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こちらには『刻の牢獄』
ネタバレがあります。

本編見る!
KP
9月9日の朝。旭町キャンプ場での宿泊2日目。
あなたは目覚めた。
今日は午前中は多少曇っているが、夕方から晴れるようだ。
そんな気になるかどうかはともかく夜中は晴天の予報であり、写真を撮ったり天体観測をするなら絶好の天気だろう。

※特に何かする希望がなければ夜まですっ飛びます。
また、いちおうこのままこの地を立ち去る事もできます。
波照間 紅
ぱちり、と目が開く。
穏やかな空を見上げても、胸にまだ痛みが残っていた。

その痛みを忘れる気にはならなくて、テントの中で窓から見える空を見上げて少し、ぼんやりとする。

クーラーボックスからいくばくかの肉や野菜と米を取り出して、焚火を作り朝食にする。
煙の消えていく先を、ひとり眺めた。

それからは風車や時計館をまた訪れたり、あの食堂で夕食を摂ったり、昨日やったことをなぞるように過ごすだろう。
夕飯時
波照間 紅
そういえばバーベキューしそびれてたなって。
KP
傷心で立ち上る煙を眺めるのってなんかより寂しいな。
それはそれとして中の人はバーベキューが羨ましいです。おなかすいた。
波照間 紅
実はこちらも描写していてすごくバーベキューしてぇ~ってなりました。
メスティンの中でぷくぷく言う白米の音を想像してもうだめ
KP
具体描写! だめ! 食べたくなっちゃうでしょ!
波照間 紅
既になっちゃった!

KP
曇り空のもと、時計館はかわらず時計の音はさせず、オルゴールの優しい音色だけが響いていた。
時計館に館長の姿はなく、三階の時計は、なにかが欠落して沈黙を守っているのだった。

夜、あの食堂では、何も言っていないのに小鉢がおまけで出て「まあ、そんなこともあるよ」と訳知り顔で言われた。
波照間 紅
出てきた小鉢に苦笑しつつ、手を合わせて頂く。
こういう時は、人の優しさと気配が嬉しい。
KP
山菜と肉そぼろの小鉢は、しっかり味がついていてご飯が進む味だった。

今晩コスモス畑には行きますか?
波照間 紅
行きます。

波照間 紅
望遠鏡と三脚を担いで、今日もコスモス畑に行く。

彼女がもしそこにいたら何と言うか、道中にずっと考えていたが、とうとう答えは出なかった。
東雲視点(ネタバレ)
KP
波照間がコスモス畑を訪れた。
東雲 圓華
風車の裏に立っている。
今は会えない。怖い。

KP
では、昨日彼女が来た21時頃になっても、彼女は現われなかった。
降るような星空の元、さざ波のような虫の音の中、あなたはただ一人空を見つめるだろう。
波照間 紅
そんな気はした。

あれは、はっきりとした拒絶だった。今更姿を見せてくれるかもしれないと思っていた自分の甘さを思い知り、コスモス畑の中に座り込む。

諦めきれなくて、深夜になるまでそこにいた。星の中で、ぼんやりと色々なことを思い出した。
東雲視点(ネタバレ)
KP
そろそろ、あなたがこの時間の流れにいられる、最後の一時間だ。
東雲 圓華
このままではあの人を傷つけたまま送り出すことになる。
あの波照間さんにはもう二度と会えないのに、謝れないのに。

何を言っていいか分からないけれど、とにかく謝らなくては。
折角手を差し伸べてくれたのに、事情も話さずに逃げたことを。

次の波照間さんはもう忘れているから大丈夫、などとは思えなかった。

何より、もう姿を見るだけでいることが耐えられなかった。

KP
23時頃になっただろうか。

あなたはふと気付くだろう。
コスモス畑の中にぼんやりと佇んでいる人物がいる。
月明かりに照らされたその表情はまるで、迷子の子供のような顔をしていた。

あなたが彼女を認識すると同時、彼女の視線があなたの方に向く。
哀しみをたたえた瞳があなたをとらえ、揺れた。
東雲 圓華
「信じていました」
KP
静かに言って彼女は微笑んだ。
痛みを感じるような笑みだった。
東雲 圓華
「あんなに酷い事をしたのに。
あなたの想いを踏みにじったのに。
それでもここに来てくれると」
KP
〈聞き耳〉どうぞ……
波照間 紅
1d100 70〈聞き耳〉 Sasa BOT 1d100→40→成功
KP
彼女の最後の言葉は途切れて風にさらわれたが、あなたはその唇が「知っている」と動いたのが見えた気がした。
波照間 紅
「来て、くれたんですね」
最初に漏れたのは、そんな言葉だった。

