドに寝転んだ。
佐倉 光
「……よし、いいぞ。やってくれ」
心臓が跳ねる。死を予感して暴れる。
大丈夫、こいつもあいつも俺を殺さない。落ち着け。
ちっとばかり痛いのは予防接種かなんかだと思え。今日を乗り越えれば何とかなる。逃げるな。
牧志 浩太
今日は獲物が大人しい。横たわる姿を見てそう思ってしまい、佐倉さん、と頭の中で言い直す。

腹の奥で食欲が歓喜に暴れている。五感が満ちつつある夜の気配を感じ取り、これでいい、と訴えている。

「……佐倉さん」
確かめるように名を呼んで、シャツの襟を開いて首筋を露わにする。
大丈夫だ。まだ、ちゃんと名を呼べている。血管の走る位置を指先で撫で、爪の先で数度つついて、まだ反応が強くなさそうな場所を選ぶ。拍動を指先に感じて期待が高まる。
佐倉 光
首を探られると背筋がぞくぞくした。
昨日の記憶が頭をよぎる。
首に食いつかれ、いつ終わるとも知れない拷問を受けるのだ。
終わるときは死ぬときかという恐怖に溺れながら、友の名を呼び、呼び続けても何も変わらないことに絶望し、気をそらすために頭に浮かぶ知識をひたすら垂れ流し、死にたくないと訴える。
砂漠の中を追われた。瓶の中で絶望した。恐慌の舞を踏みながら闇に飲まれた。
牧志 浩太
甘い匂いに溺れる。
急激に、自分が何物だったのか分からなくなっていく。獲物の血の味と澄んだ夜気の匂い、それ以外の感覚が掴み取れなくなっていく。

変わる、という感覚はなかった。
前みたいに気がついたら切り替わってしまっているということはなくて、ただただあったはずのものが掴み取れなくなって、その代わりに違う感覚を差し込まれて、その違う感覚に従って感情が理性が変わっていく。

怖い。
取り返しのつかないことをしている気がした。
それきり戻れなくなるんじゃないか。そんな恐怖心が唇を震わせた。

脈打つ血管に牙を這わせる。
佐倉 光
またあれを味わうのかと思うと、突き飛ばして逃げ出したくなる。もう遅い。決めてしまった。
恐怖心が口から漏れた。

「怖いんだよ、牧志……
お前はそこにいてくれ」
牧志 浩太
舌で軽く位置を決めて、

怖い、
そのとき、夜気の中に俺の名が混じった。

「いるよ。
俺は、ここにいる」

佐倉さんの手に、手を重ねる。
大丈夫。
何かに変わってしまっても、何に戻りたかったのか思い出せなくても、目の前にいるのが誰かってことを、まだ覚えてる。

そう祈りながら首筋を貫いた。
KP
押し殺すのに失敗した悲鳴が飛び出し、あなたの手に佐倉の爪が傷を付ける。
体が押さえきれぬ痛みに跳ね、震える。
あなたの首に冷たい雫が流れ落ちた。

かすれた声がつぶやき続けている。
「大丈夫」「大したことない」「上手く行く」
そんな言葉を、きれぎれの悲鳴の合間に、呪文か何かのように。
牧志 浩太
甘い芳醇が思考を見る間に埋め尽くしていく。

これで最後のはずだという願いと、これで最後ならもう少し味わっていたいな、なんて甘えた考えが同居する。
悲鳴を聞き続けている耳に痛みと歓喜が湧き上がる。
佐倉さんを苦しめたくない俺は、同時に獲物の苦痛を歓喜する俺で、大事な友達は同時に大事な獲物だった。

早く終わってくれ、早く、朝を。
もっと味わいたい、もっと、夜を。

赤い流れの中で入り混じるそれはどっちも俺の思いで、考えで、もうそこに区別はなくなっていた。

抵抗を奪うためなのかここにいると伝えるためなのか、辛うじて佐倉さんの手を握っていた。

KP
二人とも怖いんだなぁ。
前回の、信頼で決意したのとはまた趣が違ってよい。
牧志 浩太
ですねぇ。今回は絶妙にすれ違っているし、互いに怖いし、ほどよく通じ合えていないけど前を向こうとするあたりが、前回とだいぶんテイストが違って楽しいなと思っています。
KP
あ。
お香使ってないなw
牧志 浩太
あ、素で忘れてた
KP
流れ的に使ってたことにしてもいいけどね。二人とも割と余裕あったし。
牧志 浩太
お、ではそれでお願いします ありがとうございます
KP
佐倉が気を落ち着けるために、寝っ転がる前に使ったんだろう、お香。

成功時減少 1失敗時減少 1D3
佐倉
 HP 10→6
 《SANチェック成功時減少 1失敗時減少 1D3
両者【CON】×5で成功するとSAN値減少を1軽減
牧志 浩太
HP 7 → 11
1d100 60 CON Sasa BOT 1d100→98→致命的失敗ファンブル
牧志 浩太
減少できなかった
KP
あらまあ
数値的なペナルティはございません。
牧志 浩太
はーい
牧志 浩太
1d100 69 《SANチェック
佐倉 光
1d100 69 《SANチェック
佐倉 光
Sasaくん寝てる
牧志 浩太
寝てる
牧志 浩太
Sasa BOT 1d100→11→成功
1d100→61→成功
SAN 69 → 68
佐倉 光
1d100 30 CON Sasa BOT 1d100→1→決定的成功クリティカル)!
牧志 浩太
極端!

コメント By.KP
ようやくほの見える希望
トラブルから生まれる緩和
牧志は歪んだままで、それでも少しずついつもの距離を取り戻してゆく二人。

TRPGリプレイ【置】CoC『ワンナイトショット』牧志&波照間&佐倉 3(終)

「あー……、もしかして佐倉さん、牧志のグラスに盛ったな?」
「盛ったなんて人聞きの悪い。入れ物変えてもらっただけですけど?」

TRPGリプレイ CoC『レッド・グランド・セパレート』牧志&子供佐倉 4(終)

「逆恨みする先が違うのほんと困る……」

TRPGリプレイ CoC『meow!!』牧志&佐倉 2(秘匿オープン版)(終)

黒猫が貴方の手の甲を舐めて、顔をこすりつけていた。

【クトゥルフ神話TRPG】
本作は、「 株式会社アークライト  」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』の二次創作物です。

Call of Cthulhu is copyright ©1981, 2015, 2019 by Chaosium Inc. ;all rights reserved. Arranged by Arclight Inc.
Call of Cthulhu is a registered trademark of Chaosium Inc.
PUBLISHED BY KADOKAWA CORPORATION 「クトゥルフ神話TRPG」


マーダーミステリー リプレイ『アンドロイドの告解』1-1

ほぼ初のマダミスでみんな右往左往。

TRPGリプレイ CoC『蒼天のシラユリ』草加&八重山 1

「どうしましょう。私、ペーパードライバーなんですけど」
「本当に動きゃしないわよ、いくらなんでも」

TRPGリプレイ CoC『対の棲みか』『第一話 霧謬の見』春日&唐木 1

『えっ、なにこれ……』
『……何が起こってるんだろう……?』