「あれだけ強引な事をしたのに。
無理に手を伸ばしたのに。それでも」

月明かりに照らされて佇む彼女が、あの時のように消えてしまいそうで。
それを怖れるように、少しずつ傍らに近づいた。
東雲 圓華
「どうしても一目、会いたかった。
話しかけて欲しかった」
KP
東雲はあなたの方へ歩みを進めかけ、やめた。
東雲視点(ネタバレ)
東雲 圓華
お別れだけを言うの。
これ以上のことを話しても、無駄なのよ。
波照間さんが私を追って来ることはできないし、ただ波照間さんが辛い思いをするだけ。
もう分かっているから。
あの人は優しいから、私のことで哀しんでくれると……

せめて憂いを取り除いて、気持ち良く、すっきりと、送り出さなきゃね。

私たちは住む世界も時間も違う。
仕方ないのよ……

東雲 圓華
「あなたを傷つけると知っているのに。
ごめんなさい」
波照間 紅
「いいんです。僕だって……、会いたかった」

一歩、こちらから歩いていく。
KP
波照間さんが究極の選択迫ってくる……!
波照間 紅
波照間がだいぶん積極的!
KP
わあああどうしよう。もの凄く迷う。
波照間 紅
なんだろう……!
KP
あなたの言葉に、頷くように、しみ込ませるように目を閉じて一呼吸。
胸の前で両手を握って微笑む。
東雲 圓華
「今日はお別れに来ました。
私の事はどうか忘れてください」
KP
声はかすかに震えていた。
波照間 紅
「……どうして。僕では、力になれませんか。

あなたの境遇を聞くことさえ、できませんか」

大きく、一歩。

「力に……、いえ。
このまま、離れたくないんです」

自分でも解釈を迷っていた本音が、ほろりと唇を割った。
KP
東雲はあなたの方へ踏み出した。
東雲 圓華
「ええ、私もです。
離れたくない、一緒に行きたい。けれど」
KP
東雲はあなたの目の前で立ち止まると、哀しげに微笑んだ。
東雲 圓華
「私はここから離れられない罪人で、
もう人間ではありません。
『あなた』と逢えるのはこれが最後です」
波照間 紅
「……ああ、そうなんですね。そうではないかと思っていました。あなたは、もう……。

聞いても、構いませんか。どうして、そうなってしまったのか。どうして僕のことを知っていたのか」
東雲 圓華
「私はずっと、あなたを見ていました。
気の遠くなるほどの長い時間、何度も何度も。
だから知っています、あなたがどんなに優しくて強い人か」
KP
東雲ははっと息をのんで、高ぶりかけた感情を抑えつけるように目を閉じた。
東雲視点(ネタバレ)
東雲 圓華
駄目。
詳しく話したところで、波照間さんにはどうすることもできない。
それどころか、私を捕える何かに捕まってしまうかも。

東雲 圓華
「だから、関わって欲しくないの。
あなたはきっと、兄と同じようにたどり着いて……しまうから」
波照間 紅
辿り着いてしまう。
それはきっと、辿り着いてはならないものではなかったか。
それはきっと、微かな仄めかしの向こうにあったような何かではなかったか。
それはきっと、越えてはならない、手を伸ばしてはならない、知ってはならないと忠告されたような、何かではなかったか。
東雲 圓華
「それに、もう、遅いから。
あなたはどうか、生きてください」
KP
東雲はひんやりとした手であなたの手を取り、包んだ。
波照間 紅
その手を、上から手を重ねて握り返す。
諦めたくない、手放したくないと告げるように。

「嫌だ、諦めたくない」

口にはしないつもりだったのに。
とうとう、きっと彼女を困らせるだけなのに、口にさえ出てしまった。
東雲 圓華
「私も、私もあなたと、いきたかった」
KP
声が涙に溺れて不明瞭になる。
瞳がぼやける。
波照間 紅
あ、と声が漏れた。
ぼやけていく姿を引き留めようと、強く手を握りしめる。
東雲視点(ネタバレ)
東雲 圓華
ああ、あと一呼吸の間でもいい、もう少しだけこの波照間さんと
KP
時間だ。
あなたの視界が幾重にもぶれる。
波照間が逆再生のように坂を後ろ向きに下り、太陽が昇り、月が昇り、天から花びらが花へ吸い込まれ、星は空を遡る。
あなたの周りで世界の時が逆流する。

KP
次の瞬間、そこには誰もいなかった。
音も、光も、触れた肌の冷たさすらも残さずに。
そこに誰かがいた、ということすら勘違いか何かのように、あなたの手は空を掴んでいた。
波照間 紅
その手があっさりと空を掴む。
どうしようもない無力感と痛みだけが、胸に残る。
KP
あなたの目に飛び込んできたのは、季節外れの天の川の中へと溶けて消えた、一瞬の流れ星だった。

しらじらと世界を照らす白い月の光は、変わらず静かにふりそそいでいた。
波照間 紅
「くそ……、」
歯の間から息が漏れる。誰に、何に訴えることもできない悔しさが、落とす場所のない悪態になってこぼれた。

「くそ……、くそ、くそっ……!」

地面に拳を叩きつけようとして、柔らかい花弁に触れた。当たり散らすことさえも許さないほど、この場所は突き放したように美しかった。
KP
SANチェック成功時減少 0失敗時減少 1d3
波照間 紅
1d100 69 《SANチェック》 Sasa BOT 1d100→79→失敗
1d3 解釈一致 Sasa BOT 1d3→1
SAN 69 → 68
KP
世界は変わらず美しいままで、東雲だけがいなくなっていた。
KP
呪いをかける事を選んでしまったな……
波照間 紅
少しの間、未練がましくその場に佇んでいるだろう。
それから、何か昼とは様子が違っていないかと、あの風車の所へ行ってみる。
KP
風車は何が起きようともお構いなしに回り続けているようだった。
ぎいぎいと低いきしみが響き続けている。
扉は閉ざされ、冷たい石の塔は月光の中に影を刻んでそびえていた。
波照間 紅
扉を少し調べたあと、風車の裏側に回ってみる。
KP
何か明かりはお持ちですか?
そうでなければ裏側は月の光も届かぬ真っ暗闇です。
波照間 紅
キャンプに来ていること、望遠鏡のセッティングがあることから懐中電灯くらいは持ってきていておかしくないと思いますが、どうでしょうか?
KP
では懐中電灯を手に裏手へと向かう。
昼間と同様、KEEPOUTの文字が書かれたテープが乱雑に張り巡らされ、黒々とした血の跡が地面についているのが見えた。

今となってはこれが唯一の痕跡と言えるものなのかも知れなかった。
波照間 紅
「……追えるものといえば、これくらい、か」
何か変化がないかと期待したが、そんなこともないらしかった。
KP
もうここには 誰もいない。
システムメッセージ
KP
残念ながら今晩働きかけられる事はもうありません。
波照間 紅
お、開示ありがとうございます そしたら未練がましいRPして戻ろう
KP
これあまり早いタイミングで開示すると興ざめかなと思って……
波照間 紅
それはそうなんですよね 丁度いいところだったと思います

波照間 紅
道路の上に血痕が続いているか、周囲の様子など、何度か繰り返し調べて回って。

それが諦めの悪い未練からくる行動に過ぎないと気づいたとき、不意に吹きつけた風に寒さを感じた。

そんな自分自身に弱々しく苦笑して、何度も振り返りながらその場を後にする。
KP
駐車場の車内は冷え切って寒く、暖房を入れようともずっと寒さが付き纏っているような気がした。
波照間 紅
寒くて寒くてテントに戻る気が起きず、背を丸めるようにして車の中で寝た。

KP
翌日。
9月10日の朝である。
しんしんと冷える外気が車内にまで入り込み、体の末端がこわばって痛かった。
波照間 紅
寒い、と呻いて目を覚ます。痛みと無力感と寒さが入り混じり、溜め息でもつきたい気分だった。
車外に出て大きく伸びをし、体操をしてどうにか身体の感覚を取り戻す。
KP
車、コスモス畑の駐車場に置いたままですかね?
波照間 紅
テントを放ったまま車中泊というわけにもいかないので、車はキャンプ場に戻しています。
テントの横で寝袋を引っ張り込んで車中泊しています。
KP
ようやっと体に暖かさが戻ってきた頃、あなたのスマートフォンにニュースアプリの通知が届いた。
ローカルニュースらしい。
波照間 紅
そのニュースを普段の習慣で確認する。
KP
『東雲圓華(22)女性が遺体で発見。9月6日に星見町の風車裏で殺害されたものと思われる』
波照間 紅
「……」
その名を見て、目を伏せる。ニュースに発見当時の状況は書かれているだろうか。
KP
ニュースの詳細は、こうだ。

遺体の発見現場は町内の【ゴミ捨て場】。四肢を切断された状態で遺棄されていたとのこと。
殺害現場は風車裏とされ、警察は殺人事件として捜査する方針であるようだ。


被害者の顔写真も掲載されている。
間違いなく昨日まであなたと話していた、東雲圓華の顔だった。
SANリセットの上
SANチェック成功時減少 1失敗時減少 1d3+1
波照間 紅
間違いなく、彼女だった。
今更に、裏付けを突きつけられるようだった。

最初から何もかも遅かったのだと。

スマートフォンの冷たい画面から、冷気が身体に染み込んでくるようだった。
1d100 69 《SANチェック》 Sasa BOT 1d100→19→成功
波照間 紅
SAN 69 → 68
KP
遺体の発見現場であると写真が掲載されている【ゴミ捨て場】の写真には、最初の日に立ち寄ったガソリンスタンドの看板が映り込んでいた。
波照間 紅
最初の日、ガソリンスタンドに立ち寄ったあの時。9月6日。
あの時……、あの時、彼女は、もしかすると、まだ生きて。

焚火を起こして身体を温め、缶詰の食べ物を加熱して朝食にする。
KP
日が昇り、世界を照らし温める。
冷たい世界が生き返ってゆく。

あなたが起こした炎はあなたの心と体を温め、動く気力と力を与えてくれた。
波照間 紅
件のガソリンスタンドへ向かう。
彼女の痕跡を、追いかけてみようと思った。
KP
ガソリンスタンドの近くへと車を走らせると、
閑散としていた昨日までとはうってかわって、報道関係者と思われる人たちが
カメラや三脚などを手に件のゴミ捨て場に集まっていた。
また、野次馬も多く集まっているように見える。

そこは普段はあまり人通りのない通りで、
金属のボックス型の大きなゴミ箱が設置されているらしい。

周囲の声に耳をそばだてるなら〈聞き耳〉
波照間 紅
1d100 70〈聞き耳〉 Sasa BOT 1d100→1→決定的成功クリティカル)!
波照間 紅
わお
KP
本気だしてる
波照間 紅
これはびっくり 彼女に関わることでの本気の出しっぷりがすごい
KP
周囲の人々からこんな話が漏れ聞こえた。
「遺体はバラバラになって袋の中に詰められていたらしいぞ」
「酷い話だな。殺害現場はあの風車の裏だってよ」

「またあの風車か。数年前にも建設責任者が殺されたじゃないか」
「あぁ、時計館の元館長、三刻 終司だろ? 風車にはもう取材に行ったのか?」
「いや、まだだ。警察から許可が下りてないからな」

「せめて、あの辺のコスモスを世話してる爺さんに話が聞ければと思ったが今は留守らしい」
「そういえば、あの爺さんが第一発見者らしいな。お気の毒に」
波照間 紅
彼女のことをずっと考えていたせいか、いやにはっきりと会話が耳に入った。
あの爺さん……、コスモス畑の管理者だという、秋野さんか?

スケジュールアプリを呼び出して、帰らなくてはならない日を確認した。
どれだけ諦めたくなくても、終わりがあるということが痛みを呼ぶ。
やらかした
KP
このポンコツKP、日付計算でポカミスをやらかしました。
最初の日、ガソスタ寄ってキャンプ建てた後、風車に行くまで一日あった事にして下さいッッ

9/6夕方 夜空町を通過して旭町に宿泊
9/7昼間 旭町周辺の観光 夜に夜空町風車へ

って感じに。
一日消し飛んじゃってるよ……
波照間 紅
わかりましたッ
食材の買い出しとか周辺のこと調べたりとかしてたのでしょう

日付に関するコメントのとこ修正しましたっ
KP
すみませんッッッ!
シナリオだと割と序盤何もできずに会話するだけだったのに、うっかり最初っから探索可能にしちゃったりしてるからッッッ!
波照間さんの性格のおかげで問題なく進行してるけど。
波照間 紅
いえいえ!
日付が厳密なシナリオはうっかりしがち

KP
予定していた休暇は12日まで。
帰りの道程を考慮にいれて、実質明後日の昼あたりまでだろうか。
片付けのこと等を考えるなら12日の時間はほぼないといっていい。
使える時間はあと一日半といったところだ。

気ままな旅であるとはいえ、6日からこの地に滞在してもう四日目。
随分と長くここに足を止めているものだ。
波照間 紅
ずっと諦めないでいたかった。ずっと彼女の手を取る方法を探していたかった。

それでも終わりはある。
戻らなくてはならない場所を、捨てることはできない。
できない、そう考えることがあまりにも胸を痛ませた。

(秋野さん、か)
留守だというが、いま一番話を聞いてみたい人ではある。

「あの、何かあったんですか?」
集まる野次馬たちの様子を見て、排他的な雰囲気でなければ話しかけてみよう。
KP
比較的開放的な雰囲気の若い男性が応じてくれる。
格好から察するに、近隣の人だろうか?
「いや、ここのゴミ箱にさぁ、女性のバラバラ死体が捨ててあったんだって。
見つかったのは9月7日らしいけど。怖いねぇ。
こんなハコ、捨てるときはいちいち中見ないもんねぇ」

横から彼の知り合いらしい人が口を挟む。
「そうそう、近くに住んでるおじいさんが見つけたって。
間違ってもそんなの見つけたくないわー」

※ここは判定が必要ですが、クリティカル報酬でそのまま訊けます。
波照間 紅
「そんな……、それは、見つけた方は驚かれたでしょうね。そういえば、ニュースで見ました。死体が見つかった、って……。ここのことだったんですね」
KP
「現場は風車だっつってたね」
「あの風車碌な事ないな」
波照間 紅
「風車というと、コスモス畑の? そういえばあのコスモス畑、管理されている方がいるんですよね。

これからまた行こうと思っていたんですが、そんな状況では一度お断りを入れた方がいいんでしょうか」
KP
「管理人のおじいさん、いつもなら大体あの畑で手入れしてるみたいだけど。
いるなら行けば会えるんじゃない?」
「大変だよなぁー、あんな広いところ一人で」
波照間 紅
「そうなんですね、明るい内に一度行ってみます」ありがとうございます、と礼をする。

問題のゴミ捨て場の様子を野次馬に紛れて覗き込んでみようとするが、見えるだろうか?
KP
見ることはできるが、ゴミ箱自体に別段変わった様子はない。
血液などの付着もない。
波照間 紅
風車について彼らに軽く話を向ける。
知っていること以外に聞けることがなさそうなら、周囲の様子を確認する。
気になることがなければコスモス畑へ向かう。
KP
風車についてなら、2年前の殺人事件についての話なども出てくるが、とくに目新しい話はなかった。
実際の事件があったのは数日前だし、詳しい事情を知る人はここには来ていないようだ。

KP
コスモス畑へと向かう。

あの丘では日に照らされたコスモスが風にゆっくりとなびいて波のように揺れていた。
よく見るとその中に、人の姿がある。
花の様子を見ているのだろうか、日よけ帽をかぶった老人が花壇の中にかがんでいた。
波照間 紅
「初めまして、お邪魔しています。ご挨拶が遅くなってすみません」

無限に続くような花の波の中、ひとりこの場所を保っているのだろう老人に、少し遠くから声をかけた。
KP
「観光の方ですか?」
老人は少し疲れたような顔をしていた。
肩にかけた手ぬぐいで額を拭い、背を伸ばす。
どうやら雑草をむしっていたらしい。
「ようこそおいでくださいました。ここは今が一番良い時期ですよ」
波照間 紅
「ええ、そうです。数日前から来ていて。

先日にも訪れましたが、本当に美しいですね。夜など、星たちと花々が一つになるようで、思わず声が漏れました」
KP
「そうでしたか、それはそれは。
ここの管理をしている者としては嬉しいですね」
老人は嬉しそうに目を細めた。
「ここ数日来られなかったものですから心配でしたが」
波照間 紅
「そうでしたか、それでお見かけしなかったんですね。ご不調ですか? 何かお手伝いしましょうか」
KP
「ああ、いえいえお客様にとんでもない。
警察へ行っていたものですからね。思ったよりも長引いてしまいまして」
老人は無意識にか、ちらと風車の方を見た。
波照間 紅
「……伺いました。こちらの風車の裏であったという、殺人事件のこと。

僕も、話を聞いて随分と驚いてしまって」言って、一度反応を見る。
KP
老人は哀しげな顔をする。
「ご存知でしたか。
たまに来てくれていたお嬢さんがね……本当に酷い、痛ましい事です」
ゆっくりと首を振り、哀しそうに長い息を吐いた。
「あんなことになってしまうなんて、本当に、酷い」
波照間 紅
「ええ……。
ここに来たとき、一度、お会いしたんです。彼女と。
優しそうな、綺麗な人でした」
KP
「ああ、そうでしたか。
本当に優しい子ですよ。
畑の世話をよく手伝ってくれました。
昔はお兄さんとよくいらしてましたよ。
あの風車が建って以来はあまりいらっしゃらなくなりましたけどね」
波照間 紅
「そうなんですね。数年前でしたか、あの風車が建ったのは」

何気なく話をしながら、少しずつ切り込んでいく。
何かを、知っているのだろうか、この人は。……それとも。
KP
「2年前急に、でしたね。もっとお客が呼べるからと、終司さんがね……」
老人は重々しく答えた。その言葉に少し苦いものが混じっていたのは気のせいではなかっただろう。
「あまりに強引で、家内や私の話を何も聞いてはくれなかった……
息子さんもここによく遊びに来ていたというのにねぇ」

老人は想い出に浸りかけ、はっと目の前の客の存在を思い出したようだった。
「いけませんね、お客様にこんな話を。
老人の戯れ言ですよ」
波照間 紅
「いえ、……僕も実は、あの風車のことは気になっていたんです。あれができる前、ここは星と花の海のようだったと、彼女が言っていて。

彼女の……、力になりたかったんです。何か、困っているようだったから。その矢先に、あんなことになってしまって、それで」

この花々に対して、真摯な人だと感じた。どうやって切り込むべきか一度考えて、結局、心持ちをほぼそのまま話すことにした。

巧いこと誘導して話を聞き出すというのは、あまり得意じゃない。そういうのは佐倉さんや洞川さんの得意分野だったか、と頭の端で思う。
KP
老人はあなたをじっと見つめ、そしてポケットから古びた手帳を取り出した。
その場で何かボールペンで書き込み、一枚破ってあなたに差し出す。
「あのお嬢さんが葬られるとしたらここです。
もしかするとまだ間に合うかも知れない、お別れを言っていらっしゃい」

メモ帳には住所が書かれていた。
波照間 紅
「何か、ご存知ですか。

あの風車について。この町の様子が変わってしまったことについて、彼女の兄がどこへ行ったのか……

彼女の、現状について」

それを見て、思わず矢継ぎ早に問うていた。
KP
「……建設責任者は三刻 終司という方ですよ。この風車が建った直後にここで誰かに殺されましたがね。
正直なところ、私はあまり良い印象を持ってはいません……。

この町についてですか。
若い人はどんどん出て行ってしまいますから、いずれここを守る者もいなくなってしまうのかと思うと寂しい限りですね。

あの子のお兄さんについては、私は存じません。
本当に仲の良さそうな兄妹でしたよ。
最近見かけないと思っていたら、失踪したという報せを見ました。
なにもあんな酷い……」

遺体を発見したときの事を思い出したか、老人は喉を詰まらせた。
波照間 紅
「……すみません、話し過ぎました。

ありがとう、ございます。
教えて下さって」

渡された紙を胸に抱き、深く、一礼する。
KP
「私は妻の死に目に会えませんでしたから」
老人は沈痛な面持ちで帽子のつばを下げると、コスモスの花の間に屈んだ。
波照間 紅
もう一度礼をして、紙に書かれた場所に向かう。

KP
墓地は星見町と旭町の中間にある。
木々に囲まれた広大な土地だ。

和洋折衷の様々な墓石があり、奥の方には教会に似た洋風の建築物が見える。
特に墓参りに来ている者などは居ないものの、その中に一人、
長い銀髪を揺らしながら墓石を磨く一人の人物がいる。
格好から言って墓参者ではなさそうだ。墓守だろうか。
波照間 紅
その場所には、死の雰囲気が静かに横たわっていた。
静かに、寒々しく、ただ別れを受け入れようとするものの気配が。

別れを。
世界は、受け入れようとしている。

時間が尽きてしまえば、手を伸ばす道がもうないのなら、僕も、きっと。

彼女はまだ、そこにいるのに。

……見えてしまうから、下手に向こうの世界を知っているから。
未練がましく、なっているだけなのかもしれない。

覆せるものでは、ないのかもしれない。
それでも、まだ。

時間は。
もう少しだけ。

「お邪魔します」
舌の奥に感じた苦味を潰して、その人に呼びかける。
KP
「あら、誰かのお参りですか?」
若くはないが老いてもいない張りのある落ち着いた低い声は、
大きくはないのにはっきりと聞こえた。
性別不詳の相貌にそっと穏やかな笑みを浮かべる。
「ご案内いたしましょうか?」
波照間 紅
「お願いします。東雲さん、という方なんですが」

心地よい声だ、と思った。穏やかに来た者を受け入れるような姿は、この場所を寒くしすぎず、温かくもしすぎない。
KP
「ああ、東雲さん、ですか……
その方はまだ埋葬されておりません。
こちらへどうぞ」

墓守は、あなたを奥にある洋風建築物へと導いた。
波照間 紅
「……」
静かに、その後ろを歩く。
不思議な気分だった。彼女はそこにいるのだ。あの星の海に、彼女はいるのに。
KP
墓守先導の元、あなたは墓地の敷地内にあった洋風建築物へと案内される。
建物の中は天井から吊るされた照明器具によって明るく照らされており、
清潔感漂う空間が広がっていた。

こつこつと靴音だけが響く。

墓守は道を進み、そして小さな一室にあなたを案内する。
その部屋は、飾り気のない簡素な白い部屋だった。
その部屋は少し肌寒く、壁には横1m縦1.5mほどの扉が三枚並んでいる。

静寂を破るように、墓守は口を開く。
「東雲さんには身内の方がおられませんで、私がご遺体を引取りました」

「ご存知の上で東雲さんと会う覚悟はございますか?」
波照間 紅
「はい。存じ上げています」

頷く。
KP
墓守は一番奥にある扉へと手をかけ、慣れた手つきで丁寧に白い棺を取り出す。

棺の顔の部分の扉は閉まっており、開けない限り棺の中を見ることが不可能である、ということは見て分かるだろう。

「こちらに東雲さんは眠っております。
どうか貴方がこの扉を開けてくださいませ」
波照間 紅
「……」

一度、棺に礼をする。
少しだけ息を呑んで、扉に手を伸ばした。

「東雲さん」
彼女に呼びかける声で、一言名を呼んで。

その扉を、開く。

……遠く遠く、果てから聞こえる波の音を思い出すような気がした。
KP
そこにはあの丘の上で出会った東雲が目を瞑り眠っていた。

安らかに目を瞑る顔は、死に化粧のためか、
夜の出逢いの時よりもむしろ血の気があるように見え、
一見そっと微笑んで眠っているかのようだ。

呼びかければ今にも目覚めて答えるのではないかとすら思えた。

だが、首には包帯が巻かれており、白装束を着ている。
棺に横たわったまま動かない姿は、
あなたの理性に否応なく事実を突きつけてくる。

彼女は、死んでいる。

あなたに微笑みかける事も、
優しい声で呼びかける事もない。

SANチェック成功時減少 1失敗時減少 1d4+1
波照間 紅
1d100 68 《SANチェック》 Sasa BOT 1d100→78→失敗
1d4+1 Sasa BOT 1d4+1→2+1→合計3
SAN 68 → 65

「……ああ、」
息が、漏れた。
これが、いまここにいるのが、彼女の終わりだ。

「東雲、さん」

静かに、彼女の死に顔を見つめていた。視線が離せなかった。分かっていた。これが彼女の終わりだった。

どれだけ辿ろうとも、老人が語るのは、墓守が連れていってくれるのは、彼女の終わりへと続く道に過ぎなかった。

最初から何もかもが遅かった。

どうしようもなく、あの場所にいる彼女に会いたいと思った。
もう会えないような気もした。

会えなければ別れられるのだろう。嫌だ。諦めたくない。彼女は、まだあの場所にいるのに。

心が痛みに裂かれて、もがいていた。そこにいる彼女の顔を、じっと見つめていた。

そこに終わり以外のものを見つけたいと望むように。
KP
墓守は黙ってあなたの別れを見守っているようだった。
波照間 紅
「……」
別れを、告げることはできなかった。
まだ。

別れを告げるのは、きっとこの地を去るときだろう。
KP
「私の印象に過ぎませんが、おそらく……
犯人はこの方を大変憎んでいたのでしょうね」
静かに墓守は呟いた。
波照間 紅
「憎んでいた?」
KP
「はい、手首、足首、脚、腕、首……
いたるところが切断されていました。
それ以外にも無数の切り傷があり……痛々しい状態でした」
波照間 紅
「そんなにも、執拗に……」

あの血に濡れた地面を思い出した。そういえば、刃物が地面を掠ったような跡が、残されていた。
KP
「発見が早かったので修復できましたが、本当に酷い状態だったのです」

「お見かけしないお顔ですね」
墓守はあなたの目を見つめた。
「ご友人ですか」
波照間 紅
「友人……、とは言えないかもしれません。数日前に、初めて会ったので」

「聞いて下さいますか」

気づけば、話していた。
コスモス畑の中で、その時もう死んでいたはずの彼女と会ったことを。
彼女が、ずっと待っていると言ったことを。

他に人のいない空間は、穏やかに死を閉じていくような墓守の佇まいは、どうしてか唇を割らせた。

それくらいの戯言は許されるのではないかと思った。
KP
墓守は口を挟む事なくあなたの話を聞いていた。
話が終ると、そっと棺の扉を閉めて再び元の場所に戻す。
「……そうですか。
なるほど、不思議なこともあるものですね」
波照間 紅
「ええ、そう思います」
KP
墓守はじっとあなたの目を見つめ、ややあって口を開く。
「貴方は、運命や奇跡というものを信じますか?」
波照間 紅
「奇跡は、どうでしょうね。今は、信じたい気持ちでいます。

それに。
ないと分かったもの以外は、もしかしたら、あるんじゃないかと……、僕は、そう思っています」

静かに、墓守の眼を見つめ返す。

きっと、そのせいで諦めが悪くなってしまうのだろうけど。そのせいで、諦めるべきことに縛られているだけなのかもしれないけれど。
KP
「もし、少しでも信じる心があるのでしたら、夜に丘に行ってみてください」
墓守の目はあまりにも真剣だった。
波照間 紅
「はい」
静かに、頷く。

最初からそうするつもりだった。きっと最後の夜まで、諦めきれずに、僕はあの場所へ向かってしまうだろう。

けれど。
死を閉じ、別れを送るこの人が、軽々しく運命や奇跡を口にするはずがない。

「そうします」

そこにまだ何かがあると信じていたかったのは、きっとまだ信じているからだ。
KP
「亡くなった筈の方が現われたというなら、それがすでに運命のように思えます」
墓守はそう言うと、銀色の髪を揺らしてあなたを送り出すだろう。
波照間 紅
振り返り、一礼する。

不思議な人だ。どうしてか、今は素直に信じていられた。

外に出て、空を見上げる。
今は何時くらいだろうか。
KP
ゴミ捨て場~コスモス畑~墓地 なら15時くらいかな? もう少し早いかも知れない。
波照間 紅
まだ空は明るかった。他にできることがまだあるだろうか、と考える。

しかし結局は思いつかず、やることといえば早めに軽食を取ることと、手早く片付けができるように準備しておくことくらいだった。
KP
日暮れが訪れる。
あの丘に、再び彼女は現れるだろうか。
丘へ向かいますか?
波照間 紅
向かいます。

コメント By.KP
最初から何もかも遅かったのだ。
それはまるで呪いのように、くくりつけて、こびりついて離れない。

ふんいきでやってるKPは、日付を確認しておおいに焦るのだった。

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真面目な顔で何言ってるんだろうこの人。優しくてまともな人かと思ったんだけどな……

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